高齢者は補聴器を必要としていない?データから見える現状
ご高齢の方に、補聴器が売れない理由は、何でしょうか。一つの理由にタイトル通り、必要とされていないから、ではないかと考えています。
とあるブログにて面白いデータを発見しました。一人暮らしの高齢者の会話頻度に関する事です。こちらによると半数が一日に一度も会話をしていない事が判明しました。
個人的には、非常に考えさせられる内容でした。会話しない環境であれば、補聴器が必要だと思わないだろうなと感じたからです。
必要とされていない=使う場所がない
社会派ブロガーのちきりん氏のところに面白いデータがありました。そこから引用します。
※ちきりんはテレビで何を見ているのかって?より引用
一人暮らしの高齢者(男性)という括りで、会話の頻度に関して調べられた内容です。どうやら国立社会保証・人口問題研究所というところが調べているようです。こちらでも情報収集してみると……
※内閣府 高齢者の生活環境より引用
※内閣府 高齢者の生活環境より引用
一人暮らしの男性に、人との交流が少ない人や頼れる人がいない人が多い
60歳以上の高齢者の会話の頻度(電話やEメールを含む)をみてみると、全体では毎日会話をしている者が9割を超えるものの、一人暮らし世帯については、「2~3日に1回」以下の者も多く、男性の単身世帯で28.8%、女性の単身世帯で22.0%を占める。
近所づきあいの程度は、全体では「親しくつきあっている」が51.0%で最も多く、「あいさつをする程度」は43.9%、「つきあいがほとんどない」は5.1%となっている。性・世帯構成別に見ると、一人暮らしの男性は「つきあいがほとんどない」が17.4%と高く、逆に一人暮らしの女性は「親しくつきあっている」が60.9%と最も高くなっている。
また、病気のときや、一人ではできない日常生活に必要な作業(電球の交換や庭の手入れなど)の手伝いについて、「頼れる人がいない」者の割合は、全体では2.4%であるが、一人暮らしの男性では20.0%にのぼる。内閣府 高齢者の生活環境より引用
ちきりん氏のブログにあったデータは、一人暮らしの高齢者(男性)に括られたものですが、内閣府のデータは、高齢者全体のものです。内閣府のデータに毎日会話する層も入れていただけると、もう少し全体がわかりやすくなるのですが、仕方がありませんね。テレビの内容と内閣府のデータに差が見られますが、集計した内容が異なる事、時期が異なる事の差のようです。
上記のデータを見ると、補聴器ってもしかしたら必要とされていない?と思う事があります。
9割以上毎日会話しているとはいえ、単身の場合と夫婦で住んでいる場合では、会話のしやすさが異なります。単身の場合、半分以上が毎日会話をしていません。女性の単身も男性までとはいかず、半分ほどは会話が無いのかもしれません。
また、近所づきあいは約半数があいさつする程度という事も浮き彫りにされました。近所づきあいがなく、家の中にいるのであれば、補聴器を使用する機会はあるのでしょうか。また、聞こえにくかったとしても家族に協力してもらえる環境だったら、補聴器は必要あるのでしょうか。単身だったら聞こえていない事にすら気付かない可能性もあります。
仮に難聴である事を自覚していたとしても、補聴器の金額を見て「そんなにするなら少し我慢しよう」「使う機会そんなにないし……」と躊躇する可能性は、大いにあります。使用する機会がなければ、必要性を感じないからです。
自分の経験から
私自身、家にいるときは、ほとんど補聴器を装用しません。理由は簡単で、必要性を感じないからです。一人暮らしですので、話す人はいませんし、家のチャイムをならす人は、大概何かのセールスマンである事が多いです。一人暮らししている私からすると使用しないポイントは、必要ないからのひと言になります。聞きたい音がなければ、補聴器を装用する理由はありません。
難聴である人は、どんな時に一番困るのでしょうか、それは人とお話するときです。しかし、人とお話する機会が減れば、当然必要とされる機会も減ります。
これらの事から、補聴器が売れない……ではなく、補聴器を必要としない環境になってきているのではないか、と私は考えています。
これでは、補聴器も売れなくなってきますね。
これからの補聴器販売店
これらを見ると、これから補聴器販売店は、高齢者のいこいの場のようなものが求められるのかもしれません。
使用する機会がないなら、こちら側で増やしてあげれば良い事になります。ご高齢の方も話せる環境、お友達ができる環境があれば、進んで補聴器を使用するようになるのではないかと考えています。誰でも一人寂しく過ごすより、同じような仲間、方々と楽しく過ごした方が良いはずです。
購入させる方法を考えるのではなく、必要性を感じさせる事が重要になってくるように思っています。
現在、様々な企業が高齢者向けサービスを行うようになってきました。ワタミの宅食、セブンイレブンの食事お届けサービスは、高齢者に食事を与えるだけでなく、生存を確認するという意味でも行っています。また、全国に4万人を超えるヤクルトレディは、ヤクルト飲料を訪問販売する事で、高齢者の生存を確認するという事も行っています。高齢者向けというよりも地域密着型のサービスともいえますね。
補聴器屋の場合、訪問とは言わずとも来ていただける仕組みを作る事で、地域密着型のサービスを作る事ができます。それがいこいの場です。
そういえば、どこかの補聴器販売店は、お店の中に高齢者のいこいの場を作っていたような気がします。九州の販売店だったでしょうか?非常に面白い取り組みであり、かつ有意義な取り組みだと感じました。
あとがき
高齢者に販売する補聴器について考えてみました。
普及しない理由には、補聴器の効果を感じにくい、金額が高いというのもありますが、使用する機会がないというのが一番の理由な気がします。金額が高くとも使用する機会がある方は、購入されていますし、効果を感じにくいといっても補聴器を長期装用している方はゴロゴロいます。であれば、使用する機会を増やして上げる事が、補聴器の普及につながるのではないかと考えています。あくまでも思考の一つですので、他にも要因は考えられます。
ちきりん氏のところでデータを見た時は、びっくりしました。これだけ使用する機会がないとは思ってもみなかったからです。ただ、データを見たあと、「そういえば……」と思い当たる節はありました。お客さんの会話内容に「使用する機会がない」という事も少なからずあったからです。
少子高齢化の世界、もっと世の中を見て、販売方法を考える時代になったと言えますね。