クロス補聴器のFAQ

片耳難聴は、なぜ聞きにくいのか

深井 順一|パートナーズ補聴器

補聴器による聞こえの改善は、聞こえの改善と補聴器のFAQ、にまとめています。また、個々の症状(症例)ごとの改善は、お客様の聞こえの改善事例にまとめています。

片耳のみ難聴の場合、静かな所や聞こえる耳側からの音については、問題なくわかる事が多いのですが、聞こえない耳側から話されたり、その方向からの音に非常にわかりづらくなってしまいます。

また、騒がしい中での聞き取りが非常に悪くなってしまう点も、片耳難聴の大きな特徴です。

では、なぜこんな事が起こるのでしょうか。

その点を理解するポイントは、

  • 聞き取りのSN比
  • 頭部陰影効果(とうぶいんえい効果)

の二つがあります。

今回は、片耳のみ難聴の方が聞きにくくなるポイントに関して、なるべく簡単にお話をしていきます。

音が理解できる状況とは?

基本的に人が音を理解できる環境というのは、SN比(エスエヌひ)が良い状況に限ります。

このSN比とは、S(シグナル)、N(ノイズ)の比率になり、S(シグナル)というのは、聞きたい音、あるいは、音声を表します。そして、Nのノイズは、邪魔する音を表します。

例えば静かな環境であった場合、邪魔する音がないので、片耳難聴の方の場合、ほぼ問題なく聞こえる事が多いかと思います。

これが、SN比が良い状態です。

表現としては、SN比+4dBとか、SN比+6dBとか表現されます。ポイントは、必ずプラスになっているという事ですね。

逆にSN比が悪い状態というのは、Sの音声の音量が低く、さらにNのノイズ、周りの音が大きい事でSN比がマイナスになっている状態です。

表現としては、SN比-5dB、SN比-4dBなどと記載されます。

ポイントとして、音声が理解できる状況というのは、必ずSN比がプラスの時だけである事です。

SN比がマイナスになると、例え健聴の方であっても、聞きにくさを感じやすくなります。

正常な方は、どう聞き取っている?

では、正常な方はどう聞き取っているのでしょうか。

それは、両方の耳が聞こえている事により、上記で記載したSN比を上手に調整し、SN比が良い側の耳で音を聞くことにより聞き取っています。

ここでのポイントは、頭がある事により、左耳から右耳までに音が移行するまでだいたい10〜13dBぐらい減衰する事です。

これを頭部陰影効果(とうぶいんえい効果)と呼びます。

これをうまく使って、健聴の耳は、様々な状況でも聞き取りをなるべく下がらないようにしています。

例えば、左側から話された場合、左側の耳で受け取る事により、SN比が悪くならないようにしています。

左側からきた音を右側で受け取ろうとすると、上記に記載した通り、頭が邪魔して、その音が右側で受け取る際は、10〜13dB減衰した状態で音が届きます。

仮に右側でなにやら大きい音がしていた場合は、右側から左側に音がくる際に、10〜13dB減衰し、左側からの音は、そのまま減衰しないで入るので、S(シグナル)の部分は、そのまま入り、N(ノイズ)の部分は、減衰して入る事になります。

このようにする事で、Nの部分を効果的に抑え、そして、Sの部分は、減衰しないようにして入れる事で、聞き取りがなるべく悪くならないようにしています。

上記の言葉を使うとSN比をプラスにしている。という事ですね。

なお、こう書くと仮に右側から話している人がいるとして、右側から大きい音がしていた場合はどうか?と思う方がいるかもしれません。

その場合は、もちろん健聴の方でも、だいぶ聞き取りづらくなります。

話している人の声より、大きい音が後ろでしている場合は、かなりわかりづらくなります。

このようにして、なるべく健聴の人は、音声が聞き取りづらくならないようにSN比の調整を頭があるお陰で、できているんですね。

片耳のみ難聴になると何が起こるのか

さて、本題ですね。

片耳のみ難聴になると何が起こるのか。それは、上記に記載したSN比の調整がうまくできなくなります。

例えば、上記のような聴力の方がいるとします。 左側は、聞こえるけれども右側が全く聞こえない状態ですね。

この場合、左側から話されたものは、左側が聞こえているので、ほとんど問題なく聞こえる事が多いです。

ただ、右側から話された場合、頭があるお陰で、その話された音声が通常の音量より、10〜13dBほど減衰した状態で左耳に届きます。

静かな環境だったり、距離がかなり近ければあまり問題には、ならなかったりするのですが、声が小さかったり、距離が離れると、先ほどのSN比がプラスからマイナスへ簡単に逆転します。

そして、距離が離れた場合、離れると離れるほどSのシグナル、音声が小さくなるのにプラスして、周囲のノイズが、たとえ静かだったとしても、だいたい40〜50dBは常にしています。

すると音声は距離が離れる事で小さくなり、さらに聞こえる耳側に移行する際にも音が小さくなり、ノイズはそのまま常時している。そうなると簡単にSN比は、マイナスになります。

仮に距離が近くても周囲で少しごちゃごちゃ音がしている場合、周囲のノイズは50〜60dBぐらいはありますので、聞こえない耳側からきた音は、だいぶわかりづらくなります。

逆に左側からお話され、右側に大きな音がしていた場合は、このような聞こえの方は、だいぶ聞きやすくなります。

右側からしている大きな音は、頭のお陰で、左耳で受け取るのに10〜13dB減衰し、音声は、そのままで聞こえるのでSN比がプラスになりやすくなります。

健聴の方は、両方の耳がある事と頭のお陰で、SN比の調整がうまくしやすいのですが、片耳難聴の方は、それがだいぶしづらくなります。

その事により、片耳のみ難聴の方でも、聞き取りづらさが出やすくなります。

これが片耳のみ難聴の方が聞きにくくなるメカニズムです。

まとめ

片耳難聴の場合、聞こえにくい耳側からの音、音声は、状況によってだいぶ聞き取りづらくなります。

その原理について、こちらに関して、なるべく簡単に記載してみました。

聞こえている耳側からの音は問題なかったりはするのですが、騒がしい環境下だったり、聞こえない耳側からの音、音声は、思っている以上に聞こえていなかったり、気づいていない事があります。

たまに片耳が聞こえているので問題ない。というような方はいますが、そのような事は決してありません。

人の耳は、両方ある事で、様々な環境下において、聞こえるようにしていますので、片耳のみ聞きにくいと上記のように聞こえにくさは、必ず発生します。

以上、片耳難聴がなぜ聞こえにくくなるのか。そのメカニズムについて、記載してみました。

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深井 順一|パートナーズ補聴器
深井 順一|パートナーズ補聴器
使っている人が対応している補聴器専門店・代表
1986年、7月1日生まれ。生まれつきの難聴者で小学2年生の頃から補聴器を使っています。聞こえにくい側の状況やお気持ちは、同じ難聴者や当事者にしかわからないことがある事から、このお店では、実際に補聴器を使っている私自身がご相談を承っています。

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