感音性難聴の事例

【聞きやすく】片耳のみ生まれつき感音性難聴の方、クロス補聴器で改善

深井 順一|パートナーズ補聴器

聞こえの改善や補聴器のことについては、【FAQ】聞こえの改善と補聴器のFAQへ。お客様の改善事例は、聞こえの改善成功事例へどうぞ。

30代、女性。生まれつき片耳のみ聞こえづらく、聞こえにくいことで、お困りだったため、聞こえの改善のご相談をいただきました。

当店にて、改善を行なった結果

  • 聞きにくい側からの呼びかけや話されてもわかりやすい、聞きやすくなった
  • 多人数での会話時にスムーズに話せるようになった
  • 全体的に聞きやすくなることで、不安が減り、ストレスも軽減した

との事でした。

現状をよりよくでき、こちらとしては、何よりです。

では、どのように改善していったのでしょうか。こちらに関して、まとめていきます。

お客様の状況

お客様の状況ですが、

  • お名前:A・Kさん
  • 年齢:30代
  • 性別:女性
  • 聴力:左耳、重度難聴(右は、健聴)
  • 症状:生まれつきの感音性難聴
  • 備考:残念ながら治療はできず

となります。

今回、ご相談に来られたお客様の聴力。片耳が全く聞こえない状態になります。

聴力は、このようになります。右耳は、聞こえており、左側は、ほとんど聞こえない状態です。

聞こえないことに気が付いたのは、4、5歳の頃で、それがわかり次第、病院にかかるものの、残念ながら治療するすべはなく、そのまま、過ごされてきました。

今現在の状況ですが、

  • 左耳が聞こえないことで、左から話されたりすると気がつかない事がある
  • 騒がしい中では、かなりわかりづらくなる
  • 会社の中でも、聞こえづらさがある

との事でした。

また、これは、機会の一つではありますが、車の免許をお考えであり、左側が聞こえないため、左側に教官や人が来ると、かなり聞きづらくなってしまう。とのことでした。

という事で、それらの現状を改善させて行く事になります。

A・Kさんの改善案

片耳のみ難聴の場合、補聴器で改善する方法は大きく分けて、

  • 聞こえなくなった耳側に補聴器を装用する
  • 補聴器では改善できないため、クロス補聴器で改善する

の二つがあります。

基本的に補聴器で改善する。と考えた場合、多いのは、聞こえなくなった耳側に補聴器を装用することです。

片耳のみ難聴のケースですが、補聴器で補えるのは、せいぜいこのくらいの聴力です。聴力は下がると下がるほど、補聴器の効果も下がるようになります。

しかし、この方法で改善できるのは、上記の聴力くらいで、

今回、ご相談いただいたA・Kさんは、聴力低下が非常に大きいケースになり、補聴器の効果が望みにくい状態です。

文字通り、全く聞こえない方や聞こえを補える聴力でも、補聴器をつけると、非常に響いてしまう方は、この方法では、改善がほとんどできません。

補聴器の中には、聞こえる片耳で全ての音をきく、クロス補聴器。という変わった機器があります。

そのような方の場合は、クロス補聴器。という少し変わった機器で、改善していけると現状をよくしやすくなります。

改善のイメージです。聞こえない側を改善できないなら、聞こえる耳側で、聞こえない側も理解できるようにしたのが、クロス補聴器です。

クロス補聴器は、聞こえない耳側を補うのではなく、聞こえない耳側にきた音を聞こえる耳側に転送して、聞きにくさを改善させる機器です。

主に

  • 聴力低下が大きすぎて、補聴器では効果が出ない
  • 補聴器を耳に装用したけれども、全く効果が出なかった

というようなケースに使用されます。

この機器は、聞こえない耳側にクロス、という音の転送機をのせ、聞こえる耳側には、補聴器をのせて使用します。

このようにする事で、聞こえない耳側にきた音を常時、聞こえる耳側へ送ってくれます。

片耳のみ難聴になると、主に聞きにくくなるのは、このような部分です。

それをこのように改善してくれます。残念ながら、音の方向感覚だけは、改善ができないのですが、それ以外の部分をよくする事ができます。

A・Kさんの場合、左側の聞きにくさが非常に大きく、残念ながら、その耳に補聴器を装用しても、聞こえの改善がほとんどできません。

そのため、このようなケースに対し、改善度が高くなるクロス補聴器で改善していきます。

実際のご対応

初回の対応と試聴、貸出

初めてお越しいただいた時ですが、耳の状態や今現在の状況についてお伺いさせていただき、現状の確認を行いました。

そして、その状況の改善に関しては、改善の考えに記載した通りです。

こちらにお越しになったのも、クロス補聴器に関して知ったことから、実際にどんなものなのか、聞こえは、改善されるのか。試してみたい。とのことで、ご相談いただきました。

クロス補聴器に関する内容から、ご自身が気になるところについてもご質問いただき、ご説明した後

実際に試聴に進んで行く事になります。その時に試した形状としては、こちらを選びました。

まず、クロス補聴器には、いくつか種類があります。そのまとめがこちらになるのですが、

クロス補聴器といえば、これ!というくらいオーソドックスなタイプが、この耳かけ補聴器、耳かけクロスです。

両方とも耳にかけるタイプや

少し変わった組み合わせのものがこちら。なお、こちらの製品は、2018年9月31日に販売終了となっていますので、その点に注意です。

少し変わった耳かけ補聴器、耳あなクロスのようなもの

中には、耳の中に入れるタイプもあります。ただし、この形状のものは、聞こえる耳側が聞こえにくくなる傾向が強く出ますので、片耳が正常の方には、お勧めできません。

そして、両耳とも耳の中に入れて使用するものもあったりします。

この中で選択肢になるのは、

  • 両耳とも耳にかけるタイプ
  • 耳かけ補聴器、耳あなクロスの組み合わせタイプ

の2つです。

残りの両耳とも耳あな形のクロスは、聞こえる耳側が補聴器で塞がれやすく、聞こえる耳側が聞きにくく感じやすくなります。

そのため、特に聞こえる耳が正常の場合は、お勧めできません。

いくつかの違いは、上記の通りで、気になる聞こえの違いですが、

両耳とも耳にかけるタイプは、全体的に音を拾いやすく、そこまで騒がしくない環境下であれば、呼びかけ、会議、ミーティングなどで、改善しやすくなります。

しかし、その代わり、騒がしくなりすぎると、逆に音を拾いすぎるのか、音を拾う事により、邪魔される感覚を感じやすくなります。

ですので、

  • そこまで騒がしくないオフィスの中で仕事することが多い方
  • 会議やミーティング、打ち合わせなど、反対側に人が来やすい方

というような方には、聞きにくさを改善しやすくなります。

耳かけ補聴器、耳あなクロスの場合は、

両耳とも耳にかけるタイプに比べると、前方を中心に音を聞くようになります。

そのため、後ろなどの音は、入りづらくなるのですが、その代わり、騒がしい中での邪魔される感覚は、まだ、こちらの方が少なくなるような感覚を感じやすくなります。

それらの事から、

  • 騒がしい中での聞こえの改善を優先する方
  • 聞こえにくさに関して、全体的に改善したい方

に関しては、こちらの方が聞きにくさを改善しやすくなります。

A・Kさんの場合は、オフィスの中で仕事をされており、かつ、周囲がかなり騒がしいかと言われれば、そのような環境は、少ないとのことでした。

もちろん、飲食店の中や騒がしい環境でも聞きにくさは、感じやすいのですが、優先的に改善したいのは、職場での聞きにくさということでした。

その事から、はじめは両耳とも耳にかけるタイプで、日常生活から職場まで、試聴、貸出し、試してもらうこととなります。

1週間ほど貸出し、実際の環境で試していただいた結果、

  • 聞きにくい側からの呼びかけや話されてもわかりやすい、聞きやすくなった
  • 多人数での会話時にスムーズに話せるようになった
  • 全体的に聞きやすくなることで、不安が減り、ストレスも軽減した

との事でした。

使っていただいた結果ですが、今まで、聞こえにくい側に来られてもわからなかったものが、わかったり、気づく事が多くなった。との事でした。

さらに会議の際や囲んでお話しする時(今まで聞きにくさを感じやすかった場面)も、あるのとないのとでは、心持ちが異なるようで、補聴器があることにより、安心感も感じたようです。

少し聞こえる音の範囲が広くなることにより、様々な音が入るようになったものの、呼ばれた際や聞こえにくい側に人がきても、わかるようになったのは、大きな進歩との事で、このまま補聴器について、考えていくことになります。

クロス補聴器の形状選択

さて、改めてクロス補聴器に関して、選んでいくのですが、初めは、

このようなタイプを試してみました。

こちらを使う事により、聞こえに関しても、それなりに改善していったのですが、他のものも使いながら、どのようなクロス補聴器の方が良いのか。そして、自分にとって、良いのは、どのようなものなのか。こちらに関して、改めて考えていきます。

2018年9月に販売終了となりました。こちらは、過去の内容で、かつ、一通り、どんな対応をしていたのか。を記載するため、載せています。

次に使ったのは、このようなタイプです。こちらは、上記に記載した通り、より騒がしいところでの聞こえの改善を優先する方にお勧めする場合に有効なタイプです。

実際にこちらも使っていただいた結果

  • こちらの方が騒がしい中でのノイズ(周りの音の入りやすさ)が少なく、使用できる
  • 耳の中が少し痛むことがあった
  • 電池が短いため、少し使いづらい(何回も交換する必要がある)

とのことで、総合的な評価としては、両耳とも耳にかけるタイプの方がよく、使いやすい。との評価でした。

聞こえに関しては、平均すると、どちらもそこまで大きく変わらないとの事で、A・Kさんの場合は、ご自身が使いやすいと思った両耳とも耳にかけるクロスのタイプで決まることになります。

なお、両耳とも耳にかけるタイプには、

厳密には、このような種類があります。小型のタイプと標準タイプです。

小型のタイプは、形状が小さいため、耳に乗る感覚も楽で目立ちにくい。という特徴があります。

その代わり、標準タイプと比較すると、電池一つあたりの使える時間が短くなります(約1日、8時間使用で5〜7日)

大きいタイプは、形状が大きくなる代わりに、使用できる電池も大きくなりますので、一つあたりの電池で使える時間が長くなります(一日、約8時間使用で、8〜11日)

そして、それ以外の変化はありません。補聴器の値段も電池の値段も変わらず、性能に関しても特に変わりはありません。

A・Kさんの場合は、小さいタイプの両耳耳かけクロスに決まりました。

大きいタイプもつけてみたり、実際に触れてみたのですが、耳に乗る感覚が重く感じたため、軽くて楽に使いやすいこのタイプに決まりました。

クロス補聴器の性能選定

さて、次は、クロス補聴器の性能の選定です。

クロス補聴器に限らず、補聴器には、形状と性能の2つの選択があります。

上記に出したのは、性能による違いとその金額です。形状よりも、性能による違いの方が、金額差が大きく出てきます。

補聴器の場合における性能とは、基本的に上記の通り、

  1. 聴力を改善する際に使われる機能
  2. 聴力を改善した後に起こる問題を改善する機能

の2つに分かれます。

どの補聴器でも①はありますので、聞こえの改善は、一通りできるようになっています。

②の部分で、補聴器で改善が難しい部分をより支援してくれたり、周囲の音が気になる場合、少し楽にしてくれたりしてくれます。

先ほどのこちらで説明しますと、一番下のものでも、聞こえの改善は、できるようになっています。

そして、上に行くと上に行くほど、音を抑制する機能が高くなる事で、周囲の音を抑制して、快適に使いやすくしてくれたり、指向性という機能で、騒がしい中での会話をなるべく阻害されないように支援してくれるようになります。

A・Kさんの場合は、はじめにエコノミーのクラスから初めていきました。

こちらで使用していただくと、聞こえるようになっているのはわかるものの、周囲の音がそれなりに入り、少し気になる傾向が出ました。

また、騒がしくなってくると途端にわかりづらくなってくる感覚も強く、できれば、もう少し改善できると良い。という状況でした。

そのため、次は、同じ形状のスタンダードのもので、どう変化が出てくるのか。それをみることになります。

機械的な違いですが、はじめに記載した通り、聞こえを補える部分は、それほど、大きく変わりません。

どちらかというと、スタンダードの方が、補いやすい事はあるのですが、大きく変わるのは、周囲の音を抑制する機能と音を入れる感度です。

耳かけ形補聴器は、基本的に全体的に音に拾う傾向が出ます。しかし、人の耳は、基本的に前方を中心に聞くようにできており、前の音の方が聞きやすくなっています。

そのため、全体的に音が入るようになると、後ろの音の方が気になってしまったり、周囲の音が気になってしまったりしやすくなる傾向が出ます。

エコノミーのタイプは、最低限、聞こえの改善ができるような機能になっています。

スタンダードのタイプからは、抑制機能を働かせて、より快適になるようにし、さらに、人の耳と同じような感覚、この場合、前方を中心に聞くような状態にし、後方からの音は、従来の耳かけよりは、入りづらくする事で、より自然になるようにしています。

実際にスタンダードのタイプを使っていただくと、A・Kさんの場合、こちらの方がノイズが少なく使用ができ、使いやすいとの評価でした。

そのため、両耳とも耳かけのクロスで、スタンダードのタイプで決まることになります。

これで補聴器の選定は、終了です。

お客様の声

お店で相談してみて、実際にどうだったのか。お客様にお伺いしてみました。ご参考にしてみてください。

どのような事でお悩みでしたか?

実際にクロス補聴器をお使いになってみていかがでしょうか?

このお店でご相談(購入)されたのは、なぜでしょうか?

実際のアンケート

アンケートにご協力いただきましてありがとうございました。

そして、聞きにくさを改善させる事ができ、こちらとしても何よりです。

改善のポイント

A・Kさんの改善に関するポイントですが、

  • 聴力低下が非常に重いため、クロス補聴器で改善した事
  • 補聴器の選定は、実際に自分で使ったり、試しながらして決めた事

の2つになります。

改善で大きかったポイントは、聴力低下が大きいため、クロス補聴器で改善した事になります。

残念ながら、A・Kさんの状態は、聴力がほぼない状態になりますので、補聴器を聞こえなくなった耳側につけて改善させる。という方法では、ほとんど改善ができません。

そのため、クロス補聴器で改善させ、なるべく聞きにくく感じている部分を改善できるようにしていきました。

次は、クロス補聴器の選定です。こちらは、実際に補聴器そのものを使ってみたり、試聴してみたりすると非常にわかりやすくなります。

ものを選ぶ際は、実際に使いながら、どのような特徴があるのか。自分にとって使いやすいのか。または、使っていて、問題はないのか。などを見れると、いい選択ができるようになります。

今回のまとめ

さて、まとめです。A・Kさんの場合は、このようにして、改善していきました。聴力低下が大きく、補聴器での改善がほぼできないため、クロス補聴器を装用し、聞きにくさの改善を行いました。

その結果、より良くすることができ、何よりです。

聞きにくいと、自分に対して自信がなくなってしまったり、何かしたいことがあっても、その部分が気になってしまったりして、前に進みづらくなったりということが起こります。

また、こちらとしては、その気がないのに関わらず、無視してしまった状況になってしまったり、聞きにくいことで、変に勘違いしてしまったり、というのがどうしても起こってしまいます。

その部分に関して、全ての部分がよくなったわけではありませんが、クロス補聴器をつける事により、大きく改善されたようでした。そのおかげか、聞きにくい事によるストレスも、少しずつ少なくなってきたとの事です。

少しでも前向きになるように、支援できたことは、非常によかったなと、個人的には、思います。

ご自身の聞こえを改善させるにあたり、こちらが参考になったのであれば、幸いです。

ABOUT ME
深井 順一|パートナーズ補聴器
深井 順一|パートナーズ補聴器
補聴器を使っている人が対応している補聴器専門店・代表
補聴器のお店には珍しい難聴の補聴器販売員です。生まれつきの難聴者で7歳の頃から補聴器を使っています。補聴器の販売員としての知識、技術に加え、一人の難聴者が自分自身の聞こえを改善した知識、技術も組み合わせながら、聞こえの改善、補聴器のご相談をしています。
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