【20代女性】生まれつき高度難聴の方、補聴器で改善
こちらでは、許可いただいたお客様のデータを使わせていただき、どのように改善していくと良いのかのヒントとして、症例という形で載せていきたいと思います。
今回の方は、生まれつきの感音性難聴の方で、聴力的には、高度難聴の方になります。高度難聴の改善の要所は、きちんと補える補聴器を使うこと、そして、改善できると良いところまで改善すること、この2点になります。
こちらでは、実際の事例を使わせていただきながら、お話をしていきます。
お客様の状況
まず、お客様の状況ですが、
- 年齢:20代
- 性別:女性
- 症状:生まれつきの感音性難聴
- 聴力:両耳とも高度の難聴
- 備考:身体障害者手帳あり
となります。
聴力としては、このようになり、生まれつきの感音性難聴の方になります。生まれた頃から、高度の難聴で、そのぐらい聴力が下がっている場合、身体障害者手帳というものがあるのですが、それが発行されるレベルになります。
ですので、子供の頃から補聴器は使われているのですが、ただ、音に関しては、聞こえの改善を重視するとだいぶキツく感じたりすることもあり、補聴器の調整には、どちらかというと苦労された方になります。
元々、使っている補聴器がフォナックということで、別のところで見ていただいていた状態から補聴器の調整依頼で、たびたび見ており、この度、補聴器の方が古くなってきたことから、新しいものへの買い替えとなり、ご利用ただいた状態になります。
ということで、今まで改善してきた中で得られたことを活用しながら、新しい補聴器へ変えていくことになります。
高度難聴の方の改善に必要なこと
さて、改めてですが、まず、高度の難聴の方で改善に必要になってくることについてまとめていきます。それは、
- 補える補聴器を使うこと
- 両耳装用(両方とも耳が活用できるのであれば)
- 補えるところまで補うこと
の3つがあります。
補える補聴器を使うこと
高度の難聴の方の中で一番大事になってくるのは、この辺りから聴力低下が大きくなってきますので、ちゃんと出力が出る補聴器、言い方を変えれば、ご自身の聴力を補える高出力の補聴器を使うこと、ここにつきます。
今現在、補聴器には、いくつか形状があり、その中で対応できる聴力が異なります。ですので、出力が低いものを使ってしまうとうまく補えない、聴力から必要となる部分までの改善ができないことがあります。
この辺りは、補聴器屋さん等で聞いていただければわかるかと思いますので、選び方としては、自由に選ぶのではなく、ご自身の聴力が補えるものをベースに、その中から、ご自身が使いたいと思うものを使う、という流れが良いです。
両耳装用
高度難聴あたりからですが、明らかに聴力低下が大きくなってきますので、ちょっと差で聞こえやすくなったり、聞こえにくくなったりしやすくなります。
ですので、最善の方法で補うこと、聞こえの改善がしやすい方法をしていくことが大事なのですが、もし、ご自身の両耳が補聴器に適応するのであれば、両方の耳に装用して、なるべく聞こえの改善ができると良いです。片方より、両方で聞く方が聞こえは良くなりやすくなり、かつ、少しでも改善度を高くできると、それだけ現状をよくすることに繋がります。
高度の難聴ということは、耳の損傷度としては大きい状態(高度という状態)になります。ですので、なるべく良くできる方法で改善していくことが大事になります。
補えるところまで補うこと
こちらに関しては、補聴器の調整というものに関係することなのですが、補聴器は、補聴器をつけることによって改善しているというよりも、どこまで補聴器で聞こえを改善するかの調整(内部の設定)によって聞こえの改善度が変化します。
補聴器の調整というよりも内部の設定という表現が一番わかりやすいのですが、その設定に関しては、ご自身が改善できる範囲まで、改善できると良いです。
今現在、補聴器には、聴力ごとにおおよそ改善できると良い改善目標値というものがあります。そういったものを活用しながら、ご自身の聞こえている感覚、そして、どこまで改善していくかをお店の方、補聴器の対応している方と相談できると良いです。
実際のご対応
ということで、実際の対応に関して、簡単にではありますが、記載していきます。もともと、使われていたのは、パワーBTE補聴器という耳かけ形補聴器になります。
写真がないので、なかなか表現が難しいのですが、昔ながら補聴器という形をしているタイプです。
補聴器の選択肢としては、いくつかあるのですが、まず、耳かけ形補聴器、耳あな形補聴器の2つがあります。
その中で、耳かけ形補聴器なら、パワーBTE補聴器、RIC補聴器が対象になり、耳あな形補聴器なら、少し大きめの補聴器、ITC(カナルサイズ)、FS(フルシェルサイズ)の形状が対象になります。
先ほど記載した通り、高度の難聴の場合、聴力低下が大きいため、まずは、それを補える補聴器は何か?から初めていきます。それが上記のタイプになります。
今現在の補聴器の評価としては、使っていて気になっていることは特になく、元々、耳の感覚としては、少し繊細で、音を入れすぎると過敏に感じやすい状況でした。外出時には、補聴器を外していたりすることもあり、そのような部分に関しては、徐々に調整によって良くできたことでした。
こういったこともあり、補聴器の形状に関しては、元々使っていた形であった標準BTE補聴器(高出力タイプ)になりました。
装用と聞こえの改善
さて、ここからは、実際の聞こえの改善です。補聴器で大事になってくるのは、どのように中の設定を決めるか、になります。それによって聞こえの改善度から、補聴器の装用感覚まで様々なものが変わります。たとえ、同じ補聴器であってもです。
で、ここから改善していくのですが、初めに知っていただきたいのは、今現在、おおよその部分ではありますが、どこまで聞こえを改善できると良いか、という改善目標のラインがあることです。
こちらの方の場合だと、
になります。大体、40dB前後あたりになり、聴力によって、どのぐらい耳への損傷度が大きいか、逆に少ないかで変わります。損傷度が大きければ大きいほど、改善度は低くなり、損傷度が少なければ少ないほど、改善度は高くなります。
改善の補足についてしていきますと、改善で重要になってくるのは、500〜2000Hzあたりになります。この辺りは、音声に影響しやすい部分で、この部分は、できれば目標値付近まで改善できると良いです。改善できれば改善できるだけ、音声の聞こえやすさはあげやすくなります。
次は、高い音になるのですが、2000〜4000Hzあたりですね。この辺りは、音声の明瞭性、理解のしやすさに繋がりやすく、この部分も改善できると改善できるほど良いです。ただ、この部分は、入れすぎると音が高く感じすぎてしまったりしますので、入れられる方だけ入れると良いです。
最後は低い音ですが、ある程度、聞こえが良いのですが、それでも少し改善できると良い部分ではありますので、その辺りも入れられると良いですね。特に500Hzあたりは、低い男性の声に影響しやすいので、初めの音声のところに通じて、この部分まで改善できると全体的によくしやすくなります。
すると結局、全体的に聞こえを良くすることになるのですが、このように全体的に改善できるようになると聞こえの改善度は上がりやすくなります。
と、前置きが長くなってしまって申し訳ないのですが、実際に聞こえを改善した数値は、こちらになります。
わかりづらい場合はこちら。この内容は最終的な設定で、お客様の状況のところでお伝えした通り、耳の感覚としては、過敏気味になり、そのため、ご自身が使える範囲内での改善を目標にして改善しました。
過敏気味の方は、聞こえを改善したいけれども改善しすぎると逆に辛くなってしまう、という状況になりやすく、そのため、ご自身の使える範囲内からはじめ、その中で良い状態を目指していきました。
とはいえ、それでも改善目標値付近まで改善できるようになりましたので、その点は、良かったなと感じています。改善値は良いと良いほど、聞こえの改善度は上がりやすくなります。
なお、補聴器に関しては、パワー形の補聴器(耳かけ形)を両方の耳に装用して改善しています。
お客様の声
さて、実際に対応させていただいたお客様の声については、こちらの通りです。
今回は、引き続きご利用いただきまして、誠にありがとうございました。もし、当店を通じて、お客様の生活の改善に貢献できたことがあったのであれば、本当に何よりです。
お客様の場合、聞こえの改善はしたいけれども入れすぎるとキツくなる。ということもあり、使える範囲内で聞こえる状態を目指していくようにしました。その結果、以前の状態よりより良くなり、本当に何よりです。
今後は、また補聴器のメンテナンス等で見させていただき、良い状態をキープできるよう対応させていただければと思いますので、よろしくお願い致します。
まとめ
簡単にではありますが、高度の難聴の方における改善について、許可いただいた方のみにはなりますが、そのデータを使わせていただき、お話についてさせていただきました。
高度の難聴の方の場合、まず大事になってくるのは、ご自身の聴力を補えるものを使うことです。この辺りから、小型の耳あな形補聴器では出力不足になり、聞こえの改善に貢献できないことも出てきます。
ですので、まず、そこに関して押さえていただき、そして、仮に両方の耳に補聴器が対応するのであれば、それで改善し、あとは、中の設定に関して、聞こえの改善の目標値、あるいは、目標値付近まで改善すること、こちらが大事になります。
これらのことをしたとしても耳が治るというところはいかないのですが、少なくとも補聴器がない状態とある状態では、大きな違いが出てくるようになります。
と、以上、高度の難聴の方における聞こえの改善でした。何か参考になることがあったのであれば幸いです。