感音性難聴の事例

【職場での会話がスムーズに】高い音が聞こえにくい感音性難聴の方、補聴器で改善

深井 順一|パートナーズ補聴器

聞こえの改善や補聴器のことについては、【FAQ】聞こえの改善と補聴器のFAQへ。お客様の改善事例は、聞こえの改善成功事例へどうぞ。

40代、女性。30代頃から聞きにくさを感じており、職場での聞き返しや聞こえないことがあることから、聞きにくさの改善のためにご相談に来られました。

当店で改善を行なった結果

  • 職場での聞き返しが少なくなった(理解できることが増えた)
  • 高い音が聞こえるようになり、鳥の鳴き声もわかるようになった
  • 今までは小さい声の方は、聞きにくかったが、補聴器があることで理解しやすくなった

とのことでした。現状をより良くでき、何よりです。

では、実際にどのように改善させていったのでしょうか。こちらに関して記載していきます。

お客様の状況

まず、お客様の状況ですが

  • お名前:A・Kさん
  • 性別:女性
  • 年齢:40代
  • 聴力:両耳とも軽・中等度難聴(高い音が非常に聞きにくく高音漸傾型の聴力)
  • 症状:感音性難聴との診断
  • 備考:30代から聞きにくさを感じるように。ただ原因はよくわからず

となります。

聴力は、このようになり、高い音ほど聴力の低下が見られる状態です。

このような聴力の傾向としましては、

  • 音声が理解しづらい(音は聞こえるけど、なんと言っているのかわかりづらい)
  • アラーム系、お知らせ系の音に気がつきにくい
  • 周囲が騒がしかったりすると、言葉がわかりづらくなる
  • 呼びかけなども反応しづらい(呼ばれていることに気がつかない)

という特徴があります。高い音が聞こえなくなることで、呼び出し系、例えば、ご飯がたけた時になるお知らせ音や洗濯機が洗い物、終わった時に知らせてくれるアラームが聞きにくかったり(気がつかなかったり)、音声もはっきりしない感覚が強くなる傾向が出ます。

実際の現状に関してお伺いしてみますと、職場での会話全般が聞きにくかったり、聞きにくいが故に、聞き返しが多くなっているとのことでした。呼ばれた時も気が付いていないことがあり、聞きにくいことで、全体的に、お困りの様子でした。

ということで、この現状を改善していくことになります。

改善の指針

さて、このような聴力に対する補聴器での改善の指針ですが、記載していくのは、

  • 聞こえを補う上での補聴器の選定及び、補い方
  • 改善させるための補聴器調整の改善目標値

の2つになります。

聞こえを補う上での補聴器の選定及び、補い方

高い音が聞こえにくいケースにおいては、そのままにはなりますが、低下している高い音の部分をそれなりにしっかり補えるようにしていく必要があります。

そのための補聴器の形状における選択肢は、耳かけ形であれば、RiC補聴器、耳あな形であれば、CICになります。※CICは、出力(音の大きさ)が足りないこともありうるので、実際には要検証です

A・Kさんのような聴力で多いのは、このような形状の補聴器で改善させること。音の出力を変更(大きく)しやすく、聞こえを補う観点からは、良い。
A・Kさんのような聴力で多いのは、このような形状の補聴器で改善させること。音の出力を変更(大きく)しやすく、聞こえを補う観点からは、優れた補聴器になる。

こちらがRIC補聴器で、このような聴力に問題となりやすい

  • 自声の響きをある程度、抑えやすい
  • 高い音を補いやすい(要、Cシェル、イヤモールド)

をすることができます。

この補聴器が合うのは、4000Hzが70dBくらいまでの聴力。それ以上の聴力低下がある場合は、RIC補聴器の方が改善しやすい。今回の聴力は、ギリギリ大丈夫だったので、候補に。
この補聴器が合うのは、4000Hzが70dBくらいまでの聴力。それ以上の聴力低下がある場合は、RIC補聴器の方が改善しやすい。今回の聴力は、ギリギリ範囲内だったので、候補に。

CIC補聴器も同様で、耳あな形の中では、まだ自声の響きを抑えられやすく、かつ、高い音を補いやすい傾向があります。ただ、欠点として、

  • ハウリングが起こりやすい傾向がある
  • 場合によっては、出力(音の大きさ)が足りない場合がある

の2つもあります。

ハウリングとは、補聴器の音が漏れてしまい、ピーっ!とずっとなる現象になります。この音は、聞こえると鬱陶しく感じますので、聞こえないに越したことはありません(基本的には、聞こえない状態がベストです)。また、形状が小さいがゆえに音を出すレベル、音の大きさが補聴器によっては足りないこともあります。

この形状の場合は、この2つに関しても確認していく必要があります。

感音性難聴なため、音声の理解度というものも調べる。この測定の最良値が50%以下の場合は、補聴器の適合が難しくなる(補聴器の効果が非常に感じにくくなる)。測定したところ、両耳とも適性があるため、なるべく聞きにくくならないよう両耳に装用し、改善していくことに。
感音性難聴の方のために、音声の理解度というものも調べる測定がある。この測定の最良値が50%以下の場合は、補聴器の適合が難しくなる(補聴器の効果が非常に感じにくくなる)。測定したところ、両耳とも適性があるため、なるべく聞きにくくならないよう両耳に装用し、改善していくことに。

両耳の状況に関して調べてみますと、両耳とも補聴器を装用して、聞こえの効果を出すことができそうな耳ですので、両耳に補聴器を装用し、なるべく聞きにくさを改善できるようにしていきます。

改善させるための補聴器調整の改善目標値

次は、補聴器で聞こえを改善させる目標値です。

赤い▲は、補聴器をつけた時の聞こえの改善目標値。△は、補聴器なしの状態。聞こえが補える部分は、だいたい35dBまで補い、聴力低下が大きい2000Hz以降は、少し改善値が下がる。ただ、このくらい改善できると聞こえの効果も感じやすい。
赤い▲は、補聴器をつけた時の聞こえの改善目標値。△は、補聴器なしの状態。聞こえが補える部分は、だいたい35dBまで補い、聴力低下が大きい2000Hz以降は、少し改善値が下がる。ただ、このくらい改善できると聞こえの効果も感じやすい。

補聴器で聞こえを改善させる場合、聴力別にある程度、改善させられる目標値があります。A・Kさんの場合は、このような状態になります。

ポイントその①。音声の場合は、500〜2000Hzを改善すると良くなる傾向がある。この辺りは、是非とも改善目標値までは改善させたいところ。ただし、音が大きい場合は、必ず使える範囲内にしよう。音は大きすぎると辛くなってしまうので、必ず使える範囲内を目指す事。
ポイントその①。音声の場合は、500〜2000Hzを改善すると良くなる傾向がある。この辺りは、是非とも改善目標値までは改善させたいところ。ただし、音が大きいと感じる場合は、必ず使える範囲内にしよう。音は大きすぎると辛くなってしまうので、必ず使える範囲内を目指す事が重要だ。

音声を理解させる場合に重要になってくるのは、だいたい500〜2000Hzになり、この部分は、優先的に改善させ、音声の理解度をあげられるようにしていきます。

高い音が聞きにくくなっているケースでは、アラーム系、お知らせ系も聞きにくくなり、気がつかない。わからないことも増える。そのため、この辺りもしっかり改善させておこう。すると、気がつくようになり、日常生活もしやすくなる。
高い音が聞きにくくなっているケースでは、アラーム系、お知らせ系も聞きにくくなり、気がつかない。わからないことも増えてしまう。そのため、この辺りもしっかり改善させておこう。すると、気がつくようになり、日常生活や仕事もしやすくなる。ただし、あげすぎに注意。

そして、それ以外の部分ですが、アラーム系、お知らせ系が聞こえるようにこの辺りまで改善できると吉です。

小さい部類のアラーム系は、体温計の音で、この音が聞こえるようになるには、だいたい4000Hzで45dBくらい必要です(ベストは、40dBくらいですが、そもそもの問題として、そこまであげるのが結構困難なため、目標は、45dBにしています)。

なるべく補える部分は、補い、日々の生活、職場での聞きにくさを改善していきます。

実際にしたこと

さて、こちらでは、実際に改善に向けて、行なったことについて載せていきます。

初回時の対応と試聴

初回では、まず現状について確認(耳の状況の測定ですね)。その後、上記のようなお話を行い、初めに補聴器の試聴からスタートしました。

低い音はどちらかというと聞こえており、高い音が聞こえにくい状況から、貸出可能なRICタイプで試聴。

初めの状態。少し抑えめにしつつ、音声のところで関係する部分は、なるべくしっかり目に補った状態。
初めの状態。少し抑えめにしつつ、音声のところで関係する部分は、なるべくしっかり目に補った状態。

補うレベルに関しては、低めにして日常生活から職場まで使っていただきます。

幾日か貸出した結果ですが、

  • 今まで聞きにくかった音声や小さい声が聞こえるようになった
  • 聞き返しが少なくなった
  • 騒がしすぎると聞きにくくなりやすいが、そうでなければ聞こえることが増えた

とのことで、補聴器に関しては、考えていくことになります。

補聴器の選定

ある程度、補聴器の有用性を感じていただけたら、どのような機器にするか。という選定を行なっていきます。

補聴器には、耳の中に入れて使用する耳あな形と

耳にかけて使用する耳かけ形の2つがあります。

それぞれの大まかな内容ですが、このようになります。

耳かけ形補聴器は、音を全体的に拾いやすい傾向がある。そのため、静かなところ、もしくは、離れたところからの音の気づき、聞こえは、良い傾向が出やすいが、騒がしいところだと、音を拾いすぎて、聞きにくくなりやすい傾向を感じる。
耳かけ形補聴器は、音を全体的に拾いやすい傾向がある。そのため、静かなところ、もしくは、離れたところからの音の気づき、聞こえは、良い傾向が出やすいが、騒がしいところだと、音を拾いすぎて、聞きにくくなりやすい傾向を感じる。

聞こえの効果に関しては、耳かけ形のイメージは、このようになります。

耳あな形補聴器は、耳の中に補聴器を入れるせいか、前方からくる音を中心的に聞く傾向があり、対面や少し騒がしい程度のところだと、まだ耳かけ形より改善しやすい傾向を感じる。
耳あな形補聴器は、耳の中に補聴器を入れるせいか、前方からくる音を中心的に聞く傾向があり、対面や少し騒がしい程度のところだと、まだ耳かけ形より改善しやすい傾向を感じる。

耳あな形は、このようになります。

A・Kさんに耳かけ形を使ってもらい、状況に関してご相談したところ

  • マスクをつける機会が多い
  • 形状は、小さいと良い
  • 聞こえはなるべく全体的に改善したい(職場がある程度、騒がしくなりやすいため(保育園勤務))

という事でした。それらの事から、CIC補聴器にすることにしました。ただし、改善の指針でお伝えした通り、

  • ハウリングの危険性
  • そもそもちゃんと補えるの?

という部分がありますので、実際に作ってみて、問題の部分が本当に問題になるのか、それとも、単なる取越し苦労なのかをみていきます。

確認と最終調整(最終決定)

という事で実際にお作りして確認していくわけですが、結論から言いますと、大丈夫でした。

最終調整。補うべきところは、なるべく補った状態。音を大きくするとそれなりに音が強く感じ、きつく感じるようだったので、改善できるところは改善させ、厳しいところは、そのままにした。
最終調整。補うべきところは、なるべく補った状態。音を大きくするとそれなりに音が強く感じ、きつく感じるようだったので、改善できるところは改善させ、厳しいところは、少し抑え目に。

最終的に補聴器で聞こえるようになった数値は、このくらいで、目標値より良いところもあれば、少し低いところもあります。

とはいえ、それでも改善目標値ほどまで改善させている状態になった。
とはいえ、それでも改善目標値ほどまで改善させている状態になった。

わかりにくいため、初めの改善の指針で記載した目標と比較しますと、このような状態です。概ね、近い位置まで改善できていますね。

▲補聴器あり、△補聴器なし。重要になるのは、70dB、60dB、50dBの3つの数値。この数値が、補聴器なしの良い数値、この場合、95%だが、その数値の-10%以内にまで抑えられると良い状態になる。

そして補聴器をつけた状態で音声の理解度がどのくらいあるのか。というのも調べられるのですが、このようになりました。数値の意味合いも含めて記載しますと

  • 70dB(大きい声の大きさ)90%→95%
  • 60dB(普通の声の大きさ)65%→95%
  • 50dB(少し声が小さい方の声)70%→85%
  • 40dB(小さい声の方)50%→60%

となります。40dBは、おまけで計っていますので、基本的に70dB〜50dBの3つが重要になります。補聴器なしより数値がよくなり、それなりに上がっていますので、良好ですね。

そして問題の一つとして考えていたハウリングですが、こちらもなく、まだ音を補える世幅も残しており、良い状況になりました。

CIC補聴器でも問題なくでき、改善もできました。

お客様の評価

実際にお越しいただき、ご相談されて、どうだったのか。お客様にお伺いしてみました。こちらの内容の評価として参考にしてみてください。

どのようなことでお困りでしたか

実際に補聴器をお使いになってみていかがでしょうか

このお店で相談(購入)したのは、なぜでしょうか

実際のアンケート

ご協力いただきまして、ありがとうございます。そして、状況に関してよりよくでき、こちらに関しても何よりです。

高い音が聞こえにくい感音性難聴の方の改善ポイント(まとめ)

さて、改善に関してまとめていきます。改善に関するポイントですが

  • ちゃんと補う部分まで補聴器で補えたこと
  • 問題となりそうな部分を検証し、問題にならなかった事

の2つです。

補聴器の効果は、基本的に補聴器でどこまで補えるか。の部分で決まります。

基本的に補聴器は、▲の部分が上がると上がるほど、聞こえの効果は高くなりやすい。だからと言い、むやみにあげてもしょうがないのだが、効果が出ていない補聴器の特徴は、ちゃんと補うべきところまで補っていないことが多い。しっかりと補うべきところは、補おう。それが一番重要だ。
基本的に補聴器は、▲の部分が上がると上がるほど、聞こえの効果は高くなりやすい。だからと言い、むやみにあげてもしょうがないのだが、効果が出ていない補聴器の傾向を見てみると、ちゃんと補うべきところまで補っていないことが多い。自分の体感と相談しつつ、補うべきところは、補おう。それが聞こえを改善する上で一番重要だ。

この図の部分ですね。ですので、改善目標値までちゃんと改善できたことで、A・Kさんも聞こえが良くなりました。この改善値が補聴器の聞こえそのものになりますので、聴力に対し、どのくらい補ったら良いのか、そして、現状、どのような聞こえなのか、それらを把握しながら、改善を行い、上記の数値まで持っていくことができました。

実際には、補聴器での聞こえを数値化し、その数値と目標値、そして、ご自身の音の体感を比較し、どのくらいの音まであげられそうか、どのくらいまで効果を引き出せそうか。というのを相談しながら行なっていったのですが、補聴器の効果が望める位置まで改善でき、こちらとしては、何よりでした。

また、問題となりそうなハウリングやそもそも目標値まで補えるのか。という部分に関しては、取り越し苦労で、実際にやってみたら、そうでもないことがわかりました。考えているだけではわからないこともありますので、このような場合は、実際にやってみてどうか。それで判断するのが重要です。

A・Kさんの場合は、このようにして改善していきました。それにより、耳が治るレベルになった訳ではないのですが、聞きにくさの部分をいくつか改善させることができました。

ということで、こちらが聞きにくさを改善させるにあたり、参考になれば幸いです。

ABOUT ME
深井 順一|パートナーズ補聴器
深井 順一|パートナーズ補聴器
補聴器を使っている人が対応している補聴器専門店・代表
補聴器のお店には珍しい難聴の補聴器販売員です。生まれつきの難聴者で7歳の頃から補聴器を使っています。補聴器を使っている当事者だからわかること、できることを活かして、難聴の方がスムーズに日常生活を送れるよう聞こえの改善、補聴器のご相談をしています。
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