老人性難聴の事例

【70代・男性】老人性難聴により聞きにくくなった方、補聴器で改善

深井 順一|パートナーズ補聴器

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補聴器による聞こえの改善は、聞こえの改善と補聴器のFAQ、にまとめています。また、個々の症状(症例)ごとの改善は、お客様の聞こえの改善事例にまとめています。

こちらでは、実際のお客様のデータを使わせていただき、どのように改善していったのか、その点に関して、記載していきます。

今回の方は、70代、男性の方で、元々、補聴器を持っており、ただ、聞こえに関しては、あまり良くなく、今現在の状況に関して、もっと良くなるのであれば考えたい。とのことでご相談いただきました。

耳の状況や補聴器の状況を確認し、お店の方で新しく補聴器で聞こえを改善したところ、お持ちの補聴器よりもだいぶ聞きやすくなったようで、そのためご購入になりました。

どのように改善していったのか、その点について、まとめていきます。

お客様の状況

まず、お客さんの状況ですが、

  • 名前:A・Mさん
  • 症状:老人性難聴?髄膜炎?複数症状あり
  • 聴力:両耳とも高度難聴より
  • 備考:補聴器については、他店で購入済

となります。

聴力はこのようになります。聞こえにくさを感じたのは、50代の頃で、そこから徐々に低下してきてしまい、今現在に至ります。

いくつかご病気を抱えたこともあり、加齢による難聴なのか、そのほかの病気を抱えた時に聞きにくくなってしまったのかはわからない状況で、わかっていることは現状このような状況ということでした。

今現在の状況としては、既に補聴器は持っており、補聴器自体はだいぶ前から使用されていました。ただ、右側は、ポケット型、左側は、RIC補聴器とだいぶ特殊な使い方をされていました。

左右とも同じような聴力だが、左側は、補聴器つけても効果が薄いらしい。

聴力型をみてみると、左右同じような聴力型に見えますが、ご本人様からすると、今まで使ってきて、右側は、補聴器で聞きやすくなるが、左側は、右側に比べると弱く、いつも聞きにくい状態になる、ということでした。

確かに聴力としては、右側と比較をすると少し低下している程度に感じますが、1000Hz以降は、だいぶ差が出ているところもあり、その部分は、感じるかもしれない。と、今回はこちらの状況を改善していきます。

聞こえの改善に関する思考

さて、ここからは聞こえの改善に関する思考をしていきます。補聴器による聞こえの改善は、もしかしたら、補聴器のカタログを見て、補聴器の形を決め、補聴器のグレード(性能)を決めて、おしまい。というイメージがあるかもしれませんが、現実はそうではありません。

耳の状況によって、聞こえが改善されやすい耳もあれば、残念ながら耳の中の神経の損傷が大きく改善がしづらい、あるいは、一般的な方法では改善できないため、特殊な方法で改善していく場合もあります。

で、A・Mさんの場合ですが、考えることとして、

  • そもそも両方の耳に補えると良いのか
  • 補聴器の形状
  • 改善できると良い補聴器の調整の改善ライン

があります。これらの部分を考えながら、試行錯誤し、改善していきます。

そもそも両方の耳に補えると良いのか

まず考えていくのは、耳の補い方です。補聴器の場合、耳の補い方と補聴器の調整の2つで、だいたい聞こえの改善の8割を占めるようになります。ですので、補聴器で生活を良くしていく場合に押さえる部分は、この2つになります。

そして、ここは、その耳の補い方の部分になります。

聴力を見ていただくと、左右の聴力の差はあるといえばありますが、ものすごくあるというわけではありません(感覚的な話ですみません)。が、ご相談の際にご本人様がおっしゃっていたのは、「今まで補聴器を使ってきたが、右側は良くなりやすいが、左側が聞きづらいことが多い」ということでした。

この場合に考えられるケースとしては、

  • 右側は補聴器が合いやすいが、左側は補聴器の効果が出にくい
  • 実は今まで左側への補聴器の改善は改善が甘かった

の2つです。

一つ目は、単純に右側は補聴器は合いやすい、補聴器をつけることで聞こえの改善効果が出やすい耳なのですが、左側は、そうではない、というケースです。

こういったケースは実は結構あり、特にA・Mさんの場合は、途中でいくつかの病気を抱えた際に聞きにくくなった可能性もあるため、耳の状況としては、病気が重複して耳の状況が変化している可能性は十分に考えられます。

もう一つは、実は偶然、今まで左側への補聴器の改善が甘かった。というものです。

左右の聴力が異なる方の場合、右側も左側も両方の補聴器の聞こえの改善値を測定しないと、測定の仕様上、聞こえが良い側が数値として出てきてしまうので、必ず聞こえにくい側は、その耳単体で効果を調べないと改善状況がわかりません。

つまりしっかり補った状態で、左側の補聴器は効果が出にくい状態なのか、それとも単に補い損ねて、聞きづらいのか、をまず明らかにする必要があります。

また、仮にしっかり補った状態で聞こえを改善できるのであれば、両方の耳が良いでしょうし、しっかり補った状態で、聞こえの改善度としては、左側は右側に比べると甘いけれども、それでもある方がいいなら、両方の耳ですし、逆に反対側に補聴器があることで阻害される傾向があるなら、片耳の方がいいでしょう。

このようにいくつかの改善方法が考えられる状態ですので、まずは、試聴を通じて、どのように補っていくと良いのか、について、確認していくことになります。

なお、初めての方からするとどのようにしたら良いかわからないかもしれませんが、基本的に補聴器は使えるのであれば、両方の耳につけられると良いです。

しかし、実際には、オーソドックスに考えられるケースもあればそうじゃないケースもあります。そうじゃないケースは、その方にとってどのような補い方が最善なのか、それを明らかにしながら改善していくことになります。

補聴器の形状

今現在、補聴器には、上記の種類があります。種類があるといっても耳の中に入れて使う耳あな形補聴器と耳の上にかけて使う耳かけ形補聴器が主流で、その中でいくつか種類があります。

これらの形状に関しては、扱いやすいさが異なるのですが、その中であえて絞り込むとすると、A・Mさんの場合は、

  • 耳あな形補聴器なら、CIC補聴器(ITC補聴器)
  • 耳かけ形補聴器なら、RIC補聴器

がオススメになります。

まず考えなければならないのは、こういった聞こえの方の場合、低い音の聞こえが良いので、補聴器をつけた時に自分の声の不快感、自分の声が大きく聞こえる感覚や低く聞こえる感覚が強く出やすいことです。

この感覚は、125〜500Hzの間が60dBの範囲内で聞こえていて、この範囲の聞こえが良ければ良いほど、自分の声の不快感は強くなります。

ですので、なるべくそういった不快感を感じづらいものが良いのですが、それが先ほどの補聴器の形状になります。

この2つですね。

耳かけ形補聴器と耳あな形補聴器の違いは、こちらの通りです。

聞こえの改善については、違いはほとんどなく、違いは主に扱いやすさになります。

聴力的にCIC補聴器は難しいかも。その場合は、ひとまわり大きいITC補聴器がいいです。ただ、特徴は同じです。

耳あな形補聴器は、耳の中に補聴器を入れるため、ものの邪魔にならず、メガネやマスク、そういったものを気兼ねなく使えます。あと、電話もそのままできるので、電話に関して、多用する方や重視する方は、この形状の方が使いやすいかもしれません。

欠点は、耳の中をだいぶ埋めるので、自分の声の不快感、自分の声が大きく聞こえたり、内側で低く響いた感覚で聞こえたりなど、自分の声の不快感が強く出やすいです。

一応、耳あな形補聴器の中では、一番、その不快感に関しては、抑えてくれるのですが、それでも不快感を感じやすい人は感じやすく、合わない方もいます。

耳かけ形の良いところは、その逆で、耳の上に乗せて使いますので、自分の声の不快感、声が大きく感じる感覚が耳あな形に比べると少ない、自然に使えるというのがあります。

ただ、耳の上にかけていますので、人によっては、メガネやマスクの邪魔になる、という方がいます。この点は、実際に使ってみると、思いの外、気にならない、そのまま使えるという方もいますので、この辺りは、実際に使ってみてから考えられると良いです。

基本的には、補聴器の形状は、扱いやすさに関わりますので、ご自身が扱いやすい、使いやすいと感じるものを選ぶのが大事になります。

補聴器の調整

補聴器の調整とは、どこまで聞こえを改善するのかになります。ですので、聞こえの改善度は、この補聴器の調整に大きく影響します。

そして今現在、聴力ごとにどのぐらい聞こえが改善できると良いのかの数値がある程度わかっており、その目標となる数値まで改善できるとできるほど、聞こえの改善に貢献しやすくなります。

補聴器を使った時の聞こえの測定があります。

表現が難しいのですが、補聴器には、補聴器をつけた状態でどのぐらい聞こえが改善されているのかの可視化ができる測定があります。

こちらで可視化すると、A・Mさんの場合における聞こえの改善値で目指せると良いのは、大体この辺りまでになります。

実際にどのぐらい改善できるかは補聴器を使う方の許容範囲、レベルによってしまうのですが、こちらでは、周波数帯における影響度について記載していきます。

まず、改善を優先したい部分に関してなのですが、音声が影響する周波数は500〜2000Hz辺りになります。ですので、この部分は、できるのであればなるべく目標値まで上げられると良いです。

そこまで上げることができればそれができるだけ、聞こえについては、よくしやすくなります。

また、高い音の部分、2000〜4000Hzに関しては、ここも上げられると音声の明瞭性に影響しますので、あげられるのであれば上げられると良いです。ただ、上げすぎると、音の響きにつながることもありますので、あくまでも使える範囲内にするのが良いですね。

すると、結局は、全体的に上げられるところは上げる、ということになるのですが、改善できると良い部分というのは、主にこのような部分になります。

なお、これはあくまでも目標になります。実際には入れられるケースもあれば、入れづらいケースもあります。ですので、入れられる方は入れ、入れづらい方は、その手前ぐらいまでに抑えるなど、人によって改善の方法は、厳密には変化します。

実際の改善

さて、ここから、実際の改善ですね。実際の改善としては、お越しいただいた際にまずは現状についてお伺いさせていただきました。その際の内容が上記の内容です。

そこから、今まで補聴器を使ってきたこと、そして、その補聴器でどうだったのかをお伺いしながら、まずは、試聴する事から初めていきました。

私の仮説、知りたいことは、両方の耳に補聴器をつけた方が良いのか、それとも聞こえる耳側を中心に補った方が良いのか、でした。

上記に記載した通り、右側は補聴器で聞きやすくなることが多いようですが、左側は、いつも甘い、聞きにくいままであることが多かったからです。それが、単に甘いだけなのか、それともしっかりと補っても悪いのか、そこを確認していくためにまずは試聴から始めていくことになります。

使った補聴器は、こちらですね、RICタイプと呼ばれる補聴器です。今現在は、充電方の補聴器が主流ですので、こちらを使っていきます。今まで、電池型でしたが、そこから、充電型へのシフトとなります。

黒い▲は、両方ともつけた状態。赤い丸が右側だけ、青い丸が左側だけの効果

初回での相談で補聴器の調整をしていくのですが、実際の改善値は、このようになります。左右の聞こえに差があり、右側はよく、左側は割と低い状態です。

右側はお話の通り、音は入るのですが、左側は、より音を入れているのに関わらず、数値としては、上がっていない状態ですね。特に音が高くなると、音を入れているのに関わらず、反応がまるでありません。

実はこのようなケースは、ありまして、ある程度、聴力低下が大きくなると、その耳側は音を受け付けなくなるのか、反応が出ないことがあります。こういったのを不感域といったりするのですが、文字通り、音を感じることができない領域のことです。

不感域に関する考えは、かなり難しいのですが、ここでは、仮に不感域が発生していても左側に補聴器があると良いのか、(不感域は大体、特定の領域だけに出るもので、耳全体に出るものではないことが多いです)それともその耳側は、補聴器を使うと逆効果になるのか、その点を調べていくことになります。

実際に貸出を通じて、確認して行った結果、まず補聴器を変えたことにより、以前より、だいぶ聞こえに関してはよくなった、ということでした。ですので、補聴器に関しては、考える方向で、より現状の改善を煮詰めていく方向でいくことになりました。

補聴器による聞こえの改善と補聴器の形状

さて、ここからより煮詰めていくことになります。結論から言うと、

  • 改善:RIC補聴器(充電型)
  • 備考:両耳装用、ロジャー補聴援助システム

に決まりました。

まず、その後の改善ですが、左側に関しては、補聴器がある方が良い状態になることがわかりました。しかし、依然として、左側は、あるとわかりやすくなるものの、聞こえの改善に関しては、少し甘めになりやすい傾向がありました。

黒い▲は、両方ともつけた状態。赤い丸が右側だけ、青い丸が左側だけの効果

そして上記に記載した補聴器による聞こえの改善値は、左側は低いのは、さておき、右側も正直、少し甘い部分があります。

送信機と受信機を組み合わせることで、話し手が話した内容が直接補聴器に届くシステムです。

そこで、補聴援助システムというものを活用することになります。

ポケつと形の補聴器とはこんな感じの補聴器です。

元々、A・Mさんは、ポケット型補聴器を使っており、その補聴器の良さは、マイクを相手の元に持って来れることです。

ポケット形の最大の特徴は、マイクを自由に動かせることです。

つまりそこに話してもらえればかなり聞きやすくなるということですね。ただ、ポケット型補聴器は、ポケットラジオのような構造になっているため、耳に入れる部分と本体がコードで繋がれており、そのコードが邪魔になります。

そこで補聴援助システムを使い、通常の音声は、そのまま補聴器で、聞きにくくなりやすい会議や人の場合は、補聴援助システムで改善する、という2段構えでいくことにしました。

今現在の補聴器による聞こえの改善で限界が出やすいのは、距離の問題と騒がしい環境の場合の2つです。そういったところでもより改善度を上げていくために、これらの処置をしていくことになりました。

補聴援助システムを使うようになったので、周波数全体的に改善するように(なるべくなだらかになるようにどの音も改善するように)ただ、相変わらず、左側は低い。

補聴器による聞こえの改善は、最終的にはこのようになりました。補聴援助システムロジャーを使うようになり、その事から、無理に改善する方針ではなく、聞き心地が良くなりやすいように改善方針を変え、このようにしました。が、それでも左側は少し低めですね。

A・Mさんとしては、使い心地、補聴器の効果は感じており、ある程度、満足されているのですが、数値が少々伴っていない状況です。

無理に改善する方針ではなく、ロジャーを使いながら、場面場面で聞きやすく方針を変え、効果を実感するようになってきましたので、これはこれで良い状態にすることができました。

なお補聴器の形状に関しては、元々、RIC補聴器に関して使っており、取り扱いに問題なかったこと、そして、補聴援助システムを使って改善していくこと、この2つを考えて、耳かけ形補聴器のRIC補聴器に決定となっています。

お客様の声

実際に対応させていただいたお客様の声については、以下の通りです。

70代、男性。両耳とも加齢性の難聴。両耳RIC補聴器装用により聞こえを改善。

この度は、ご相談いただきまして、ありがとうございました。また、このお店に来られて、少しでも生活の改善に貢献できたのであれば、私としては、本当に何よりです。

耳の状況が複雑でしたので、どのように改善すると最善の効果を出せるのか、生活の改善に繋がるのかを考えながら対応させていただいたので、お時間がかかった点は申し訳ございません。が、その甲斐あって、もし貢献できたのであれば、本当に何よりです。

補聴器は使っていると汚れたり、メンテナンスが必要になる部分がありますので、今後は、そういったサポートをさせていただきながら、生活を支えられるようにしていければと考えています。

この度は、ご相談いただきありがとうございます。そして、貢献できたことがありましたら、幸いです。

まとめ

こちらでは、簡単にお客様の例を使って、改善事例を記載してみました。改善事例は、正直、ケースバイケース、補聴器による聞こえの改善は、人による部分が大きくなりますので、人それぞれ違う、というものになりやすいです。

一つ注意が必要なのは、補聴器の調整、補聴器による聞こえの改善には正解がないことです。ですので、大事なのは、お店側とお客さん側、補聴器の相談を受ける側と補聴器を使う側がきちんと相談し合うことです。

こちらでは一応、このように改善したということですが、実際には、補聴器をつけて感じる感覚、どのぐらい実際に聞こえを補えるかの許容度、そういったものは、人によって異なります。耳の状況や日々の生活環境は人によって違うからです。

一番大事なのは、どのような補聴器を買うかよりもきちんとご自身が相談できる環境、相談したいと思える人に相談することですね。

今回は、例になりますが、少しでも参考になれば幸いです。

ABOUT ME
深井 順一|パートナーズ補聴器
深井 順一|パートナーズ補聴器
補聴器を使っている人が対応している補聴器専門店・代表
1986年7月1日生まれ。生まれつきの難聴者で小学2年生の頃から補聴器を使っています。専門分野は、感音性難聴と老人性難聴で、私自身が補聴器を使っている当事者であることを活かして、お困りの方に貢献できるようお店作りをしています。
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