左右の聴力が異なる耳を補聴器で改善する【前編】〜聞こえの改善案〜

深井 順一|パートナーズ補聴器

聞こえの改善や補聴器のことについては、【FAQ】聞こえの改善と補聴器のFAQへ。お客様の改善事例は、聞こえの改善成功事例へどうぞ。

こちらのページでは、左右の聴力が異なる耳を補聴器で改善するというテーマで、前編となる聞こえの改善案について、まとめていきます。

左右の聴力が異なる耳の状況は、実に様々な耳の状態が考えられ、それぞれの耳の状況により、改善方法も異なってしまいます。

そして、そのような方の場合、どのような補聴器を選ぶか。というよりも、どのように聞こえを改善するか。という考え方により、聞こえの改善の8割が決まります。

こちらでは、なるべくわかりやすく聞こえを改善するポイントについて、まとめていきますので、仮にこのような聞こえの方がいましたら、参考にしてみてください。

後編:左右の聴力が異なる耳を補聴器で改善する【後編】〜バイクロスver〜

後編:左右の聴力が異なる耳を補聴器で改善する【後編】〜補聴器ver〜

左右の聴力が異なる方の聞こえにくさ

聴力レベルにより、聞きにくさは変わりますが、おおよそのイメージとしては、このようになります。

左右の聴力が異なる方の聞こえにくさですが、大体のイメージとして、このようになります。

ポイントは、聞こえにくい側からの音や音声がとにかく苦手だったり、その方向から話されると気がつかない。という特徴があります。

静かなところでは、聞こえている耳側がまだ聞こえているのであれば、正面や聞こえている耳側から話された場合は、わかるのですが、聞きにくい側から言われると、意外に気がつかなかったり、急に聞きづらさを感じます。

そして、距離が離れたりすると、急激に聞きにくさが強くなり、特に聞こえていない側から呼ばれたり、その方向からする音に関しては、ほとんど気がつきません。

音は、聞こえないと、それ以外の方法で知る方法がないため、気がついていないことに気がつかない。という状況である事も少なくありません。

さらに騒がしい環境になると、急に聞こえにくさが強くなるのも、このような聞こえの方の特徴です。周りの音で音声が邪魔されて、聞きにくさを感じやすくなります。

そして、周囲の人とのお話に関しては、聞こえている側にいる人は、まだ良いケースもあるのですが、聞こえない側に人が来られると、急に聞きにくさが強くなります。

ある程度、ご自身で席を決められる環境であれば良いのですが、会議の席で、予め座る位置が決まっていたり、選択ができないケースもあります。

そのような場合、聞こえない耳側に人が来ると、聞きづらさがだいぶ強くなってしまいますので、そういった精神的な気苦労を感じやすいのも、大きな特徴です。

このような聞こえの方は、とにかく聞こえない耳側からの音が死角になったり、聞きづらさを感じやすい。という特徴があります。

改善の要点

このような聞こえの方の場合、どれだけ聞こえない耳側の聞こえが改善できるか。で、聞こえの改善度、困り度の軽減度が決まります。

その事から、改善の要点としては、聞こえている耳側を改善しつつ、なるべく聞こえていない耳側の聞こえも改善する。という事が大事になります。

ただ、補聴器の場合、気をつけなければいけないのは、聴力の低下が少なければ、少ないほど、補聴器の恩恵を受けやすく、聴力低下が大きければ、大きいほど、補聴器による聞こえの改善の恩恵は、受けづらい事です。

そのため、今現在は、両方の耳に補聴器を装用して、聞こえを改善する方法とバイクロス補聴器、と呼ばれる特殊な補聴器で聞こえを改善する方法。

主にこの2つが存在します。

両方の耳に補聴器をつけて改善する

両方の耳に補聴器をつけて改善する。とは、一般的な補聴器を両方の耳につけて、聞こえにくさを改善する方法となります。

こちらの補い方ができると良い方は、一言でいうと、両方の耳に補聴器を装用して、効果がある方です。

  • 左右の聴力に差はあるが、そこまで差が大きくない方
  • 低下した耳側に補聴器をつけても、違和感が強くならない方

主にこのような方が該当します。

左右の聴力に差はあるが、差は大きくない方

左右の聴力に差はあるが、そこまで差が大きくない方とは、主にこのような聴力の方となります。

左右の聴力の差が、10〜15dBぐらいの差であれば、まだ左右の聞こえのバランスを整えやすく、聞こえにくい側に補聴器を装用する事で、何らか異質な感覚がない。という事であれば、両方の耳に補聴器を装用して、聞こえを改善できると良いです。

下に矢印がついているもの(↓)は、測定できる機器で、一番大きい音を出しても、反応がなかったものになります。主にスケールアウト(調べられる範囲を超えている)と呼ばれます。

ただし、聴力差が非常に大きいケース。例えば、このような聞こえの方の場合、聞こえにくい側の聴力低下が大きすぎるがあまり、聞こえにくい側に補聴器を装用しても、効果がほとんど見込めません。

補聴器は、残念ながら、どのような耳の状況でも、効果がある。というわけではなく、実際には、効果を比較的、得やすい耳と、そうでない耳で、だいぶ分かれます。

上記のような聴力低下が非常に大きいケースは、補聴器を装用しても、あまり聞こえるようになる感覚を感じず、聞こえにくいままである事から、このようなケースは、両方の耳に補聴器を装用する事は、推奨されていません。

あくまでも、両方の耳に補聴器を装用して聞こえを改善するケースは、両耳とも、そこまで聴力の差がなく、かつ、両耳とも補聴器を装用する事で、聞こえの改善が見込めるケースとなります。

低下した耳側に補聴器をつけても、違和感が強くならない方

もう一つの条件は、低下した耳側に補聴器をつけても、違和感が強くならない事。こちらも該当します。

左右の聴力が異なる耳の場合、いろいろな耳の状況が考えられ、元々、生まれつき聞こえにくい方、あるいは、遺伝でそういった耳の状況の方もいれば、片方が生まれつき、もう片方は、別の病気で聴力低下してしまった。というケースもあります。

そのようなケースの場合、聴力低下が大きい耳側に補聴器を装用すると、補聴器から聞こえてくる音の違和感が非常に強く、使えない方が、たまにいます。

そのような方は、両方の耳につけると、辛くなってしまいますので、そのような方は、両方の耳に装用して、改善するのは、避けたほうが良いです。

あくまでも、両方の耳に補聴器を装用して、聞こえを改善する方は、聴力低下した耳側にも、補聴器を使う事で、改善効果が見込める場合になります。

その点にご注意ください。

バイクロス補聴器をつけて改善する

バイクロス補聴器とは、かなり特殊な補聴器で、まだ聞こえている耳側には、補聴器をつけ、聞こえない耳側には、クロスと呼ばれる音の転送機器をつけ、聞こえない耳側にきた音を聞こえる耳側に転送して聞こえを改善する補聴器です。

補聴器の世界には、聞こえない耳側に直接、音を入れても、聞こえを改善できない耳の状況の方がおり、そのような方の状況を改善する事を目的に作られたのが、このバイクロス補聴器となります。

バイクロス補聴器による改善のイメージ。

聞こえにくくなった耳側に音を入れても、聞こえが改善できないので、まだ聞こえている耳側を活用し、その耳に音を転送して、わかるようにしたのが、バイクロス補聴器となります。

バイクロス補聴器が合う方は、聞こえにくい側が何らかの理由により、一般的な補聴器を装用しても、効果が見込めない方となります。

  • 聴力低下が非常に大きい方
  • 音声の理解度が極端に低い方
  • 聞こえてくる音が異質に感じてしまう方

主にこの3つのケースが該当します。

聴力低下が非常に大きい方

聴力低下が非常に大きい方は、わかりやすく、主に上記の方となります。

まさに、片方だけ聞こえている状態の方で、このようなケースは、聞こえない耳側に補聴器を装用しても、聞こえをうまく改善することができません。

そして、このような聞こえの方は、とにかく聞こえない耳側からの音がわからず、状況によっては、すぐ隣の人の声すら、わからない事があります。

ですので、このような方は、できれば、聞こえない耳側もわかりやすくするために、バイクロス補聴器で聞こえを改善できると良いケースの一つとなります。

音声の理解度が極端に低い方

聞こえない耳側に補聴器を装用したことがあるけれども、中には、音声の理解にほぼ繋がらなかった。という方もいます。

耳の場合、聴力以外にも、言葉がどれだけ理解できるのか。という音の認識の部分があり、その認識能力が低い場合は、補聴器を装用しても、ただ音が聞こえるだけになってしまい、音声の理解、あるいは、日常生活の改善に繋がりにくくなってしまいます。

そのようなケースにおいても、バイクロス補聴器は、有効です。

ただ、このような耳の場合、だいたい、聴力差が初めから、だいぶ大きかったり、3つ目の、音が異質に感じる。という事を感じているケースも多いです。

聞こえてくる音が異質に感じてしまう方

3つ目は、こちら、聞こえてくる音が異質に感じてしまう方です。

これは、左右別々の病気により、聞こえにくくなった方によく見られるケースで、低下している耳側に補聴器を装用しても、補聴器から聞こえてくる音が強く異質に感じてしまい、とても使えそうにない場合になります。

このような聞こえになる方は、

  • 突発性難聴により、聞こえにくくなった方
  • メニエール病により、聞こえにくくなった方
  • 原因不明の難聴により、聞きにくくなった方

に見られることがあります。

特徴としては、急に聞きにくくなる、急性の難聴というものがあるのですが、それにより、聞きにくくなり、さらに原因不明のようなケースは、このような聞こえ方をすることがあります。

こういったケースにおいては、バイクロス補聴器の方が有効です。

補足:それぞれの補い方の違い

こちらでは、補足として、それぞれの補い方の補足をしていきます。

  • 両耳に補聴器をつけるのとバイクロス補聴器は、どう違う?
  • 片耳に補聴器をつけるのと、バイクロス補聴器は、どう違う?

主にこの2つとなります。

両耳に補聴器をつけるのとバイクロス補聴器は、どう違う?

仮にそこまで、左右の聴力に差がなく、聞こえない耳側にも、補聴器が活用できる方の場合、気になるのは、両方の耳に補聴器をつける場合と、バイクロス補聴器は、どのように違いがあるのか。というところだと思います。

それに関しては、全体的に聞こえを改善できるか、それとも、音の方向感覚が得られない状態になるか。の違いになります。

バイクロス補聴器は、残念ながら、音の方向感覚に関しては、得ることができません。

音の方向感覚は、2つの耳を聞こえるようにして、初めて得ることができるものとなりますので、バイクロス補聴器の場合は、聞こえのシステム上、それができません。

ですので、そこまで聴力の差がなく、両方の耳に補聴器を活用できる方は、なるべく左右のバランスを整えて、使いやすくし、全体的に聞こえを改善できると良いです。

バイクロス補聴器は、あくまでも、何らか聞こえない耳側が補聴器では、補えない方に使うものとなりますので、その点にご注意ください。

片耳に補聴器をつけるのと、バイクロス補聴器は、どう違う?

仮に両方の耳に補聴器を使えない方の場合、気になるのは、片耳に補聴器をつけるのと、バイクロス補聴器は、どう違うのか。だと思います。

この点に関しては、聞こえない耳側の音を聞こえやすくするか、聞こえない耳側の音は、そのまま聞こえない状態にするか。の違いとなります。

片方のみ補聴器をつけた状態とバイクロス補聴器をつけた場合の聞こえの範囲は、このようになります。

片方のみ補聴器をつけた場合は、つけた側は、聞こえやすくなるのですが、実は、聞こえない側からの音や音声は、つけていない時よりは、聞こえやすくは、なるのですが、その効果は、だいぶ限定的になります。

一方、バイクロス補聴器をつけた場合は、より広範囲に音が入るようになり、その方向からの音や音声。それに気が付いたり、反応しやすくなります。

左右の聴力が異なる方の場合、特に気をつけたいのは、聞こえのデッドゾーンがある事です。

聞こえない耳側の特に斜め前と斜め後ろは、だいぶわかりづらく、音は、聞こえないと、それ以外の方法で気づくことができない性質も相まって、呼ばれても、全然、反応できなかったり、相手からすると、無視してしまっているような見え方をしてしまうことがあります。

その事により、誤解を受けたり、さらには、人間関係にヒビが入ってしまったりすることがありますので、できれば、そういったところは、なるべく起こらないように改善できると良いです。

左右の聴力が異なる方の場合、聞こえている耳側から話される事と、聞こえていない耳側から話される事の聞こえがだいぶ異なり、周りからの誤解をとにかく受けやすいので、その誤解が少なくなるように改善を考えられると、状況を改善しやすくなります。

まとめ

左右の聴力が異なる耳を補聴器で改善する【前編】という事で、こちらでは、改善案について、記載してみました。

上記の通り、左右の聴力が異なる方の場合、いろいろな耳の状況が考えられますので、両方の耳に補聴器を装用して改善する方法と、バイクロス補聴器を使って改善する方法。

それぞれ、どのような人がどちらに合うのか。について、記載してみました。

大事なポイントとしては、左右の聴力が異なる方の場合、特に聞こえない耳側をどう改善するか。になります。

まだ聞こえている耳側は、補聴器を装用して改善すれば良いのですが、聞こえない耳側は、場合によっては、補聴器を装用しても、改善できないケースがあります。

さらに、主には、この聞こえない耳側からの音や音声がわかりづらくなりますので、こちらの耳をどう改善するかが、聞こえの改善に大きく影響します。

その事から、どちらの方が改善できるのか。聞きにくさを減らせるのか。を考えて、改善できると良いです。

次回は、それぞれの改善方法に関する詳細を記載していきます。

後編:左右の聴力が異なる耳を補聴器で改善する【後編】〜バイクロスver〜

後編:左右の聴力が異なる耳を補聴器で改善する【後編】〜補聴器ver〜

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深井 順一|パートナーズ補聴器
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補聴器を使っている人が対応している補聴器専門店・代表
補聴器のお店には珍しい難聴の補聴器販売員です。生まれつきの難聴者で7歳の頃から補聴器を使っています。補聴器の販売員としての知識、技術に加え、一人の難聴者が自分自身の聞こえを改善した知識、技術も組み合わせながら、聞こえの改善、補聴器のご相談をしています。
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