低い音が聞こえにくい難聴を補聴器で改善する

深井 順一|パートナーズ補聴器

補聴器による聞こえの改善は、聞こえの改善と補聴器のFAQ、にまとめています。また、個々の症状(症例)ごとの改善は、お客様の聞こえの改善事例にまとめています。

こちらでは、主に低い音が聞こえにくい難聴の方を補聴器で改善していくポイントについて、まとめていきます。

低い音が聞こえにくい聴力型は、主に低音障害型と言われたりするのですが、この聴力型は、今現在、補聴器で改善がしづらいものの一つで、補聴器で改善したとしても聞こえの改善効果としては思うように上がりづらい傾向があったりします。

しかし、きちんとするべきことをすれば、それなりに改善できる部分もありますので、こちらでは、補聴器による全体像から、どのように改善していくと良いのか、その点に関して、まとめていきます。

低い音が聞こえにくい難聴

まず、低い音が聞こえにくい難聴のケース、今回の対象となる聴力は、主にこのようになります。低い音の部分がだいたい50〜60dBぐらいの難聴です。

実際には、どの周波数から聞こえやすくなるのかにより、聞きにくさや難聴の困り度が変化するのですが、共通する要素は、低い音が聞こえづらく、音が高くなるにつれ、聞こえやすくなる。という状態です。

どの部分から聞こえにくくなるのかにより、だいぶ変化しますが、おおよその感覚は、このようになります。ただ、家の中では困らないけど仕事の際に困るなど、場所や環境による困り度の違いがだいぶ出やすいです。

そのような場合、主に困るのは、これらの部分です。

まず、対面でのお話は、聞きやすい人もいれば、聞きにくい人もいる。という状況です。しっかりとお話しする方は、だいぶ聞きやすい傾向があるのに対し、声が小さかったり、細かったりすると急に聞きにくさを感じるようになります。

その中でも男性の声に関しては、わかりづらくなる傾向が強く、女性の声も一部聞こえづらくなるのですが、男性の声の方がわかりやすくなる傾向は強くなります。

そして弱くなってくるのは、周囲が騒がしい環境ですね。低い音が聞こえづらいので、周囲が騒がしい環境になると聞きやすくなるようなイメージを持ちやすいのですが、実際には、騒がしくなると周囲の音に邪魔され、聞きにくさを感じるようになる方が結構多くなります。

複数の人とお話しするような場面では、聞きやすい人だけで構成されていれば良いのですが、会議などで大人数になると距離が離れることになりますので、そうなると聞きづらくなったり、声が小さい人などが入ると急に話の内容が掴みづらくなります。

あとは、距離が離れた場合です。距離が離れると音は急激に小さくなりますので、呼ばれても気が付かない、呼ばれていることに気づかない、などが起こりやすくなります。

音は聞こえていないと聞こえていないことに気がつかないので、こういったところから人間関係に影響しやすくなってしまいます。難聴の辛いところは、この部分ですね。

特に低音障害の方は、聞こえているときは普通に聞こえているので、周りの方からすると、いつ聞こえていて、いつ聞こえていないのかの判断が非常に困難です。

ですので、周りからすると「あれ?意図的に無視しているのかな?」といった誤解がかなり生じやすくなります。そのことからも誤解をとても受けやすい状態になってしまうのがネックです。

こういったことが起こりやすくなってしまうのが、低音障害の方の特徴になります。

補聴器で選ぶ要素、改善する要素

さて、ここから実際に聞こえを改善していく方法について記載していきます。

まず全体像ですが、補聴器には、

  • 補い方(使う耳、特殊な補聴器等)
  • 補聴器の形状
  • 補聴器の性能
  • 補聴器の調整(聞こえの改善)

の全部で、4つがあります。耳鼻科さんや補聴器屋さんで相談するのは、主にこの4つの部分になります。逆に言えば、補聴器は、たったこの4つしかないことになります。

その中で、

  • 補聴器の形状
  • 補聴器の性能

この2つに関しては選ぶ要素で、主に補聴器のカタログなり、パンフレットに記載されているものです。目に見えるものが多い、ということですね。

そして、

  • 補い方(使う耳、特殊な補聴器等)
  • 補聴器の調整(聞こえの改善)

この2つに関しては、相談する要素で、お店や病院さんで相談しながら、よくしていく部分になります。言い方を変えると、初めての方は、目に見えづらい部分になります。

大事なことをはじめにお伝えさえていただきますと、低音障害の方の場合、押さえるポイントは、

  • 補い方(使う耳、特殊な補聴器等)
  • 補聴器の形状(補える補聴器の形)
  • 補聴器の調整(聞こえの改善)

の3つです。これらの部分で聞こえの改善度に関しては、8割くらいが決まってきます。

これから、その部分について、記載していきますので、これらの部分は、押さえた上でなるべく聞きにくさがなくなるよう、改善していきましょう。

特に低音障害の方は、今現在、補聴器による聞こえの改善が難しい部類になります。そのことから、どれか一つ行うのではなく、全部、行って改善の相乗効果を出すようにしていくことが、何よりも大事になります。

補い方(使う耳、特殊な補聴器等)

補い方というとわかりづらいのですが、これは、どの耳に補聴器を使うのか、になります。

右側に使うのか、左側に使うのか、それとも耳の状況が特殊なので特殊な補聴器を使って改善するのか。の部分ですね。

大事なことを記載していきますと、補聴器は耳の状況が9割になります。聴力低下が大きければ大きいほど補聴器の効果は出づらく、音を認識する力が弱くなると弱くなるほど、これもまた補聴器の効果は出づらくなります。

補聴器について日が浅い方は、良い補聴器、高い補聴器を買えば良くなるのではないかとお考えの方が多かったりするのですが、これはこれで間違いではないものの、実際には、耳の状態によるものの方が影響度は高くなります。

ですので、補聴器でまず考えなければいけないのは、効果が出る補い方をすること。ここになります。高い補聴器を買う前に、自分自身はどのようにしたら効果が出やすい補い方、聞こえの改善の仕方ができるのか、ここを知る必要があります。

で、この部分は、耳の状況によっても変わってきてしまいますので、なかなか一概に言えないのですが、もし言えることがあるとすると、両方の耳に補聴器が適合するのであれば、両方の耳に補聴器をつけて聞こえを改善すること。こちらになります。

補聴器の世界でよく言われるのは、片方の耳と両方の耳での聞こえの違いは、上記のように騒がしい環境になった際の聞こえに影響する。というものです。

ここの部分も間違いではないのですが、補聴器を使っている私自身が感じているのは、単純に片方だけ聞こえやすくなる状態と両方が聞こえやすくなる状態は、全然、違う。ということです。

これは、聞こえてくる音量も異なるのですが、それ以上に変化が大きいのは、聞こえる音の範囲です。

音は、聞こえないと自分自身で聞こえていないことに気がつきません。音は匂いがするわけでも目に見える訳でもありませんので、音は感じないと感じていないことに気づくことができません。

ですので、両方の耳につけると聞こえる音の範囲が一気に広がり、聞こえやすくなること、気づきやすくなること。ここが増えるようになります。

なお、なるべく聞こえを改善できる方法をしていくことが大事になるのは、補聴器はどのようなことをしても耳が治るというところまではいかないからです。

ですので、なるべく良い状態にしていき、不自由さや不便さをなくせるようにしていけると良いです。

補聴器の形状

次は、補聴器の形状ですね。補聴器の形状は、主に扱いやすさに影響するのですが、低音障害の方の場合、それと同時にいくつか意識していく部分があります。

まず、今現在の補聴器の形状は、主にこのようになります。

耳かけ形補聴器、耳あな形補聴器があり、耳かけ形補聴器の中にいくつか耳かけ形補聴器があり、耳あな形補聴器の中にいくつか耳あな形補聴器があります。

これらのものは、主に出力、音を出せるレベルが異なり。右側に書かれてる、軽度、中等度、高度……とかかれているのは、主に対象となる難聴レベルになります。

で、低音障害の方の場合は、全部の形状が対象になります。ほとんどの形状のもので補えるので、ここは、どの形状でも対象になるということだけ覚えておければ良いです。

では、ここの中で何を選ぶと良いのか、その点に関してなのですが、結論からお伝えしますと、

  • 耳かけ形補聴器であればRIC補聴器
  • 耳あな形補聴器であればCIC補聴器

になります。

まず形状を語る上で、低音障害の方の場合、気をつけなければいけないのは、どのように低音障害の方の場合は、聞こえを改善する必要があるのか。ここがあります。

補聴器がしていることは、低下した聴力のところに音を入れ、聞こえを改善することです。しかし、その際、欠点がありまして、聞こえの良い高い音は今現在補聴器の場合、だいたい25dB、30dBぐらいまでしか補えない。ということです。

低音障害の方の場合の聞こえの特徴は、低い音が聞こえづらく、高い音になるにつれ聞こえが良くなることです。その際、その高い音の部分の聞こえが良いと良いほど、補聴器をつけることにより、元の聴力よりも高い音の部分が下がりやすくなります。

これが低音障害の方の場合における問題点であり、補聴器をつけると逆に聞きにくく感じる要素でもあるのですが、この部分をなるべく軽減できる補聴器が良い。ということになります。

考え方としては、低下している低い音の部分は補えるようにし、聞こえている高い音の部分は、そのまま聞こえるようにする。そのような補い方ができるのが理想である。ということですね。

で、それが、先ほどの

  • 耳かけ形補聴器であればRIC補聴器
  • 耳あな形補聴器であればCIC補聴器

になります。

特にRIC補聴器は、今現在ある補聴器の形状の中では、高い音の部分の聞こえの低下量が最も少なく、先ほどのような聞こえの補い方がしやすくなります。

なお、耳かけ形と耳あな形の違いは、このようになります。大きく異なるのは、邪魔になるか、ならないか。そして、補聴器をつけた時の閉塞感、自分の声の違和感の部分です。

耳あな形補聴器は、耳の中にすっぽり入るため、メガネやマスクの邪魔にならず、電話に関してもそのままスムーズに行うことができます。

ただ、その代わり、耳を塞ぐことになりますので、自分の声が大きく聞こえる感覚、不快に感じる感覚、そういったものが感じやすくなります。

耳かけ形補聴器は逆で、耳を塞がないため、自分の声の違和感は感じづらく、ただ、その代わり一部の方は、メガネやマスクの邪魔に感じたりすることがあります。

補聴器の形状は、主に扱いやすさに影響します。ここから先は、実際に使ってみて判断できると良いです。

耳かけ形補聴器を使った際に思ったよりメガネやマスクの邪魔にならないな、であれば、それにしても良いですし、耳あな形が良さそうだ、と感じ、そして使ってみて、実際に自分の声の違和感に関しては、使える範囲内だ、であれば、それでも良いです。

その補聴器を使ってどう感じるかは人それぞれですので、ご自身にとって使いやすいものを選んでいきましょう。

補聴器の調整(聞こえの改善)

最後は、補聴器の調整の部分です。主に低下した聴力のところに音を入れ、聞こえを改善していく作業であり、その改善状態により、聞こえの改善度が決まります。

しっかり音を入れられるようになれば、それだけ聞こえの改善に貢献しやすくなり、ご自身の聴力から必要となる部分まで改善できてなかったり、改善状況や改善目標がわからない状態で調整するとよくわからなくなってしまう部分でもあります。

補聴器版聴力検査に関しては、音場閾値測定と言ったりします。

まず、今現在、補聴器によって改善できると良い部分というのは、ある程度、わかってきています。どのように表現するとわかりやすいのか悩むところですが、補聴器を使った状態を可視化できる測定、補聴器版聴力検査のようなものがあり、こちらで表現すると、このようになります。

低音障害の方の場合は、前々から記載している通り、低下している低い音の部分を補い、聞こえの良い高い音はそのまま聞こえる状態にする、になります。

上記で記載してきた補聴器の形状の部分は、この補聴器の調整で、そのような調整ができるようにするための下地のようなものです。

今現在、改善できる数値は、低下している部分を中心にお話をすると、だいたい30dBぐらいになります。ですので、このぐらいまで改善できるようになると、補聴器あり、なしによる違いについては、感じやすくなり、かつ、聞こえの改善度も良くなる傾向があります。

このグラフは、聴力検査で使われるものと同じで、聴力検査の際は、低下すると低下するほど聞こえづらさが強くなるのに対し、こちらの場合は、数値が上にくると上にくるほど、聞こえやすくなります。

このグラフの場合、0〜10dBが一般の人が聞こえている範囲、0〜25dBが正常の聞こえの範囲になるのですが、そこからすると改善値が30dBとなると、正常の範囲に足りないぐらいになります。そこまでは、一応、改善できる状態でもあります。

改善の鍵になるのは、500〜2000Hzあたりになることが多い。音声に関しては影響しやすいので、改善できるのであればなるべく改善するようにしよう。

それぞれのポイントについて記載していきますと、まず、低音障害の方で一番大事になる部分、改善の核となる部分の改善は、500〜2000Hzになります。

この部分は、主に音声に関わりやすく、1000Hzの聞こえ、1500Hzの聞こえ、500Hzの聞こえ、750Hzの聞こえは、きちんと改善するようにしましょう。(音を入れられるのであれば)

1000Hz、1500Hzは、男性、女性、どちらも影響し、500Hzは、低い男性の声の部分に影響します。大体は、500Hzは、大きく下がっている方が多いので、これらの部分は、改善できれば改善できるだけ、聞こえの改善に貢献しやすくなります。

高い音は、同じぐらいであればOK。下がらなければ下がらないだけ、良い状態を維持しやすくなる。

高い音に関しては、もともと聞こえているケースが多く、ここは、必要以上に下がらないようにすることが大事になります。

ここの部分の低下量が大きいと、補聴器をつけると逆に聞きづらくなる感覚を感じやすくなります。だいたいの目安は、元の聴力から、できればマイナス5dBぐらい、ギリギリで、10dBぐらいです。それ以上下がると、補聴器をつけない方が聞きやすくなってくるので注意が必要です。

低い音は改善できると良いに越したことはなく、特に500Hzは改善できると良い。

低い音の部分は、聞こえの改善の底上げをしていくために、500Hzまでの部分は、改善できるようにしていけると良いです。

そうなると全体的に改善していくことなりますので、このような状態ですね。低音障害の方の場合は、シンプルに低下している低い音の部分を補い、聞こえている高い音の部分は、そのまま聞こえるようにすることです。

補聴器の調整においては、できるのであればなるべく聞こえを改善するようにしましょう。

実際には、音を大きくし過ぎると辛くなってしまうケースもありますので、できるのであれば、という表現しかできないのですが、ここは改善できれば改善できるだけ、聞こえの改善に貢献しやすくなる部分でもあります。

お客様の声

原因不明の感音性難聴の方

  • 改善:RIC補聴器
  • 機器:耳かけ形補聴器
  • 備考:両耳装用にて改善

難病による聴力低下(感音性難聴)の方

  • 改善:RIC補聴器
  • 機器:耳かけ形補聴器
  • 備考:両耳装用にて改善

原因不明の感音性難聴の方

  • 改善:RIC補聴器
  • 機器:耳かけ形補聴器
  • 備考:両耳装用にて改善

この他のお客様の声(総合)

まとめ

こちらでは、低い音が聞こえづらくなっている難聴のケースを補聴器で改善する。ということで、そのための内容について記載していきました。

今現在、低音障害の方の場合、聞こえの改善が難しい部類になりますので、上記にあげた聞こえの改善に関して、この中で一つでも行えればいい、というものではなく、全体的に全て行っていく必要があります。それだけ、低音障害の方は、聞こえの改善が難しいものになります。

大事になってくるのは、上記に記載した通り、低下している低い音を補い、聞こえている高い音の部分を残しつつ、改善していくことです。上記に記載していったのは、それをするための方法を補い方、補聴器の形状、補聴器の調整で書いていったに過ぎません。

今現在、残念ながら補聴器をつけても耳が治る。ということまでは残念ながらいきません。ですので、これらのことをしたとしても聞きにくさは残ってしまう状態になります。

しかし、すべきことをすれば、それなりに改善できるようにもなってきましたので、聞こえを改善していくのでしたら、一つ一つ、できることをきちんと積み重ねることが大事になります。

と、もし改善していくのであればなるべく良くしていきましょう。そのためにこちらの内容が役に立ったのであれば幸いです。

ABOUT ME
深井 順一|パートナーズ補聴器
深井 順一|パートナーズ補聴器
補聴器を使っている人が対応している補聴器専門店・代表
1986年7月1日生まれ。生まれつき難聴で小学2年生の頃から補聴器を使っています。このお店では、実際に補聴器を使っている私自身が対応し、難聴の方の生活を支えられるお店を目指しています。
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