感音性難聴の事例

生まれつき右耳が聞こえない方をクロス補聴器で改善しました

深井 順一|パートナーズ補聴器

補聴器による聞こえの改善は、聞こえの改善と補聴器のFAQ、にまとめています。また、個々の症状(症例)ごとの改善は、お客様の聞こえの改善事例にまとめています。

40代女性、左耳は健聴で、右耳が聞こえにくい方より、ご相談をいただき、状況の改善を行いました。こちらの方は、生まれつき右耳が聞こえなく、主に職場で聞きにくさを感じていました。その状況を改善できないか。との相談を受けました。

当店で聞こえの改善を行なった結果

  • 聞きにくい側からの話がわかりやすくなった(気がつきやすくなった)
  • 聞こえない側から話されることに関して楽になった

とのことでした。

今現在は、職場で主に活用されています。聞きにくさを軽減できたことにより、ストレスに関しても減り、よりよくなったとの評価もいただきました。現状をよりよくでき、こちらとしては、何よりです。

では、どのようにして改善したのでしょうか。こちらの方の状況から改善まで、記載していきます。

お客様の状況

お客様の状況ですが

  • 名前:Y・Iさん
  • 年齢:40代
  • 性別:女性
  • 聴力:右耳のみ重度難聴
  • 症状:原因不明の難聴
  • 備考:生まれつき難聴

となります。聴力に関しては

当店で測定したところ、このような状況でした。右耳は、全く聞こえない状態で、左耳は、健聴の状態です。生まれつき片側のみ聞こえなく、厳密には、小学生の頃に気がついたようですが、その際、耳鼻科にかかるものの、治療方法はなく、それ以来、ずっと聞こえにくい状況で過ごされていました。

学生の頃は、ところどころ不自由を感じつつもなんとかやってこれたようですが、社会人になってから聞きにくさをより感じるようになり、ふとクロス補聴器に関して目が止まり、当店へご来店になりました。

片耳のみ聞こえにくい状況ですと、聞こえるところは聞こえ、聞こえにくいところは、かなり聞こえにくいなど、状況により、聞きにくさのレベルが大きく異なります。この聞きにくさが改善できるのであれば、補聴器を考えたい。ということで、こちらで相談を開始することになりました。

改善への考え

耳には、改善への考えがあるのですが、結論から言いますと、Y・Iさんよりお問い合わせがあった通り、クロス補聴器で行いました。

クロス補聴器とは、聞こえる耳に聞こえない耳側にくる音を転送する機器です。Y・Iさんのように聞こえない耳側の聴力低下が大きい場合は、補聴器を聞こえない耳に使っても効果が薄いため、ほとんど聞こえやすくなった感覚はありません。そのため、聞こえない耳を直接補うのではなく、聞こえない耳にくる音を聞こえる耳側へ転送するクロスで補います。そちらの方が状況をより改善できます。

よって、Y・Iさんに関しては、クロス補聴器で改善させていくこととなります。

実際に行なった対応

こちらでは、

  • 初回の相談
  • 補聴器の選定

の2つに関して記載していきます。

初回の相談

はじめは、耳の状況を確認し、上記の通り、補う方針も含め、お話しました。ちょうどY・Iさんより、お問い合わせがあったのもクロス補聴器ですので、まずは、どんな感じに聞こえるのか。それを試していただくこととなりました。

試したのは、このような種類の機器になります。片耳は、耳かけ形の補聴器(聞こえる耳側につける機器)、クロス側(聞こえない耳につけるもの)は、耳あな形のものです。

お店で試聴した時は、聞こえる耳側を塞いでお話したり、聞こえない耳側へ電話の音声を流したりしたところ、聞こえるようになっている実感を感じていただけましたので、そのまま日常生活や職場で試していただくため貸出を行いました。

1週間ほど貸出したところ、一日の使用時間は、約10時間ほど使用されており、主に職場で使っていただきました。すると

  • 聞こえにくい側から話されてもわかる
  • 聞きにくい側に来られないようにするストレスが減った
  • 会議や部屋の中での会話も聞きやすくなった

とのことでした。

職場の状況としては、自身の席が決まっている訳ではなく、その場、その場で座る位置や作業する場所が異なるため、聞きやすいポジションを確保することが難しく、かつ、それらを意識すると仕事がしづらくなってしまうため、その負担を軽減できたとのことです。

また、どうしても右側(聞こえない側)から話されると反応がしにくくなってしまうのですが、それらに関しても反応しやすくなり、よくなったとのことでした。

あると便利でかつ聞きやすくなり、ストレスも軽減するため、本格的にどのクロス補聴器にするのか、決めていくこととなります。

クロス補聴器の選定

こちらについては、

  • クロス補聴器の全体像
  • 両耳とも耳あな形の検証
  • 最終的な決定

の3つに分けて記載していきます。

クロス補聴器の全体像

クロス補聴器の選定ですが、まず全体像として

クロス補聴器には、このような種類があります。そして、それぞれの特徴に関しては、上記の通りです。

両方とも耳かけ形は、このようになり

両方とも耳あな形は、このようになります。

そして貸出した耳かけ補聴器、耳あなクロスの組み合わせは、このようになります。

Y・Iさんの意見や希望を伺うと、聞こえの効果も重視しつつ、価格も考えたいとのことで、少し聞こえの効果よりの考えをしていたため、候補としては、耳かけ補聴器、耳あなクロスの組み合わせと両耳とも耳あな形となりました。

両耳とも耳あな形に関しては、Y・Iさん以外にもこの機器を制作したことがあるのですが、聞こえの効果は、もっとも高くなりやすいものの、聞こえる耳側が聞きにくくなることもあるため、聞こえの効果も見つつ、聞きにくくなることはないのか、それを見た後に販売する、というお約束で相談していくこととなります。

両方とも耳あな形の検証

ということで、こちらを、製作。

こちらが実際のものです。幾つか調整を行い、ご様子を伺って見ますと

  • 自身の声が大きく聞こえやすい
  • 聞こえる耳側が聞こえにくくなった感覚がある
  • 紙の音が大きい
  • 咀嚼の音が大きい

のとことでした。紙の音が大きい部分に関しては、補聴器側の調整で軽減させましたが、それ以外に関しては、軽減できず。耳の中をどれだけ塞ぐかにより、それ以外の要素が関係するのですが、なるべく塞がないように制作しても、あまり軽減することはない状態でした。

聞こえる耳側が聞こえにくくなった感覚があるとのことでしたので、その状態で、補聴器の聞こえを測定してみました。私のところにある機器は、0dBから測定することができるようになっていますので、補聴器を装用した状態とそうでない状態でどのように違いがあるのか、単なる錯覚なのか、それとも実際に聞きにくくなっているのかを見ることができます。

その結果、上記のようになりました。数値の意味ですが、△が補聴器を装用していない状態で、▲がクロス補聴器側(聞こえない耳側)、補聴器側(聞こえる耳側)、両方装用した状態です。そして、青い△が聞こえる耳側のみ補聴器を装用した状態です。

結論から申しますと1500Hzのあたりから下がりはじめ、2000Hz、4000Hzに関しては、明らかに補聴器がない状態より聞きにくくなっている状態であることがわかりました。重要なのが許容範囲なのですが、健聴のラインが0〜25dBになりますので、両耳ともつけている状態であればかじろうて大丈夫ですが、聞こえる耳側に装用している状態だと、それを超え、難聴のレベルにまで低下することがわかりました。

では、実際には、どうなのか。数値だけ下がっているのか、それともやはり聞きにくくなるのか、それもちょうど良い機会ですので、貸出して調べてみました。すると、声が細い方や小さい方は、聞きにくくなっており、場合によっては、補聴器を外して聞いているとのことでした。

これらの経験により、両耳とも耳あな形にするクロスは、少なくとも片耳が健聴であり、もう片耳が聞こえにくい方にとっては、ベストではない選択肢であることがわかりました。実際には、この方、以外にもいくつか行なっているのですが、その方々の結果からもそのように感じています(だいたい皆、同じように聞きにくくなっています。様々な対策を行いましたが、上記のような結果になることがほとんどでした。)。

一番気になる聞こえの部分に関しては、耳あなクロスの組み合わせとほとんど変わらないか、少しよく感じるくらい。とのことでした。ただ、聞こえる耳側が聞きにくくなっていることを考えると、錯覚でそのように感じている可能性もあり、正直、未だに私もどちらが効果があるのかと言われると、なかなか判断がつかない状態です。

最終的な決定

ということで、最終的な決定は、

になりました。マイナス面を考えたうえでの選択となります。しかし、こちらには、厳密には、こちら以外にも

のタイプがあります。これは、単純に形状の小ささをとるか、それとも大きくなっても良いので、電池の寿命が長いものをとるか、2つに一つになります。少しでも形状が小さい方が良いという方は、電池の寿命は短くなりますが、形状は小さいままにできます。大きくなっても良いのであれば、使い勝手はよくなります。

電池に関しては

  • 小さいタイプ:一日、7時間使用で2〜4日
  • 大きいタイプ:一日、7時間使用で5〜7日

ほどになります。

Y・Iさんとご相談しますと、これからずっと使っていくことを考えると電池の持ちが良い方が良いとのことで、大きいタイプに決定しました。実際に電池の持ちがよくなったことで扱いやすさ、交換の面倒さも減り、よりよくなったとのことでした。

お客様の声

実際にご来店いただいた方へアンケートをお取りしてみました。ご参考にどうぞ。

どの様な事でお悩みでしたか

実際にクロス補聴器をお使いになってみていかがでしょうか

このお店で、ご相談(購入)になったのは、なぜでしょうか

アンケート

まとめ

以上、Y・Iさんの症例でした。片耳(右耳)のみ重度難聴のため、クロス補聴器での改善となりましたが、現状より聞きにくさを軽減でき、何よりです。治らないと言われ、そのままになっている方は、多くいらっしゃるため、聞きにくさを改善でき、より不自由を感じにくくなったのであれば、本当によかったと思っています。

特に昔に耳鼻科を受けてそのままになっている方は、補聴器や耳を改善させる情報に関しても得る手段がほとんどないため、仕方がないのですが、そのままとなっている方が多いように感じます。補聴器も昔より、どんどんよくなってきていますので、昔は、改善できなかった症例も徐々に改善できるようになってきました。補聴器に関しては、悪評も多いのですが、できることが増えてきているのも事実です。

クロス補聴器を装用しても耳が治るというところまでは行かない点は誠に申し訳ないのですが、それでも聞きやすくなるところはあり、今まで感じていた不自由な部分を軽減したり、聞こえていなかったことに気がつかなかったところで改善したりすることもあります。

今回のケースは、それらのところで貢献でき、何よりです。補聴器は耳の改善を行う最終手段になりますので、現状をよりよくでき、本当によかったと感じています。

ABOUT ME
深井 順一|パートナーズ補聴器
深井 順一|パートナーズ補聴器
使っている人が対応している補聴器専門店・代表
1986年、7月1日生まれ。生まれつきの難聴者で小学2年生の頃から補聴器を使っています。聞こえにくい側の状況やお気持ちは、同じ難聴者や当事者にしかわからないことがある事から、このお店では、実際に補聴器を使っている私自身がご相談を承っています。

お店のご紹介

初めまして、パートナーズ補聴器の深井と申します。

このお店は、生まれつき難聴で補聴器を使っている人が対応している補聴器専門店です。

聞こえにくい側の状況やお気持ちは、同じ難聴者や当事者にしかわからないことがある事から、実際に補聴器を使っている当事者がご相談を承っています。

お店の詳細は、以下のページへどうぞ。

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