オージオグラムの見方と自分の聴力を理解する4つのポイント
オージオグラムとは、聴力検査(純音聴力検査)の結果を図で表したものであり、聞こえの状態を図にしたものになります。
オージオグラムの見方がわかれば、ご自身の耳がどのような状態なのかを理解することができます。
ここで重要なのは、数値が表す意味を理解することです。どのように数値を記載しているのかを知れば、数値を見ることで、ご自身の状況を把握できるようになります。
こちらでは、オージオグラムの見方だけでなく、数値が表す意味に重点を置き、記載していきます。
オージオグラムの数値を知れば、ご自身の耳の状況もよく理解できるようになります。
オージオグラムの見方
オージオグラムの基礎
オージオグラムとは、聴力検査をした時に記載される聴力図です。
聴力検査をした際「音が聞こえたらボタンを押してください」と言われたと思うのですが、そのボタンを押した時の数値がオージオグラムに書き込まれています。

その数値は、最小可聴閾値(さいしょうかちょういきち)と呼ばれ、読んで字の如く、その数値がその人にとって、一番小さく聞こえる音を表しています。

オージオグラムの見方としては、ようになります。
まとめますと、
- 縦軸:音の強さ
- 横軸:音の周波数(ピッチの違い)
- ○、×:ヘッドホンをつけて検査した数値(気導聴力検査)
- [、]:黒いブルブル震えるもので検査した数値(骨導聴力検査)
になります。

表全体を見てみますと、縦軸に-20〜120まで数値があり、横軸には、125Hz〜8000Hzという数値があります。
縦軸は、音の強さを表しており、下の方に記号があればあるほど、聞こえにくくなります。そして、横軸は、低い音〜高い音まで調べられます。
音には、色々な音の高さがあるため、聴力検査の場合、単に音の強さだけではなく、どの音がどれだけ聞きにくいかを調べる必要があります。
そのため、音の強さと音の周波数の二つの軸を組み合わせ、どの音がどのくらい聞こえにくいのかを調べています。
○、×は、気導聴力検査
こちらの概要は
- 記号:○、×
- 検査:気導聴力検査(きどうけんさ)
- 左右:○が右、×が左を表します
- 特徴:普段、人が音を感じている経路を使って調べた検査
- 備考:○は、赤色で表し、×は、青色で表す事もあります
となります。
○、×、[、]と記号が色々ありますが、○、×は、気導聴力検査で調べた数値です。

気導聴力検査とは、ヘッドホンを使って音を聞かせる検査になります。これは、普段人が音を感じている経路を使って、どのくらい聞こえているのかを調べる検査です。

このようなヘッドホンを装用して、調べるのが、気導検査です。
一般的には、この聴力の数値を基本として、難聴のレベル、聞こえにくさを理解します。簡単に言えば、○と×を基準に見ていれば、ご自身の聴力を理解する事ができます。
[、]は、骨導聴力検査
こちらの概要は
- 記号:[、]
- 検査:骨導検査(こつどうけんさ)
- 左右:[が右、]が左を表す
- 特徴:骨に振動を与え、直接音を感じる器官に音を伝えて調べる検査
- 備考:気導検査の数値より、この検査の数値がずば抜けてよい場合がある
となります。
耳の後ろに、黒い塊のようなものをつけ、ブルブル震えるもので聴力を調べたのが、こちらの検査です。

このような機器を使って調べる検査で、骨を振動させて、音を感じ取る内耳という器官に直接音を伝えます。

気導聴力検査は、耳の穴の中を通して、音を伝えるのですが、こちらは、骨を伝って音を伝えます。
骨を伝って、音を感じ取る神経である内耳(蝸牛)に直接、音を流すことで、耳の神経(内耳)の聞こえを調べるのが、骨導聴力検査になります。
二つの伝達手段を用いる事で、どこに聞こえにくくなっている要因があるのかを調べるために、活用され、医師や補聴器販売店では、この数値と気導数値から、耳の状態を把握しています。
難聴レベルの理解
さて、基本的な概要に関しては、記載しました。次は数値の意味です。
こちらでは、
- オージオグラムの正常値
- 難聴レベルの種類
- 平均聴力の出し方
- 難聴レベルの理解
この4つについて記載していきます。
なお、上記にチラっと出ましたが、難聴レベル、聴力レベルにつきましては、基本的に気導聴力検査(○、×の数値)で理解します。
オージオグラムの正常値
はじめに理解したいのは、正常値です。

正常値ですが、基本的に全周波数が、0〜25dBまでで収まっていれば、正常となります。
一般の方が聞こえている数値は、0〜10dBです。オージオグラム(聴力図)は、人の感覚を元に作られているため、正常な方、もしくは、一般の方は、0〜10dBで聞こえています。
しかし、その数値で全て聞こえていないといけないわけではなく、25dBくらいまでは、聞き取りに問題ないことが大半ですので、この部分までは、正常になります。
そこから、下になると、なるほど、聞きにくさが出るようになります。
オージオグラムと年齢別の聞こえ

※補聴器メーカーソノヴァジャパンより引用
もう一つの比較基準として、年齢による難聴も出してみます。大半の難聴者は、年齢によって、聞きにくくなっていることが多いです。
年齢によって聞きにくくなる難聴を老人性難聴。と、呼びますが、こちらは、高い音から聞こえにくくなることが特徴です。
年齢が要因ではない、感音性難聴、原因不明の難聴も、どちらかというと、高い音の方が聞きにくくなるのですが、年齢による難聴は、このような傾向があります。
難聴レベルの種類
さて難聴には、主に
- 軽度難聴
- 中等度難聴
- 高度難聴
- 重度難聴
の四つの分類があります。
これらは、気導聴力検査結果の平均聴力で分けられています。
平均聴力の出し方(4分法)
日本における平均聴力の出し方は、ほぼ4分法と呼ばれる方法で算出されます。
これは、(500Hz+(1000Hz×2)+2000Hz)÷4で計算できます。

仮に上記のオージオグラムの平均聴力を計算してみましょう。
右耳の場合、500Hz=50dB、1000Hz=50dB、2000Hz=55dBですので、(50+50+50+55)÷4=51.25dB。これが、右耳の平均聴力レベルになります。
平均聴力は、このようにして出します。
難聴レベルの理解
平均聴力別、難聴レベルは、以下のようになります。

※よくわかる補聴器選びより引用
平均聴力を出す事ができると、上記の表と比べる事で、難聴レベルがわかります。
上記の右側の平均聴力は、51.25dBでしたので、41〜60dBの範囲の中等度難聴に該当する事がわかります。
難聴レベル別、聞きにくさ
難聴には、
- 軽度難聴
- 中等度難聴
- 高度難聴
- 重度難聴
の四つがある事を記載しました。それぞれの聞きにくさに関しても見ていきましょう。
なお、平均聴力ごとになりますので、おおよその聞こえにくさになります。
軽度難聴の聞こえ
軽度難聴に関しては
- 聴力:平均聴力26〜40dB
- 特徴:対面会話は問題ないことが多いが、呼ばれた際に気が付かない、騒がしいところで聞きにくさを感じる
- 備考:日常生活で困る人もいれば、困らない人もいる
となります。

軽度難聴の場合、正面でお話しする場合や対面でお話しするケースでは、聞こえにくさを感じる事は、あまりない傾向があります。
しかし、離れた場所から呼ばれたり、騒がしい中でお話しする場合は、聞こえにくさを感じる事があり、複数の方とお話しする際も同様です。
対面でお話しすると通じる事が多いため、ご本人側からしますと、難聴を意識しにくい傾向があります。
そして、お話しする側(相手側)からすると、聞こえていない事があるため、周囲の方から、指摘されるケースが多くなります。
軽度難聴という名称ですが、聞こえにくさが軽度なだけであり、聞こえにくい事によるストレスや意思疎通がしづらくなって感じる居心地の悪さ、対人関係の悪化レベルは、軽度であるとは限りません。その点は、注意が必要になります。
中等度難聴の聞こえ
中等度難聴に関しては
- 聴力:平均聴力41〜60dB
- 特徴:対面会話も聞きづらくなり、聞き返しが増える。離れたところでの呼び声に気が付きにくくなる
- 備考:日常生活でも、支障が徐々に出てくるレベル
となります。

この辺りから、対面会話でも、聞きにくくなり、聞き返しが増えてきます。
対面会話ですら聞き返しが増えると、離れたところで呼ばれた場合や離れたところの音は、一層、気が付きにくくなります。さらに、複数の方との会話、騒がしいところでの会話は、非常に難しくなります。
この辺りから、日常生活が徐々に苦しくなってきます。耳の治療を行って聴力を改善させたり、補聴器を装用して、聞こえを補わないと、日常生活上での不自由を感じ、苦痛を感じやすくなります。
なお、このくらいの聞こえの場合、仕事や職場では、かなり苦労する方が多く、ご自身のためにも、早々に改善した方が良い難聴になります。
高度難聴の聞こえ
高度難聴に関しては
- 聴力:平均聴力61〜80dB
- 特徴:対面会話は非常にしにくく、離れたところの音は気が付かない
- 備考:日常生活上で大きく支障が出る
となります。

この辺りまで来ますと、日常生活上で大きく支障が出てきます。
対面会話は、耳元で大きく話してわかるレベルですので、まず対面での会話はできない状態です。
さらに、離れたところからの音も気がつく事ができず、後ろから近づいてくるものも理解する事ができません。
対面会話ですら理解できなくなると、騒がしいところでの会話もできませんし、複数の方との会話は、もっと難しくなります。
早々に耳鼻咽喉科で耳の治療をしていただくか、補聴器を装用し、自分の聞こえを補う事が優先されます。
ここまでくると生活に支障が出るレベルではなく、かなり生活がしづらくなります。
重度難聴の聞こえ
重度難聴に関しては
- 聴力:平均聴力81dB以上
- 特徴:ほとんど音が聞こえず
となります。

重度難聴は、聴力低下の中で、最も重い障害レベルになります。ここまで低下するとほとんど音を感じる事ができなくなります。
何も聞こえない事はありませんが、ほとんど聞こえませんので、日常生活は、困るどころではありません。目で内容や物事を理解しない限り、何もできなくなってしまいます。
会話は、音が聞こえないとできないものですし、周囲の音が聞こえなかったら、周囲の状況を理解することもできません。
重度難聴は、そのようなレベルになります。
周囲の音と聴力
さて、さらに耳について理解していきましょう。次は、周囲の音が、どのように感じているかになります。
音が聞こえにくくなった耳では、周囲の音は、どのように感じるのでしょうか。周囲の音量レベルに関しては、おおよそ以下のようになります。こちらの表と自分の平均聴力を比べてみましょう。

見方ですが、平均聴力より大きい数値は、聞こえますが、これよりも小さい数値のものは、聞こえません。さらに、右側にある一般的な感覚レベルがわかる事により、自分自身が、どのくらいの音が、どのように感じているのかも理解できます。
こちらと平均聴力を比較する事で、おおよその聞こえにくさがわかります。
例えば、平均聴力を計算した際の、右耳は、51.25dBでした。この場合、離れたときの会話音が、聞こえないか、非常に小さく聞こえるレベルである事がわかります。
そして、小さな声は、聞こえません。周囲が静かで、お話しする際は、小声になる傾向がありますので、その際は、声が小さく聞こえない事がわかります。
また、51.25dBの場合、一般の人が普通と感じる音量が小さく聞こえるレベルである事もわかります。これにより、どのくらい聞こえにくくなっているのかが理解しやすくなります。
こちらの表と比較する事で、おおよその部分を理解することができます。
なお、音の感覚まで含めた聞こえの理解に関しては、以下の内容をご覧下さい。様々な難聴の聞こえにくさに関して記載してみました。
オージオグラムのまとめ
オージオグラムは、耳の状態を表す図です。こちらの見方がわかれば、医師がおっしゃっている内容もわかりやすくなります。また、数値の意味が理解できれば、自分の耳の状態、体の状態がどのようになっているのかもわかります。
私自身、生まれつきの難聴ですので、オージオグラムの見方だけでなく、音の感覚レベル、音のレベルまで含めて、耳の理解ができるように記載してみました。
聞こえにくい自分自身もそうですが、どのくらい聞こえにくくなったのか、この聴力は、どんな感じなのかが 数値だけではよくわからないためです。
こちらの内容で、少しでも耳に関する理解が進めば幸いです。後、聞こえにくさにお悩みの場合は、早めに改善させるようにしましょう。
聞きにくい状態が長く続いたり、聞きにくさに悩むことが多い状況では、メンタル的にも非常に辛い状態になりがちです。
補聴器は、確かに耳を治す。というレベルにまでは至らないのですが、軽度、中等度難聴くらいであれば、悩みや聞きにくさの7割、8割は、改善できるようになります。
早々に改善できると、悩みが深くなり、深刻化することもなく、何よりもご自身の精神的負担が非常に楽になります。
悩んでいる状態は、ないに越したことはありませんので、早めに改善させることが大切です。