【改善解説】20代・女性、感音性難聴で高い音が聞こえない方を補聴器で改善
こちらでは、実際のお客様のデータを使って、どのように聞こえを改善していったのか。その解説を行っていきます。
今回のケースは、20代の女性、両耳とも生まれつきの感音性難聴で、主に職場で聞きにくさを感じていた方となります。
その事から、ご相談いただき、改善していく事になるのですが、その結果
- 職場での会話は、だいぶしやすくなった
- 会議の際も、聞きやすくなり、重宝するようになった
- 趣味の山登りの時でも、鳥の声が聞こえるようになった
との事でした。
では、どのように聞こえを改善していったのでしょうか。その点に関して、ポイントとなる部分をまとめていきます。
お客様の状況
まず、お客様の状態ですが、
- 名前:H・Sさん
- 年齢:20代
- 性別:女性
- 症状:生まれつきの感音性難聴(両耳)
- 聴力:軽・中等度難聴(高音漸傾型)
- 備考:耳鳴りが左右であり
となります。
聴力としては、低い音から、1000Hzぐらいまでは、まだ聞こえており、それ以上高い音になると、急に聞きにくくなる状態です。
聞こえの状況としては、このようになります。一般的な人が聞こえている範囲は、0〜10dB、正常の聞こえの範囲は、0〜25dBになります。そこからすると、低い音は、正常の範囲に近いのですが、音が高くなるにつれ、聞こえづらさが強くなっています。
耳の状態に関しては、生まれつきの難聴で、学生の頃から、少し聞こえづらさはあったものの、なんとか過ごせましたが、社会人になり、会議の際や人とお話する際に聞こえづらさを感じるようになってきました。
実は聞こえづらさを感じた際に補聴器については一度、試してみたことがあるのですが、高い音がキツく感じる割に聞こえもそんなに良くならず、その際は、断念されました。
そこから数年後、いよいよさらに困ってきた時にこちらにお越しになりました。知人からのご紹介で、もし現状をより良くできるのであれば考えたい。とのことでした。
という事で、この状況を改善していきます。
聞こえの改善案
さて、ここから聞こえの改善案について記載していきます。ちょっと難しいお話が入ってしまうのですが、なるべくわかりやすく記載していきます。
H・Sさんの耳の状況
まずは、耳の状況からです。H・Sさんのような高い音が聞こえにくくなっている方が主に困りやすくなってしまうのは、上記の4つの部分です。
対面でのお話は、わかる傾向はあるけれども、距離が離れたり、騒がしいところでのお話、周りの人とお話する際も距離が離れたり、声が小さい人がいると急にわかりづらくなってしまうことです。
高い音が聞こえにくくなってくると音声の明瞭性、音声がふわっと感じやすく(ふにゃっとした感覚)、はっきり聞こえる感覚が薄くなります。
そうなると、声が小さい方やはっきり話さない人、さらには、距離が離れたりすると急に音はわかるけれども何をいっているのかわからない。という感覚が強くなってしまいます。
ですので、その低下してしまった部分を重点に補うようにし、なるべく改善できるようにしていくことが大切になります。
どう聞こえを補うか
さて、ここからは、どう聞こえを補うか。という具体的な内容について記載していきます。
補聴器による効果は、どのぐらい低下している耳に対し、音を補えたか、によって決まることが大半ですので、ちょっと難しいのですが、ここについて記載していきます。
こちらでは、補聴器を装用した状態を可視化することができる音場閾値測定(おんじょういきち測定)というもので表現していきます。
さて、結論からお伝えしていきますと、H・Sさんの場合は、このぐらいまで補えるようになると良いです。
このようにすると数値の意味は、もう少しわかりやすくなるかと思います。正常の人の範囲が0〜25dBまでになりますので、そこには及ばないのですが、そこに近くなるように改善していきます。
その際、大事になるのは、500〜2000Hzの部分です。ここは、音声が影響しやすい部分になりますので、できれば30〜35dBまで改善できると、少し小さい声の方から、離れたところからの呼びかけ、お話。これらの部分を理解しやすくなります。
ですので、できるのであれば目標値ぐらいまで改善したいところです。
そして、高い音の部分に関しては、できれば、40dBまで改善できると良いです。この部分まで改善できると周りのアラーム系の音、さらに音声の明瞭性。離れたところからの呼びかけ。こういった所の聞きやすさを上げやすくなります。
特に高い音が全然、聞こえていない状態になりますので、しっかり補って、ちゃんと周りの状況がわかるようになると「何か鳴っているのに気がつかない」という事を大幅に減らせます。
ただ、聴力低下が大きい部分がありますので、できる範囲で、行っていく事が大事です。それを加味すると、上記ぐらいの改善ができると良い状態になります。
なお、一つ注意点として、特にこのような聴力の場合、低下している高い音を中心的に入れることが多く、異質な感覚を感じやすい傾向があります。
その場合は、どの周波数を一度に全体的に上げるのではなく、優先順位を決めて改善していくと良いです。
例えば、初めは、聞こえの改善に重要な500〜2000Hzを中心的に改善していき
高い音の部分は、使える範囲内に抑える。などです。
優先順位を考えた場合、高い音は、使用を妨げるくらいなら、少し落とし、まずは、使用できる状態にしていき、補聴器の音に慣れながら、徐々に改善していく。というのも改善に関する考え方の一つです。
仮に使っていてきつい場合、高い音の部分は、厳密に言いますと、1500Hzより先。この場合は、2000Hzあたりから、下げられると、ベストです。
特に2000Hzは、ご自身の声の感覚や金属的な音、補聴器の機械的な感覚を抑えるのに、役に立ちます。※下げすぎに注意です。
聞こえの改善的にいうのでしたら、本来は、抑えてしまうと、音声も聞きづらくなってしまいますので、すべき事ではありません。
しかし、高い音が入って辛い。という場合は、初めは、少し抑え、補聴器の音に慣れてきた後に、徐々に改善していく。というようにし、補聴器の効果を出しやすくしつつ、少しずつ慣れさせて入れられる量を増やせると良いです。
大事なのは、補聴器を買う。という観点ではなく、どうやって自分の聞こえを改善していくか。という観点ですね。
目的は、補聴器を得ることではなく、聞こえを改善し、ご自身の生活をより良くする事だからです。
合う補聴器の形
最後は、合う補聴器の形です。
補聴器には、今現在、耳にかけて使用するタイプの耳かけ形補聴器と耳の穴の中に入れて使う耳あな形補聴器があります。
これらの補聴器の形は、聴力ごとに使えるか。使えないかがあり、高い音が低下している方に関しては、良くも悪くも全ての形のものが使えます。
この中で選択肢を絞るとしたら、
- 耳かけ形補聴器なら、RIC補聴器
- 耳あな形補聴器なら、CIC補聴器
の2つです。
まず、このような聞こえの場合、低い音の聞こえが良い状態になりますので、補聴器を装用した時に自分の声が大きく聞こえたり、こもって聞こえたり、閉塞感を感じやすくなります。
この感覚は、125〜500Hzの間が、60dBの範囲内で聞こえていると起こりやすく、聞こえていればいるほど、その感覚は、強くなります。
ですので、その感覚は、なるべく軽減できると良いのですが、それが、上記で紹介した
- 耳かけ形補聴器なら、RIC補聴器
- 耳あな形補聴器なら、CIC補聴器
の2つです。
補聴器は、どれを使えば良いか。というより、自分の聴力の場合、補聴器を使う際、どんな事が起こりやすいのか。を知り、それを避けられるものを使った方が、使いやすさ、そして、聞こえの改善に繋げやすくなります。
実際にお店でした事
さて、ここからは、実際にお店でしたことになります。
- 初回のご相談
- 補聴器の選定
- 補聴器の調整と最終調整
の三つに分けていきます。
初回のご相談
初回のご相談時は、耳の状態を調べさせていただき、耳の状況に関して、お伺いしました。
その後、補聴器に関して、説明させていただき、補聴器の試聴も行なっていくことになります。
その際に使ったのは、このようなRIC補聴器。というタイプです。
そして、初めの状態ですが、H・Sさんに音の感覚(音の大きさ、強さなど)を伺いながら、使える範囲を目指していきました。
H・Sさんの場合は、赤い▲の部分まで補えていると良い状態なのですが、以外にも、高い音以外は、それなりに良い状態です。
そして補聴器の聞こえに関しては、そこまで辛い感覚はなく、使用できる範囲。とのことでした。
補聴器には、自分自身で自由に音量を変えられるボリュームという機能があります。何かがあった時用のために、ボリュームを設定し、ご自身で音量を調整できるようにしていきます。
このようにして、まずは、使用できるのか、どのくらい改善されるのか、ひとまず、やってみることになります。
幾日か貸出し、使用していただくと
- 社内ではだいぶ聞きやすさが上がった
- 会議の際もある事で、聞きやすくなった
- ただ、聞きにくい人は、相変わらず、聞きにくい部分もある
との事でした。
補聴器に関しては、聞こえの改善に繋がるなら考えたいものの、どうしても以前、試した感覚が残ってしまっており、消極的な状況でした。
特に高い音がきつく、とても使える様子がなかった事。無理して使っても、思うように改善できなかったためです。
その事から、使いやすい状態にして、まず貸出させていただいたのですが、その結果、補聴器がある事により、だいぶ社内での人の声は、わかりやすくなり、かつ、ご自身がどれだけ聞こえていないのかを自覚する事になったようでした。
距離が離れると急に聞きにくさが出たり、声がはっきりせず、薄く聞こえる感覚になってしまうのですが、それも補聴器を使う事で、より良くなったようで、会議での会話、お話も改善されやすくなったとの事でした。
その事から、補聴器の形状選定と聞こえの改善をより行っていく事になります。
補聴器の選定
補聴器で聞こえを改善していくと同時に、どのような補聴器が良いか。こちらを選んでいく事になります。
上記の通り、聴力の状態から、使えると良いのは、
- 耳かけ形補聴器なら、RIC補聴器
- 耳あな形補聴器なら、CIC補聴器
の2つです。
耳かけ形補聴器の特徴は、上にかけることにより、耳を閉塞した感覚や自分の声の不快感。これを軽減しやすい事です。
逆に欠点は、耳の上に補聴器が乗っていますので、メガネやマスクの邪魔になる事に繋がりやすく、電話に関しては、上にづらして行う必要があります。
耳あな形補聴器は、全て逆で、耳の中に入っていることにより、メガネやマスクの邪魔にならず、電話もそのまま行えます。
ただ、耳を塞ぎますので、それによる自分の声の不快感、声の大きさ、閉塞感を感じやすくなります。
結果からお話ししますと、H・Sさんの場合は、CIC補聴器が良い。という事で、こちらにしました。
決め手は、実際に使ってみて、小さく小型で目立ちにくく、使いやすい形状だったためです。
補聴器の調整と最終調整
さて、調整に話が戻ります。今度は、耳あな形補聴器で、改善をしていきます。
CIC補聴器で改善していくのですが、初めに調整した状態は、このような状態でした。
ここから、左右のバランスも少しずつ確認し、より良い状態になるよう補聴器の調整に関して煮詰めていく事になります。
H・Sさんの場合、初め高い音に関して、きつい感覚がありました。その事から、補聴器の音に慣れる事から初め、徐々に音を入れられるようになり、このぐらいまで改善。
そして、さらに少し調整し、最終的には、このくらいまで改善しました。音に慣れてきた事もあり、このくらい音を入れても、補聴器に関しては、大丈夫なようになってきました。
目標の部分からすると、それなりに達成できている状態です。この状態でも、音量を特に下げることはせず、使用できる。という状況も確認した上で、このようになりました。
補聴器の音に徐々に慣れていただきながら、聞こえを改善し、少し時間はかかりましたが、このようにして聞こえを改善していきました。
お客様の改善と声
- 種類:CIC補聴器(小型の耳あな形補聴器)
- 金額:360,000円(税込)
- 備考:両耳にCIC補聴器をつけ、改善
ご相談される前は、どのような事でお悩みでしたか?
実際に補聴器をお使いになってみて、いかがでしょうか?
このお店で相談(購入)されたのは、なぜでしょうか?
実際のアンケート
アンケートにご協力いただき、誠にありがとうございます。
まとめ
さて、まとめになります。
聞こえを改善する上で大事になってくるのは、上記の通り、聞こえの補い方(補聴器をつける耳)、補聴器の形状、補聴器の調整。この3つが大事になります。ですので、この3つを押さえていけると良いです。
加えてH・Sさんに関しては、元々、高い音がきつく感じていた事から、初めから無理に改善させるのではなく、聞こえの改善に優先順位をつけ、その後、弱いところを徐々に改善していく。このような方法で、改善をしていきました。
補聴器に慣れてきた頃から、音は、徐々に入れられるようになってきましたので、その後に、今まで不慣れだった高い音に関しては、改善しています。
実際に聞きにくさを改善していく上では、ご自身にとって、都合の良い音にする。というよりも、聞きにくさを改善する上で、必要な音をどのように入れていくか。を考えた方が、最終的な聞きにくさは、改善しやすくなります。
その結果、補聴器で改善できるところを改善しやすくなり、さらに、コミュニケーションの行き違いを少なくする事や、聞こえも、今まで以上に良くする事ができました。
より良く生活できるようになる事に貢献する事ができ、こちらとしては、本当に何よりです。
もし、同じような聞こえの方でお悩みの方がいらっしゃいましたら、こちらの内容を参考にしていただければと思います。
最後まで、ご覧いただきまして、ありがとうございました。