耳のラウドネスパターンと調整で注意したい耳の状況
補聴器が、どのように聞こえにくさを改善しようとしているのか。は、わかると、結構、補聴器は、面白かったりします。
前回は、どのように聞こえを改善している?という事で、聞こえる音の範囲に合わせて、聞こえを改善しているよ。とお話ししました。
この聞こえる音の範囲。ラウドネスともいいますが、これには、いくつかのパターンがあります。
中には、ちょっとこのパターンで気をつけなければならない事もありますので、その点も含めて、今回は、記載していきます。
耳のラウドネスパターン
耳のラウドネスパターンというのは、私が今、作った造語になってしまうのですが、この点は、どんな耳の聞こえの範囲をしているのか。
そのパターンになります。
正常な耳の場合は、こんな感じですね。0〜10dBで聞こえ、そして、95〜100dBになると、音が辛くなる。それが、一般的な耳の状態です。
難聴の耳には、いくつか種類があり、こちらで記載していくのは、
- 一般的な感音性難聴のラウドネス
- 伝音性難聴のラウドネス
- ちょっと特殊なケースのラウドネス
の3つを記載していきます。
※厳密には、混合性難聴のラウドネスもあるのですが、これは、(伝音+感音)÷2のようなものなので、割愛します。(割愛する理由は、のちに触れます)
一般的な感音性難聴のラウドネス
前回記載したのが、この一般的な感音性難聴のラウドネスになります。
仮に聴力が50dBだとすると、こんな感じですね。50dBから聞こえはじめ、100dB〜105dBぐらいで、音が辛くなってしまいます。
この聞こえの範囲は、正常な聴力と比較すると、小さい音の部分は、聞こえにくくなっているものの、音の上限。辛くなってしまう音の大きさは、ほとんど変わっていません。
つまり感音性難聴は、この聞こえる音の範囲が狭くなる難聴。という事になります。
小さい音は、聞こえづらくなっているものの、大きい音は、依然として聞こえている。という状況ですね。
ですので、補聴器で聞こえを改善する場合、この聞こえている音の範囲に合わせて、それぞれの音の大きさレベルごとに調整し、小さい音は、わかるようにして、大きい音は、あまり大きくしない(聞こえているため)。
このような、それぞれの音の大きさ別にちょうど良いように聞こえを改善するようにします。
伝音性難聴のラウドネス
耳の状況の中には、伝音性難聴。というものもあります。
難聴になる経緯は、いくつもあるものの、基本的な難聴の種類は、
- 感音性難聴
- 伝音性難聴
の2つがあります。
中には、一つの耳に感音性難聴と伝音性難聴を発症し、混合性難聴になるケースもありますが、この2つが基本的な難聴になります。
この2つの難聴は、実は、聞こえる音の範囲が異なるんですね。
補聴器は、聞こえる音の範囲に合わせて、聞こえを改善しているため、これが異なるということは、感音性難聴の場合と伝音性難聴の場合の、聞こえの改善は、異なることを意味します。
まず、伝音性難聴の聞こえる音の範囲。ラウドネスについて見てみますと、このような状態です。
難しい字が入ってしまって申し訳ないのですが、気骨導差というのは、気導聴力と骨導聴力の差になります。
気導というのは、ヘッドホンで調べた時の数値で
骨導というのは、骨を伝って聞こえを調べた時の数値ですね。
この差が大きいと大きいほど、その分の数値が下にシフトするイメージです。
正常の方と比べるとわかりやすいですかね。小さい音が聞こえにくくなっている分、聞こえている音の範囲は、そのままにして下にシフトしている状態ですね。
感音性難聴と大きく異なるのは、そのまま下にシフトしている事です。伝音性難聴の場合、ただ単に聞こえにくくなっているため、聞こえる音の範囲は、ほとんど変わっていないんですね。
この聞こえる音の範囲は、ほとんど変わっていない。というところが、伝音性難聴の最大のポイントです。
ですので、補聴器で聞こえを改善する場合、こんな感じにどの音の入力も、同じ音の量を入れます。
ちょっとイメージしにくいかもしれませんが、伝音性難聴は聞こえる音の範囲が変わっていないので、小さい音も普通の音も大きい音も聞こえづらい状態です。※理論上のお話となります。
感音性難聴の場合は、その人にとっての小さい音が聞こえづらい状態でしたよね。ここが異なります。
ですので、小さい音も普通くらいの音も大きい音も同じだけ大きくし、どの音もしっかりと聞こえるように改善します。これが大きな違いです。
なお、実際には、完全な伝音性難聴を補聴器で改善するケースは、かなり少なく、補聴器を使うケースは、混合性難聴(伝音+感音の症状)の方が多くなります。
ですので、音が聞こえる範囲は、もうちょっと狭くなる傾向があります。
特殊なケースのラウドネス
特殊なケースのラウドネスとは、主に一部の感音性難聴の方の特殊なパターンですね。
仮に聴力が50dBだとすると、このような状態です。
50dBぐらいの場合、一般的な感覚としては、100dBから105dBぐらいになると音が辛く感じてしまうのですが、こちらのケースは、それよりも低い数値で音が辛くなってしまうケースです。
そのようなケースは、このように聞こえている音の範囲が狭いんですね。
正常の人のラウドネスパターンと比較すると、こんな感じですね。小さい音も聞こえにくくなり、不思議な事に大きい音の許容範囲すらも狭くなっていますね。
耳の状況によっては、こういった方もいます。
こんな状況を補聴器はどう改善するか。と言いますと、こんな風に改善します。
小さい音は、聞こえないので改善するけれども、大きい音の許容範囲は、狭くなっているので、強い音の制限をより強くし、大きい音の出力も控えめにする。
まさにこの聞こえている音の範囲に合わせて、小さい音の出力、普通の音の出力、大きい音の出力を変化させ、聞こえは、改善するけれども、なるべく音が辛くならないようにする。という事を補聴器は、しようとしてくれるんですね。
今回、パターンとして、3つ載せましたが、どのケースも共通しているのは、聞こえている音の範囲に合わせて、補聴器は、聞こえを柔軟に改善している。という事ですね。
それをするために、それぞれの音の大きさ別に調整できるようにして、どのような難聴の方でも、改善できるようにしています。
特殊なパターンでやって欲しいこと
補足として、このようなケースの場合、大きい音の部分。不快閾値測定というもので、ちゃんとそこの部分を調べてあげる事が大事です。
そこの部分を調べ、ここぐらいまで大きくなると、音が不快に感じてしまうので、そこまでは、音を大きくしないでね。と補聴器に教えてあげることが大事になるんですね。
こういったケースが見られるのは、
- 突発性難聴の方
- メニエール病の方
- 特発性難聴の方
- 老人性難聴の方
の一部の方に見られたりします。
ここは経験上で申し訳ないのですが、この点は、全員に見られた訳では、ありません。
しかし、一部の方は、音が辛く感じるケースもありますので、そのようなケースは、不快に感じる部分を調べて、そこまで大きくしない。という風にできると、辛く感じる部分を軽減しやすくなります。
特殊系は、特に気をつけよう
今回は、それぞれの聞こえる音の範囲に関して、記載しましたが、この中で注意したいのは、特殊系のタイプですね。
このケースは、補聴器の調整の仕様上、そのまま調整してしまうと、音が辛く感じる傾向が強くなってしまいますので、その場合は、辛く感じる部分を測定し、その部分を和らげてあげた方が使いやすくなります。
この点は、音に慣れていないからそう感じる。という事ではなく、耳そのものが過敏気味に感じている事から、起こっているケースが多いので、その点に注意する必要があります。
慣れる、慣れない。というのは、見極めがちょっと難しい問題ではあるのですが、中には、慣れないものもあります。
という事で、このような聞こえに当てはまる場合は、気をつけましょう。以上、耳の聞こえの範囲に関するお話でした。