先天性難聴の治療に関する進歩、遺伝子治療による難聴改善
難聴の治療といえば、現在、iPS細胞が注目されています。そんな中、順天堂大学医学部にて、遺伝子治療を行い、マウスの聞こえを回復できた旨、ニュースがありました。先天性難聴の治療にまた一歩近づいたようです。
NHKのニュースによると
先天性の難聴の主な原因として知られている「Gjb2」と呼ばれる遺伝子に注目し、この遺伝子を人工的に働かなくした難聴のマウスを作り出しました。
そして、このマウスの新生児の片方の耳にだけ特殊なウイルスを使ってGjb2遺伝子が働くように遺伝子治療を行い、両耳で聞こえ方に違いが出るか脳波を調べました。
その結果、治療しなかったほうの耳は90デシベル以上の大きな音を出しても脳波に変化は見られませんでしたが、治療したほうの耳ではおよそ70デシベルで反応があり、耳の奥の「内耳」と呼ばれる部分の細胞も正常に成長していることが確認できたということです。先天性難聴の遺伝子治療 マウスで成功 NHKニュースより引用
先天性難聴の損傷先として知られる内耳が正常に成長している事が、判明されました。これは、すごいですね。順天堂大学では、その他、プレスリリースも出しておりますので、この内容とニュースの内容をまとめていきます。
なお、NHKのニュースは、サイト内容を削除する事がありますので、早めに見ておく事をお勧めします。※4月14日、削除されました。
先天性難聴の改善
順天堂大学が出した遺伝性難聴の内容は、こちらです。
こちらの重要なところを抜き取ってみると……
遺伝性難聴の原因遺伝子としては現在までに60以上が同定されており、最終的には150程度の難聴遺伝子が推察されています。これらの難聴遺伝子の中でGJB2遺伝子変異が最大の原因とされており、30~50%を占めています。GJB2変異による遺伝性難聴は日本で3万人以上、全世界で130~220万人とされ、新生児での発症人数は日本で年間
100~160人、全世界で年間2~4万人と推察されます。
現在先天性の難聴は、1000人に1〜2人と言われています。今現在の人口で計算してみますと1億2691万人ですので(人口については、総務省統計局をご覧下さい)、 126,910,000×0.0015=190,365人、おおよそ19万人くらいが難聴を持って生まれている計算になります。
しかし、この数値は、あくまでも難聴を持って生まれてくるだけになります。難聴には、生まれつきの難聴であっても、先天性と後天性に分かれます。遺伝子の突然変異、あるいはご両親の遺伝によって難聴であった場合が、先天性難聴です。お腹の中に居た頃、母体が風邪を引いてしまったり、何らかの細菌に感染しまった場合、これによっても難聴になる事があります。その場合は、後天性になります。
これらの生まれてくる難聴児の先天性と後天性の比率はわかりませんが、大雑把に半分としますと95,000人になります。その内の、30〜50%となると28,500〜47,500人になります。NHKさんの方で書かれている内容とほぼ一致しますね。
また、この実験は、あくまでもマウスによって成功したのみになりますので、これからさらに実験したり、マウスから人へ実験が移り変わります。何にせよ、iPS細胞、遺伝子治療、この二つの研究が今、進んできているようです。何もないよりは、期待させてくれる内容です。
気になるのは、90dBで反応なかったのが、70dBで反応があったところです。音の単位がわからないのもそうですが、70dBでも聞きにくい状態であるのは、変わりありません。脳波を調べた方法についても不明なため、どう判断したら良いのかもわかりません。
ただ、良くなったのは確かですので、これからどんどん良くする研究をしていくと考えられますね。
先天性難聴の改善はいつ?
恐らく誰もが知りたいところは、ここですね。今現在では、わかりようがない……というのが正直な気持ちです。やっと手がかりを見つけ、これから研究して、どんどん改良を重ねて行くと考えられます。
実際の患者さんに治療が行われるようになるのは、まだまだ先になりそうです。
普及の壁を考える
どんなものでもそうですが、普及するには、例え技術があったとしてもそれが適正価格にならないと普及する事はありません。これは、iPS細胞もこの遺伝子治療も同様です。適正価格とは、患者が購入できる金額にする事です。
仮に耳を治す技術が確立したとしても「耳治すのに費用が1億かかります」と言われれば、恐らく出せる人は、そう多くはいません。このような事を記載すると「国が出せば良いのではないか」と考える方もいますが、今現在、国は、膨らんだ医療費をどんどん削除していく方針をとっています。このような状況では、医療にお金を出してくれるのかを考えるととても出してくれるようには、思えません。
さらに、今後、高齢者が増えてくれば、それだけでも医療費が膨らみ、さらに財政を圧迫する可能性も高くなってきています。高齢の方が増え、働き手や子どもの数が減れば、収入は増えるどころか、減るばかりであり、かかるお金が増えてきます。日本の状況を考えるとかなり難しい状況と言わざるを得ません。
医療費(治療費)を安くするには、それだけ必要な物を大量生産できるようにし、製造にかかるコストの削減を行う必要があります。技術はあってもそれが使われないケースは、意外なほど多く存在しています。これらの事も考えると再生医療に関しては、まだまだ先になると考えられます。
なお、これは、あくまでも現在の状況で判断しただけになります。医療は、世界中で研究されており、そこには、大企業がスポンサーとなり、投資してくれているケースもあります。日本では、難しくとももしかしたら海外の方で、企業スポンサーをつけた研究所が大々的になにかしてくれる可能性もあります。
先は、わからないからこそ、このような可能性もあると私は思っています。
あとがき
iPS細胞に続き、遺伝子治療の技術まで出てきました。お恥ずかしながら、iPS細胞だけに治療の可能性を見ていましたので、遺伝子治療の方は知りませんでした。しかし、色々な治し方があるのですね。本当に勉強になりました。
これらの技術が普及するには、幾分か壁がありますが、ぜひ乗り越えてもらいたいですね。今後の内容に注目です。
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リンク:iPS細胞で難聴は治せるのか、難聴の原因から考える治療の問題