【実例】突発性難聴で、片耳聞こえない(音が響く)方を補聴器で改善
50代男性。3〜4年前に発症した突発性難聴により、左耳が聴力低下し、今現在、聞きにくさにお困りとの事から、ご相談を承りました。
現状に関してお伺いしてみますと、聞きにくい側から話された時や雑踏の中でのお話などは、わかりづらく、改善できるならしたいとの事でした。
当店でご相談いただいた結果
- 聞きにくい側からくる音がわかりやすくなった
- 騒がしい中でも理解しやすくなった
との事でした。状況がより良くなり、何よりです。
では、どのように改善させていったのでしょうか。こちらに関して記載していきます。
お客様の状態
お客様の状況ですが
- お名前:A・Kさん
- 年齢:50代
- 性別:男性
- 聴力:右は健聴、左は中等度難聴〜高度難聴
- 症状:突発性難聴により、聞きにくく
- 備考:左側は、音が入ると歪んで聞こえる
となります。
聴力は、このようになります。右側は、正常のレベルですが、左側は、中等度難聴から、高い音に関して高度難聴になります。
耳の状況に関してお伺いしてみますと、左側に関しては、聞きにくさの他に大きな音が入ると歪んで聞こえたり、不快な感覚で聞こえるとの事でした。
日常生活でも大きい音については、聞こえる事があるのですが、聞こえてくる音は、不快に感じ、響く感覚も感じるようです。
聞きにくさの部分については、聞きにくい側からの呼びかけに気がつかなかったり、かつ、周囲が騒がしくなると聞きにくさがさらに上がってしまうとのことでした。
という事で、それらの状況を踏まえ、改善させていくこととなります。
A・Kさんを改善する案
改善に関しては、
- 基本的な改善思考
- 閉塞感と防音
の二つに関して載せていきます。
A・Kさんの改善策
A・Kさんの場合は、突発性の難聴になり、聞きにくくなったケースとなります。この突発性難聴は、聞きにくくなった後、様々な状態になります。
基本的に補聴器で聞こえを改善しようとした場合、まず、考えるのは、聞こえなくなった耳側に補聴器を装用する事です。
しかし、補聴器を装用して聞きにくさを改善できるのは、概ね、このくらいの聴力の方です。聴力としては、中等度くらい。という状態でしょうか。
突発性難聴の場合、聞きにくくなる側の耳は、このように大きく低下したり、
または、A・Kさんのように、難聴レベルは、そこまではいかないものの、聞こえなくなった耳側が極端に響く、その耳側に音が入ると、不快に感じる。というケースもあります。
このようなケースは、聞こえにくくなった耳側に補聴器を装用しても、うまく改善ができません。
そのような場合は、クロス補聴器。というもので、改善してあげると改善しやすくなります。
クロス補聴器とは、聞こえる耳側で全ての音をきく補聴器です。
聞こえる耳側には、補聴器。聞こえない耳側には、クロスをつける事で、聞きにくい側からきた音を聞こえる耳側に常時、転送してくれるようになります。
片耳のみ聞きにくくなると、このような事が起こるようになります。
残念ながら音の方向感覚だけは、改善できないのですが、クロス補聴器であれば、それ以外の部分を良くする事ができます。
一部の突発性難聴は、聴力が大きく低下したり、音の不快感。響きがかなり強く出るケースがあります。
そのようなケースは、クロス補聴器で改善すると状況を良くしやすくなります。
閉塞感と防音機能
また、考えるのは、聞こえなくなった耳側をどうするか。というところです。
A・Kさんは、聞こえなくなった耳側に音が入ると不快感や歪む感覚があるとの事でした。
理想を言えば、クロス補聴器で聞こえを改善させつつ、防音耳せんのような役割ができれば、ベストという事ですね。
そうすれば、聞こえにくい耳側には、音が入りづらくなる事で、不快感を減らせ、聞こえる耳側には、聞こえにくい側にくる音が転送され聞こえるようになる。とても理想的です。
しかし、聴力上、それをするにはある欠点があります。
中等度難聴くらいの方の場合、イヤホンを耳の中に入れると耳がふさがった感覚、あるいは、ご自身の声がこもって大きく内側で響くような感覚を感じる事が多くなります。
つまり、防音を重視して、耳をしっかり塞ぐのか、それとも塞ぐことによって起こる不快感を重視して、耳を塞がないのか。このどちらかを選ぶ必要があります。
その点も考えて、改善に関してしていくことになります。
実際の対応
初回時の対応
初回は、まず耳の状況に関して把握。その後、どのように補っていくか。その点に関してお話ししました。上記の改善の考えをお話し、実際にクロス補聴器で改善していくこととなります。
ちょうどこちらにご来店になるきっかけですが、クロス補聴器であれば自分の状況を改善できるのではないか。とお考えだったようですので、クロス補聴器に関して、ご説明したのち、実際に試していくことになります。
クロス補聴器には、いくつか形状があるのですが、初回時に貸したのは、こちらです。
実際に幾日か試していただくと
- 聞きにくい側に入られてもわかる事が増えた
- 騒がしい中でも聞こえる事が増えた
などとクロス補聴器があることにより、よくなるとの事で、クロス補聴器の選定を考えていきます。
クロス補聴器の選定
クロス補聴器には
主にこの通りになります。
クロスには、両耳とも耳にかけるタイプ
耳かけ補聴器、耳あなクロスタイプ
両耳とも耳あなタイプがあります。
両耳とも耳あなタイプは、聞こえる耳側が聞きにくくなってしまうため、選択肢としては、実質
- 両耳とも耳かけクロス
- 耳かけ補聴器、耳あなクロス
の二つになります。
この二つの違いですが、聞こえが改善できるところが、少し異なります。
両耳とも耳にかけるタイプは、広い範囲で音を聞く傾向があり、離れたところからの呼びかけや会議、ミーティングといった場所で、聞きやすくなりやすいです。
逆に騒がしいところですと、周囲の音を拾いすぎるせいか、少し、効果が落ちる傾向があります。
そのため、オフィスで働いている方や会議やミーティングで特に困りやすい方には、オススメです。
耳かけ補聴器、耳あなクロスのタイプは、全体的に聞きにくさを改善できるのが特徴です。
特に騒がしいところでの効果は、まだ、こちらの方が良い。と評価される方が多くいます。
A・Kさんの場合、結論から言いますと、
耳かけ補聴器、耳あなクロスに決定になりました。
騒がしい中での聞き取り改善を重視したいとの事で、こちらになりました。
もちろん、ある程度、静かなところでも効果を確認され、全体的に改善ができるとご自身で体験いただいたためでもあります。
実際には、こちらのタイプは、
- 電池の消費は大きいが形状を小さくできるタイプ
- 形状は大きくなるが、電池の持ちををよくできるタイプ
の二つがあります。
A・Kさんは、形状は気にならないとのことでしたので、こちらにしました。
実際にこのタイプでも貸し出しを行い、問題なく使えることも確認し、電池の持ちをよくできるタイプに決定となりました。
防音機能と耳の閉鎖感
さて、こちらですが、上記の改善に記載した通り、防音機能と耳の閉塞感に関しては、両立ができません。そのため、どちらかを選択する必要があります。
しかし、そもそも一般的に作った場合と軽減させるために製作する場合で、防音機能と閉塞感にどのような差が出るのか。全く想像がつかない状態でした。
そのため、実際に作りつつ、修正を加えていくことになります。いわゆるトライアンドエラーってやつですね。
まず、はじめに作ったのは一般的に作るタイプです。ちょうど、上記の写真のようなものですね(上記のものは、あくまでも模型です)。
その場合、聞こえにくい側の閉塞感およびこもった感覚と防音機能に関してですが、こもった感覚、閉塞感は、結構感じるようでした。
そして、試聴で貸し出しした後、防音機能に関して確認したところ、幾らかは、軽減されるようですが、大きい音は、意外に通るようです。
しかし、こもった感覚、ご自身の声が響く感覚が強いことから、そちらに関して軽減したいとのことでした。
ということで、聞こえない耳側につけるクロス補聴器に関して同形状をさらに修正。
形状を少し小さくしたり、耳の中に入る部分を軽減したりしたのですが、2回目は、一回目とあまり変わらず。
そのため、次は試聴機のような形状にすることに。
試聴機の場合、様々な人に合わせられるよう、それぞれの耳せんを選べるようになっています。
普段は、耳をしっかり埋める耳せんを選ぶのですが、それ以外に、耳を塞がない耳せんもありますので、それでこもり、響きといった要素を軽減します。
実際の状況は、このようになります。こうすると音は通るのですが、こもる感覚、響く感覚は、ないとの事で、そちらを行うことにしました。
試聴機仕様の場合、耳の形をとったものではないため、耳から外れる可能性が否めなかったのですが、幸いにも耳の形上、それが起こりにくい状態でした。
実際に製作後、幾日か試聴期間を設けて使っていただいたところ
- ご自身の声の感覚が響かない、こもらない
- 耳から落ちる様子はない
- 聞こえに関してもちゃんと改善される
ということがわかり、この状態で決定となりました。試行錯誤して良い状態にでき、こちらとしては、何よりです。
お客様の声
ご利用になったお客様へ当店で相談してみてどうだったのか。お伺いしてみました。
どのようなところでお困りでしたか
補聴器をお使いになってみていかがでしょうか
このお店で購入(相談)したのは、なぜですか
実際のアンケート
アンケートのご協力、ありがとうございます。
A・Kさんの改善ポイント
A・Kさんをよくしたポイントですが
- 改善できるもので、改善した事
- ご自身に合うものを制作した事
の2つです。
改善できるもので、改善した事
初めは、こちらになります。
A・Kさんの場合、聴力低下がそれなりにあるものの、もし、その耳に音が入っても、音が響かなかったり、大きな音が不快に感じないのであれば、一般的な補聴器をその耳に装用して、改善する方法もあります。
しかし、A・Kさんの場合、その耳に音が入ると不快な感覚や響きが強くなってしまうことから、クロス補聴器にて、改善しました。
このような耳の方は、一定の数でおり、どのような人も聞こえなくなった耳側に補聴器を装用することで、聞こえを改善できるとは、限りません。
中には、耳の状況が特殊で、補聴器では、効果を出せない方もいます。
その部分を確認しつつ、効果の出る方法で、改善した事。それが、一番大きな改善ポイントです。
ご自身に合うものを制作した事
次は、クロス補聴器の形状に関する事です。
普段通りにクロス補聴器を作るだけであれば、そこまで考えなくても良いのですが、A・Kさんの場合は、聴力低下した耳側に大きな音が入ると、響きが辛くなってしまう。という状況でした。
その場合、クロス側をしっかり塞ぐか、それとも、自分の声の響きの部分を考慮して、そこは、あまりしない方が良いのか。これらを考えていく必要があります。
結果的には、ご自身の声の不快感の方が強くなってしまったため、この部分を軽減するようにしたのですが、それらの部分も含めて、ご相談できたのは、良い事だと、思います。
なるべく、ご自身の状況に合った。もしくは、使いやすいものを選べると、ベストになります。
改善のまとめ
A・Kさんの場合は、耳の状況を把握した上で、クロス補聴器で補っていきました。
聞こえにくくなった耳側に音を入れることで、不快に感じるのであれば、実質、聞こえない耳側を直接、補う方法は、余計に不快感を強くする事が多く、あまり良い方法ではありません。
そのため、聞こえる耳側へ音を転送するクロス補聴器で補っていくことにしました。かつ、防音機能と閉塞感などの関係について調べつつ、良い状況にしていきました。
よくを言えば、防音機能もつけつつ、聞こえも改善させたかったのですが、耳を塞ぐと非常に強いこもった感覚、閉塞感が出てしまうようで、A・Kさんの場合は、防音機能<閉塞感の軽減となり、ご本人の意思に沿うように行いました。
突発性難聴の場合、耳が特殊な状況になりやすく、一般の方より、閉塞感を感じやすかったり、音を聞いた時に歪んで聞こえる、異質に聞こえるというケースをみます。
かつ全ての突発性難聴の方にみられるわけではないのですが、一部そのような方もいますので、その状況を把握しながら、改善していくことが必要不可欠です。
ということで、こちらの内容がお役に立てば幸いです。