メニエール病の事例

生まれつきの感音性難聴、メニエール病の方、バイクロス補聴器で改善

深井 順一|パートナーズ補聴器

聞こえの改善や補聴器のことについては、【FAQ】聞こえの改善と補聴器のFAQへ。お客様の改善事例は、聞こえの改善成功事例へどうぞ。

しばらくお客様の聞こえの改善事例に関して、ご紹介していませんでしたので、時間を見つつ、また、こちらで記載していこうと思います。

今回のケースは、片側は生まれつきの感音性難聴で全く聞こえず、もう片方は、メニエール病の方になります。

元々片方の耳が聞こえにくいため、それによる聞きにくさはあったのですが、その状況に聞こえている耳側がメニエール病になってしまい、より聞きにくさが強くなってしまった方となります。

その事から、近くのところで耳や補聴器の相談をするものの、状況が状況なため、あまり力になれないと言われてしまい、どのようにしたらよいかわからずにいた方でした。

状況改善として難しい内容も含んでいますので、今回は情報の共有という部分も含めて記載していきます。

お客さんの状況

まず、お客さんの状況ですが、

  • 性別:男性
  • 年齢:40代
  • 症状:感音性難聴、メニエール病
  • 備考:残念ながら治療はできず

このようになります。

冒頭の通り、元々、片側が生まれつきの感音性難聴で聞こえなく、そこにさらにメニエール病を発症してしまい、より聞きにくさに困るようになってしまった方となります。

聴力に関しては、このようになります。右側は、全く音を感じておらず、左側は、メニエール病になり、低い音が下がってしまったことにより、主に男性の声を中心に聞きにくさを感じるようになってしまいました。

今現在の状況としても、片側が元々、聞こえないことにプラスし、聞こえる耳側が聞きにくくなったことで、生活から仕事、全般的に困ることが増えてしまったご様子でした。

初めは近くで相談していたようですが、「あまり力になれない」ということを言われてしまい、ちょうどYoutubeで私のことを見つけて、それでお越しいただいた方となります。

ということで、この状況を改善していきます。

聞こえの改善案

改善案について記載していければと思うのですが、初めに記載していきたいのは、今回のケースは、改善する中でもだいぶ難しい部類に入ります。

元々の低音障害系の聴力に加え、片方が聞こえないため、そのことを踏まえた上で試行錯誤し、改善をしていく必要が出てきます。

ということで、まずは一つ一つ、状況の整理をしていきます。

補聴器の形状、補う耳について

補聴器で選ぶ要素には、補聴器の形、そして、補聴器の性能があります。こちらでは、主に補聴器の形、補う耳(どちらに補聴器を使うのか、どのような補聴器を使って補うのか)について、記載していきます。

結論から言いますと、こちらの方の場合は、バイクロス補聴器と呼ばれる珍しいタイプの補聴器で改善していくことになります。

まず、このような聞こえの方の場合、大事になるのは、聴力低下が大きい耳側(右側)には、補聴器を装用しても、あまり聞こえの改善には繋がらないということです。

補聴器は音を大きくして聞こえを良くさせる道具ですが、どのような聴力の方でも同じように聞こえが改善できるわけではありません。実際には、効果が出やすい範囲とほぼ効果が出ない範囲があります。

こちらの方の場合は、片側の聴力低下が大きすぎて効果が得られにくい耳になります。そのような場合、バイクロス補聴器(厳密にはバイクロス)という補い方があります。

バイクロス補聴器とは、聞こえの良い方の耳に聞こえない耳側の音をくるようにし、さらに聞こえの良い方の耳の聞こえも改善させる特殊な機器になります。

クロスと呼ばれる機器を聞こえない側につけ、補聴器を聞こえる耳側につけることで、クロスと呼ばれる方に入った音が補聴器側に転送されます。その結果、どちらの方からの音も聞こえるようになります。

一つ注意が必要なのは、バイクロス補聴器で改善するのは、厳密には、聞こえる耳側のみになります。聞こえない耳側の音は、聞こえる耳側へ音を飛ばすことで音は聞こえやすくなるのですが、その耳そのものを改善させるわけではありません。

ただ、聞こえない耳側をそのままにするのと聞こえない耳側も改善させるのとでは、だいぶ聞きやすさが変わってきますので、このようにして、なるべく聞こえの改善ができるようになると良いです。

補聴器の形と聞こえの改善

もう一つは、補聴器で聞こえを改善していくにあたり、一つ、前もって伝えておく必要があるものです。それは、補聴器の形、もっというと補聴器で改善することについてです。

こちらの方の場合、このような聴力になり、この聞こえている側の聞こえの方の聴力(左側)は、低音障害型の聞こえで、今現在、聞こえを改善させるのが困難な聴力型の一つです。

その理由は、補聴器で聞こえを補おうとすると耳を塞ぐのですが、そうすると高い音の部分が下がりやすくなり、補えるとよい低い部分の音は、補いやすくなるのですが、高い音の部分が下がりすぎると聞こえが改善した感覚よりも聞きにくくなった感覚の方が強くなります。

ですので、この低音障害型の聞こえ、もっというと低い音のみ低下しているケースは、今現在、聞こえを補うのが難しいケースになります。

ただ、補う方法はあり、低い音の聞こえを補いつつ、さらに高い音に関しては、そのまま入れられるような、なるべく下がらないような調整をしていくこと、ここが大事になります。

どちらかというとここの部分は、補聴器を調整する側の知識になるのですが、難しいケースは、お互いに知識を共有していかないと(お互いに協力して改善していかないと)改善が困難になりますので、使う方も知っておけると良い部分になります。

実際の改善

ということで、実際に改善していくのですが、まず、上記のことをお客様にそのまま話しました。

特に今現在の聞こえにくさのポイントは、聞こえない耳側からくる音がわからず、さらに聞こえている耳側も低い音が聞こえづらくなったことで、余計にその聞きにくさが強くなったことです。

片側だけ聞こえていれば意外にもわかるようなイメージをお持ちの方は多いのですが、頭があることで聞こえない側からの音というのは片側のみ聞こえていても、かなり聞きにくさを感じます。

特に聞こえない側の斜め前と斜め後ろはかなり聞きづらさを感じ、呼びかけや何か言われてもほぼ気がつかないレベルになります。

ですので、その聞こえない耳側からの音をわかるようにし、さらに聞こえる耳側の方も低い音が低下している状態になりますので、そこを補えるようにしていくことが大事になります。

そこで、バイクロス補聴器について、試していくことになります。補聴器に関しては、初めてになりますので、まずは、貸し出ししてみて、どのように生活が変わるのか、その点に関して、みてみることにしました。

なお、その際ですが、補聴器の調整状態は、このようになります。低い音の部分は補えるようにしていくため、少し塞いだのですが、謎に3000Hzだけ大きく下がっている状態です。

お客様にお話を聞いてみると、「聞きにくくなった感覚は感じない」ということで、そのまま貸し出しすることになります。

しばらく貸し出ししてみて、K・Aさんからお話を伺うのですが、補聴器があることによって、良くなる部分もあるが、変わらない部分(変わらず聞きにくい部分)がある。

ただ、あることによって、生活がよくなってきており、特に精神的な負担がだいぶ減り、そこから補聴器に関して考えたい。とのことでした。

ということで、ここから、補聴器を提供するというよりもより改善していくための試行錯誤編へ入ります。

聞こえの改善と試行錯誤編

まず、低音障害の方の聞こえの改善で大事になってくるのは、低い音は補いつつ、高い音は、聞きにくくならないようにするというトレードオフにチャレンジしていくことになります。

補聴器をつける場合、音を耳に伝えるためには、耳を塞ぐ必要があるのですが、耳を塞ぐと、今度、高い音が聞きにくくなります。本来であれば、低い音を補うのと高い音が聞きにくくなるのは、トレードオフの関係にあります。(今現在の技術だと特に)

ただ、ここの部分は、もし低い音を補え、さらに高い音への影響度を低くできれば、改善状態を良くできる。とも言えますので、A・Kさんにお話し、もしより良くなるのであればやってみたい。とのことで、色々と試行錯誤していくことになります。

そこで鍵になってくるのは、耳の形を採取して作るものですね。補聴器の世界には、こんなものがあったりします。

低い音をきちんと入れるには、耳の穴を塞ぐ必要があり、そうすると、高い音は耳が塞がることで下がりやすくなる。高い音をそのまま聞こえるようにするには、耳を塞がないようにする必要があり、その場合、低い音は、抜けて、そのままになる。

なので、このバランスを探っていくことになります。

初め、この耳せんを作ったときは、耳が塞がった感覚が強くなってしまい、そこから、徐々に塞ぐ量を減らし、微調整していった結果、体幹塞がった感覚を感じず、聞きやすくなった。ということでした。

最終的な感覚は、こんな感じに。聴力が少々良くなったりしているので、それに合わせて、どちらかというと高い音が聞きにくくならないように施策した。

数値としては、実はそこまで変わらないのですが、途中で聴力が少し良くなってきた?状態になり(実際に聴力検査の数値が上昇)、それに合わせて作り直し、このようになりました。

と、改善については以上になります。

お客様の声

こちらでは、実際に対応させていただいたお客様の声について紹介いたします。

どのような事でお悩みでしたか?

実際に補聴器をお使いになってみていかがでしょうか

何が決め手となって、当店でご購入いただけたのでしょうか?

実際のアンケート

アンケートにご協力いただき、ありがとうございます。

今回は、難しいケースでしたが、実は、少々、離れているところからお越しいただいたということもあり、お時間もかかりまして、申し訳ありませんでした。

ただ、私としては、お客様がお越しいただき、ここにきてよかった。少しでも生活が良くなり来てよかったと思っていただけたのであれば、本当に何よりです。

少々、ご負担おかけしたのは、申し訳なかったのですが、よろしければ今後とも、こちらの方こそ、よろしくお願いいたします。

まとめ

さて、今回は、元々、生まれつき感音性難聴で片側が全く聞こえず、さらにメニエール病になり、より聞きにくさが強くなってしまった方に関して、記載してみました。

このような聞こえの方の場合、まず一般的な補聴器では改善ができませんので、バイクロス補聴器というもので改善していく必要があります。特に聴力低下が大きい耳側は、今現在、補聴器を装用しても効果は限定的になります。

さらに低音障害系の聴力になりますので、その点に関しても、最善の状態になるようにさせていただきました。

実際には、耳の形や聴力の状況(聴力の状況は人によって大きく変わるため)によって変わりますので、その人の状況に応じて調整するとしか書けなかったのですが、何か参考になるところがあったのであれば幸いです。

と以上、症例でした。

この記事を書いた人
深井 順一|パートナーズ補聴器
深井 順一|パートナーズ補聴器
補聴器を使っている人が対応している補聴器専門店・代表
補聴器のお店には珍しい難聴の補聴器販売員です。生まれつきの難聴者で7歳から補聴器を使用。スティックラー症候群という遺伝性の病気で、その症状の一つとして感音性難聴があります(中等度の難聴)。生まれは静岡県藤岡市、育ちは千葉県市川市。色々なものの見方、考え方を知るのが好きで、本を読んだり、人の話を聞き、自分の生活の改善に活かしていくのが好き。

補聴器を使っている当事者だからこそできる補聴器のご相談、サポートがあります

「補聴器を使って良かったです。これから明るく生活できます」50代・女性

「思っていたよりも使いやすく日常生活がスムーズになった」40代・女性

「診断では、まだより悪化してからのもの、という印象がありためらっていたので、何より自分の聴こえが改善できるということに嬉しさを覚えました」30代・女性

などなど、ご評価いただいています。

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