補聴器がうまくいかなかった人の5つの失敗パターンと解決方法
このお店には、一度、耳や補聴器の事でうまくいかなかった方がよく来られます。
その事から、何かしらの理由により、耳や補聴器の事でうまくいかなかった方を日々見ているのですが、補聴器における失敗パターンというのは、驚くほど共通点があります。
こちらでは、よく起こる失敗パターンTOP3つと、そのほかのたまにある他2つの失敗パターンに関して記載し、どのように改善できると良いのか。その点を記載していきます。
なお、これらのものは、補聴器を使う方が失敗している。というよりも、補聴器を使う方を対応している側(補聴器を提供する側)が失敗している事が多いため、使う方が悪い訳ではありません。
ただ補聴器は価格が高く、一度の失敗が致命的になりやすいため、こういった失敗および、それをしないための知識として、共有できればと思い、今回は、こちらについて、まとめていきます。
うまくいかなかった人のTOP3の失敗パターン
まず、補聴器に関して、あまりうまくいかなかったパターンとして、多いのは、
- 聞こえの改善状況がわからない
- 補い方を間違える
- 余白を用意しない
の3つがあります。
これらのものは、一つでも間違うと、使いづらい補聴器になったり、聞こえづらい補聴器になる要素です。
聞こえの改善状況がわからない
こちらは、何かと言いますと、自分自身の聞こえの改善状況がわからないので、今、補聴器を使っている感覚が良いのか、悪いのか。そして、悪いのであれば、どこを修正すればより良くなるのかがわからない。というものです。
私自身も生まれつき難聴で補聴器を使っているのですが、同じ罠にハマりました。
まず、補聴器は、感音性難聴という耳の神経系に何かしらの異常がある方につける機器です。
ここで、大事なのは、こういった神経系の難聴、突発性難聴、感音性難聴(遺伝、生まれつき)、老人性難聴(遺伝、年齢によるもの)というのは、補聴器をつけても、耳を耳を治す事ができません。
耳が治らないとなると、必ず、どこかしらで聞きにくさが出てくるのですが、その場合、補聴器をつけた時の感覚だけで判断すると、「この聞こえで良いのか、どうかよくわからない」となりがちです。
これを改善するには、補聴器による聞こえの改善状況を可視化する事が大事です。
そして、可視化する事で、改善できる問題と改善できない問題を分け、改善できる部分は、しっかりと改善する。このようにする事が何よりも大切になります。
具体的には、補聴器の調整画面には、聴力ごとに改善目標が書いてありますので、そういったものを見たり、
あるいは、補聴器を装用した状態で聞こえの改善状況を知る検査があったりするのですが、こういったもので調べる事で、自分の改善状況と自分の聴力からどこまで改善できると良いかの改善目標を知る事ができます。
目標と現状を知る事で、一歩、一歩改善できると、補聴器における聞こえの改善も最善を尽くしやすくなります。
補聴器の場合、最善を尽くすには、この聞こえの改善状況の可視化が何よりも大事になります。
私自身、実際に自分で補聴器を使っており、かつ、自分を含む、難聴の方の聞こえを改善する仕事をしていますが、補聴器による改善の9割は、可視化(改善状況の分析)によって、決まる。と経験上感じています。
なぜなら補聴器は、耳に使った状態。聞こえる音の感覚だけでは、ちゃんと聞こえを補えているのか、どうかがよくわからないからです。
補い方を間違える
これは、何を意味するかと言いますと、使う補聴器、あるいは、聞こえを改善する方法を間違える。というものです。
多いのは、左右の聴力、あるいは、聞こえ方が異なる方。そして、左右の耳が別々の難聴、別々の症状によって、聴力低下している方になります。
例えば、こういった聞こえの方がいるとしますと、聴力が低下している理由によっては、一般的な補聴器を装用しても、より聞きにくくなっている耳側は、補えない事があります。
耳の場合、音を感じる事と音を理解することは、異なり、言葉の音が聞こえる事と言葉を理解できる事は、全く別の意味になります。
問題は、音は聞こえるけれども、言葉がわからない。というケースが出てくる事です。
補聴器の世界には、言葉がどれだけ聞き取れるのか。を調べる測定があったりするのですが、この測定結果で、最良値が50%を切ってしまう(50%以下の)場合は、補聴器を装用しても、言葉が聞きやすくなるような感覚はあまり感じません。
そのような耳に補聴器を装用しても、実は言葉の聞き取りはあまり良くなりません。しかし、たまにそのような耳にも補聴器をつけているケースを見かけます。
こちらを防ぐには、必ず、耳に関して、補聴器を使える耳かどうかを確認する事です。また、仮に補聴器をつけても、あまりうまく理解できない感覚を感じた場合は、初めに耳を疑う必要があります。
その場合、音の認識といいますか、言葉が聞き取れる能力がないケースも出てきますので、ご自身の耳の状況に合わせた聞こえの改善をする事が大事です。
なお、この点も目に見えるものではありませんので、ちゃんと耳の状況を分析する事が大事になります。耳の分析を怠ると、後々こういった事が起こりやすくなります。
補聴器で聞こえを改善する際に大事になるのは、分析です。その理由は、このように補聴器をつけてもまるで効果が出ない耳があるからです。
余白を用意しない
余白を用意しない。というのは、補聴器を耳につけている時に自分で音量を調節できるようにしたり、調節できない補聴器を買ってしまい、余裕がなくなってしまう事を意味します。
今現在、補聴器には、ボリュームという機能とプログラムという機能があります。
ボリュームは、テレビのボリュームと同じように、音量を自由に上げ下げできる機能です。普段使っている時に音量が強く感じた場合は、自分で音量を下げる事ができますし、逆に聞きにくさを感じた場合は、その場で自分で音量を大きくする事ができます。
プログラムは、特定の音環境に合わせたプログラムを用意しておく事で、スイッチ一つで、その音の状態に変えられる機能になります。
ここであまりうまくいっていない方の特徴は、こういった機能を使わずに、基本的な音の設定を補聴器の調整のみで行おうとする方です。
理想は、補聴器の調整で全てが改善できる事です。しかし、実際の音環境というのは、どうしても多種多様な状況が出てきてしまいます。
その理由は、音というのは、自分以外の人が出したり、環境によって起こる事ですので、自分自身が制御できない(コントロールできない)ためです。
例えば、声が聞きやすい方と声が聞きにくい方がいるとしますと、声が聞きにくい方は、極論を言ってしまえば、その声が聞きにくい人、そのご本人が声を大きくしてもらうのが一番わかりやすいです。
しかし、それは、相手がする事になりますので、相当な強制力がない限り、他人がコントロールする事は、ほとんどできません。
ですので、補聴器の調整だけで全てを賄うのは、理想ではありますが、現実的ではありません。
そのため、できればボリュームに関しては、設定しておき、音が大きく感じる事があれば下げる、逆に音が小さく感じるなら上げる。という自分が調節できる音量の余白を設定できると良いです。
これがないと、場面場面で少し異なる事があった場合、ちょっとした事が調節できず、不便を感じやすくなります。
この点は、様々な音の環境が考えられるので、自由に自分で音を変えられるようにして、対応力を身につけさせる。と言い換えるとわかりやすいかもしれません。
例えば、待ち合わせやお店に伺う際、予約をしたとすると待ち時間ギリギリに行くのではなく、恐らく、余裕を持って少し早めに向かうと思います。
これも余白です。時間ぴったりで考えると何かあった場合、その時間を過ぎてしまうことになりますので、このように余白を作っておけると時間の調整はしやすくなりますよね。
補聴器も全く同じで、音の状態に関しては、余白を作っておけると良いです。余白を作っておいて、何か異なる状態になったら、音を変えられるようにしておけると、対応しやすくなります。
この余白がない補聴器を買うと、ぴったりと音が合う音の調整にしなければならなくなるため、非常に補聴器は使いづらくなってしまいます。
実際には余白がなくてもうまく使えている方はいますが、余白は用意できているとそれだけ、補聴器に関しては、使いやすくなります。
これ以外の2つのパターン
こちら以外の2つのパターンには、
- ハウリングが多い
- 相談する方とうまく相談できない
の2つです。
この2つは、上記のTOP3とまた少し異なる毛色のため、別にしています。
(①は、技術的な問題。②は、人の問題。上記のTOP3は、補聴器で聞こえを改善する際の考え方の問題です)
ハウリングが多い
ハウリングというのは、補聴器から出した音が耳の中で漏れ、その音をまた補聴器が拾う事で、ピーっとなる現象の事を言います。
ハウリングに関しては、改善方法を伝えるのが難しく、補聴器を使っている方の耳の状況、補聴器の形、種類など、様々なものが影響します。
ただ、一つ言えることは、ハウリングに関しては、すると鬱陶しく、かつ、かなり使いづらくなってしまいますので、このハウリングに関しては、必ず、抑えられる方法、あるいは、抑えられる補聴器を使う事が大切である事です。
聴力によっては、かなりしやすくなってしまうのですが、ハウリングを抑える機能やハウリングを抑える道具を使ったりして、ちゃんと止めるようにしましょう。
それが一番大事なことになります。
相談する方とうまく相談できない
実は、お店宛にメールで相談される事が一番多いのが、この「補聴器販売店や補聴器の相談をする方とうまく相談できない」になります。
この点に関して、一番解決しやすい方法は、「相談する人を変える」になります。補聴器販売店内の担当してくれる人を変える、別のお店の人に相談して、変える。これが、最も改善できる改善策です。
この問題は、技術力とかそういった類のものではなく、コミュニケーション方法の問題、意思疎通の仕方の問題で、特に補聴器はここの問題が起こりやすいです。
まず、一つ言えるのは、うまく相談できないのは、必ずしも、補聴器を使っている側が悪い、言い方を変えれば、ご自身の意見の伝え方が悪いから相談できない。という訳ではありません。
上記に記載した通り、補聴器は、耳につけても、耳が治る訳ではありませんので、感覚だけで相談してしまうと、なかなかうまく相談する事ができません。
仮に聞きにくさがあった場合、「これは、1000Hzの音がちゃんと入っていないから聞きにくい」とか「2000H以降の音が逆に強すぎるから、言葉がわかりづらくなっている」という事は、感覚では、わからないのです。
感覚で感じるのは、「この人の声が聞きにくいんだ」「この音が聞こえにくいんだ」という事で、なぜ聞きにくいのかは、感覚ではわかりません。
実は、この点は、私自身も陥った部分で、その事から、感覚で判断するのではなく、データ重視にして、補聴器の聞こえの改善状況を可視化する事で、このお店の場合は、相談しやすくしています。
この点は、どちらかというとお店側の相談方法の仕方、コミュニケーション方法の仕方に問題があることになりますので、補聴器を使っている人側の問題ではありません。
補聴器は、このように感覚だけではよくわからないため、感覚で相談しても、言われた方もどうしたら良いか、よくわからなかったりします。
まとめ
こちらでは、私自身がよく経験しているうまくいかなかった方の失敗パターンに関して、記載してみました。
よくあるのは、TOP3の
- 聞こえの改善状況がわからない
- 補い方を間違える
- 余白を用意しない
の3つです。
補聴器は聞こえの改善状況を確認せずに改善していくと、今現在、どこまで改善されていて、この聞こえる感覚は、良いのか、悪いのか、よくわからなくなりがちです。
ですので、補聴器を使った感覚だけではなく、補聴器の聞こえの改善効果に関しても、しっかりと確認しましょう。この確認ができると、より聞こえを改善したい。となった場合も、どこをどれだけ、大きくするか。など改善方針を作りやすくなります。
さらに耳の状況を確認しないで安易に補聴器を使う耳を決めると、たまに補聴器による改善効果が薄い耳にそのまま補聴器をつけるケースがあったりします。
そうなると聞こえの改善ができないどころか、逆に補聴器を使って辛い。ひどくきつい感覚がする。というような状態になったりすることもあります。
補聴器は、どのような耳に装用しても効果が出る。というわけではありませんので、特に違和感を感じたら、すぐに調べる事が大事です。
そして、自分にあった補聴器の補い方を行う事が大事です。自分の状況を明らかにしないで改善を行うと、失敗する確率が上がります。
最後は、余白を用意する事ですね。余白がないと、ちょっと聞きにくい、ちょっと音が大きい。という時にとっさにその場で調節ができず、補聴器の使いづらさを感じる傾向があります。
ですので、ここも余白。ボリュームなど、心配な方は、自分で調整できる補聴器を選べると良いです。すると、自分で調整できることにより、何かあっても、自分で細かな調節ができるようになります。
今回、失敗してしまった方のよくあるパターンに関して、まとめてみたのですが、逆に言えば、これらの部分を守れば、うまく行きやすくなる。という事でもあります。
ただ、TOP3の聞こえの改善状況がわからない。と補い方を間違える。は、どちらかというと補聴器を使う方ではなく、補聴器で聞こえを改善する側の問題になる事が多く、使う側が気をつけられることは、少なかったりします。ただでさえ補聴器はわかりづらいからです。
ですが、少なくともこういった知識があると、失敗は避けやすくなるかと思います。
以上、こちらの内容が少しでもお役に立ったのであれば幸いです。