自分の価値観ではなく、使う方の価値観で考える
このお店の場合、状況がら他のお店で相談してみたけれども、うまく行かなかった方や身近な方が補聴器について相談していたけれども、うまく行っていない様子をみて、自分はきちんと相談できるところで相談したい。という方が結構、来られます。
特に他のお店で相談してみたけれども、残念ながらうまくいかなかった方のご相談では学べることが大変多いのですが、その中で感じるのは、自分の価値観ではなく、相手の価値観で考えることが大事なんだな。ということです。
なぜそうなるかというと、実は補聴器というのは、特殊解にあたるものだからです。
補聴器は特殊解
特殊解というのは、一人一人、解決する方法が異なるものになります。
一般的なもので表現すると、その人に合う仕事とか、会社の経営なども特殊解で、人の能力を活かすとかも、基本的には特殊解です。
これらのものは一つ一つ、バックグラウンドや背景、さらには状況が異なるものになりますので、基本的に一般的な回答というものが当てはまりません。
例えば、仕事で転職を考えているAさん、Bさんがいるとして、年齢は、同じ33歳です。と言っても、今まで経験してきた職種も異なれば、何が得意か、できるのかも異なれば、さらに希望するもの、どういった業界に行きたいのか。どういった働き方をしたいのか。も異なったりします。
「今、この業界が熱いよ!」なんて言っても、そもそもその業界で必要となるスキルなり、知識なり、今までの職種の中で活かせるものがあるのかどうかも人によって事なります。ついでに言うと、それがやりたい事なのかどうかも異なります。
ですので、こういった軸で判断することができないという特徴があります。
一般的にこういったものを特殊解と言ったりします。俗にいうケースバイケースというやつです。
逆のものは、自然科学などの理論系のものです。条件が揃えば、それが再現できるもの。あるいは、当てはまるもの。それが科学であり、理論系の類のものです。
ただ、人の場合、条件が揃うことがそもそもありませんし、仕事や経営などの分類では、時代の流れ、市場の状況もあります。ですので、条件が揃うことが非常に困難ですので、仮に成功例が出たとしても、再現性は限りなく低くなります。
こういった類のものが、特殊解と言われるものです。
で、問題は補聴器というのは、特殊解の最たるものである。ということです。
音の感覚と人の価値観
個人的に補聴器が面白いと感じるのは、補聴器が特殊解であることです。
前回は突発性難聴の方のケースを取り上げてみたのですが、実際には、突発性難聴のケースは、症状が人によってかなり分かれます。
聴力低下のレベル、耳鳴りが強く残るケースもあれば、そこまで残らないケース、中には、珍しいのですが、耳鳴りがなくなるケースもあります(耳鳴りは残るケースが多いです)。めまいも発症するケースから、発症しないケースも報告されており、突発性難聴と言っても、本当に症状は多彩です。
前回のケースの方は、片方の耳が補聴器には適合しづらいため、別の機器で改善しましたが、耳の状況によっては、その耳に補聴器をつけて改善した方が良いケースももちろんあります。
症状のみで改善方法が決まることは基本ありません。症状と言っても、その症状の大小、軽度なのか、中等度なのか、高度なのか、重度なのかの症状の強さもあります。
仮に同じ症状だったとしても、基本、状況が異なりますので、症状のみで改善方法が決まることは、ほとんどありません。ここが特殊解である所以です。
別の例を出してみると、補聴器による聞こえの改善でもそうですね。例えば、しっかりと聞こえを改善しよう!と考え、聴力から改善できると良い部分まで聞こえを改善するとします。
この際に得られる反応は、しっかり改善できる部分まで改善できてよかった。という反応と、しっかり改善しているので、逆に音が強く感じ、辛い。と反応するケースがある事です。
補聴器をつける方は、聞こえにくい状況をより良くする事を目的につける訳ですが、実際には、しっかり改善できて良い。という評価もあれば、しっかり改善しているので、うるさくて音がキツイ。という評価もあります。
言い方を変えれば、補聴器の知識、医療の知識から”こうするのが正解”と思っていたとしても、それは、”相手(使う方)にとって正解ではない”ことがある。という事です。ここが面白いところですね。
また、補聴器の形の選択では、主に耳かけ形補聴器と耳あな形補聴器、どちらにするかを選ぶのですが、耳かけ形補聴器は、耳に乗っている感覚が楽で使いやすい。と評価するケースもあれば、耳に乗っている感覚が楽すぎて不安。耳から外れても気がつかないんじゃないか?という不安を感じる。という評価もあったりします。
どちらも”耳に乗っている感覚が楽”という部分を評価しているわけですが、この部分の評価は、必ず、こう評価する。というものではありません。
人によってはこれをよく評価するケースもあれば、人によってはこれを悪く評価するケースがある。ここが個人的には、すごく面白いです。
この様になるのは、その人の背景、バックグラウンド、その人が置かれている状況、耳の状況や耳、物に対する価値観。それらが全て異なるからです。
人は大まかなところでは似たような考えをするケースはありますが、全くもって同じ考えをするケースはありません。ですので、補聴器は特殊解になります。
使う方の価値観で考える
じゃあ、どうすれば良いのか。ということになるのですが、それは、補聴器を使う方の価値観で考える。こちらになります。
使う方の価値観に合わせて、知識や技術を活用する。といえばわかりやすいかもしれません。
正直、私自身、聞こえの改善事例など書いている人間ですが、あれらは、共通する部分もあれば、その人にしか合わない部分もありますので、参考程度ぐらいに考えていただけると嬉しいです。
状況というのは人それぞれ異なりますので、大事なのは、使う方の価値観で考えること。ただそれだけです。
私の場合は、この価値観を知ることが好きなタチなので、割と聞く様にしているのですが、聞く際に「これについては、こう考えている」というような新しいものの見方、価値観に会うと勉強になります。
そんな風にそれを捉えるとは考えていなかったケースも多々ありますので、だいぶ新鮮に感じますね。
いずれにしても大事なのは、使う方の価値観で考えること。ここが重要になります。その理由は、上記の通り、補聴器は特殊解だからですね。
ということで、今回は、こちらに関して記載してみました。