【40代・男性】感音性難聴の方、補聴器で改善
さて、しばらくやっていなかった症例の改善事例について記載していこうと思います。
今回のケースは、40代・男性で、感音性難聴の方の改善です。状況が難しいのですが、ラムゼンハイト症候群というものにかかり、その際の症状の一つ、帯状疱疹になってしまった際に聞こえにくくなった方になります。
補聴器については、初めての方で、元々、別の病院にて診てもらっていたのですが、「あなたの耳は補聴器に関して、あまり合わないと思う」と言われ、しかし聞こえにくさが強く不便さを感じていたため、お店の方へ相談いただきました。
ご相談させていただいた結果ですが、
- 補聴器があることでだいぶ聞きやすくなった
- 補聴器があるのとないのとでは、生活のしやすさが大きく変わった
とのことで、生活をよりよくすることができました。こちらとしては、本当に何よりです。
では、どのようにして改善していったのか、その点について、まとめていきます。
お客様の状況
まず、お客さまの状況ですが、
- 年齢:40代
- 性別:男性
- 症状:感音性難聴(両耳)
- 聴力:軽・中等度の難聴
- 備考:帯状疱疹によるもの?
このようになります。
聴力に関しては、このようになります。左右とも聞こえづらくなっており、音が高くなるにつれ、徐々に低下している聴力になります。
耳の状況に関してですが、冒頭の通り、ラムゼンハイト症候群という病気にかかり、その後、帯状疱疹になってしまい、その後から、右側が聞こえづらくなったとのことでした。
ただ、その際は、まだ片方が聞こえていたためそのままになり、もう片方も聞こえづらくなり、その後、病院にかかり、見てもらったところ、そこから治療することはできませんでした。
そして、治療がダメなら補聴器に関してはどうなのか、その点を質問してみたところ、「あなたの耳は、恐らく、補聴器に関して、効果がない」と言われてしまい、ただ、仕事の際や生活の面でも困ることが多かったため、実際に相談しに来られた。という状況です。
ということで、この状況を改善していくことになります。
聞こえの状況と改善案
さて、ここからですが、聞こえの状況と改善案について記載していきます。
聞こえの状況
まず、聞こえの状況ですが、聴力に関しては、以下の状況ですね。
基本的に0〜10dBの範囲が健聴の人が聞こえている範囲で、聴力図は、正常な聴力(20代の平均の聴力)から、どのぐらい聞こえづらくなっているのか、を示しています。
そして、0〜25dBが、正常の範囲内で、おおよそ、この範囲内なら、聞こえにくさに困ることがないので、問題ない範囲になっています。
ただ、ここから下がると、聞こえにくさが出てきてしまうので、その程度によって難聴のレベルが出てきます。
こちらの方の場合は、低い音はやや聞こえているものの1000Hzぐらいから結構、下がっているのが特徴ですね。
音声が影響しやすいのが、だいたい500〜2000Hzになります。その中心音域である1000Hzがだいぶ下がっているので、人の声で聞こえないこと、聞き取りづらいことがだいぶ出てきやすい状態ですね。
この部分は、大体50dBになってくると、聞こえづらさを感じやすく、対面ではっきり話す人であれば、聞こえるかもしれませんが、今現在は、マスクもあり、さらに距離が離れると、ほとんど何を言っているのかわからなくなるほど、聞きづらくなります。
音は離れると離れるほど、聞きづらくなってきますので距離による問題が結構出やすく、そうなると相手から呼ばれた際に気がつかない、あるいは、呼んでも反応できないということが出てきます。
音は聞こえないとそもそもその音があることに気が付きません。音は匂いがする訳でも目に見えるわけでもないため、聞こえないとそれ以外の方法で気づくことができません。
その結果、状況によっては、無視している、と感じられてしまったり、反応する気がない、というような態度が悪い的な見方をされてしまうことがあります。
聞こえにくさが問題になる背景には、このような人間関係に大きく影響してしまうことがあります。ですので、そういったところも含めて、聞こえるようにすることで、改善できると良い状態になります。
なお、少し話が長くなってしまったのですが、主に聞こえにくさにより問題が出やすい場面は、このようになります。対面では、声が大きければ聞こえることもあるかもしれませんが、厳しい部分も出てきます。
そして、その部分が聞こえにくくなると、それ以外の、2、3、4は、もっと聞きづらさが強くなります。ですので、聞こえをなるべく改善できるようにし、どの部分もよりよくなるようにしていけるとより良く生活しやすくなります。
聞こえの改善案
さて、聞こえの改善案ですね、ここは、補聴器の形状、そして、どこまで改善していくのか、ここについて、記載していきます。
補聴器の形状
今現在、補聴器を選ぶ要素には、補聴器の形状と補聴器の性能の2つがあります。こちらは、その一つ、補聴器の形状ですね。
まず、このような聞こえの方の場合ですが、低い音の聞こえが良いため、補聴器をつけた際に自分の声が低く響くような感覚を強く感じやすくなります。
これは、イヤホンをつけた際や耳に水が入った時など耳に何か入っている状態で話すと、自分の声が耳の中で反響した感覚を感じるのですが、低い音の部分の聞こえが良いと、その不快感を強く感じやすく、補聴器の使いにくさにつながります。
ですので、その部分をなるべく軽減できる補聴器が良いのですが、その場合は、
- 耳かけ形補聴器なら、RIC補聴器
- 耳あな形補聴器なら、CIC補聴器
がおすすめです。
耳かけ形のRIC補聴器は、補聴器の中でも最もその感覚を軽減しやすく使いやすさに優れた補聴器です。また、CIC補聴器は、耳あな形補聴器の中で最もその感覚を軽減しやすい補聴器ですので、仮に耳あなの場合は、こちらがいいですね。
それぞれの特徴は、上記の通りで、耳かけと耳あなの違いは、先ほどの不快感の部分を少しでも軽減したい場合は、RIC補聴器、メガネやマスクの邪魔にならないものがいい、あるいは、電話がしやすい補聴器がいい、となった場合は、耳あな形(CIC)が良いです。
補聴器の形は使いやすさに影響しますので、ご自身にとって使いやすい補聴器を選べると良いですね。
どこまで改善していくのか
ここから非常にわかりづらい部分に入っていくのですが、補聴器による聞こえの改善度は、補聴器の性能で決まるのではなく、補聴器の調整、どこまで聞こえを改善していくか、によって決まります。
今現在、補聴器がしていることは、低下した聴力のところに音を入れて聞こえやすくすることです。そして、この音を入れて聞こえを改善する際に、改善できると良いところまで改善できると、それだけ聞こえの改善に繋がりやすくなります。
補聴器を使った状態を可視化するツールがあるのですが、その一つが、この音場閾値測定(おんじょういきち測定)になります。
それで表現しますと、このぐらいまで聞こえが改善できるようになると、聞きにくさの改善に貢献しやすくなります。
大事なところをかいつまんでお話ししますと、
音声に影響しやすい部分は、500〜2000Hzになりますので、その部分は、なるべく改善目標値まで改善できていると良いです。ここは、改善度がそのまま聞こえやすさに直結する部分ですので、改善できるとできるだけいいところですね。
そして、低い音に関しては、元々聞こえているため、そのまま聞こえづらくならないようにし、維持できるようにします。
で、最後は、高い音ですね。ここの部分は、入れられると入れられるだけ、明瞭性、音声の明瞭性に繋がりやすく、ここも入れられるのであれば入れた方がいいです。
ただ、人によっては、入れすぎて、音が高く響きすぎてしまい、逆にわかりづらくなることもありますので、ここのところは、人によって加減が必要になります。
そうなると基本的には、全体的に改善する。となってしまうのですが、音声を聞きやすくできるよう、特に音声の部分に影響する500〜2000Hzは、改善できると良い部分になります。
どの部分も改善のしすぎには注意が必要ですが、できることは行い、なるべく聞こえにくさがなくなるよう改善していけると、それだけ、生活の改善に繋がりやすくなります。
実際の改善
さて、ここからは実際の改善ですね。まず、お越しいただいた際に聴力データなど見せてもらい、お話をお伺いした後に、上記のような内容をお伝えしました。
そして、まずは、いきなり補聴器というよりも、補聴器で実際に効果が出るのかどうか、そこから見ていくことにしました。
その際、試聴したのは、このような補聴器になります。充電型のRIC補聴器ですね。こちらで、聞こえの改善を行い、
数値としては、このようになりました。補聴器を使って感じる音の感覚を確認しながら、調整していき、さらに数値を可視化して、ご相談した結果ですが、数値としては、だいぶ良い状態になります。
この状態でもお店の中では、辛く感じることはないようで、だいぶ聞きやすさを感じているようでした。補聴器をつけ始めは、機械っぽい感覚、音がラジオの音声のように感じる感覚を感じやすいのですが、そこもそれほど強くなく使い続けられそうな印象でした。
今現在の補聴器は、自分で音量を上下できるボリュームがついているため、もしうるささを感じる場合は、そこをご自身で調整し、合わせることもできます。
操作する必要がなければ、そのままでも大丈夫ですので、こうしたケアができるような状態にして、貸し出しすることになります。
その結果ですが、補聴器があることにより、だいぶ聞こえやすさは変化したようで、冒頭の通り、
- 補聴器があることでだいぶ聞きやすくなった
- 補聴器があるのとないのとでは、生活のしやすさが大きく変わった
とのことでした。
補聴器があると良いということで、ここから補聴器に関する選定、聞こえの改善について行っていくことになります。
補聴器の選定
補聴器に関しては、結論から言いますと、充電型のRIC補聴器になりました。
補聴器について初めてということもあり、特に希望はなかったのですが、実際に使ってみて、何も問題ない事から、こちらになりました。
耳かけ形と耳あな形の大きな違い、あるいは、選ぶポイントになるのは、邪魔になるか、ならないか、になります。
メガネやマスク、時には、電話に関してのしやすさ、それが形によって変わるのですが、耳かけ形でも特に邪魔になることはなく、使い方を覚えたら、気にならなかった。とのことで、こちらになりました。
聞こえの改善
さて、ここから聞こえの改善について煮詰めていくことになります。
貸出時の状況は、このような状況でした。貸し出し時でもかなり良い数値で、この状態で実際に使ってみた結果、どうだったのか。ここを確認していきます。
その際ですが、実は、初日は、頭が痛くなってしまったことがあったようですが、それは初日だけで、それ以降はなかったようです。
そして、お客様としては、聞こえの改善を重視したいとの希望でした。
今現在の状態を見てみると、おおむね改善したいところは改善しており、音声に影響しやすい500〜2000Hzは改善し、あとは、3000Hz、4000Hzになります。
ここも改善できると良いのですが、今現在の状態でも、割と聞こえの改善効果を感じていること、さらに騒がしい環境になると音量を下げることもあること。その事から、今現在は、このままにし、補聴器に使い慣れてきたら、より上げていく、というようにしました。
ですので、今回は、このままの改善で、のちに様子を見ながら改善という流れになります。
聞こえの改善状態を可視化すると、自分が使って音を感じる感覚と今現在の聞こえの改善状況を把握することができます。そうすることで「どのようにしていくか」をお互いに相談しやすくなるのがポイントです。
例えば、この状態でまだ音を大きくしても大丈夫そうで、自分も聞こえの改善を重視していきたい。そのようにお考えなら、「じゃあ足りない部分の音を上げていこう」とすることができますし、
割と改善できているけど、これ以上、大きくすると辛くなるかな、という心配の部分があるのでしたら、ひとまずこの状態にして、補聴器を使う時間が伸び、音を上げられそうになったらより改善する、でもいいです。
このように可視化できると自分の感覚と照らし合わせて、自分がしたい方向へ進みやすくなるので、このお店では、このようにしているのですが、T・Y さんについてもそのようにして、改善していきました。
お客様の声
こちらでは、実際にお越しいただいたお客様の評価について記載していきます。
この度は、アンケートに関して記載いただき、ありがとうございます。
こちらとしては、聞こえの改善や生活の改善に貢献できたのであれば本当に何よりです。
初め、聞こえにくさがあり、さらに補聴器をつけても無意味だ、的なことを言われたこともあった事から、少し不安な様子が見受けられましたが、お越しになり、聞こえの改善や生活の改善に貢献できたのであれば本当に何よりです。
補聴器のわかりづらいところは数値(聴力検査など)では全てはわからない。という事です。
実際には、やってみるまでわからないことも多く、”補聴器をつけても無意味だ”と言われたケースの中でも、割と改善できるケースがあったりします。(もちろん、あまり貢献できないケースもあります)
特に補聴器でも改善できないとなると、今現在、世の中には聞こえを改善できるものがないということになりますので、できなかった場合の方がダメージが大きい状態ですね。
こちらこそ、お越しいただき、貢献させていただき、ありがとうございました。そして、今後ともよろしくお願いいたします。
改善ポイント
改善について良かったポイントは、試聴から始めたこと、さらに一つ一つ相談しながら、聞こえの改善をしていったこと、この2つです。
誠に申し訳ないところではありますが、補聴器については、効果が出る方と出にくい方がいるのは、事実です。ですので、試聴から進めていき、実際に補聴器とは、どのようなものなのか、そこから始めさせていただきました。
そして、補聴器による効果が得られることがわかったあとは、どのぐらいまで改善していくのか、補聴器の感覚だけではなく、可視化をして見えるようにし、そして、できる限り、良い状態を目指していきました。
この2つが改善の際に良かったポイントかなと思います。特に聞こえの改善の際は、聞こえの改善はすればするほど、騒がしさや物音のうるささにも影響してしまうので、単に改善すればいいというわけでもありません。
うるさい補聴器は使いづらい補聴器にもなってしまいますので、補聴器の使いやすさと聞こえの改善、そこのところを天秤にかけ、できる限り、良い状態にすること。そこを考えて改善できたのが良かったのかなと思います。
まとめ
以上、感音性難聴の方の改善について記載していきました。ラムゼイハント症候群というなんとも聞いたことがない症状ですが、それによる帯状疱疹により、聴力が低下したようです。
このようなケースは初めてなのですが、まだまだ私も経験したことがない耳の状況の方などもいますので、そこは勉強になりますね。
ただ、どのような聞こえの方であっても聞こえを改善する方法はほとんど同じです。補聴器による聞こえの改善は基本は同じになりますので、その基本的な部分を中心に行なっていきました。
ということで、こちらの内容が参考になったのであれば幸いです。