メニエール病の事例

突発性難聴により聞きにくくなった方、バイクロス補聴器にて改善しました

深井 順一|パートナーズ補聴器

聞こえの改善や補聴器のことについては、【FAQ】聞こえの改善と補聴器のFAQへ。お客様の改善事例は、聞こえの改善成功事例へどうぞ。

30代、女性。6年ほど前に突発性難聴になり、聴力低下した方、バイクロス補聴器にて改善を行いました。当店で改善を行なった結果

  • 騒がしい中は、ある方が聞きやすい
  • 聞こえない側に入られても聞こえることが増えた
  • つけることで精神的にも安心感がある

とのことでした。左側の聴力低下が大きく、聞こえない側から話された時に気がつかないことや聞きにくいことがあり、コミュニケーションが取りにくい状態でした。それらの部分の改善を行い、現状をよりよくすることができました。

では、どのようにして改善をしていったのでしょうか。やっていったことに関して載せていきます。

お客様の状態

  • お名前: Y ・A さん
  • 年齢:30代
  • 性別:女性
  • 聴力:右、軽度の難聴、左、重度難聴
  • 症状:右、メニエール病、左、突発性難聴
  • 備考:突発性難聴は、6年ほど前に発症したが、治らず
  • 備考:メニエール病も2〜3ヶ月前に発症し、治療は完了

となります。

聴力に関しては、このようになります。

左耳が、重度の難聴で、右耳は、軽度の難聴に入るか、入らないかの瀬戸際のラインです。

0〜10dBが一般の人が聞こえている数値、0〜24dBが正常の範囲内。25〜49dBが軽度、50〜69dBが中等度の難聴、70〜89dBが高度、90dBより下が重度となる
0〜10dBが一般の人が聞こえている数値、0〜24dBが正常の範囲内。25〜49dBが軽度、50〜69dBが中等度の難聴、70〜89dBが高度、90dBより下が重度となる

耳については、少し複雑なのですが、左耳は突発性難聴により、失聴。右耳は、メニエール病により、少し聴力が低下した状態です。どちらも発症時には、病院さんを受診し、治療を行いましたが、残念ながら、症状に関しては、改善しない状況でした。

左側の聴力低下が非常に大きいため、左側から話された時や騒がしいところでのお話。それらが主に聞きにくい状況でした。右側に関しては、聞きにくさは感じていない様子でした。

左側からの場合、話されても気がつかないこともあり、無視しているわけではないのですが、結果的には、そのように見られたり、聞こえないことによって徐々にコミュニケーションそのものがしにくくなってきた状況でした。

そのため、それらの部分をよりよくしていくこととなります。

どう改善させるか

補聴器で一番重要なのは、どのように改善させるか。となります。

まず、左側の聴力は、非常に低下しており、補聴器を装用して改善させることがほぼ不可能です。そのため、まだ聞こえる耳側へ転送させるクロス補聴器orバイクロス補聴器、どちらが良いかを考えていきます。

クロス補聴器とは、片耳が聞こえており、もう片耳が重い聴力の方が使用する機器です。簡単に言えば、聞こえる耳側へ音を転送するだけのものとなります。

一方、補聴器の世界には、バイクロス補聴器というものが存在します。これは、聞こえない耳側の音をまだ聞きやすい側に転送し、かつ、まだ聞きやすい側の耳も補聴器で聞こえを補うというものです。

こちらの方の場合、言い換えれば、音を転送させるだけで良いのか(クロス補聴器が良いのか)、それとも、少し低下している右側も補えるバイクロス補聴器の方が良いのか。それを考えていきます。

その場合ですが、上記の聴力図(オージオグラム)では、わかりづらいため、補聴器ベースに聴力を変換していきます。

補聴器の世界には、補聴器を装用した状態で、どのくらい聞こえが改善できているのか。補聴器を装用した状態とそうでない状態で、どう差があるのか。それを可視化するツールがあります。

そして本来の使い方ではないのですが、こちらを使うことにより、補聴器を装用した際に改善できる数値と現状を比較することで、まだ聞こえやすい側を補った方が良いのか、そうでないのかがわかりやすくなります。

実際にやってみるとこのような結果でした。

まず、補聴器は、いま現在、30〜40dBの間までしか上げることができません。実際には、無理に大きくすればあげられますが、そうしますと、一部の音が大きすぎたり、音が入りすぎて逆に何を言っているのかがわかりづらくなる傾向があります。

赤い△が補聴器を装用して改善できる数値。その数値より上は、なかなか改善がしづらい。
赤い△が補聴器を装用して改善できる数値。その数値より上は、なかなか改善がしづらい。

それらの状況から、30〜40dBくらいまでしか改善できないのですが、その数値と比較すると、非常にわずかであることがわかります。

そして、右側からのお話は、比較的わかるということもあり、まずは、クロス補聴器で改善させていく。という風に決めていきました。

私の場合、軽度の難聴の方ほど聴力ベースでの判断は、難しくなるため、補聴器ベースに数値を変換し、どうしたら良いかを考えています。

実際の対応

こちらに関しては

  • 初回時の相談
  • 機器決め
  • クロス補聴器で補うか、バイクロス補聴器で補うか
  • よりよく改善させるために

の項目に分けて記載していきます。

初回時の相談

まず初めは、上記の説明を行い、まずは、クロス補聴器の試聴、貸出からスタートしました。クロス補聴器に関してお問い合わせいただいたこともあり、こちらから、行なっていくこととなります。

日常生活上で使っていただいた結果

  • 聞こえない側からの音や音声が聞こえるようになる
  • あると聞きやすくなり、安心感もある
  • 外出時や今まで聞きにくいと感じていたところではつけていった

とのことでした。相談当初は、主婦でしたので、家の中では、静かなこともあり、そこまで聞きにくさを感じることは少ないのですが、外出時や外でお話しする機会がある際に聞きにくさを感じやすく、それらの場所では、つけて生活されていました。

ある方が、聞きやすくなり、かつ、安心感もあるとのことで、どのような機器が良いのか。その選定に移っていきます。

クロス補聴器の機器選定

ということで、クロス補聴器の機器選定ですが、

基本的には、このようになります。クロス補聴器には、

両方とも耳にかけるタイプ

両方とも耳の中に入れるタイプ

耳かけ補聴器、耳あなクロスの三つがあります。

それぞれの特徴をまとめたのが上記のものです。まず、このような聴力の場合ですが、残念ながら、両耳とも耳の中に入れるタイプは、合いません。聞こえる耳側が聞こえなくなる可能性が高いこと、そして、声がこもったり、噛む音が大きくなってしまい、食事の際に何を言っているのかよくわからなかったりします。

その点がありますので、耳の中に入れるタイプは、残念ながら合わない状態となります。そうしますと、両耳とも耳にかけるタイプか、耳かけ補聴器、耳あなクロス、の2択になります。

聞こえの効果を一番にお考えだったため、こちらの方は、耳かけ補聴器、耳あなクロスの方にしました。

ただ、こちらには、2種類あるのですが、

少しでも扱いやすい、こちらの方を選択しました。

ちなみにはじめに試聴したのは、

この形状で、効果を確認したのちに形状決定となります。

クロス補聴器で補うか、バイクロス補聴器で補うか

実は、形状選定と同じく同時並行で、クロスか、バイクロスか、どちらが良いのかも考えていました。ちょうど、お客様からも、よりよくなるのであればやってみたいということでしたので、実際にバイクロスにしてみて、試聴してみました。

クロス、バイクロスは、同じ機械で、中の設定さえ変更すれば、簡単に切り替えられる。
クロス、バイクロスは、同じ機械で、中の設定さえ変更すれば、簡単に切り替えられる。

クロス仕様、バイクロス仕様は、同じ機械で、中の設定を変えるだけでできますので、そのまま同じ機器で試すことができます。

この場合、ポイントがいくつかあるのですが、

  • ①どこまで改善したかを可視化すること
  • ②体感的に音が大きくなりすぎないこと(使える範囲内であること)
  • ③実際に日常生活、職場での聞こえはどうなのか

の三つを確認することです。

補聴器には、補聴器を装用することで、どのように聞こえているのか。それを可視化するツール(先ほどの音場閾値測定のことです)があるのですが、それで測ってみると、このような結果でした。

△が補聴器なしの状態。▲が補聴器ありの状態。ほとんど同じか、補聴器なしより少し良いか程度。
△が補聴器なしの状態。▲が補聴器ありの状態。ほとんど同じか、補聴器なしより少し良いか程度。

見方は、オージオグラムと同じで、横が音の高さ、縦が音の強さになります。上にあると聞きやすく、どの音の高さがどのように聞こえているのか。それを理解することができます。

そして、判断の方法が非常にわかりにくいのですが、基本的に改善できる範囲内まで改善しているか。そして、現状は、どうなのかをみます。補聴器で改善できる範囲より、ほとんど上に来ているため、この場合は、使うことにより、より音は聞きやすくなっている。という部分しかわかりませんね。

では、お客様の評価は、どうかと言いますと、以前より、よく聞こえるようで、よりよくなった感覚がある。とのことでした。音が大きすぎる、うるさすぎる感覚は、ないようでしたので、そのまま日常生活でも様子を見ることにします。

すると、その状態の方が、より良くなることから、バイクロスへ変更していくこととなります。

なお、そうすると形状選定に関してどうなの?という方もいるかと思いますが、基本的にバイクロスにしても、上記のような聴力の方の場合、形状ごとの特徴は、変わらない状態になります。

さらに聞こえを改善させるために

バイクロス補聴器で改善していくにあたり、より良くさせていくため、こちらでは、

こちらは、Cシェルと呼ばれるもの。ちゃんと音を伝えるためには、このようなものを使った方がより良くなることが多い、
こちらは、Cシェルと呼ばれるもの。ちゃんと音を伝えるためには、このようなものを使った方がより良くなることが多い、

このような道具を作り、さらに改善させていきました。その理由ですが、クロス側をより改善させていくためです。

まず、今現在のクロス補聴器の欠点ですが、

このような耳せんを使うため、ある一定の音は、抜けてしまうことです。

一般的に耳をしっかり塞ぐイヤホンのようなものは、ベントなしに該当する。それと比較すると音が低くなると低くなるほどベント効果(音の減少効果)が強くなっているのがわかる。
一般的に耳をしっかり塞ぐイヤホンのようなものは、ベントなしに該当する。それと比較すると音が低くなると低くなるほどベント効果(音の減少効果)が強くなっているのがわかる。

補聴器の場合、耳せんと言いますか、耳をしっかり塞ぐのか、ゆるくするのかでも聞こえ方というのは、簡単に変化します。それが、上記のものです。

クロス補聴器で使用する耳せんですが、オープンドームという名前になります。上記のもので、オープンドームをみていただきますと、2000Hzよりも高い周波数は、マイナスが少なく、むしろ音が大きくなるのですが、低い音になるとなるほど、音がかなり軽減されているのがわかります。

つまり、クロスで音を聞こえる耳側に送っても、耳せんの影響により、その部分の音が抜けてしまうことにより、聞こえの改善がしにくい。ということです。

特に低い男性の声が、500Hzあたりが中心のボリュームゾーンになるため、この部分を聞こえさせないとなかなか聞こえやすくなりません。女性の声は、比較的聞きやすかったりするのですが、低い方の声が改善しにくい状態です。

幸いにもこちらの方は、バイクロスという補い方ですので、耳せんで耳を塞いでも、おそらく聞こえにくさは、健聴の人ほど、出ることはないだろう。と読み、そのままより改善していくこととなります。

そして、結果としては、それを行い、さらに改善ができました。

再び測定。聞きにくくなることもなく、数値は、良好。少し良すぎる気もするが、体感としては、良いようなので、このままの設定に。
再び測定。聞きにくくなることもなく、数値は、良好。少し良すぎる気もするが、体感としては、良いようなので、このままの設定に。

補聴器を装用した状態ですが、このようになります。日常生活や職場でも使っていただいたところ、懸念していた装用前より聞きにくくなる。というのはなく、かつ、より聞きやすくなったとの評価でした。実は、あのような耳せんを使うと、聞こえやすい耳側の方も音の伝わりがよくなりますので、結果に関しては、よりよくしやすくなります。もちろん、少し音を整えた部分もありますので、その部分も影響しているのかもしれません。

残念ながらクロス側のみの聞こえを調べるということはできないため、あくまでも体感になってしまうのですが、体感的に音が大きくなりすぎず、かつ、聞こえに関しては、より良くなった。ということで、この状態で使っていただくこととなります。

これで、一旦、改善は、終了ですね。

実際にご購入になったお客様の声

実際にご購入になったお客様の声に関していただけましたので、こちらに関しても記載していきます。

どのようなことでお悩みでしたか?

実際に補聴器をつけてみていかがでしょうか?

このお店で購入した理由はなんでしょうか?

実際にいただいた内容

ご協力いただきまして、誠にありがとうございます。

改善のポイント

こちらに関しては、いくつかあるのですが、

  • 迷った場合は、補聴器ベースにして判断する
  • 軽度の場合は、数値化+体感を理解し、どこまで改善できるかを推測する
  • クロスを使う場合は、できればクロス側の欠点も解消させる

の三つです。

迷った場合は、補聴器ベースにして判断する

軽度の難聴の場合、どうしても聴力ベースだと判断がつきにくいため、その場合は、補聴器ベースに変換し、一般的に改善できる数値と比較するとわかりやすくなります。

わかりにくい場合は、分かりやすい指数に変換するということですね。

実際には、今回の判断は、初回時、間違えましたが、気になる場合は、実際に試してみる。というのも有効なやり方です。

軽度難聴の場合は、数値化+体感を理解し、どこまで改善できるかを推測する

軽度難聴の場合、一般的に言われている改善値よりも改善できるケースをいくつか確認しています。

その場合は、補聴器がうるさすぎて使えないということがない範囲内であることを確認し、聞こえの効果を数値にしてみて、どのような状況かを確認しながらやると、状況に関しては掴みやすくなります。

こちらの方もそのように行い、なるべく聞きやすくなるよう改善させました。体感を頼りに記録、ログを取るといえばわかりやすいかも?

クロスを使う場合は、できればクロス側の欠点も解消させる

最後は、こちら。実際にやったことは、上記の通りです。なぜ行うのかは、その部分を解消できた方がより聞こえやすくなるからですね。聞こえにくいより、聞こえたり、より聞きやすくなる方が良いのは、いうまでもありません。

なお、人によっては、実際に聞きにくくなっていないのかの測定や試聴を通じ、どのような結果だったのかも確認する必要があります。

こちらは、あくまでもオープンドームを使う場合における欠点ですので、それ以外の耳せんを使用されている場合は、気にする必要はありません。

今回のまとめ

ということで、片耳が重度難聴、片耳が軽度の難聴の場合における改善例に関して記載していきました。片耳が突発性難聴、もう片耳がメニエール病になった方というのは、初めてですので、より良くできて、こちらとしては、何よりです。

聞こえない側は、重度の難聴とあり、残念ながら聞こえなくなった耳に音を入れても改善しにくい状態です。そのため、まだ聞こえる耳側へ音を転送する補聴器で改善させていくこととなります。結果的には、バイクロス補聴器で改善させ、より良くすることができました。

実際には、メニエール病の場合、音を入れても大丈夫なのかどうか確認しながら行う必要があるのですが、初めの試聴時から、どうも大丈夫のようでしたので、そのまま補う方針にしました。

聞こえが良くなり、最終的には、仕事も始められ、より活動的になったようです。いや〜本当に何よりですね。

もちろん補聴器を装用したことにより、全ての部分が聞こえるようになった訳ではないのですが、今現在、感じている不自由のいくつかの部分で改善できよかったと思っています。

ということで、こちらの内容がご自身の状況を改善させるヒントになれば幸いです。

ABOUT ME
深井 順一|パートナーズ補聴器
深井 順一|パートナーズ補聴器
補聴器を使っている人が対応している補聴器専門店・代表
補聴器のお店には珍しい難聴の補聴器販売員です。生まれつきの難聴者で7歳の頃から補聴器を使っています。補聴器の販売員としての知識、技術に加え、一人の難聴者が自分自身の聞こえを改善した知識、技術も組み合わせながら、聞こえの改善、補聴器のご相談をしています。
記事URLをコピーしました