補聴器使用時に起こるこもり(自分の声がこもる)を改善するには
補聴器を使用する際に気になりやすい要素の一つは、補聴器を使用すると起こる【こもり】です。
補聴器を使用する時、基本的に耳の中に補聴器をいれたり、耳に栓をして、音を送るようにします。耳を塞ぐようになるため、自分の声が大きく感じたり、声を発すると、自分の声が耳で低く響いている感覚を感じたりします。それが、こもり、自声の響きと呼ばれています。
こちらは、補聴器を耳に装用すると起こるもので、厳密には、耳を塞ぐことによって起こります。軽減する方法については、あるのですが、あまりにもそれを行うと聞きにくさの原因になったり、ハウリングの原因にもなります。
そのため、こもりの改善は、程々にし、あくまでも補聴器を使用できる範囲内でのこもりであれば良好です。それ以上の改善を使用とすると、聞こえの低下(補聴器での聞こえの改善度の低下)やハウリング、補聴器装用が不安定になったりと、デメリットの方が強くなるため、オススメしません。
こちらでは、補聴器使用時に起こるこもりを改善させると共にその注意点に関して、まとめていきます。
こもりの改善方法
基本的には、耳かけ形補聴器、耳あな形補聴器で改善方法が異なります。しかし、基本的な改善思考は、同じで、耳を塞がないようにする。こちらが共通の考え方になります。
こもりは、耳を密閉することによって起こるため、その反対で、耳を塞がないようにする事が、改善する上で、必要な考え方となります。
耳かけ形補聴器のこもりを改善する
耳かけ形補聴器の場合、
- 一般的な耳かけ形補聴器
- RIC(リック)補聴器
の2つがあります。
このような形のものが、一般的な耳かけ形補聴器
こちらがRIC(リック)補聴器です。
しかし、どちらも基本的に同じ対処方法になります。
その方法には、
- 耳栓を緩くする(小さくする)
- 耳せんに穴を開ける
- イヤモールドの場合、少し薄くしつつ、形状を小さくする
- イヤモールドの場合、少し薄くする
の4つがあります。
上2つは、耳せんを使用している場合に当てはまるもので、下2つは、イヤモールドを使っている場合に当てはまるものになります。
耳せんを緩くする(小さくする)
こちらは、単純に使用している耳せんを小さくする。になります。
使用している耳せんの種類を変えたり、1サイズ小さくするだけでも、こもりは、かなり軽減します。
RIC補聴器も同様で、サイズを小さくすると、こもりは、大きく軽減します。
耳せんに穴を開ける
こもりを軽減する方法としては、耳せんに穴を開ける。という方法もあります。
このような道具を使い、
穴を開けることにより、こもりの軽減ができます。
先ほどの耳せんを緩くするより、効果は、薄いものの、その代わり耳の中にしっかり入ることにより、耳から外れやすくなったり、ハウリングがしやすくなったり、というのがありません。
まさにこもりの軽減だけできるのが、良いところです。耳せんを緩くするケースでは、耳から外れやすくなりますので、安定感も薄くなります。
RIC補聴器も開けられる事は開けられるのですが、もともと空いているので、これ以上、開ける事はあまりありません。どうしても、というときだけ、開けて、加工します。
イヤモールドを作っていれば、薄くしつつ、形状を小さくする
イヤモールドとは、
このような耳の形に合わせた耳せんの事です。
イヤモールドを作るほど、聞こえが低下しているケースで、こもりを感じやすい方がいるかどうかはわかりませんが、こちらを使用していて、こもる場合は、薄く製作しつつ、形状を小さくするのが、有効です。
イヤモールドの形状には、いくつかあり、大きいものもあれば小さいものもあります。基本的には、小さいものの方が、こもりは、感じにくい状態ですので、さらに薄く(少しだけ緩く)製作してもらえると、こもりは、軽減しやすくなります。
RIC補聴器の場合は、メーカーによって言い方が異なるのですが、私のところで扱っているフォナックですと、Cシェルという呼び方になります。
こちらも基本的に改善の考え方は、同じです。ただし、これ以上、小さくはできないため、基本的には、少し緩めに作ってもらう。これが、改善方法です。
イヤモールドを作っていれば、ベントを大きくする
上記、以外には、ベントを大きくする。という手段もあります。
ベントとは、このような空気穴のことで、耳の中が蒸れたり、圧迫される感覚を防いでくれる役割があります。さらに、この空気穴が空いていると、開いているだけ、こもりも感じにくくなります。
しかし、こちらは、あけすぎるとハウリングの原因になります。その点にご注意です。
イヤモールドを使用している時にこもりが気になる場合は、形状を小さくして、緩く製作する、それでも、厳しい場合は、ベントを大きくする。というような手順で改善できると、リスクを減らしながら、改善しやすくなります。
RIC補聴器も同様で、ここの部分が大きくできると、こもりのところは、改善しやすくなります。ただし、やりすぎに注意です。大きくしすぎると、今度は、ハウリングの要因になります。
耳あな形補聴器のこもりを改善する
耳あな形補聴器は、耳かけ形補聴器よりこもりやすいこともあり、耳あな形補聴器の代表的な欠点です。
こもりは、耳を密閉するほど起こりやすいため、耳の型を採取して作る耳あな型は、補聴器の中でもかなりこもりやすくなります。
この場合の対処方法は、
- ベントを大きくする
- 補聴器そのものを緩く作ってもらう
- 最悪、耳かけ形補聴器に変更する
の3つです。
ベントを大きくする
基本的に耳あな形補聴器は、素でこもりやすいため、ベントと呼ばれる空気穴を設けて、なるべくこもりにくくします。そのベントをつけた状態で、さらに軽減するには、その穴を大きくする。というのが、改善方法の一つです。
ただし、開けすぎると、ハウリングの原因になりますので、その点に注意です。
補聴器そのものを緩く作ってもらう
耳かけ形補聴器でいう、耳せんを緩く、小さくする。と同じ思考がこちら、補聴器そのものを緩く作ってもらう。になります。
耳の中に入る部分をシェル。と呼びますが、この部分を緩く作ることにより、耳の中の密閉間を軽減させます。
ただし、やりすぎると耳から抜けやすくなり、保持の面が甘くなります。その結果、耳から外れやすくなったり、落ちやすくなったりしますので、こちらもやりすぎに注意です。
最悪、耳かけ形補聴器に変更する
上記のことをしても、一向に改善する気配がない場合は、耳かけ形補聴器にする。というのも一つの方法です。
耳あな形補聴器は、その補聴器の性質上、もっともこもりやすい性質を持ちます。そのため、少しは、軽減できるのですが、それでも、人によっては、こもりを強く感じます。
そのような方は、耳あな形補聴器ではなく耳かけ形の方が快適に使用できます。
耳かけ形の場合は、本体が耳の上に来るため、耳を密閉させる部分が少なくなります。耳あな形より、こもりを少なくしやすい補聴器ですので、そのような方には、こちらの方がお勧めです。
こもりの改善のまとめ
基本的にこもりを改善させていく場合の基本思考は、耳を塞がないようにすることです。しかし、耳を塞がないようにすると、今度は、ハウリングや音がしっかり耳に伝わらない、耳から外れやすい。など、多大なデメリットが発生するようになります。
そのため、こもりに関しては、ある程度は、感じるけれども、このくらいなら補聴器は使える。という範囲に抑えるのが大切です。あまりにもこもりの改善を優先すると、最終的に聞こえの効果が得られない補聴器になるのこともあります。
上記には、いくつか、改善方法について記載してみました。どちらかというと業者側がすることになりますので知っておくことによって、いいことがあるのかわからない状況ではあるのですが、基本的な改善思考については理解しておけると、良いかとは思います。
大切なのは、これらのことを知りつつ、補聴器を使用している方、補聴器を調整する方がお互いに良い相談ができるようになることです。
補聴器のこもりは、あくまでも使える範囲内までに抑えましょう。そのようにして使う事が、聞こえの改善もでき、かつ、補聴器の効果も得られる最良の状態になります。