突発性難聴の事例

【実例】片耳のみ突発性難聴(中等度難聴)の方、補聴器で改善

深井 順一|パートナーズ補聴器

聞こえの改善や補聴器のことについては、【FAQ】聞こえの改善と補聴器のFAQへ。お客様の改善事例は、聞こえの改善成功事例へどうぞ。

50代、男性の方。数ヶ月前に突発性難聴になってしまい、聴力が低下してしまいました。病院で治療をおこなったものの、残念ながら聴力の改善は、できない状況でした。

片耳のみ聞きにくくなってしまったことから、職場での会議の際や聞きにくい側から呼ばれた際に気がつかないことがあり、改善のご依頼を承りました。

補聴器にて聞こえの改善を行った結果

  • 会議の際は、聞きやすくなった
  • 仕事の際は、あるとよくなる

などと現状で感じていた不便な部分をより良くさせることができました。

では、どのようにして改善させていったのでしょうか。その点に関して、まとめていきます。

お客様の状況

まず、状況ですが

  • お名前:A・Sさん
  • 性別:男性
  • 年齢:50代
  • 症状:突発性難聴
  • 聴力:中等度難聴
  • 備考:治療をしたけれども残念ながら治らず
  • 備考:耳鳴りもあり

となります。

聴力は、このようになり、片耳は、聞こえており、もう片耳が中等度の難聴になります。元々は、聞こえていたようですが、突発性難聴にかかり、中等度難聴まで下がってしまいました。

聞こえにくくなった直後、病院にいき、治療もおこなったようですが、残念ながら正常には戻らず。その後、治療以外に鍼の治療なども行うものの、全く変化はない状態でした。

現状、聞こえにくくなった耳側から話されたり、騒がしい中でのお話など、聞きにくいところがいくつかあり、主に仕事場で困りやすいとのことで、ご相談をいただきました。

ということで、早速、状況をよくしていきます。

改善の全体像と実際の案

片耳のみ難聴の場合、基本的によくさせる手段として

  • クロス補聴器を使用する
  • 聞こえにくくなった耳側に補聴器をつける

の二つの選択肢があります。結論から記載しますと、こちらの方は、聞こえにくくなった耳側に補聴器をつける方を選択しました。

このような聴力の場合、簡単に判断できるケースではないため難しい部分があります。そのため、補聴器とクロス補聴器の効果を比較しながら、どちらにするかを決めていき、最終的に、補聴器で改善させる方を選びました。

まず、耳の状況には、聴力の他、音声を理解する力がどのくらいあるのか。それを調べることができます。その結果は、

最良値が、50%以上ある場合(できれば70%くらい)は、補聴器を装用して、改善した方が良い傾向がある。
最良値が、50%以上ある場合(できれば70%くらい)は、補聴器を装用して、改善した方が良い傾向がある。

この通りでした。

片耳難聴の場合、基本的に聴力と明瞭度がどのくらいあるのかで判断していきます。

  • 聴力が重すぎる(90dB以下)の場合
  • 明瞭度が極端に低い(最良値が10〜30%)

などは、補聴器で補っても効果はかなり限られてしまうため(ほとんど効果がないケースが多くなります)、クロス補聴器という聞こえる耳へ音を転送する機器を使った方が聞こえを改善できるのですが、そうでない場合は、補聴器を聞こえない耳側へ装用する方が改善できる傾向があります。

聴力は、中等度難聴であり、補聴器でまだ補える範囲内です(補聴器は、基本的に90dBくらいまで低下すると改善の効果が薄くなります)。

しかし、わからないのが、このようなケースは、実は、クロスの方が改善できているケースも経験あります。そのため、補聴器とクロス、どちらの方がよくなるのかを考えながら、改善を行なっていきます。

実際の対応

こちらについては、

  • 初回時の対応
  • クロス補聴器か、補聴器か
  • 形状の選定
  • 最終調整

の四つについて記載していきます。

初回時の対応

初めにご来店いただいた際は、実は、突発性難聴の治療中にご来店されました。クロス補聴器や一般の補聴器など、様々な改善方法があるようだけど、どのように改善したら良いのか。その点に関して、理解されに来られました。

実際にどのようなケースでどのような改善方法が有効なのか。それらの部分を全てお話し、まずは、治療に集中していただき、仮に残念ながら変化がなかった場合に、再度、お越しいただくようにお願いしました。

その後、ご来店になり、耳の状況は残念ながら改善されなかったようで、耳の状況を把握しつつ、上記の内容をそのままお伝えしました。

まずは、もっとも改善されそうな【補聴器を聞こえにくくなった耳側へつける】という手法で改善させていくことに。そのため、まずは、耳にかける補聴器で改善をしました。

はじめに試聴した補聴器の結果。それなりに音は、入れたのだが、なぜか、数値が上がって来ず。ただ、聞きやすくはなっている様子だった。
▲が補聴器あり、△が補聴器なしの状態。それなりに音は、入れたのだが、なぜか、数値が上がって来ず。ただ、聞きやすくはなっている様子だった。

補聴器をつけた際の聞こえの改善度を表すものがあるのですが、その結果は、上記の通りです。補聴器の場合、いくつか改善の目安があるのですが、A・Sさんの場合

改善できると良い数値が赤い△になる。この図は、聴力図と見かたが同じで、上に行くと上に行くほど、聞こえが良くなる。
改善できると良い数値が赤い△になる。この図は、聴力図と見かたが同じで、上に行くと上に行くほど、聞こえが良くなる。

このくらいが望ましい状態です。

両方表示したのが、こちらなのですが、結果を見ると、そこまで達成しておらず、低い状態でした。しかし、初回から無理に入れず、補聴器についている音量調整である程度、調整できるようにして、試聴を始めることにしました。

数週間使っていただき、評価を聞いて見ると、

  • 聞こえない側からの音、呼びかけには少し反応しやすくなった
  • 会議の際などは、あると聞きやすくなっている
  • 仕事の際は、あると便利に感じる

ということでした。

ご自身でいくつか音量を大きくしたり、調整して使用されていたため、実際の聞こえの数値は、上記の数値よりもよく、適正数値、一歩前くらいまでで聞いていたようで、その状態とクロス補聴器の比較を行い、どちらが良いのか。さらに見ていくこととなります。

クロス補聴器か、補聴器か

まずこちらで明らかにしていくのは、実際にクロス補聴器で改善していくのが良いのか、それとも補聴器で改善していくのが良いのか。という部分です。

A・Sさんの場合、聞こえの改善もそうですが、耳鳴りもかなり強いようでしたので、その部分も含めての評価をしていく必要がありました。

初めにまとめて記載しますと、色々とやってみてわかったのは、

クロス補聴器側の評価は

  • 聞こえについては補聴器より良い傾向あり
  • 耳鳴りは、変化なし(強いまま)

という状態で、補聴器で聞こえを改善させた場合

  • 聞こえは、クロス補聴器より少し下になるが聞こえの改善はでできている
  • 耳鳴りは、静かなところはあまり変わりないが、少し音がある環境だと軽減される

という状況でした。

しかし、補聴器で聞こえを改善させる場合、少し数値が低いことも気になるポイントです。

初回時の状態で出てきたこちらですね。

多くの方は、初めでも目標値付近まで達成することが多いのですが、A・Sさんの場合は、なかなか上がりづらく、実際にどこまで改善できるのかが想像つきにくい状況でした。

そして、できれば両耳でバランスよく聞きたいとの要望もあったため、一旦、聞こえる耳側に補聴器を装用する方針でできる限りの改善を行い、その結果をみてから、改めて補聴器で改善する方針がいいのか、クロス補聴器で改善する方が良いのか。その最終判断をすることになりました。

補聴器の形状選択

片耳に補聴器を装用する場合、選択肢としては

このような状態になります。結論から記載しますと、耳あな型になりました。耳の型を採取して作る補聴器は、基本的な聴力改善が耳かけ形に比べ、少ししやすい傾向があり、先ほどの数値を測るものでも、数値がよくなりやすい傾向があるためです。

声がこもったり、自分の声が少し大きく感じたり、食事の時の音が大きく感じたりなどの欠点はあるものの、聞こえ改善の基礎値がよくなる傾向がありますので、それをおこなって、どこまで改善できるのか。まずは、それをみていくことになります。

最終調整と最終判断

実際に耳あな形補聴器を制作し耳に合わせていくと

はじめは、このくらい入れて、音声の理解度に関しては、

このくらいまで改善することができました。この状況下では、それなりに聞こえに関しては、改善でき、かつ、日常生活上で使用する上では、音が大きく感じすぎたりはない状況でした。

その後、もう少し改善できないかと私の方が感じ、なるべく目標値(平均35dB)くらいに持っていけないかと考え、調整していきます。

なぜか500Hzのところは、反応せず、それ以外は、概ね、目標値まで来ることができた。しかし、静かなところであれば、大丈夫だが、音が多い環境だと少し音が大きく、きつく感じるとのことだった。
なぜか500Hzのところは、反応せず、それ以外は、概ね、目標値まで来ることができた。しかし、静かなところであれば、大丈夫だが、音が多い環境だと少し音が大きく、きつく感じるとのことだった。

実際には、ここまで入れ、

50dBの部分だけ下がってしまったが、それ以外は、より良くなった。
50dBの部分だけ下がってしまったが、それ以外は、より良くなった。

音声の聞き取りに関してもここまで改善することができました。しかし、ここまで入れると音については強く感じ、少し疲れる様子が出てくるとのことで、調整に関しては、前のものに戻すことにしました。

そして、補聴器の判断に関しては、今後の伸び代を考え、補聴器で改善していくことにしました。

状況を確認したところ

  • 疲れると言っても、ものすごく疲れる訳ではないこと
  • 補聴器があることで、聞きやすくなっていること
  • 補聴器での改善目標値付近まで改善が今後見込めそうなこと

の三つから判断した結果です。特に疲れると言っても、すぐに疲れたり、ものすごく疲れる訳ではないということであれば、使い続けることで、補聴器の音や感覚になれ、改善目標値まで改善が今後見込めそうだったからです。

もちろん、ご本人の希望が両耳でバランスよくということと、できれば耳鳴りも少しでも改善できると良いというところも考慮した上での判断となります。

ということで、今現在の調整に関しては、ここまでとなります。

お客様の声

実際にお越しいただいた方へ、

  • どのようなことでお悩みでしたか
  • 実際に補聴器をつけてみてどうでしたか
  • このお店で購入(相談)したのは、なぜですか

とお伺いしてみました。

どのようなことでお悩みでしたか

実際に補聴器をつけてみてどうでしたか

このお店で相談(購入)したのは、なぜですか

実際のアンケート

アンケートのご協力ありがとうございました。

改善のポイント

今回、考えたポイントは

  • そもそもどの補い方がよかったのか
  • それぞれ気になる部分をピックアップ

の二つです。A・Sさん用にもっとわかりやすく記載するならば

  • クロス補聴器と一般補聴器、どちらの方が聞きにくさは改善されるのか
  • 耳鳴りに関しては、補聴器の場合、どの程度、軽減されるのか

の二つです。気になる要素をだし、それぞれ、どのように異なるのか。それを実際の感覚で比較できるようにしてあげて、より良い選択をできるようにしてあげたことでしょうか。

突発性難聴の場合、聞こえの改善もそうですが、耳鳴りも辛いものがあります。実際には、人によってその強さ、程度は、異なるようですが、A・Sさんは、結構辛い(強い)ようでしたので、それらの部分まで考え、改善を行いました。

それぞれ気になる部分がどのように異なるのか。そして、それらがその方にとって、どのような価値があるのか。それらを比較できるようにしつつ改善を行えたのが一番よかったかなと思います。

補聴器の判断基準は、単に聞こえだけではなく、それ以外の部分にも価値があるケースもあります。全体的にみれたのが、よかったかなと感じますね。

突発性難聴を補聴器で改善のまとめ

さて、まとめていきます。基本的には、改善のポイントでまとめた通りになりますが、片耳のみ難聴でその聴力が中等度の難聴の場合、どちらかというと、まだ補聴器で改善させた方が良いケースの方が多かったりするのですが、実際には、クロス補聴器と一般の補聴器、どちらの方が聞こえやすくなるのかを比較すると、選定に関しては、しやすくなります。

ただ、突発性難聴の場合、補聴器で改善できるケースもあれば、全く効果が得られないケースがあります。どちらかというと、補聴器で効果が得られないケースの方が、数としては、多いのですが、耳が活用できることから、今回は、補聴器で改善させていきました。

重要なのは、どの補聴器を選ぶかではなく、どのように改善させたらよりよくなるのか。望む結果になりやすくなるのか。を考えていくことであり、実際にそれをしていくことです。

特に判断基準の境目にあるような耳の状況の場合は、面倒な部分はあるかもしれませんが、確認していくとより良い結果になりやすくなります。

ということで、こちらの内容がお役に立てば幸いです。

ABOUT ME
深井 順一|パートナーズ補聴器
深井 順一|パートナーズ補聴器
補聴器を使っている人が対応している補聴器専門店・代表
補聴器のお店には珍しい難聴の補聴器販売員です。生まれつきの難聴者で7歳の頃から補聴器を使っています。補聴器の販売員としての知識、技術に加え、一人の難聴者が自分自身の聞こえを改善した知識、技術も組み合わせながら、聞こえの改善、補聴器のご相談をしています。
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