耳・補聴器のこと

補聴器で数値(結果)が出ていれば、お客さんは満足するのか

深井 順一|パートナーズ補聴器

補聴器で聞こえを改善していく方法については、聞こえの改善と補聴器のFAQ、にまとめています。また、個々の症状(症例)ごとの改善を知りたい方は、お客様の聞こえの改善事例へどうぞ。

私自身、実は、今年の11月に補聴器の研修に関して受けていたのですが、その際の内容には、だいぶ補聴器の効果の結果を重視する内容が多くありました。

補聴器を使う方、求める方は、言葉の聞き取りを改善したいので、その部分の改善に関して、きちんと確認すること。一言で言うと、こういったことを出されていた内容でした。

私の場合は、良くも悪くも自分自身が補聴器を使っている人間ですので、お客さんの視点でも見ることができるのが、一つの特性なのですが、一つの基準として考えるのは、賛成ですが、果たして、それで満足するのか?というとその場合もあるけれども、そうじゃない場合もあるだろうな。という感覚を得ました。

その理由は単純で補聴器は耳を治すことができないからです。数値を達成することとと満足度が上がることは別。という感覚を私の場合は、感じています。

ということで、今回は、こちらに関して、記載していきます。

補聴器の結果と数値

今現在、補聴器においては、使うというよりも、補聴器を使って、ちゃんと聞こえを改善できている状態にすること。ここを重視するようになりました。

これ自体は、すごく良いことですね。

補聴器を使う方、求める方からすると、日々の生活が聞こえにくいことによって困っているので、聞こえを改善することで、その人の生活を補聴器が支えてくれるようになります。

これは、単に補聴器を得るというよりも、補聴器が使う方の生活をきちんと支えられるようになっているのか。という視点になってきたということでもあります。

私自身は生まれつきの難聴者なので、自分の耳に補聴器を使っている人間なのですが、補聴器を耳につけても、聞こえるようになった感覚はわかりつつも、どのぐらい改善されたのか、それは、良い状態なのかは、正直、感覚だけでは良くわかりません。

ですので、補聴器を使った状態に関しては、測定機器を使い、どのぐらい改善されたのか。それは、良い状態なのか。そして、仮により改善させる場合は、どこを改善したら良いのかを知れる測定を結構、重視しています。

そういったものを使ってきちんと測定し、そして、規定の部分までは改善するようにしよう。という業界そのものの取り組みに関しては、とても良いことだと考えています。

ただ、ここに関しては、一つだけ危ないなと思ったことがあります。

それは、これを満たしたからといって、お客さん(補聴器を使う方)が満足するとは限らないということです。

その理由は、冒頭の通り、耳が治るわけではないからです。

補聴器が難しい理由

補聴器は、耳を治すことができない。ここが補聴器が難しい最大の理由になります。

補聴器では、耳を治すことができないとなると、そもそもどこまで聞こえを改善できたら正解とするのか、良い状態とするのか。が非常に曖昧になりやすい。こういった特徴があります。

医学的にそれは良いとしても、実際に補聴器を使う方からすると、本当の意味での正解は、聞こえにくい事によって、制限されていた部分がなくなった状態でしょう。

生まれつき聞こえにくい方であれば、正常の方の聴力の状況。何らかの原因により、聴力が低下してしまった方は、それが発生する前の状況に戻ること。

しかし、補聴器は、耳を治すことができない。となると、その状態を目指すことができません。

その場合、どこからどこまでを改善できる範囲とし、どこからは、改善できない範囲とするのか。ここの部分は、非常に議論が荒れる部分でもあります。

この補聴器は耳を治すことができない。という部分をどれだけ直視するのか。ここに問題の根本があります。

私なりの思考

私は、生まれつきの難聴者で自分自身でも補聴器を使っています。そして、自分で聞こえを改善している人間でもあるのですが、私は、それなりに補聴器に関しては、満足しています。

その理由は、自分の状態に関して最善を尽くせた。と感じているからです。

私の場合は、お店で日々、お客さんを対応しており、さらにお客さんからも評価をよく聞くようにしています。その中で気づくのは、聞こえの改善度が上がることはもちろんなのですが、それ以上に使っている人側からすると「この人(目の前にいる医療従事者あるいは補聴器を調節する人)は、自分の聞こえに関して最善を尽くしてくれたのか」という姿勢を見ているのだと感じます。

補聴器で耳を治せないとなると、どんなに良い補聴器を使っても、どんなに良い調整をしても、どんなに医学的に正しいとされることをしても、聞こえにくさは残るということです。

そしてこれは、補聴器をつけても今困っている部分が解消される保証もないということも意味します。

私も業界が定める補聴器の効果の基準に関しては、自分自身の補聴器はクリアしています。しかし、それでも場面場面で聞きにくさは普通に出ます。

では、その状態でもなぜ満足しているのか。それは、自分の状態に最善を尽くせたという感覚があるからというのが、自分なりの回答です。

特にこの部分は、補聴器について知っている人、長く使っている方ほど感じていると思っています。

私は、ニーチェの「深淵がこちらを覗く時、深淵もまたこちらを覗いているのだ」という言葉をよく意識するのですが、本来の意味は、さておき(本来の意味は全然違います)、私は、人が相手を見るとき、相手もまた自分を見ている。というように解釈しています。

自分が相手を見ている時、同時に相手もまた自分をどういう風に感じているのか。判断しているということです。ですので、対応する側の姿勢や態度は、驚くほど相手に伝わります。

だからこそ、今目の前の人は、自分に対して最善を尽くそうとしているのか。という姿勢はすごく伝わるんだな。というのをお客さんの評価を聞いていると感じます。

業界が決めた数値や目標を達成したときではなく、自分の状況に対して最善を尽くしてくれたのかどうか。

多くの方を対応してきて感じたのは、この部分によって、満足したかどうかが変わるということでした。

その理由は、補聴器は耳を治すことができないからです。

治すことができないからこそ、最善を尽くしてくれたのかどうかが一番大事になる。というのが私の思考です。

この点は、補聴器は耳を治すことができないという前提があった時に、提供する側はそれについてどう考えたのか。を見られている。というとわかりやすいかもしれません。

まとめ

今年の11月に補聴器の研修を受けて、自分なりに思っていることを記載してみました。

ここに関しては、別に業界のことを批判している訳ではなく、ただ単に自分が感じたこと、考えたことを記載しただけになります。

そもそもの部分として、補聴器に関する聞こえの改善については、とても難しく、正直、規定を作るのは、かなり難しいことだと思っています。

その理由は、補聴器では耳を治せないこと。そして、人によって改善効果はまちまちになるからです。

ですので色々と議論が荒れがちになるのですが、こちらは、こちらで自分が思っていることをまとめてみました。

私自身としては、補聴器に関する改善の規定がどうのこうのより、補聴器を使う方が満足すること、納得していることであれば、何でも良いと思っています。

補聴器はそもそも補聴器を使う方のためにあるのであって、補聴器を調整する人、医療従事者のためにある訳ではありません。

最終的な判断は、やはり補聴器を使う方が判断すればいいことだと思っていますので、その方々が満足するような、納得するようなやり方、対応の仕方をこれからも自分自身としてもやっていきたいと思います。m(_ _)m

ABOUT ME
深井 順一|パートナーズ補聴器
深井 順一|パートナーズ補聴器
使っている人が対応している補聴器専門店・代表
1986年、7月1日生まれ。生まれつきの難聴者で小学2年生の頃から補聴器を使っています。私にとって補聴器とは、難聴の方の生活を支える道具です。この店では、生活を支えられる補聴器を提供したり、支えられるサービスを提供する事で、聞こえの改善、生活の改善に貢献できるようにしています。

お店のご紹介

初めまして、パートナーズ補聴器の深井と申します。

このお店は、生まれつき難聴で補聴器を使っている人が対応している補聴器専門店です。

補聴器とは、難聴の方の生活を支える道具である。という考えから、生活を支えられる補聴器を提供したり、支えられるサービスを提供しています。

お店の詳細は、以下のページへどうぞ。

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