感音性難聴の事例

【騒がしい職場で聞きやすく】左耳のみ片耳難聴の方、クロス補聴器にて改善を行いました

深井 順一|パートナーズ補聴器

補聴器による聞こえの改善は、聞こえの改善と補聴器のFAQ、にまとめています。また、個々の症状(症例)ごとの改善は、お客様の聞こえの改善事例にまとめています。

40代、女性、片耳難聴の方から、補聴器のご相談をいただき、聞こえにくさの改善を行いました。

こちらの方は、幼少の頃、左耳が聞こえにくくなり、主に仕事上で聞きにくさを感じていました。

当店で聞こえの改善を行った結果

  • 騒がしい環境下でも声が聞きやすくなった
  • 会話していても聞き返す回数が減った
  • 飲食店でグループで食事をしていて会話がスムーズになった
  • 運転中、助手席の人との会話がスムーズになり、運転に集中できるようになった

との声をいただきました。聞こえにくさが改善でき、本当に何よりです。

では、どのように改善したのでしょうか。こちらの方の状況から改善まで、記載していきます。

お客様の状況

お客様の状況ですが、

  • 名前:M・Tさん
  • 年齢:40代
  • 性別:女性
  • 症状:片耳難聴(左耳、重度難聴)
  • 改善:クロス補聴器(耳かけ補聴器、耳あなクロス)
  • 備考:左耳に関しては、幼少の頃から聞こえにくい状態だった

となります。聴力は、以下の通りです。

お客様の実際の聴力。左耳がほとんど聞こえない。
お客様の実際の聴力。左耳がほとんど聞こえない。

左耳は、ほぼ何も聞こえない状態です。まさに片耳難聴、一側性の難聴となります。

仕事場が騒がしく、かつ接客をする業種でしたので、仕事をする際に主に聞きにくさを感じていました。片耳のみ難聴の方の場合、静かなところではわりかし聞こえる状況ではありますが、騒がしいところでは、どうしても聞きにくい側から来る声、音、合図に気がつきにくい傾向があります。

このようなお悩みをお持ちになるのは、飲食店で働いていたり、居酒屋で働いている方に多い傾向があります。周囲が騒がしい環境下で働くケースは、聞きにくさをどうしても感じがちです。

それらの場所で、聞こえにくさの改善を行うこととなりました。

聞こえを補う方針

こちらのブログをご覧の方には、もしかしたらおなじみかもしれませんが、このような聴力の場合、一般的な補聴器では、聞こえにくい耳を補いきれないため、聞こえにくい側に来る音を聞こえる耳に転送するクロス補聴器で補っていきます。

ということで、聞こえを補う方針は、クロス補聴器で補う。となります。

実際の対応

実際の対応については、状況に関してお伺いし、それを改善させるクロス補聴器に関して説明。その後、お店で耳かけ形のクロスを試聴しました。店頭での試聴の際、つけている方が聞きやすいなどの違いはあるものの、実際の場所でどうか。それを確認していただくため、耳かけ形のクロスを貸し出ししました。

その際ですが、こちらのお客さんは、和歌山から来られましたので、後日、少しでも来店になる手間を減らすため、予め耳の型を採取しました。クロス補聴器には、耳かけ形の補聴器、クロス、耳あな形の補聴器、クロスがあり、耳あな形のクロスにする場合は、耳の型を採取しなければなりません。

しかし、初日の段階で、型取りをしておけば、あとは、電話やメールでどのようにするかを相談できるため、来店いただかないとできないことは、一度で全て済ませて対応しました。今後のやり取りを楽にするためです。

耳かけ形のクロスを貸出し、日常生活や実際の職場で使用いただいたところ

  • 聞こえない側の左方向から話しかけられても気づくようになり、会話もしやすい
  • 駅や電車内のアナウンスの音が聞き取りやすい
  • 車で運転中、助手席の相手との会話ができるようになった

との評価をいただきました。ある程度、聞こえにくさが改善できるということで、本格的にどの形状にするのか。その選定をしていくことになります。

実際の選定

実際の選定に関し、お客さんからは、形状に関しては、特にこだわりはなく、効果重視でお考えでした。結論から言いますと、耳の状況と効果重視というご希望より、耳あなクロス、耳かけ補聴器のミックスタイプに決定しました。

形状の選定

クロス補聴器で効果重視にする場合、クロス側(聞こえにくい側)を耳あな形にする必要があります。その際、選択肢としては、

  • 現行機種の耳あなクロス
  • 旧タイプの耳あなクロス

の2つがあります。

現行機種の耳あなクロスの特徴は、両耳とも耳あな形を作ることにあります。

現行機種の耳あな形は、聞こえる耳も聞こえない耳も耳あなにする必要がある。
現行機種の耳あな形は、聞こえる耳も聞こえない耳も耳あなにする必要がある。

こちらは、クロス側は良いのですが、聞こえる耳側につける補聴器に少々、厄介な問題が起こります。それは、

  • 耳をふさぐことによって起こるこもり
  • 耳がふさがれることによって聞こえにくくなりやすい

の2つです。耳の中にものを詰めると耳が詰まった感覚や自分の声がこもった感覚になりやすく、聞こえている耳ほど、そのような症状が強く出るようになります。

聞こえる耳に耳あな形をつくるとこのように耳が埋まるため、聞こえにくくなりやすい。
聞こえる耳に耳あな形をつくるとこのように耳が埋まるため、聞こえにくくなりやすい。

また、耳あな形を作るとこのような状態になりますので、耳がふさがれやすくなります。その結果、聞こえる側が聞きにくくなってしまう傾向があります。

赤い丸の部分に空洞を設け、なるべく聞こえにくくならないようにするが、限度がある。そのため、少し補聴器側を聞きやすくさせて改善させる。
赤い丸の部分に空洞を設け、なるべく聞こえにくくならないようにするが、限度がある。そのため、少し補聴器側を聞きやすくさせて改善させる。

上記の2点は、ある程度、耳の中が大きければ、補聴器自体に空洞を大きく作り、改善させることが可能です。しかし、女性の方や耳がそれほど大きくない方は、空洞を設けられず、聞こえにくさを感じやすかったり、自分の声が大きく響く感覚を得たりします。

一方、旧クロスのタイプは、このような形状になります。

ミックス形の良いところは、耳かけの補聴器で、耳の中がふさがれないことにある。
ミックス形の良いところは、耳かけの補聴器で、耳の中がふさがれないことにある。

聞こえる耳に耳かけ形補聴器を装用し、クロス側は、耳あな形のクロスを装用するのが、旧型の特徴です。

こちらの耳栓のように耳を塞がないものを使用するため、先ほどの欠点がない。
こちらの耳栓のように耳を塞がないものを使用するため、先ほどの欠点がない。

聞こえる耳側を耳かけ形補聴器にできると、このように気軽に穴を設けられ、上記にあった

  • 耳をふさぐことによって起こるこもり
  • 耳がふさがれることによって聞こえにくくなりやすい

というのは、無くなります。クロス側は、耳あな形にすることで効果を最大限大きくし、そして、補聴器側は、このようにして、理想な形にできるのが、このミックス型の特徴です。

ただし、欠点としては、電池の寿命が短いという点があります。上記のような写真のサイズですと一日7時間ほどの使用で2~3日ほどしか保ちません。耳の状況からすると理想の状況ですが、このような欠点があります。

M・Tさんの状況を見る限りですが、両耳とも現行機種の耳あな形を作るには、小さく、聞こえにくくなる可能性があったため、耳かけ補聴器、耳あなクロスの選択を行いました。

なお、この形状の場合、厳密には

ミックス形の小型タイプは、この組み合わせ。形状は、なるべく小さくできるが、その代わり、電池の寿命が短い
ミックス形の小型タイプは、この組み合わせ。形状は、なるべく小さくできるが、その代わり、電池の寿命が短い

の小型タイプと

ミックス形の大きめのタイプ。こちらであれば、大きい電池が使用できるため、電池の保ちを小型タイプより、1.5倍にできる。
ミックス形の大きめのタイプ。こちらであれば、大きい電池が使用できるため、電池の保ちを小型タイプより、1.5倍にできる。

の大きめのタイプがあります。上記のものは、小さい代わりに電池の使用量が少なくなり、大きいタイプのものは、全体的に大きくなる代わりに電池の保ちも良くなります。

形状や電池の持ちに関してもお話しした結果、耳の中に入れた装用感や形状を優先し、小さいタイプに決定しました。

選択後の聞こえは概ね良好

メールで幾度かやり取りを行い、補聴器に関して形状を耳かけ形補聴器、耳あなクロスに決定。その後、そのままお渡しとなりました。調整を行い、実際に使用いただいた感想としては、

  • 音の響きもほとんど響かなくなり、自然に感じるようになった
  • 騒がしい店でカウンターに座って見ると聞きにくい側からの音が聞こえるようになった
  • 車の中での会話はしやすい
  • テレビや音楽の音量を無意識に以前より下げていた
  • 聞き返す回数も減り、顔が明るくなった

とのことでした。耳かけ形のクロスである程度、効果が出ていましたので、こちらにすることでより効果を感じていただけました。聞こえにくさが改善でき、何よりです。

お客様の評価

補聴器をご購入後、改めて補聴器を使用した状態に関して、お伺いしてみました。その結果

co-e-t-m03

との、評価でした。

なお、私のところに訪れた理由については

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とのことでした。評価いただき、誠にありがとうございます。そして、聞こえにくさを改善でき、何よりです。

なお、実際にM・Tさんからいただいたアンケートに関しては、以下の通りとなります。

まとめ

以上、M・Tさんの症例でした。片耳のみ聞こえにくい状態で、聴力低下が大きいため、一般的な補聴器を聞こえない耳に装用しても効果が望みにくいタイプの方です。そのため、クロス補聴器にて改善を行いました。

離れたところからのご相談とあり、初めにできることをさせていただき、メールで幾度かやりとりする形になりましたが、現状聞こえにくい状態に関して、いくつか改善でき、本当に何よりです。

実際には、改善できているところ、できていないところがあるかと思いますが、今現在感じている不自由な部分を改善でき良かったと感じています。

この度は、ご相談いただき、ありがとうございました。そして、これからもよろしくお願い致します。

ABOUT ME
深井 順一|パートナーズ補聴器
深井 順一|パートナーズ補聴器
補聴器を使っている人が対応している補聴器専門店・代表
1986年7月1日生まれ。生まれつきの難聴者で7歳の頃に補聴器を使用、補聴器の販売会社へは2006年に就職し、7年間勤め、2年間の空白と準備期間を経て、2016年に独立。2024年現在、補聴器使用歴は31年、補聴器販売業の従事歴は16年、お店の継続歴は8年に。現在は120名以上の既存のお客様のサポートと、どのようにしたらより聞こえを改善できるのかの勉強、試行錯誤をよくしています。
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