高度難聴の聞こえを補聴器で改善する

こちらでは、聴力低下として大きめのラインになる高度難聴の聞こえを補聴器で改善する方法について、簡単にまとめていきます。
高度難聴の方において大事になるのは、きちんとご自身の聴力を補える補聴器の形状、補聴器を選ぶことです。聴力低下が大きいため、きちんと補える出力の出る補聴器でないと改善できると良い部分まで改善することが難しくなるため、ここを押さえることが最も大事になります。
その他にもいくつか要点がありますので、こちらでは、簡単にではありますが、このような聴力の方を良くするための内容をまとめていきます。
高度難聴の聞こえのレベル
まず、主にこちらの内容が該当する聴力は、このような聞こえになります。

数値としては、聴力が全体的に70dBよりも下になり、このぐらいまで下がってくると、ほとんど周りの音は聞こえなくなり、補聴器がないと、生活はおろか、人とお話しすることすらできなくなるレベルです。
分かりづらいと思いますので、聞きにくさについて表現すると、このようになります。

ほとんど何もわからない状態ですね。音には、低い音から高い音までありますので、実際には、聴力の状態によって変わる部分はあるのですが、全体的には、かなり聞きづらく、人と音でコミュニケーションを取るのは、かなり困難になってきます。
このぐらい聞きにくくなるのが高度難聴になり、こちらでは、この状態を改善していくための内容について、簡単にまとめていきます。
補聴器で聞こえを改善するには?
高度難聴に限らず、補聴器で聞こえを改善する要所というのは、だいたい決まっており、それは、
- 耳の補い方
- 補聴器の形状
- 補聴器の性能
- 補聴器の調整(聞こえの改善度)
の4つになります。
のち、補聴器の性能は、金額が大きく関わる部分になり、選べる、選べないが出てきてしまいますので、それ以外の3つの部分をまとめていきます。
事前にお伝えさせていただきますと、聞こえの改善における影響度は、
- 耳の補い方:
- 補聴器の調整:
- 補聴器の性能:
- 補聴器の形状:
になります。ですので、聞こえの改善を本当の意味できちんと考えたい場合は、耳の補い方と補聴器の調整の2つは、押さえておくと良いです。
耳の補い方

耳の補い方とは、どの耳に補聴器をつけるのか。という部分になります。左側、右側、あるいは、両方の耳、一応、いくつか、選択肢があります。
結論からお伝えさせていただきますと、両耳とも補聴器の適性があるのであれば、補聴器は両方の耳に装用できるといいです。
高度難聴の方の場合、気をつけなければならないのは、聴力低下が非常に大きいことです。低下の量が大きければ大きいほど、補聴器による聞こえの改善度は、一般的に下がる傾向にあります。ですので、なるべく聞こえを改善できる方法をとっていくことが大事になります。
具体的には、
- 片耳だと聞こえない部分が多く出てくる
- 騒がしい中での聞き取りをなるべくあげやすくする
この二点を意識することになります。
片耳だと聞こえない部分が多く出てくる
もしかしたら、人によっては、「片方の耳だけでいいのでは?」と思う方もいるかもしれません。しかし、片方の耳のみ装用した場合、その耳側からの音は、わかるようになるのですが、反対側(補聴器をつけていない側)からの音は、意外とわかりません。
実は、耳というのは、頭があることで、左側の音は左側で聞き、右側の音は、右側で聞く、ということをしています。

反対側に音が移行するまでに音の減衰が大きくあるため、実は片方だけつけた場合は、つけていない側からの音、音声は、だいぶ分かりづらい状態になります。
ですので、本当の意味でよくする場合は、両方とも装用し、左からの音、右からの音、それぞれ聞こえるようにすることが大事になります。
特に高度難聴にまで下がっている場合は、どちらの耳も大きく聴力低下していることになります。
80代後半、90代で手先が不自由などの理由がある場合は、片方だけつけることもあるのですが(聴力低下が大きいケースには、年齢によるものもあるため)、そういったことがなければ、最善の方法で改善していくことが大事になります。
騒がしい中での聞き取りをなるべくあげやすくする
2つ目の理由は、騒がしい中での聞き取りをなるべく上げやすくするためです。
難聴の問題の一つは、とにかくノイズに弱くなってしまうことです。補聴器をつける方の多くの難聴は、感音性難聴といい、音を感じる神経の部分が悪化してしまい、そのことにより、周波数分解能(しゅうはすうぶんかいのう)というものが低下します。
これが低下すると、音声の聞き取りがうまくできなかったり、騒がしい中での聞き取りが難しくなり、補聴器をつけることで静かなところではよく聞こえるけれども騒がしくなると聞きにくくなる、というようなことが出やすくなります。
これは耳だけの問題ではなく補聴器側にもある程度の問題はあるのですが、聞こえを改善する上での一つの課題は、騒がしい環境下での聞こえの改善度をいかに上げるか、があります。それは、上記の通り、耳の機能的に低下しやすいからです。
両方の耳に補聴器をつけた場合と片方の耳のみにつけた場合の聞こえの改善効果を比較したものがあるのですが、その結果は、以下の通りです。

静かなところは、そこまで変わらないのですが、騒がしい環境下になると、差が大きくなってきます。
また、円卓を囲んでの会話も大きく下がっています。これは、つけていない側からの音、音声は、聞こえづらく、さらにノイズがある状況下だとより聞きにくくなってしまうからです。
仮に聞こえの改善について最善の状態にしていく、と考えた場合、両方とも適性があれば、両耳に補聴器をつけ、どの方向からもわかるようにし、かつ、騒がしい中での聞き取りもなるべく改善できるようにしていけると良いです。
補聴器の形状
次は、補聴器の形状です。補聴器の形状とは、そのままの意味で、補聴器の形という意味になります。


今現在、補聴器にはこのような種類、主に耳かけ形補聴器、耳あな形補聴器という形があります。
ここは、高度の難聴の方の場合、
- きちんと聞こえを補えるかどうか
- 補聴器の扱いやすさ
の2つに影響します。
きちんと聞こえを補えるかどうか

まず、高度難聴の方で大事になってくるのは、きちんと聞こえを補える補聴器の形状を選ぶことです。補聴器は、補聴器の形により、どこまで音を出せるのか、それが決まっています。

うっすら高(オレンジ色)とか重(赤色)とか書いてあるものがあるのですが、それが該当します。わからなければお店の方に聞けば教えてくれると思いますので、その中から選ぶことが大事です。
選ぶ選択肢としては基本的には、
- 耳かけ形補聴器なら、パワータイプの耳かけ形補聴器
- 耳あな形補聴器なら、フルシェル、または、カナル形の高出力タイプ
このようなパワータイプを使うことになります。
それぞれの形の違い

高度難聴の方の場合、これらのものから選ぶことが多いです。
それぞれ形として異なるのは、上記の通りです。
耳あな形補聴器は、耳の中に入るため、メガネやマスクの邪魔にならず、使いやすい傾向があります。ただ、その代わり、ハウリングという現象が起こりやすくなります。

耳の形が変わると、このハウリングに悩まされることになるため、耳あな形補聴器は、長く使いたいという方には向きません。それだけ、高度難聴の方の場合は、音を強く出さなければならないため、ハウリングというもののリスクが生じやすくなります。
一方、耳かけ形補聴器は、先ほどの耳あな形補聴器の逆で、耳にかけるため、メガネやマスクの邪魔に感じることがあるかもしれませんが、安定して聞こえを改善することができるため、ハウリングのリスクも聞こえの改善度も耳かけ形補聴器の方が良い傾向はあります。

使いやすさを考えるか、聞こえの改善度や長く使えることを考えるか。で選択肢が分かれてきます。基本的に高度難聴にまでなると、多くは、耳かけ形補聴器を使うことが多くなります。
補聴器の調整(聞こえの改善)
さて、最後は、補聴器の調整になります。補聴器は、今現在、低下した聴力に合わせて、聞こえを補い、なるべく聞きやすくなるよう音を調整していきます。
聞こえの改善においては、耳の補い方と補聴器の調整の2つで8割ぐらいが決まるようになりますので、この2つの部分は、大事な部分になります。
表現が少し難しいのですが、補聴器で大事になってくるのは、聴力ごとに補えるとよい音のレベルというものがありますので、その目標値を目指して、聞こえを改善していくことです。
それに関しては、補聴器の調整画面で確認できたり、

補聴器をつけた状態で、どのぐらい聞こえが改善されているかを見る測定があるのですが(音場閾値測定(おんじょういきち測定)といいます)こういったものでも確認ができます。

どちらも目標と現在聞こえている数値の部分がありますので、その部分で、比較しながら、ご自身の聴力から補えると良い部分まで聞こえを補えると、その分、聞こえの改善は、しやすくなります。
これは実際に補聴器を使っていただくとよくわかるのですが、補聴器をつけても、どこまで聞こえやすくなっているのか、自分の聞こえはどこまで改善できると良いのかは、体感で理解することは困難です。
ですので、こういった外部の数値を知り、そこから自分をより良くしていけると、改善しやすくなります。
おまけ・どのぐらいまで改善できる?
ここからは、完全に私の感覚なのですが、今現在、高度難聴の方の場合、上記の音場閾値測定で言いますと、聴力にもよりますが、改善値が良い方は、以下のような状態にまで改善されるケースがあります。

この数値は、聴力検査の際のデータと同じものになり、補聴器がない状態での数値というのは、(△のこと)だいたい聴力検査と同じような位置にくることが多いです。
ですので、こちらの図は、単純に補聴器を使って、どの周波数がどこまで改善されたか、を示しているということになります。
数値について補足をしますと、オージオグラムと呼ばれる聴力図に関しては、0〜10dBが一般の人が聞こえている範囲、0〜25dBが正常の範囲になります。

その部分に近づくような状態にまで、良い方の場合は入ってきている。ということです。
で、効果についてお話しさせていただきますと、まず、500〜2000Hzあたりが、音声としては、影響度が高い部分になります。

この部分に関しては、35dBぐらいまで改善されるようになると、だいぶ聞こえやすさは変わってくることが多いです。
良い方だと、30dBぐらいまでいくことがあるのですが、ここまでくるとだいぶ補聴器あり、なしで聞こえやすさは変わってきます。35dBでもだいぶ変わるのですが、30dBぐらいまでくるとより世界は変わるような状態ですね。
そして、高い音に関してもあげられると良い部分ではあります。

これらの部分は、音の明瞭性に関わるもので、言葉の聞き分け、”さ”と”か”などの聞き分けがしやすくなります。(限度はあります)ただ、あげすぎると、機械的な感覚も強くなる傾向がありますので、あげられる範囲で上げていけると良いです。
すると、結局は、全体的に上げていくことになるのですが、数値としては、35dB前後ぐらいにまでなると、補聴器有り無しの変化、ここについては、だいぶ大きくなります。
聞こえの改善を重視してあげすぎるのは、避けた方が良いのですが、改善できる部分まで上げていくというのも大事なところです。匙加減や人により、異なる部分はあるのですが、改善できると良いところまでは、改善していけると良いですね。
お客様の声
実際に高度難聴の方の聞こえの改善を行なったケースにおいて、お客様の声について、載せていきます。ご参考にどうぞ。
生まれつきの感音性難聴の方

- 改善:ITC補聴器(パワータイプ)
- 機器:耳あな形補聴器
- 備考:両耳装用にて改善、障がい者自立支援法制度利用

突発性難聴、原因不明の感音性難聴の方

- 改善:パワー形耳かけ形補聴器
- 機器:耳かけ形補聴器
- 備考:両耳装用にて改善、障がい者自立支援法制度利用



- 改善:パワー形耳かけ形補聴器
- 機器:耳かけ形補聴器
- 備考:片耳のみ使用(右)、障がい者自立支援法制度利用


この他のお客様の声(総合)
まとめ
こちらでは、高度難聴の方の聞こえを改善する方法について、簡単にではありますが、まとめてみました。
このような方の聞こえを良くする場合、大事になってくるのは、耳の補い方、さらに補聴器の形状は、きちんと聴力を補えるものを選ぶこと、そして、補聴器の調整においては、補える部分をきちんと補えること、これらのものがあります。
重要になる部分はいくつかあるのですが、高度難聴の方の場合、聴力低下が非常に大きいため、最善の方法を行なっていく必要があります。聴力低下が大きいということは、それだけ耳の神経の損傷度、聞きにくさ、そういったものが大きいということでもあります。
特に補聴器は、どのような聞こえでもどのような聴力でも一律改善できるようなものではありません。他の病気と同様、軽度な方の方が改善度は高く、症状が重くなるになるにつれ、聞こえの改善度も下がる傾向があります。
ですので、なるべく最善の方法で改善していくことが大事になります。
私自身も生まれつきの難聴者ですので、こちらの内容をご覧いただき、少しでもご自身の状況をよくするヒントが見つかったのであれば幸いです。皆、好きで聞きにくくなっているわけではないかと思いますので、なるべく簡単にではありますが、記載してみました。
なお、お店の方でもこのような聞こえの方のご相談、補聴器に関するご相談については承っておりますので、ご希望の方は、お気軽にご相談ください。
よろしくお願い致します。