語音明瞭度測定の基礎と行うと理解できる3つの事
語音明瞭度測定とは、音声を聞かせて、どのくらい言葉が理解できるのか、そして、どのくらい音量をあげたら、音声が理解しやすくなるのかを見る測定です。別名、語音弁別能検査とも呼ばれており、どちらも行う事、理解できる事は同じになります。
では、こちらを行うと、具体的に、どのような事がわかるのでしょうか。それは、タイトル通り、3つに集約されます。こちらでは、語音明瞭度測定の基礎から、理解できる事まで、記載していきます。こちらの測定に関して、理解されたい方は、ぜひ、参考にしてみてください。
語音明瞭度測定とは
語音明瞭度測定に関する基本として
- 語音明瞭度測定の基礎
- 語音明瞭度測定の見方
この二つに関して載せていきます。
語音明瞭度測定の基礎
語音明瞭度測定の基礎として
- 概要
- 行う内容
- 行う方法
に分けて記載していきます。
概要
語音明瞭度測定とは、音声がどのくらい理解できるのかを調べる測定です。耳が聞こえにくくなる難聴の中には、音声の理解もしにくくなる感音性難聴というものがあり、それらの方は「音は聞こえるけれどもお話しはわからない」というケースがあります。
そのため、音の聞こえと音声の理解力を別に考える必要があり、別の側面から、耳の理解をするのが、語音明瞭度測定です。
行う内容
様々な単音、あるいは、単語を一定の音量で聞かせ、その正解率で、どのくらい音声が理解できているのかを確認します。
成人の方によく使用されるのは、あ、か、さ、などの一つ、ひとつの単音を聞かせる語音明瞭度測定です。20個の音声を流し、この理解力を調べる作業を1セットとして行います。そして、様々な音量で、どのくらい理解できているのかを確認します。
このようにする事で、音以外の音声の理解力を知る事ができます。
行う方法
語音明瞭度測定は、防音室の中で行われます。
調べるやり方としては
- スピーカーから音声を出して調べる
- ヘッドホンから音声を出して調べる
の二つがあります。
そして、定位置に座ってもらい、
- 聞こえた通りに声に出してもらう
- 聞こえた通りに紙に書いてもらう
のいずれかで、調べます。比較的若い方は、聞こえた通りに紙に書いてもらうケースが多く、何らか紙に書いてもらうのが難しい場合は、聞こえた通りに声に出してもらいます。
紙に書く場合は、このような紙に左から右へ書いてもらいます。
このような方法で、調べるのが、語音明瞭度測定です。
語音明瞭度測定の見方
さて、見方について見ていきましょう。こちらでは
- 見方の基本
- 内容を理解するための基準
に関して、記載していきます。どのようなものもそうですが、測定した内容は、表の見方とその数値の意味を理解する事が重要です。
語音明瞭度測定結果、見方の基本
測定内容を集約すると、このような図になります。
測定後は、このような図を活用します。こちらに記載されている通り、基本は
- 縦軸:正解率
- 横軸:音の強さ
になります。縦軸は高いと高いほど、正解率が高く、結果が良好である事を示します。音の大きさの軸と正解率の軸を組み合わせる事で、どのくらいの音量で、どう理解するかを見る事ができます。
そして、それぞれの記号の意味は、
- ○:ヘッドホンで調べた右耳の値
- ×:ヘッドホンで調べた左耳の値
- ▲:スピーカーで調べた補聴器装用時の値
- △:スピーカーで調べた補聴器なしの値
となります。この中で、補聴器装用時のみ、補聴器ありで
- 両耳装用
- 片耳装用(左のみ、右のみ)
の二つがあります。▲だけ、どのような状態で測ったのかを確認する必要がある事を理解しておきましょう。
また、スピーカーのみ、スピーカーではなく、音場とかかれている場合があります。スピーカーも音場も同じ意味になります。
なお、この他の表の見方としては、以下の通りです。
明瞭度にも正常なラインと許容範囲があります。太い線は、正常な言葉の理解力曲線です。一般的な方は、このような曲線を描きます。そして、それぞれの許容範囲は、細い線になります。
聴力検査にも、基準:0dBがあり、さらに数値の許容範囲があります(-20dB〜20dB)。どのようなものにも、基準と許容範囲があります。
内容を理解するための基準
どのようなものも数値の意味がわからないと、見方がわかったとしても「で?どうなの?」となります。数値の基準ですが
※補聴器フィッティングの考え方を参考に製作
になります。こちらと測定した内容を照らし合わせる事で、様々な事がわかるようになります。
語音明瞭度測定で得られるのは、3つ
長い基本が終わり、さて本編です。語音明瞭度測定を行いますと、得られる事は
- 補聴器の効果の有無
- 今現在の生活環境
- 補聴器を装用して理解できる事
の三つになります。それぞれ
- 1,→ヘッドホンで左右の耳を調べる
- 2,→スピーカーで補聴器なしを調べる
- 3,→スピーカーで補聴器装用時を調べる
を行う事により、理解ができます。
補聴器の効果の有無
初めに内容をまとめますと
- 方法:ヘッドホンで左右の耳を調べる
- 活用:補聴器装用時に効果が出やすい耳か、そうでないかがわかる
- 理解:ヘッドホンで測定した値の最良値が補聴器で出せる最大の効果
- 備考:最良値が低い場合は、他のものも活用しつつ生活を支える
となります。
ヘッドホンで左右の耳を調べた後、測定結果の最良値が、その方の持つ、補聴器効果の最良値になります。この数値が高ければ高いほど、補聴器は合いやすくなります。例えば、上記のものですと、左:90%、右:85%が最良値です。
最良値の基準としては、60%以上が望ましくなります。上記のものを見ていただければわかりますが、60%未満になりますと「日常会話で内容を正確に理解できないことがしばしばある。重要な内容は、確認することやメモの併用が必要」となりますので、会話のみでは、生活がしづらくなります。
補聴器は、単に音を大きくするだけの機械ですので、その方の持つ明瞭度以上の結果を出す事は、基本的に不可能です。耳鼻咽喉科医や補聴器販売店では、予め、ヘッドホンで左右の耳の語音明瞭度を調べ、補聴器の効果が出やすい耳なのか、そうでないかを確認する事があります。一番始めに記載した通り、この測定がある理由は、音が聞こえない事と音が理解できない事は異なるためです。音が聞こえにくいから、音声を理解しにくいのは、その通りですが、音声が理解しにくい理由は、それだけではありません。
語音明瞭度測定は、補聴器が合う耳なのか、そうでない耳なのかの確認をしつつ、どのように生活を支援していけば良いかを考えるツールとしても活用されます。音声が比較的理解しやすいのでしたら、補聴器を活用し、日常生活を送っていただき、理解しにくい場合は、他のものも活用しつつ、日常生活を送っていただく。このように考える事もできるようになります。
今現在の生活環境
初めに内容をまとめますと
- 方法:補聴器なしでスピーカーの語音明瞭度を調べる
- 活用:今現在の日常生活上、どのくらい音声が理解しにくいかがわかる
- 理解:それぞれの音量の正解率と会話音量を比較する
- 備考:補聴器の必要性の有無も理解できる
となります。
補聴器なしの状態でスピーカーを使用し、語音明瞭度を調べると、日常生活上の聞きにくさが可視化できます。日常生活上の聞きにくさを理解するには
- 補聴器なし、スピーカー使用で明瞭度を調べる
- 明瞭度の数値の意味を知る
- 会話の音量を知る
の三つが必要です。1と2は、既に上記に記載していますので、残りの会話の音量について見ていきましょう。
こちらが日常生活上の主な音量表です。会話の部分は、わかりやすく色を付けてみました。それぞれの音量の正解率と会話音量を比較すれば、日常生活上、どのくらい聞きにくいのか、その方は、どのような生活環境なのかが理解できるようになります。
例えば、上記の表があったとしましょう。こちらは、補聴器を使用していない状態の測定結果です。50dBは、離れた時の会話音(3m)でした。その情報と上記の表を見比べますと、0%となり、離れた時の会話音では、理解できない事がわかります。
そして、60dBは、通常の会話音の音量です。表の中では、15%ととなり「聴覚はコミュニケーションの補助手段として有用。聴覚のみの会話理解は、不可能」である事がわかります。
さらに、70dBは、大きめの会話(1m)となります。その音量では、70%の理解力となり「家庭の日常会話は、聴覚のみで理解可能。普通の会話はほとんど理解可能であるが不慣れな話題では正確な理解に注意の集中が必要」である事がわかります。
これらの事がわかると、ある程度、その方の生活環境がわかります。まず、離れたときの会話はほぼ無理ですので、呼びかけに気が付かない事がわかります。そして、通常の会話音量で理解ができないとなると、たびたび聞き返し、お話しがしづらい事もわかります。聞き返した時に、相手の方が話しの音量を大きくして、やっと聞こえるレベルになりますので、相当、コミュニケーションが取りづらい環境である事が、想像できます。
この環境下では、本人もそうですが、周りの方も大きい声で話さないと通じませんので、両者ともに疲弊しやすい環境である事もわかります。
このように、数値で理解すれば、日常生活上、どのような状況なのかは、可視化する事ができます。
補聴器を装用して理解できる事
初めに内容をまとめますと
- 方法:補聴器ありでスピーカーの語音明瞭度を調べる
- 活用:補聴器を装用した状態で、どのくらい理解できているかを確認できる
- 理解:それぞれの音量の正解率と会話音量を比較する
- 備考:補聴器装用時の効果確認として利用される
“今現在の生活環境”の延長線上にありますが、補聴器を装用した状態で、確認すれば、どのくらい理解できているのかを可視化する事もできます。
例えば上記の内容があったとしますと、40dBという小さい声に該当する音量で、60%になり「家庭の日常会話は、聴覚のみで理解可能。普通の会話はほとんど理解可能であるが不慣れな話題では正確な理解に注意の集中が必要」である事がわかります。
そして、50dBは、離れた所の会話(3m)に該当する内容であり、この数値は、80%です。こちらは「補聴器の効果が十分見込まれる。静かな状況であれば、聴覚のみで容易に内容を理解可能」となります。それ以上の音量は、90%となり、補聴器の効果が十分見込まれ、さらに発揮されている事もわかります。
補聴器を装用した状態で測定するとこのような事もわかります。
こちらは、耳鼻咽喉科、補聴器販売店でも行われています。
語音明瞭度測定の注意事項
最後にこの測定の注意事項に関して載せていきます。この測定ですが、二つ注意点があります。それは
- 補聴器は、限界以上にはできない
- 数値はあくまでも仮の内容
の二つです。
補聴器は、限界以上にはできない
こちらは
- 補聴器を装用して理解できる事
に該当する内容ですが、「補聴器の効果の有無」であった補聴器の効果で、低い数値がでていた場合、この数値以上には、補聴器ではできません。その限界値より、補聴器が上回る事は、基本的にできない事となります。
最良値が40%であれば、補聴器を装用しても40%付近までしか出せませんし、最良値が90%まである場合は、90%付近まで効果を出す事ができます。あくまでも、耳の状態により、大きく異なりますので、この点は、ご注意ください。
なお、この点は、測定すれば、自分自身の限界値付近までしっかり補聴器で補えているのかを理解できるという事でもあります。このようにも、活用できます。
数値はあくまでも仮の内容
こちらは
- 今現在の生活環境
- 補聴器を装用して理解できる事
の二つに該当します。この測定は、あくまでも静かな状態で「これからテストする」と理解している状態で行い、このような結果になっています。日々の日常生活上では、大きい音に邪魔されたり、部屋の環境、人の話す会話のスピードなどにより、大きく理解度が変化します。
そのため、あくまでも仮の数値として見ると理解しやすくなります。この数値より良くなる事はあまりありませんが、実際には、上記の数値より、10%ほど、差し引いて理解すると状況がわかりやすくなります。
これらの点には、ご注意ください。
語音明瞭度測定のまとめ
さて、まとめです。語音明瞭度測定は、どのようにやるかにより、測定を通して理解できる事が異なります。やり方によって、ある程度、日常生活上の聞きにくさも可視化できますし、補聴器を装用した時の効果も可視化ができます。そのような測定が、語音明瞭度測定です。
これらの事で、語音明瞭度測定に関し、少しでも理解が進む事、耳に関する理解が進めば幸いです。