突発性難聴の事例

【改善解説】突発性難聴により、片耳のみ難聴の方、クロス補聴器で改善

深井 順一|パートナーズ補聴器

補聴器で生活をより良くしていくための内容は、【FAQ】補聴器で生活をより良くするために、へどうぞ。また、個々の症状(症例)ごとの改善を知りたい方は、お客様の聞こえの改善事例へどうぞ。

こちらでは、実際のお客様のデータを使って、どのように聞こえを改善していったのか。その解説を行なっていきます。

今回のケースは、50代の女性の方で、突発性難聴により、片耳のみ全く聞こえなくなってしまった方となります。

こちらの方をお店でご相談させていただくことになるのですが、ご相談の結果

  • 聞こえない耳側からも聞こえやすくなった
  • 仕事の時は、あると聞きやすく、安心もできる
  • クロス補聴器を使うことで、聞こえない事による不安がかなり軽減した

との事でした。

聞きにくくなり、治らないと感じた時は、だいぶ落ち込んだご様子もあったようですが、今現在の状況をより良くすることに貢献でき、こちらとしては、本当に何よりです。

では、どのように聞こえを改善していったのか。その点に関して、そのポイントとなる部分をまとめていきます。

お客様の状態

まず、お客様の状況ですが、

  • お名前:Y・Kさん
  • 性別:女性
  • 年齢:50代
  • 聴力:片耳のみ全く聞こえず(片耳難聴)
  • 症状:突発性難聴により、失聴
  • 備考:治療を行うものの、残念ながら治らず

となります。

こちらが聴力です。左側は、若干、下がっている部分もありますが、ほぼ許容範囲内になります。

聴力は、このようになります。左耳は、聞こえているのですが、右耳は、全く聞こえない状態です。

一般の人が聞こえている音の範囲は、0〜10dB。正常の範囲は、0〜25dBになります。そこから下がると下がるほど、聞こえにくさは強くなります。

元々は、両方とも聞こえていたのですが、7年ほど前に突発性難聴になってしまい、その後、右側は完全に聞きにくくなってしまいました。

発症後、病院に行くものの、治療は残念ながらできず、漢方や鍼治療なども行うものの、全く効果は出ず、聞きにくいままになってしまったご様子でした。

聞こえなくなった後は、右側から話されたり、ミーティングや会議など、囲んで話をする際に右側から話されると、わかりづらい状況になり、そういった機会が多くなると精神的にもきつくなってしまう事が増えてきてしまったようです。

ご自身が聞こえる側をキープできると良いのですが、なかなかそういった機会ばかりではなく、会議などは、どうしても、座る位置が決められるケースもあります。

その際のストレスの負荷、「聞きにくい側だな。どうしようか……」という不安。その点は、だいぶ強く出てしまう事もあったようで、そういった悩みを抱えている方は、少なくありません。

前職で聞きにくさを感じていたため、新しく就職する際、なるべく聞こえを改善し、より良いスタートを切るために聞こえを改善したい。との事で、この現状をよりよくしていきます。

聞こえの改善案

さて、こちらでは、聞こえの改善案ということで

  • Y・Kさんの耳の状況
  • 聞こえをどう改善していく良いか

の2つに分けて記載していきます。

Y・Kさんの耳の状況

改めて記載していきたいのは、耳の状況になります。片側の耳が全く聞こえない場合、主にこのような状況になりやすくなります。

ポイントは、

  • 聞こえない耳側から話されるとよくわからない事がある
  • 音の方向感覚を掴む事ができない

の2つです。

片方のみ聞こえていれば、だいたい聞こえていそうなイメージがありますが、そんなことはなく、特に距離が離れたり、声が小さい人が聞きにくい側にいたりすると、急に聞きづらくなります。

ですので、離れたところからの呼びかけ、そして、騒がしい中でのお話(聞こえにくい側の人)、会議やミーティングなどの複数の人とのお話(聞こえにくい側の人)、このような環境では、困ることもしばしば出てきます。

その事から、聞こえる耳側を軸にして、聞こえる耳側に人を集めたり、食事などの席では、人が聞こえる耳側にいられるようにしたりなど、工夫されている方も見受けられます。

このように聞こえているところと聞こえにくいところがかなりはっきり分かれる傾向があります。ご自宅の中などはほとんど困らないことが多いのですが、仕事や人との会話、シチュエーションにより、困ることが多々出てきます。

なお、音の方向感覚は、両方の耳が聞こえないとわからないことになりますので、片方のみ難聴の方は、わかりません。ですので、大きな音がした際に自分だけ違う方向へ向く(聞こえる耳側を向く、聞こえる耳側から音が来たと錯覚する)ということが起こります。

片方だけ聞こえていれば問題なく聞こえるようなイメージがありますが、人の耳は、両方あって初めて機能するようになっていますので、片方が聞こえにくくなるだけでも、だいぶ困る要素が出てきます。

聞こえをどう改善していくと良いのか

聞こえを改善する際の注意点ですが、片方の耳が全く音を感じていない場合、補聴器を装用したとしても、聞こえの改善効果は、ほとんど得られないことが大半です。

Y・Kさんの場合も、改めてお店で聴力を調べさせていただいた際、左側は、もちろん聞こえるが、右側は、音というより、振動しか感じない。という状況でした。

音が聞こえる。聞こえている音の音色、音の高さがわかる。というよりも、音が強くなる事で、鼓膜がブルブル震える振動の感覚しか感じない。という状況です。

このような場合、実は、補聴器を装用して聞こえを改善しようとしても、ほとんど効果を得られません。

補聴器は、どのような聞こえの方でも改善でき、かつ、一定の効果を出せる。ということはありません。

聴力低下が70dBを超える頃から聞こえの改善効果は徐々に下がりはじめ、90dB、100dBぐらいになると、補聴器をつけたとしても、聞こえるような感覚は、あまり感じなくなってきます。※片耳難聴の場合

ですので、このような聞こえの方の場合は「補聴器は合わない」「補聴器では聞こえを改善できない」という状況になりがちです。

そのような耳の方には、今現在、クロス補聴器という改善方法があります。

クロス補聴器というのは、聞こえる耳側には、補聴器をつけ、聞こえない耳側にクロス。と呼ばれる音の転送機器をつけます。

その事により、聞こえない耳側につけたクロスに入った音が聞こえる耳側の補聴器に転送され、聞こえにくい耳側からの音を聞こえさせる補聴器です。

今現在は、このような機器で、少しずつですが、聞こえの改善ができるようになってきました。

ここで大事なのは、聴力低下が大きすぎると、低下した耳側に補聴器を装用しても、聞こえの改善に繋がらない。という事です。

そして、そのような場合は、クロス補聴器を使った方が、聞こえの改善に貢献しやすくなります。

実際のご対応

初回のご対応及び、クロス補聴器の試聴

はじめにご来店いただいた際は、お持ちの聴力図(オージオグラム)や耳の状況、現状に関して、お伺いさせていただきました。

そこから、上記に記載した聞こえの改善案の通り、お伝えしました。

こちらに来られたのも、同じような聴力の方が改善されているご様子をみて、自分の状態もよりよくなるのではないか。もし、改善されるのであれば、考えたい。との事で、実際にクロス補聴器に関して、試してみることになります。

ご相談したのち、試聴をしたのは、こちらになります。今現在、クロス補聴器に関しては、主流のタイプで、耳にかけるタイプのクロスになります。

クロス補聴器には、自由に自分で音をある程度、調整する設定があります。それを設定し、活用しやすくしてみました。

補聴器の設定は、ある程度、自由にご自身で音量調節できるようにできますので、こちらを設定し、貸出しました。

1週間ほど、日常生活上で試していただくと

  • 聞こえない側から聞こえる感覚がわかる
  • 騒がしいところでは、少し聞きにくくなるものの、あると安心する

との事でした。

このブログ内の内容をご覧いただき、クロス補聴器で改善されているケースは、みてはいるけれども、どんな補聴器なのか。それに関しては、だいぶ不安を感じていたようでした。

実際にクロス補聴器を日常生活上、そして、職場で使っていただくと「聞きにくい側からの音が聞こえる感覚を久々に感じる事ができた」との事でした。

今までは、どうしても聞こえない側にいる人の声が聞きづらく、場合によっては、すぐ隣にいるのに気がつかない。という事もあったようでした。しかし、そういったものは、わかりやすくなり、気付く頻度は、だいぶ増えた。との事でした。

また、会議の際なども、どうしても席に関して考える必要があるのですが、そこも今までよりは苦手意識はなくなってきたようです。

騒がしいところでの聞こえは、少し聞きにくくなるものの、補聴器があることによって不安に感じる部分も減り、あると安心感もある。との事でした。

そのため、どのクロス補聴器にするのか。それを決めていくことになります。

クロス補聴器の選択肢

クロス補聴器に関しては、今現在、耳あな形のタイプと耳かけ形のタイプがあります。

そして、今現在の主流は耳にかけて使う耳かけ形タイプになります。

このような耳の中に入れて使用するタイプのクロス補聴器もあるのですが、

耳あな使用のイメージ。聞こえる耳側もこのように塞いでしまうため、どうしても、聞こえる耳側からの音が聞きにくくなりやすいです。そのため、あまりオススメしません。

聞こえる耳側まで、上記のように塞いでしまい、聞こえる耳側から来る音が聞こえなくなってしまうためです。

耳かけ形のタイプは、上記の通り、穴が空いた耳せんを使う事により、

聞こえる耳側も、聞こえない耳側も聞こえるようにできるのですが、耳あな形のタイプだけは、それができません。

その事から、今現在は耳かけ形タイプを使って、聞こえの改善をしていくのが基本です。

耳かけ形のタイプは、大きく分けて2つあり、小型タイプと標準タイプがあります。

小型のタイプで目立ちにくく、かつ使用するのが楽なタイプと少し形状が大きくなるけれども、電池の持ちが良いタイプの2つです。

こちらに関しては、使いやすさを重視され、小型タイプで決定となりました。

こちらで、聞こえの改善に関しては、終わりになります。

お客様の改善と評価

  • 種類:クロス補聴器(小型の耳かけ形タイプ)
  • 金額:452,600円(税込)
  • 備考:低下耳側に効果が見られないため、クロス補聴器で改善

どの様な事でお悩みでしたか

実際に補聴器をお使いになってみていかがでしょうか

このお店で、ご相談(購入)になったのは、なぜでしょうか

実際のアンケート

アンケートにご協力いただきまして、ありがとうございます。

突発性難聴になってしまい、さらに聞こえにくくいことにより、だいぶ困る事が増えてきてしまった。ということで、ご対応させていただいたのですが、現状をより良くすることに貢献でき、こちらとしては、本当に何よりでした。

片耳のみ難聴。と聞くとたまに「片側が聞こえているから困らない」というようなケースも聞くのですが、そのようなことは、なく、片耳が聞こえにくいことでも、だいぶ困る事が増えてきます。

特に聞こえにくい側から話されたり、距離が離れたりするとびっくりするぐらい気がつかない事がありますので、その事により、周りの方から誤解を受けやすい傾向も感じています。

音は聞こえないと反応できないので仕方がないのですが、その性質と近くであれば、ほぼ問題なく聞こえている性質。これが合わさり、人間関係そのものが悪くなりやすかったり、誤解により、ヒビが入ってしまう。そういった方もいました。

そのような方々を見てきましたので、私の方では、できる限りのことをさせていただき、聞きにくさ、困っている部分、さらに聞こえを改善する事によって、誤解されにくくする事。このような生活そのものに関して、なるべく良くなるようにご対応させていただきました。

その結果、Y・Kさんの場合は、新しく就職も決まったようで、本当に何よりです。

現状の改善に貢献させていただけた事、こちらこそ感謝しております。本当にありがとうございました。

まとめ

こちらでは、片耳のみ難聴で、さらに片方の耳が全く聞こえないぐらいにまで低下してしまった方の改善解説について、記載させていただきました。

このような聞こえの場合、一般的な補聴器では効果はほとんど出ず、仮にその耳に補聴器を使っても、まるで聞こえている感覚がありません。その事から、聞こえない耳側を改善するのではなく、聞こえる耳側で音を感じるように、考え方を変える必要があります。

聞こえない耳側を補聴器で改善できるのであれば、その耳をそのまま改善していければ良いのですが、耳の状況によっては、それができないケースもあります。

今回は、それができなかったケースになるのですが、そういった方の場合は、クロス補聴器でなるべく改善できるようにして、聞きにくさをなくしていけると良いです。

もし、同じような聞こえの方でお悩みの方がいらっしゃいましたら、参考にしていただければ幸いです。

最後まで、ご覧いただきまして、ありがとうございました。

ABOUT ME
深井 順一|パートナーズ補聴器
深井 順一|パートナーズ補聴器
使っている人が対応している補聴器専門店・代表
1986年、7月1日生まれ。生まれつきの難聴者で小学2年生の頃から補聴器を使っています。私にとって補聴器とは、難聴の方の生活を支える道具です。この店では、生活を支えられる補聴器を提供したり、支えられるサービスを提供しています。

お店のご紹介

初めまして、パートナーズ補聴器の深井と申します。

このお店は、生まれつき難聴で補聴器を使っている人が対応している補聴器専門店です。

補聴器とは、難聴の方の生活を支える道具である。という考えから、生活を支えられる補聴器を提供したり、支えられるサービスを提供しています。

お店の詳細は、以下のページへどうぞ。

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