バイクロス補聴器ってどんな補聴器?
補聴器の世界には、バイクロス補聴器という変わった補聴器があります。
この補聴器は、主に左右の聴力、聞こえ方が違う方に使われ、聞こえの良い方に補聴器をつけ、聞こえにくい側には、クロスという音を転送する機器を載せて、聞こえない耳側に来る音を聞こえる耳側に転送して聞こえを改善するという変わった補聴器になります。
今現在、補聴器は、どのような聴力も改善できる。というわけではありません。ですので、中には、補聴器を装用しても効果がまるで得られない耳の状況の方もいます。
そういった方々を少しでもより良くするためにバイクロス補聴器という変わった機器があります。
こちらでは、そんなバイクロス補聴器について、まとめていきます。
バイクロス補聴器とは?
こちらがバイクロス補聴器というものになります。見た目は、一般的な補聴器と同じです。
一般的な補聴器とクロスと呼ばれる音を転送する機器を組み合わせたのがバイクロス補聴器になります。
聞こえる耳側に補聴器をつけ、聞こえない耳側にクロスをつけることによって、聞こえない耳側からの音を聞こえる耳側に転送し、聞こえる耳側につけている補聴器は、そのまま補聴器としての役割をします。
そうすることにより、聞こえる耳側の聞こえを改善し、さらに聞こえない耳側からくる音もわかりやすくしてくれるというのがこの補聴器の特徴です。
なんでこんな補聴器があるの?
一見するととても不思議な補聴器なのですが、今現在、補聴器はどのような聴力の方も聞こえを改善できるわけではありません。
ですので、特にこのような聴力の方がいらっしゃったりすると、片方は補聴器を使って補えるのですが、もう片方は、聴力低下が大きすぎて補聴器で補ったとしても、あまり効果を得られなかったりします。
片側だけ補聴器で補えていれば聞こえるのでは?と思う方もいるのですが、実は、このような状態になると、特に聞こえにくい側から話された場合、仮に聞こえる耳側に補聴器をつけていても、かなり気付きにくい傾向があります。
細かくお話しすると難しくなってしまうのですが、人は、頭があることにより、右側の音は右側で聞きやすくなり、左側の音は左側で聞きやすくしています。
しかし、片側が聞こえにくくなるとこれが逆効果になり、特に聞こえない耳側からくる音は、例え、反対側の聞こえをよくしたとしても、気付きにくくなる傾向があります。
人の耳は、ちゃんと理由があって2つありますので、その片側が聞こえにくくなるだけでも、気付きにくい、聞こえにくいということが起こります。
普段の生活の中なら大丈夫な方でも仕事の場面だとか、聞かなきゃいけない会議の際など、そういったところでは不便を感じることが多くなりますので、聞こえる耳側に音を転送して、その不便さをなるべく無くす、そう考えて作られたのが、バイクロス補聴器になります。
本当は、どのような聴力の方でも補聴器で改善できれば良いのですが、中には、補聴器では効果が薄い方もいます。そういった少し特殊なケースに使われるのが、このバイクロス補聴器になります。
バイクロス補聴器の効果
バイクロス補聴器の効果は、主にこのようになります。
主に聞こえない耳がらからの音が聞きやすくなること、ここに最大の効果が出てきます。ですので、離れたところからの呼びかけ、聞こえない側からの会話が主な効果になります。
ただ注意が必要なのは、バイクロス補聴器は音の方向感覚だけは得ることはできません。
音の方向感覚は、2つの耳で音を感じて、その差異、どちらが先に耳に音が届いたか、で判断しているため、片方の耳で全ての音を聞くバイクロス補聴器は、音の方向感覚だけは得ることはできないです。
片方のみ聞こえている方の一つの悩みは、音の方向感覚を得ることができないことです。大きな音がした際に聞こえる耳側から聞こえる感覚を感じてしまうので、方向を理解することができません。
この点だけ、バイクロス補聴器では、改善ができないところになります。逆に言えば、それ以外の今まで聞こえにくかった聞こえない側からの音やお話はわかりやすくなるということでもあります。
バイクロス補聴器が合う耳
バイクロス補聴器が合う耳は、
- 片耳が全く聞こえないケース
- 片耳の明瞭度が低いケース
- 特殊なケース
の3つです。
片耳が全く聞こえないケース
バイクロス補聴器が適応する代表格のケースが、このような片方は聞こえづらく、もう片方は、全く音を感じていない。というケースです。
このようなケースには、生まれつきそのような耳の方もいますし、左右で別々の病気になってしまい、それで聴力低下した際に片方は全く聞こえなくなってしまった、というケースまで様々です。
このような方は、聴力低下が大きい方は、補聴器をつけても聞こえの改善ができず、さらに片方のみ聞こえを改善する場合に比べて、バイクロス補聴器で補った方が、全体的に聞きやすくなる傾向があります。
片耳の明瞭度が低いケース
明瞭度?となってしまうのですが、音が聞こえることと言葉が理解できることは異なります。
耳の状況によっては、音は聞こえるけれども、言葉が理解できない。こういったことが多々出てきます。
中には、言葉を理解する力の方なものが低く(聴覚神経的に音をうまく受け取れず、処理できない)補聴器で聞こえを改善したとしても、ほとんど効果が得られないような耳も存在します。
このような耳の場合もまた、バイクロス補聴器の対象になります。
特殊なケース
耳のケースの中には、特殊なケースがありまして、音を感じると(補聴器で聞こえを改善すると)、すごく不快に感じる、あるいは、キツく感じる等、違和感や不快感を感じるケースがあります。
このようなケースは、大体、明瞭度と呼ばれるものが低いことが多いのですが、中には、音を感じる神経の部分が何らか変化してしまい、音を受け取れない耳というのも(少ないですが)あったりします。
そのような場合も、バイクロス補聴器が合うケースがあります。ただし、片方は、補聴器による適合がある場合になります。両耳ともそのようなケースは、基本的には、バイクロス補聴器は合わない状態になります。
バイクロス補聴器の症例
生まれつきの感音性難聴の方
- 種類:RIC補聴器(小型の耳かけ形補聴器)
- 備考:聴力低下が大きく、補聴器では補えないため
リンク:【改善解説】左右の聴力が大きく異なる方、バイクロス補聴器で改善
原因不明の感音性難聴の方
- 種類:RIC補聴器(小型の耳かけ形補聴器)
- 備考:左側に補聴器が適合せず
リンク:【改善事例】左右の聴力が違う感音性難聴の方、バイクロス補聴器で改善
突発性難聴により低下した方
- 種類:RIC補聴器(小型の耳かけ形補聴器)
- 備考:聴力低下が大きく、補聴器では補えないため
リンク:【実例解説】左、突発性難聴、右、感音性難聴の方、バイクロス補聴器で改善
まとめ
バイクロス補聴器とは、片方の耳は、補聴器で補えるけれども、もう片方の耳は、何らかの理由により、補聴器が合わなかったり、補聴器では聞こえを改善できない方に使われる補聴器です。
今現在、補聴器はどのような聴力の方にも耳の状況の方にも効果が出るわけではありません。
さらに片方のみ聞こえを補うだけでは、聞こえにくさや不便さがどうしても出てきます。
その事から、このような補聴器が出てきました。割と昔からあるのですが、今現在は、無線の技術が上がってきたことから、より日の目を浴びるようになってきました。
このような補聴器がバイクロス補聴器になります。