こちらでは、実際のお客様のデータを使って、どのように聞こえを改善していったのか。その解説を行なっていきます。
今回のケースは、30代の女性の方で、生まれつき低い音が聞こえにくく、職場でも、家でも困る頻度がだいぶ増えてきてしまった方となります。
その事から、お店にご相談いただく事になるのですが、その結果
- 今まで聞きにくかった会話が非常に聞きやすくなった
- 職場では、聞こえることが増え、コミュニケーションが楽になった
- 聞こえにくい事による不安は、だいぶ軽減した
との事でした。
では、どのように聞こえを改善していったのか。そのポイントとなる部分をまとめていきます。
目次
お客様の状況
まず、状況ですが、
- お名前:M・S さん
- 性別:女性
- 年齢:30代
- 聴力:両耳とも低音性難聴
- 症状:生まれつきの感音性難聴で、徐々に低下
- 備考:病院には、行ったものの改善はできず
となります。
聴力に関しては、こちらの通りです。
両耳とも低い音が聞こえづらく、音が高くなると、なるほど、聞こえやすくなる耳の状態です。
低い音を中心に聞こえにくい方の場合、1000Hzあたりが、45dB、50dBくらいになると、急に聞こえづらさを感じやすくなる傾向があります。M・Sさんも聴力的には、そのような傾向が出ていますね。
耳の状況としては、高校生の頃に難聴が発覚したのですが(生まれつきではないかとの事)、そこまで困る事はなく、そのまま生活されていました。
しかし、社会人になり、会社に勤めるようになった頃から、会議でうまく聞こえなかったり、電話の際にもうまく対応できなかったりなど、聞きにくさを感じる部分が増えてきました。
その状況で、ご友人や周りの人にご迷惑をかけてしまったこともあり、耳の事、聞こえにくい事にだいぶ悩んでいたご様子でした。
聞こえにくい状態というのは、コミュニケーションが取りづらい状態になる。と同様ですので、人との関係や仕事において、だいぶ大きな弊害、障害をもたらすことがあります。
M・Sさんもそういった部分を感じており、少々、自信も喪失している様子でした。
ということで、この状況を改善していきます。
低い音が聞こえにくい場合の状況と改善案
では、早速、聞こえを改善していこう。となる前に、このような聞こえの場合、どのような状況になるのか。その点に関して
- 低い音が聞こえにくい場合の聞こえの状況
- 低い音が聞こえにくい場合の改善ポイント
この2つに分けて、記載していきます。
低い音が聞こえにくい場合の聞こえの状況
まず、低い音が聞こえにくい方の状況ですが、主に聞きにくさを感じやすくなるのは、この辺りが多くなります。
この中で特に感じやすくなるのは、
- 騒がしい環境下での聞き取りにくさ
- 離れたところからの呼びかけ
の2つになります。
騒がしい環境下に関しては、状況にもよりますが、話している内容が周りの音に邪魔されてしまい、聞きにくさを感じやすくなる部分です。
低い音が聞こえにくいため、女性が話している場合は、聴力によっては、聞こえるかもしれませんが、低い男性の方が話している場合、だいぶ聞きにくさを感じやすくなります。
それにプラスして、周囲での物音がしている場合、その音が重なり、分かりづらさが強くなってしまう事が多いです。

離れたところからの呼びかけに関しても、同様で、低い音が聞こえにくい方の場合、男性に呼ばれた際などは、だいぶ気づきにくさが強くなります。
音は、離れると離れるほど、音が弱くなり、かつ、聞こえないとそれ以外の方法で気づく事ができません。音は、目に見える者でも触れられるものでもありませんので、気づく事ができなくなります。
そういった性質を持っていますので、距離が離れた場合も、だいぶ聞きにくさ。この場合は、気がつかなさ。が大きくなります。
意外とこの部分は、ご本人が思っている以上に気づいていないケースが多かったりします。

そして、周りの方とのお話ですね。
周りの方とのお話に関しては、対応する人によるのですが、声が小さい方、あるいは、会議室が大きかったり、大人数で会議する場合は、距離が離れることによる音の減衰が入りますので、それにより、聞きにくさを感じやすくなります。
近くではっきり話してくれる方ばかりであれば、そこまで聞きにくさは感じないかもしれませんが、状況により、聞きにくさが強くなります。

最後は、対面でのお話です。意外と対面でのお話に関しては、聞こえる事も多いのですが、声が小さい方、あまりはっきり話さない方、そして、低い男性の声の方。そういった方の場合は、聞き取りにくさが出てくる事があります。
低い音が聞こえにくい方の場合、全体的に聴力が低下している訳ではなく、低い音のみ低下している事があり、その事により、困るケースとあまり困らないケースで分かれます。
このように困るところと困らないところが分かれやすいのが、このような聞こえの方の特徴です。
低い音が聞こえにくい場合の聞こえの改善ポイント
さて、ここから、聞こえを改善していくためのポイントをまとめていきます。
- どの耳に補聴器をつけるのか(使う耳)
- 低い音が聞こえにくい方を改善する補聴器
- どこまで聞こえを改善するか
大きく分けて、この3つがありますので、しっかり押さえておきましょう。
どの耳に補聴器をつけるのか(使う耳)

一番初めは、補聴器を使用する耳です。
こちらは、そのままの意味で両方の耳に補聴器を装用するのか、それとも片方の耳につけるのか。片方の耳の場合は、左側のみか、右側のみか。このような選択肢があります。
結論からお伝えしますと、生活をより良くしていきたい場合は、両方の耳に補聴器をつける事が大事です。
両方の耳に補聴器をつけるポイントは、
- 騒がしい環境下で、なるべく聞きにくくならないようにする事
- どこから話されても、気付きやすくする事
この2つになります。

まず、片方のみと両方につける場合の聞こえの効果については、上記の通りです。
簡単にお話をさせていただくと、静かなところでの改善効果は、あまり変わらないのですが、騒がしい環境下になった場合、片耳のみつけている場合は、下がりやすい。という状況です。

上記でも記載させていただいたのですが、低い音が聞こえにくい方は、周囲が騒がしくなると、周りの音に邪魔されて、かなり音声が聞き取りづらくなりがちです。
ですので、その聞き取りにくさは、なるべく改善できるとよく、そのために、できれば両方の耳に補聴器を装用して、そういった環境でも、なるべく聞きにくさが落ちないようにする事が大切です。

また、両方の耳に装用する理由は、こちらだけではなく、どの方向からも呼びかけや音に気づくようにする。という意味もあります。

低い音が聞こえにくい場合、離れたところからの呼びかけ、そして、音に関しては、気づきにくさが強くなります。
ですので、どの方向からも、できればわかるようにする。気づくようにする事が大事です。この部分は、聞こえていなくて、人との関係が悪化したり、人間関係にヒビが入るのを防ぐためでもあります。
難聴の怖いところは、聞こえていなかったり、気づかなかったりしただけなのに関わらず「無視している」「やる気がない」「態度が悪い」と誤解されやすい所になります。
誤解に関しては、なるべく無くしていった方が良いですし、人と仲が悪くなって得することは、何一つありません。どのようにしたら、周りの方とうまくやりとりできるようになるのか。を中心に考えられるようになると良いです。
その事から、両方の耳に装用して、なるべく気づくようにしていく。聞こえにくさが低下しないようにしていく。という事ができると、聞こえの改善にプラスして、日々の生活に関して、より良くしやすくなります。
低い音が聞こえにくい方を改善する補聴器
次は、低い音が聞こえにくい方を改善する補聴器についてです。

まず、低い音が聞こえづらく、高い音が聞こえている耳の場合、この低くなっている聴力(赤く囲んでいる部分)の部分を補いつつ、高い音(青く囲んでいる部分)は、なるべく下がらないようにする必要があります。
今現在、補聴器は、ある一定の部分までは、聞こえの改善ができるのですが、それ以上の聞こえの部分は、改善できない状態ですので、そこの部分は、なるべく影響を与えないようにしていく必要があります。
耳を塞ぐ事により、高域の部分(青く囲んでいる部分)が下がりやすくなるため、低音が聞きにくい耳の方は、改善が難しいケースの一つとなります。

ですので、これらの改善を行いやすい補聴器を選んでいく必要があるのですが、それは
- 耳かけ形補聴器ならRIC補聴器
- 耳あな形補聴器なら、CIC補聴器
になります。
聞こえを補う際に欠点となる高い音が低下する影響度を薄くし、そして、低下した低い音の部分を補える補聴器を使い、なるべくご自身の状態を良い状態にしていけると良いです。
補聴器で聞こえを改善する値
今現在、補聴器は、どの辺りまで聞こえを改善できると良いか。という部分は、おおよそではありますが、わかってきています。

そして、補聴器の世界には、補聴器を装用した状態でどのぐらい聞こえが改善されているのか。という部分を確認できたりするのですが、それでお話をさせていただくと

M・Sさんの場合は、おおよそ、このぐらいまで改善できると良かったりします。

500Hz〜2000Hzは、音声の聞きやすさに影響し、改善数値としては、35dBまで改善できると良いです。
35dBまで改善できるようになると普通の声の方から、ちょっと声の小さい方。さらに離れたところから呼ばれた際の声、お話。そういったものがだいぶわかりやすくなります。
その事から、できれば、ではありますが、この目標値まで改善できると良いです。

そして、高い音(2000Hzを含む、その先の音)に関しては、補聴器がない状態より、下がらないようにできると一番理想です。
このようにできると、ご自身の聞こえの良い部分をそのまま利用でき、低下した部分を補いつつ、良い状態はそのまま利用する事で、聞こえの改善度を上げやすくなります。
低い音が聞こえにくく、高い音が聞こえている方の場合、2000Hzあたりから、だいぶ聞こえがよくなる事が多くなるのですが、この聞こえが良いところは、補聴器を装用すると、逆に補聴器をつける事で、聞こえが低下する現象が起こります。
ですので、なるべくその辺りに関しては、低下しにくい補聴器をつけ、さらに補聴器の効果の確認をして、なるべく高い音に関しては、補聴器がない状態と比べて、低下しないようにできると良いですね。
1マスぐらいの低下であれば良いのですが、2マスも3マスも下がると、補聴器をつけたほうが聞きにくい。となり兼ねませんので、なるべく影響度が少なくなるようにしていく事が大切です。
実際の改善
初回時の内容
さて、初めの状態ですが、まず、耳の状況に関してお伺いし、状況の確認をしていきました。
そこから、上記のように改善する方法に関して、お伝えしました。その過程で、実際に補聴器の試聴も行うことになります。

試聴した補聴器は、このような形状のもので、RIC補聴器と呼ばれるものです。
補聴器に関しては、初めてともあり、扱いやすいものが良いとの事で、こちらにしました。
幸い、形状的には、そんなに目立つものではなく、自然に使えるタイプでもありますので、こちらで、改善していくことになります。

初回の聞こえの改善に関しては、補聴器を使用した状態を測定した結果は、このようになります。

補聴器の設定側ですが、基本的にこのように使用する側の聴力に対して、どのくらい改善すると良いのかという目標のラインと、今現在、出ている音のラインがあります。
その点に関しては、初めの状態から、音に関しては、それなりに入れても大丈夫でしたので、初回から改善するようにしていきました。

その結果、補聴器を使用した時の聞こえの測定も、ほぼ目標のあたりまで、改善するようになり、改善状況としては、良い状態です。
初めから聞こえを改善していく場合、問題となるのは、実際につけた時の音の大きさです。
その点に関しては、良く聞こえる状態なので、このくらい聞こえるとよい。とのことでした。音が大きすぎる感覚は、ないようでしたので、この状態で日常生活から、職場で使っていただくため貸出す事になります。

なお、お店の中では大丈夫でしたが、日常生活上では、様々な音の状態があります。
そのため、音量を調整できるようにしておき、仮に大きすぎたりした場合は、下げ、逆に聞きにくい時は、あげられるように、使用者側で、自由に調整できるようにもしました。
このようにできると、自分で調整でき、かつ、様々なところで使った際に、音量を調整したかどうかで、補聴器の状況に関して、適性が調べられるようになります。
補聴器、試聴の結果は
この状態で使っていただき、2週間ほど試していただいた結果、
- 今まで聞きにくかった会話が非常に聞きやすくなった
- 職場では、聞こえることが増え、コミュニケーションが楽になった
- 聞こえにくい事による不安は、だいぶ軽減した
とのことでした。
補聴器に関しては、初めてでしたので、本当に聞きやすくなるのか。そして、自分にとって、良いものなのか。わからないところがあり、その事に関しては、不安を感じていたようでした。
その事から、補聴器を使ったお試しをしていくのですが、補聴器をつける事により、大きく変わったのは、全ての音の聞きやすさで、テレビから、会話まで、全体的に聞きやすくなったとの事でした。
特に職場では、離れたりすると、呼ばれたりすることがわからなかったり、ご自身にとって、聞きにくい声の人がおり、それらも全部含めて、聞きやすくなり、補聴器ありの状態となしの状態は、だいぶ聞こえが異なるとの事でした。
今まで、聞こえにくい事で、呼ばれている事に気がつかなかったり、聞こえにくい事による不安を抱えていたのですが、聞こえやすくなる事により、それらの不安は、だいぶ改善されてきたようです。
その事から、より聞こえの改善や補聴器の選定を行っていく事になります。
補聴器の選定
ここから、補聴器の形状選定に移行していきます。

結論からお話ししますと、M・Sさんの場合は、RIC補聴器になりました。このようなタイプの補聴器です。理由は、使いやすく、かつ、なるべく聞こえの改善を重視したい。との意見からでした。

まず、補聴器の形状に関しては、上記に記載した通り、高い音への影響を軽減できる補聴器が良いです。そうなると、上記の2つが対象になります。

耳かけ形補聴器の良いところは、このような聞こえの方の場合に感じやすい高い音の減少。それを補聴器の中では、一番軽減しやすい事です。
その事から、補聴器に関して、初めて使う方にオススメの補聴器でもあります。

逆にこの補聴器の欠点は、耳の上にかけて使用する補聴器になりますので、マスクだとか、メガネ。そういったものの邪魔に少しなりやすいところです。

そして、電話に関しては、音を拾う位置が上の方にありますので、受話器を上にずらして、行う事になります。
これが欠点です。

耳あな形補聴器に関しては、先ほどの耳かけ形補聴器の逆になります。良いところは、電話やマスク、メガネ。そういったものが、今まで通り、使える事です。
そして、欠点は、自分の声が少し大きく聞こえたり、閉塞感を感じやすい所。さらに耳かけ形に比べ、少し高い音に関しては、減少しやすい事です。
この閉塞感や自分の声が大きく聞こえる感覚は、不快感につながりやすく、さらに高い音の減少は、なければないほど、良いのですが、耳をふさぐ事から、どうしてもその感覚は、出やすくなってきてしまいます。

これらの事をお伝えさせていただいた後、M・Sさんは、RIC補聴器にて聞こえを改善していく事になりました。
補聴器の最終調整
補聴器に関しては、その後、少しずつ改善していき、

最終的には、この辺りまで聞こえを改善しました。
低い音が聞こえにくい状態になりますので、その辺りの聞こえの改善は、しっかりと行なっているのですが、高い音の影響度。3000Hzと4000Hzに関しては、あげると音の響きがきつくなってしまう事から、使いやすさを優先して、このような状態になりました。
理想は、3000Hzも4000Hzも、補聴器がない状態に近い状態にする事ですが、それをすると辛くなってしまうのであれば、聞こえの改善をそこまでにするのも一つの手です。
この点は、M・Sさんと相談し、使いやすさも重視したい。という事で、この状態でひとまず落ち着く事になりました。
お客様の改善と声

- 購入:RIC補聴器(小型の耳かけ形補聴器)
- 金額:360,000円(税込)
- 備考:両耳にRIC補聴器をつけ、改善
どの様な事でお悩みでしたか

実際に補聴器をお使いになってみていかがでしょうか

このお店で、ご相談(購入)になったのは、なぜでしょうか

実際のアンケート

アンケートにご協力いただきまして、ありがとうございます。
低い音が聞こえにくい。という珍しい聴力で、さらに職場やご家庭でも聞こえにくい事で、お困りな状況から、ご対応させていただいたのですが、改善できるところは、しっかりと行い、聞きにくさをなくしていけるようにさせていただきました。
M・Sさんもそうだったのですが、聞こえにくい状態というのは、変に誤解を受けてしまったり、周りの人が普通にできていることができなかったり、その事による自信喪失、仕事のし辛さ。それが出てきてしまいます。
その事から、なるべくそういったところをなくしていけるよう、M・Sさんの生活ができる限りよくできるよう、こちらでできる事をしっかりとさせていただきました。
その結果、現状をより良くすることができ、かつ、改善に貢献できた事は、本当に何よりでした。
私個人としては、聞こえが改善されることで、初め、あまり自信がなかった様子から、徐々に本来のご自身になっていき、明るくなってきた様子をみて、ご対応させていただいて、本当によかったなと感じております。
こちらこそ、本当にありがとうございました。
まとめ
さて、M・S さんの症例改善に関して、記載させていただきました。
M・Sさんといいますか、ほぼ低音障害系の方の聞こえの改善症例ですが、低い音が聞こえにく方の状況から、気をつけるところに関して、記載させていただきました。
低い音が聞こえにくい方は、低い音が聞こえにくく、さらに高い音が聞こえている方が大半ですので、それに合った改善の仕方をする必要があります。
そのポイントに関して、上記にまとめさせていただきましたので、同じようにお悩みの方は、ご活用いただければと思います。
こちらの内容に関して、少しでも役に立ったのであれば幸いです。
このお店は、生まれつき難聴で補聴器を使っている人が対応している補聴器専門店です。
このお店が目指しているのは、使う方の生活を支えられる補聴器を提供することで、難聴の体でもご自身が思う人生を生きやすくなるお店です。
私が考える補聴器の本質は、生活を支えられる補聴器を使うことで難聴の体でも、少しでも自分が思う人生を生きやすくしてくれる道具。こちらだと思っています。
そのような補聴器を提供できるよう、このお店では、使う方の価値観を尊重した補聴器のご相談、聞こえの改善相談を行なっています
もし、このようなお店に興味がある方は、お気軽にお問い合わせページより、ご連絡ください。
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