軽度〜中等度難聴を補聴器で改善する
こちらでは、軽度から中等度難聴の方の聞こえを改善するための内容をまとめていきます。
軽度〜中等度難聴の方の場合、きちんと補聴器で聞こえを改善するためのポイントを押さえ、実行することができれば、それなりに聞こえの改善ができることが多いです。
こちらでは、補聴器に関する全体像から、補聴器の選ぶ部分、そして聞こえの改善に影響する部分まで、まとめていきます。
軽度〜中等度難聴の聞こえ
まず、こちらの内容が対象となる方ですが、おおむね、このような聴力の方です。
軽度の難聴の範囲は、25〜40dB、中等度の難聴の範囲は、41〜69dBまでになります。
本当の意味での軽度の難聴の方は、聞こえづらさを感じることはあるにしても部分部分の聞こえにくさになり、補聴器まで考えることは少ないのですが、聴力が50dBぐらいまで低下してくると、人の声が聞きづらく感じることがかなり増え、困ることが多くなります。
聞こえづらくなることによって困る部分は、主にこのような場面です。
対面では、割とはっきり話してくれる方は、聞こえるかもしれませんが、少し声が小さかったり、マスクや遮蔽物(コロナ対策のアクリル板など)があると急に聞きにくさを感じるようになります。
そして、騒がしいところや会議やミーティングなど複数の人とお話をする際、距離が離れた際に呼ばれたときに気が付かない。などが起こります。
音は聞こえないと、目に見えるわけでも匂いがするわけでもありませんので、それ以外の方法で感知することができません。ですので、呼ばれても気が付かず、無視してしまったような感覚になったり、天然扱いされるなどが起こりやすくなります。
音の厄介なところは、自分自身がどのぐらい聞こえづらく、周りの方は、どのぐらい聞こえているのかの感覚が非常にわかりづらいことです。ですので、思いの外、自分が聞こえていないということに気がつくのが遅れてしまいます。
聴力や病気の症状によっても変わりますが、もし、聞こえづらさを感じている場合は、早々に改善し、身近な方々との人間関係が悪化する前に手を打てると一番良いですね。
補聴器で選ぶ要素、改善する要素
さて、ここから実際に聞こえを改善していく作業に入ります。
まず全体像ですが、補聴器には、
- 補い方(使う耳、特殊な補聴器等)
- 補聴器の形状
- 補聴器の性能
- 補聴器の調整(聞こえの改善)
の全部で、4つがあります。耳鼻科さんや補聴器屋さんで相談するのは、主にこの4つの部分になります。逆に言えば、補聴器は、分類すると、たったこの4つしかありません。
その中で、
- 補聴器の形状
- 補聴器の性能
この2つに関しては選ぶ要素で、主に補聴器のカタログなり、パンフレットに記載されているものです。目に見えるものが多い、ということですね。
そして、
- 補い方(使う耳、特殊な補聴器等)
- 補聴器の調整(聞こえの改善)
この2つに関しては、相談する要素で、お店や病院さんで相談しながら、よくしていく部分になります。言い方を変えると、初めての方は、目に見えづらい部分になります。
大事なことをはじめにお伝えさえていただきますと、聞こえの改善は、ほぼ補い方、補聴器の調整、この2つによって決まります。
つまり、相談する要素によって、聞こえの改善度は、ほとんど決まる。ということです。ここに関して覚えておけると良いです。
以下、それぞれの部分で、軽度、中等度難聴の方は、どのようにしていけると良いのか、記載していきます。
補い方(使う耳、特殊な補聴器等)
はじめに補い方の部分になります。補い方というと、なんだかよくわからないかと思いますが、簡単に言いますと、どの耳に補聴器をつけるかになります。
左側につけるのか、右側につけるのか、そして両方の耳につけるのか。はたまた耳の状況が特殊なので特殊な補聴器をつけるのか。の部分ですね。
ここによって変わるのは、聞こえの改善度です。聞こえの改善度は、この部分とのちに記載する補聴器の調整の部分で、8割が決まります。
で、大事なこととしてお伝えさせていただきたいのは、補聴器は、耳の状況が9割になります。
補聴器をつけて、聞こえを改善できる耳であれば、その耳につけることで聞こえを改善しやすくなりますが、中には、補聴器の音を受け付けなかったり、音を入れても音声がほぼ理解できない耳があります。そのような耳に補聴器をつけても音声の理解という観点からするとほとんど効果は期待できなかったりします。
つまり、使う耳、耳の状態によって聞こえの改善効果は違う。ということです。
多くの人は、補聴器の性能が良いものほど改善度が高くなりやすい。というイメージをお持ちですが、これも間違いではないものの、実際には、音を入れて補うことができる耳であれば、効果がでやすく、そうでない耳は効果が出にくい。補聴器の性能、メーカーではないということですね。
だからこそ、この補い方はすごく大事な部分になります。ちゃんと効果が出ること、やり方をするのが大事ということですね。
で、ここの部分に関しましては、耳の状況によって変わるのですが、全体的に言えるのは、もし両方の耳に補聴器が適合するのであれば、両方の耳に補聴器をつけて、聞こえを改善した方がいい。ということです。
補聴器の世界でよく言われるのは、両方と片方だと、騒がしい中での聞き取りに差が出る。ということです。
上記のようなグラフですね。静かなところは、確かに片方のみでも聞こえるのですが、騒がしい環境になると、片方だと聞こえづらくなります。ですので、なるべくどのような環境でも聞きやすくするためには、両方の耳に装用して聞こえを改善する。ということです。
ここにプラスして、実際に補聴器を使っている私から言えるのは、補聴器は、どんなに頑張っても今現在、耳を治すことはできません。ですので、頑張って改善しても一般の方より聞きづらい状態になる。ということです。
このように表現するとわかりやすいですね。ですので、なるべく良い方法で改善して、聞こえにくさは減らしていけると良いです。特に両方の耳で聞く場合と片方のみで聞く場合は、だいぶ聞こえに変化をもたらす要素の一つになりますので、きちんと改善したい方は、改善しましょう。
ただし、あくまでも両方の耳が補聴器に適合する方になります。中には、病気によって、耳の感覚が大きく変化してしまい、合わないケース、どうしても適合しないケースがあります。
そういったケースを除き、両方の耳に補聴器をつけられるのであれば、両方の耳につけ、なるべく聞きにくさを無くしていけると良いです。
補聴器の形状
さて、ここから見える部分になります。補聴器のカタログ、パンフレットを見ると、色々な補聴器が掲載されているかと思います。その部分ですね。
補聴器の形状、形によって変わるのは、補聴器の扱いやすさです。言い方を変えると、補聴器の形状では、自分自身が扱いやすいものを選ぶ、ということでもあります。
まずは、全体像からお伝えしますと、今現在、補聴器は、主に耳かけ形補聴器、耳あな形補聴器の2つがあります。
耳かけ形補聴器には、耳かけ形補聴器の中でいくつか種類があり、耳あな形補聴器の中では、耳あな形補聴器の中でいくつか種類があります。
補聴器の形状では、主に形ごとに音の出力、どのぐらい音を大きく出すことができるのか。これが異なります。右側に軽度、中等度、高度……とか書いてあるのは、どのぐらいの聴力の方まで対応できるのか、のグラフです。
ただ、軽度、中等度難聴の方は、ほぼ全ての補聴器の形で補えますので、ここはお考えにならなくて良いです。全部、対象になる。ということだけ覚えておきましょう。
その中でおすすめするとしますと、
- 耳かけ形補聴器なら、RIC補聴器
- 耳あな形補聴器なら、CIC補聴器
になります。
まず、軽度から中等度の難聴の方の場合、低い音が聞こえやすく、高い音になるにつれ、聞こえにくくなることが多いです。
125〜500Hzの部分で、60dBの範囲内にある場合、補聴器をつけると、自身の声が低く響く感覚で聞こえたり、唸るような感覚で聞こえるようになります。一言で言うと自分の声の不快感を感じやすくなる、ということです。
ですので、補聴器を使うことのデメリットの部分であるこの部分を減らせると良いのですが、それが
- 耳かけ形補聴器なら、RIC(リック)補聴器
- 耳あな形補聴器なら、CIC(シーアイシー)補聴器
になります。
耳かけ形補聴器にもいくつか種類があるのですが、その中でもRIC補聴器は、自分の声の不快感を感じづらく、耳あな形補聴器の中でも、CIC補聴器は、その不快感は感じづらくなります。
使いやすさ、という観点でいうと、おすすめになる形状は、この2つになります。
それぞれの形状の違いは、こちらの通りです。
形による違いは、基本的には、扱いやすさになります。耳あな形補聴器は、耳の穴の中に入れることで、メガネやマスクといったものに邪魔になりづらく、電話もそのまま行えます。
その代わり、耳を密閉するので、先ほどの自分の声の不快感に関しては、感じやすくなります。この感覚は、耳かけ形補聴器の方が感じづらくなります。
耳かけ形補聴器は、先ほどの声の不快感に関しては、感じづらくなるのですが、人によっては、メガネやマスクの邪魔に感じ、電話も耳の上に補聴器があるため、上にヅラして行う必要があります。
このあたりは、使ってみて判断するとよく、耳かけ形補聴器を使ってみたけど、思ったより、メガネやマスクの邪魔にならないな、と感じることもありますし、耳あな形補聴器を使っても、このぐらいの不快感であれば耐えられる、使える。という風に感じたりします。
これらの許容度は、人によって異なるため、実際に選ぶ際は、使いながら、試聴しながら、自分自身はどのように感じるのか。を確認しながら決められると良いですね。
補聴器の性能
補聴器の性能に関しては、聴力別による変化がないため、性能に関するものは、全て、以下のページにまとめています。こちらをご覧ください。
なお、補聴器の性能は、良いに越したことはないのですが、聞こえの改善度を重視する場合に、はじめに押さえるのは、補い方と補聴器の調整になります。
それを押さえた上で、性能に投資できるようになると、相乗効果を得られるようになり、さらに聞こえの改善に貢献しやすくなります。
聞こえの改善を重視したい場合は、本質の部分を押さえた上で、お金も投資するようにしましょう。
リンク:【基本】補聴器の性能と買い換えサイクル
補聴器の調整
補聴器の調整は、聞こえの改善に一番影響すると言っても過言ではない部分で、主には、低下した聴力のところに対して音を入れて、聞こえを改善していく実質的な部分になります。
まず、今現在の補聴器には、聴力別に改善できると良い数値というのがあります。どのように表現するとわかりやすくなるのかが難しいのですが、補聴器を使った状態を可視化できる測定、補聴器版聴力検査のようなものがあり、こちらで表現すると、このようになります。
大体、聴力レベルが、70dB以内の場合は、今現在、30dB、35dBぐらいは改善できる状態になってきており、全体的にこのぐらいまで聞こえの改善ができるようになると、補聴器による改善効果は感じやすくなります。
このグラフは、オージオグラム、聴力検査の時に使われるグラフで、その状態と比較すると、改善できる量は、少し足りないぐらいです。
オージオグラムでは、一般の人が聞こえている範囲が、0〜10dB、正常の範囲は、0〜25dBになります。そこより下になると難聴で、今現在、補聴器で改善できる数値は、軽度、中等度難聴の方だと、大体、30dB前後ぐらいになります。正常の範囲に一歩、足りないくらいですね。
逆にいうと、しっかり聞こえを補えれば、そのぐらいまでは改善できるということですので、そこまで改善していくことが大事です。
補足として追加していきますと、主に日本語の場合、音声にかかわるのは、500〜2000Hzの部分です。実際には、これ以外の周波数も音声に関わっているのですが、補聴器による聞こえの改善で影響度が高いのは、500〜2000Hzになります。
ですので、音声に関して、なるべく聞きやすくしていきたいと考えている方は、目標のラインまで、この周波数帯は上げられると良いです。上げられると上げられるだけ、聞こえの改善に貢献しやすくなります。
2000Hz〜4000Hzは、主に音声のレベル(音量感)から、声の明瞭性に関わってきます。ですので、この部分も上げられるのであれば、あげて改善できると良いです。
ただ、この部分はあげすぎると、音が響いたり、金属的な感覚が強くなってしまい、それが不快感に感じることもあります。ですので、あくまでもあげられる範囲内に抑えられると良いです。
そうすると、結局、全体的に聞こえを改善する、ということになるのですが、全体的に聞こえが改善できれば、それだけ、聞こえの改善度は高くなります。
聴力が下がっているから聞こえにくい。なので、その聴力そのものの改善値を上げると聞きやすくなる。ということですね。そういった事もあり、この部分によって、聞こえの改善度は大きく変化します。
しっかり改善していれば、その分、聞こえやすくなりますし、聞こえの改善度を可視化しないで、どのような改善状況かわからないような状態になると、どのぐらい改善されていているのかわからない……、みたいな状態になりがちです。
聞こえの改善度を重視する場合は、きちんと改善できるところは改善するようにしましょう。
お客様の声
突発性難聴、原因不明の感音性難聴の方
- 改善:CIC補聴器
- 機器:耳あな形補聴器
- 備考:両耳装用にて改善
生まれつきの感音性難聴の方
- 改善:ITC補聴器
- 機器:耳あな形補聴器
- 備考:両耳装用にて改善
原因不明の感音性難聴の方
- 改善:RIC補聴器
- 機器:耳かけ形補聴器
- 備考:両耳装用にて改善
この他のお客様の声(総合)
まとめ
こちらでは、軽度から中糖度難聴の方の聞こえの改善についてまとめてみました。
軽度〜中等度難聴の方の場合、聞こえの改善で重要になってくるのは、補い方の部分、そして、補聴器の調整の部分です。
これらの部分は、自分自身で選ぶというよりもご相談する場所で相談しながら決めていく部分になります。ご相談場所できちんと相談し、良い状態にしていきましょう。
どうしても目に見える部分、補聴器のカタログやらパンフレットに目がいき、どんな補聴器が良いのかを考える方が多いと思いますが、補聴器の形、性能以上に改善度に影響するのは、補い方と補聴器の調整の2つです。
ですので、聞こえの改善度に関して、なるべく良くしていきたい場合は、ここの部分は押さえるようにしましょう。
幸いにも軽度から中等度難聴の方の場合、補聴器による聞こえの改善効果、補聴器による恩恵を受けやすい状態になりますので、きちんと押さえるところを押さえた上で改善できると、それだけ生活を良くしたり、不便な部分を減らすことに繋がります。
聞こえにくい状態は困ることも多々出てくる状態になりますので、なるべくこういったところを少なくしていくために、押さえるところは押さえることをオススメします。