【改善事例】突発性難聴(低音障害型)により、低い音が聞こえにくい方、補聴器で改善
今回、ご紹介するのは、40代、女性の方で、30代の頃(14年前)に原田病にかかり、その際の突発性難聴により、聴力が低下してしまい、聞きにくくなった方となります。
原田病と言われるとなんとも聞いたことがない病気ですが、実は、厚生労働省から難病指定されている病気の一つで、目の病気他、耳(聴力)にも影響を及ぼす病気です。
治療に関しては、行ったものの、残念ながら、聴力は回復するに至らず、補聴器で聞こえを改善していたのですが、お持ちの補聴器は、ほぼあってもなくても、変わらず、聞きにくさを強く感じていた方でした。
その状況に関して、今回、どのように改善していったのか。その点に関して、記載していきます。
お客様の状況
さて、まずは、お客様の状況です。
- 性別:女性
- 年齢:40代
- 聴力:両耳とも中等度の低音障害
- 症状:原田病(両耳とも突発性難聴)
- 備考:病院にかかるものの治療はできず
- 備考:左右、耳鳴りあり
聴力としては、こちらの通りです。低い音を中心に聞こえづらくなっており、高い音になるにつれ、聞こえやすくなる聴力となります。
耳の状況はかなり複雑な状況で、約14年前に原田病による突発性難聴(左右)が起こってしまい、それにより、聞きにくくなった方でした。
その後、しばらくして治療を開始するものの、聴力は全く元に戻らず、聞きにくさを感じていた事から、補聴器をその頃から、使っていました。
しかし、補聴器に関しては、使ってみるものの、補聴器ありの状態となしの状態では、あまり差がなく、よく聞こえるようになった。という感覚は、感じず、聞きにくさに関しては、常に悩んでいた状況だったようです。
いくつか補聴器を買うものの、あまりうまくいかなかった様子から、実は、遠方にお住まいだったのですが、このお店にお越しいただくことになりました。
ということで、この状況に最善を尽くしていく事になります。
現状確認
さて、まずは、現状確認です。どんな時でも現状確認からスタートしていきます。どこに問題があるのか。どこを改善していくとより良くなるのか。それをまずは、見極めていきます。
補聴器はどの補聴器を買うか。というような意識にかられるケースは多いと思いますが、基本的に耳の状況は千差万別ですので、現状を把握し、その状況に対し、最善を尽くせる方法で改善していくのが基本です。
K・Hさんの場合、聴力は、このような状況でした。左右、両方とも低音が聞こえにくい聴力の形です。
これは通称、低音障害と言われる聴力で、補聴器で聞こえを改善する中でも、難しいTOP3に該当する聴力型になります。
私が気になったのは、今現在、お持ちの補聴器に関して、つけても、つけなくても、あまり差がない。特に聞こえやすくなった感覚がない。という事でした。
ですので、今現在の補聴器を使った状態で、どのぐらい聞こえているのか。そこをまず確認していきます。
ワイデックスさんの補聴器でだいぶ昔の補聴器を使われていたのですが、それを調べた結果は、こちらの通りでした。こちらは、補聴器をつけた状態で、周波数別にどのぐらい聞こえているのか。を調べる測定での結果です。
これだけだとどういう状況かわかりづらいかと思いますので、聴力からどのぐらい改善すると良いか。という数値に関して、記載すると、こんな感じです。
赤い▲が補聴器によって改善できると良い改善目標になり、黒い▲が実際の改善値です。こうすると、どこが改善できていて、どこができていないのかがわかりやすくなります。
補聴器をつけてわかるのは、「こんな風に音が聞こえる」とか「こういった時に聞きにくい」という感覚のみになってしまい、聴力から補えると良いところまで補えている。とか、逆にこの部分は、音が足りていない。という事はわかりません。
ですので、補聴器をつけた状態をまず、把握していく必要があります。
今現在の数値からお話しをさせていただくと、本来、改善した方が良い低い音の部分はあまり改善されておらず、その事により、補聴器をつけても、あまり改善された感覚は感じにくい。ということが言えそうです。
このグラフは、聴力検査の時のグラフと同じものを使っており、上にいくと上にいくほど、聞こえが良くなり、下に行くと下に行くほど、聞きにくさが強くなります。
あとは、横の軸があり、低い音から高い音まであり、それぞれの部分がどれだけ聞こえているのか。を示しています。
音というのは、低い音もあれば、高い音もありますので、それぞれの音がどんな風に聞こえているのか。それを見るための測定です。
低音障害の方の場合、ポイントになるのは、
- 低い音に関して、補えるようにする事
- 聞こえている高い音の部分は、残すようにし活用する事
の2つです。
単純な言い方には、なってしまうのですが、聞こえにくくなった低音の部分を改善するようにし、残っている高い音の部分は、そのまま活用できるようにする事。この思考が何よりも大事です。
その観点からしますと、補って聞きにくさを改善するための低い音の部分があまり改善されておらず、それによって、変わりがなかった。という可能性が高そうです。
なお、低音障害の方の場合、改善する際に大事になるのは、音声の500〜2000Hzの間は、なるべく改善目標となる35dB付近まで改善させ、特に低い男性の声の周波数が影響しやすい500Hzのところは、改善できるようにする事です。
低音障害の方は、低い男性の声がとにかく聞きにくくなってしまいますので、なるべくここに影響する周波数は改善し、最善を尽くせるようにすると、聞こえの改善、補聴器に関しては、改善値を上げやすくなります。
どんなことをしても、耳が治るまではいかないのは事実ですが、最善を尽くすことで、聞きにくさを減らす事ができるのも事実です。
聞きにくさを減らせれば、それだけ困ることも減らせますので、このポイントは、外さないようにしていきましょう。
補聴器による聞こえの改善案
さて、現状がわかったら、そこから聞こえの改善案について、記載していきます。
半分くらい上記の現状確認で記載していますが、その内容を改めてまとめていきます。
これには、
- 聞こえの改善値を確認しながら、改善
- 補聴器の形状は、高い音を残せる補聴器を選ぶ
主にこの2つがあります。
聞こえの改善値を確認しながら、改善
基本的に補聴器は、ご自身の聴力に対し、音を入れて聞こえを改善していくのですが、その音の量によって、どこまで周波数別に改善できたか。によって、聞こえの改善は、変化します。
上記で記載した通りではあるのですが、低音障害の方の場合、低い男性の声がとにかく苦手だったり、聞きにくさを感じやすくなりますので、ここが影響しやすい500Hzの部分は、改善できるようにすると良いです。
具体的には、音声が影響しやすい500〜2000Hzは、改善できるようにし、それぞれの数値を確認しながら、なるべく35dBぐらいまでは改善できるようにすると、聞きにくさに関しては、なくしやすくなります。
こちらの方の場合、耳鳴りがかなり強く、測定による確認は、少々、困難な部分がありましたので、測定した数値と補聴器を使った感覚をそれぞれ比較しながら、改善できる部分を目指していき、なるべく改善していくようにしました。
この際、大事になるのは、聞こえの改善状況を可視化しながら行っていくことです。
上記にも記載した通り、補聴器は耳につけても「こんな風に聞こえる」とか「この音が強く聞こえる」といったような感覚しかわかりません。
補聴器をつけて「500Hzの音が足りなくて、聞こえにくい」というようなことはわかりませんので、改善がしやすい形にして、聞こえを改善していくことが何よりも大事です。
ですので、改善すると良い数値、改善目標値を設定し、その後、その数値の状態と今現在、補聴器を使って、どのぐらい聞こえが改善されているのかの確認。それを繰り返して、良い数値を目指していく。このように改善していけると、より良くしやすくなります。
補聴器の形状は、高い音を残せる補聴器を選ぶ
こちらは、何かと言いますと、低音障害の方の場合、気をつけなければならない事として、補聴器の形状があります。
先ほど、低音障害の方の聞こえを改善するには、
- 低い音に関して、補えるようにする事
- 聞こえている高い音の部分は、残すようにし活用する事
この2つにポイントがあると記載しました。
この際、問題になるのは、聞こえている高い音の部分は、補聴器によって、だいぶ影響されやすく、聞きにくさを強く感じやすくなってしまう補聴器の形がある事です。
ですので、高い音が影響しにくい補聴器の形を選んでいく必要があるのですが、
それが、この2つになります。
- 耳あな形補聴器の場合は、CIC補聴器
- 耳かけ形補聴器の場合は、RIC補聴器
になります。
補聴器で耳の穴を塞ぐ量が多いと多いほど、実際には、高い音の部分は、下がりやすくなり、補聴器をつけたほうが逆に聞きにくい。ということになりかねませんので、非常に大事な部分になります。
実は、こちらの方の場合、耳を塞ぎやすい補聴器を使っていたため、高い音の部分は下がり、さらに聴力低下していた低い音は補えていない。というダブルパンチを食らっていた状態でした。
この点は、低音障害の聞こえを改善する方法を知らなければ仕方がありませんので、責められるものではありません。
今現在、低音障害の方の場合、まだまだ補聴器による聞こえの改善は難しい状況となります。その事から、少しでも、影響するものは、なくし、なるべく聞きにくさをなくしていけると良いです。
実際の改善
こちらに関しては、少し簡略しながら、記載していきます。
結論から記載しますと、お客様の場合は、耳かけ形補聴器、RIC補聴器と言われるもので聞こえを改善していきました。このような形をした補聴器です。
上記の通り、高い音を残しつつ、さらに低い音の聞こえを改善していき、なるべく聞こえを改善できるようにしていく。
これが低音障害の方の基本的な聞こえの改善方法になります。
その結果ですが、数値としては、ここまで改善するようになりました。
正直なことを言いますと、もう少し聞こえを改善したい気持ちはあったのですが、耳鳴りが左右でだいぶ大きく、その場合、耳鳴りによって、検査結果は下に出やすくなります。
その事を加味すると、実際には、35dB付近まで改善されている可能性があり、ご本人様の体感的な音量感を確認しつつ、入れられるところは、入れていき、なるべく聞きにくさを改善できるようにしていきました。
その結果、補聴器による聞こえに関しては、はじめお越しいただいたような、補聴器はつけても、つけなくても、変わらない。ということはなくなり、補聴器をつけることで、より良くなってきました。
実際には、聞こえの環境は、様々な状況がありますので、ご自身で補聴器の音を変えられるようにし、それぞれの場面で音を大きくしたり、小さくしたり。そういった事もできるようにし、対応しやすくしました。
そのようにして、なるべく改善できるところは、改善していくようにしました。
お客様の声
実際にお客様にお越しいただき、このお店でご相談されてどうだったのか。その点に関して、お伺いしてみました。
どの様な事でお悩みでしたか
実際に補聴器をお使いになってみていかがでしょうか
このお店で、ご相談(購入)になったのは、なぜでしょうか
実際のアンケート
アンケートにご協力いただき、誠にありがとうございます。
遠方から来られるということで、こちらでできる限りの事をさせていただき、聞こえの改善に関して、最善を尽くせるようにさせていただきました。
低音障害の方の場合、まだまだ聞こえの改善は難しく、その点に関しては、誠に申し訳ない限りです。
ただ、最善を尽くす事で、聞こえの改善ができる部分もありますので、今現在、できる事。そこに集中させていただき、なるべく今現在のお困りの状況。それがなくなるようにさせていただきました。
私自身も補聴器を使っている人間ではありますが、聞こえにくさがなくなれば、それだけ、ご自身がしたい事、してみたい事。そういったものにチャレンジしやすくなりますし、何よりも、人の会話や会話の苦手意識。そういったものは減らせます。
その事から、最善を尽くせるようにし、なるべく改善できるところは改善させていただきました。その結果、より良く生活しやすくなったのであれば、こちらとしては、本当に何よりです。
こちらこそ、遠方から来ていただき、そして、私のことを信用して、ご来店いただいた事、誠に感謝致します。
本当にありがとうございました。
まとめ
今回は、低い音が聞こえにくくなった方。かなり複雑なケースですが、原田病という難病指定の病気で、さらに突発性難聴によって聴力低下したケースに関して、ご紹介させていただきました。
低い音が聞こえにくい方。通称、低音障害ですが、このような聞こえの場合、今現在、まだまだ補聴器による聞こえの改善は、難しい部類に入ります。
ですが、その中でもできることはあり、最善を尽くすことで、今現在の生活をより良くすることは可能です。
今回はそのためのポイントを記載させていただきました。この内容に関しては、お客様に許可を取った上での内容となりますので、許可いただいたお客様には、本当に感謝申し上げます。
ということで、同じような方が少しでも、より良く生活できるようになるヒントを掴めたのであれば、こちらとしては、幸いです。