補聴器を耳に合わせる際に使われる不快閾値測定とその活用方法
補聴器の世界には、不快閾値測定というものがある。不快閾値測定とは、大きな音を聞かせ、この音を長く聞くには辛いと思う音は、どこかを調べる測定である。主に、補聴器を装用する前に行うもので、補聴器から聞こえてくる音に制限をかけるために行う。
補聴器は、良くも悪くも音を大きくする。そのため、大きな音が入る部分をある程度制限する必要がある。その値は、おおよそ補聴器の方で決めているが、不快閾値を測定すると、その人ごとに合わせやすいという特性を持つ。
今回は、こちらに関して記載していこう。補聴器に関して理解が進めば幸いだ。
不快閾値測定とは
内容としては、冒頭に記載した通り、この音を長く聞くには辛いと思う音は、どこかを調べる測定である。UCLとも略される事もあり、どちらも意味は同じだ。※どちらかというとUCLは、数値を示す時に使われる。
こちらは、主に聴力測定と同じ要領で行う。ただし、聴力測定は、小さな音でも聞こえたら合図をしてもらう測定だが、こちらは、大きくて長く聞いていられない音量になったら、合図をしてもらう。
基本的に音の大きさには
- ①やや大きい
- ②大きいが聞いてられる
- ③おおきくて長くは聞いてられない
- ④大きくて短時間でも耐えられない
の四つがある。この内の③になったら合図をしてもらう。
この音量で押してもらう理由は、あくまでも補聴器の上限を決める測定だからだ。補聴器を装用すると様々な音が聞こえるようになる。その中で、仮に④で押してもらっても③の時点で、長く聞いていられないため、意味をなさない。③の段階で押してもらい、あくまでも補聴器を使用するうえでの上限を探るのがこの測定の目的だ。
なお、こちらは、聴力測定と異なり、基本的には
- 500Hz
- 1000Hz
- 2000Hz
- 4000Hz
の五つしか測らない。
どのような人に活用されるのか
こちらは、
- 音に関する適正が厳しい方
- 補聴器が初めての方
になる。あくまでも当店で行っている傾向になるが、参考程度にご紹介しよう。
音に関する適正が厳しい方
音に関する適正が厳しい方とは、聴力通りに音を入れると強く音を感じたり、音が強く響いてしまう方だ。
このような耳の場合、通常のフィッテングでは合わせる事が難しい。では、どうするか。その場合は、まず上限の見定め、大きく厳しい音は制限し、その後、全体の音量を決める。そのようにすると使える補聴器になる。
補聴器を装用する方の中には、そのような傾向がある方もいる。このような方には、合わせるうえで、必ず必要になる測定だ。これをしないととんでもない結果になる。
補聴器が初めての方
補聴器が初めての場合、音に関する適正がない事が多い。その場合は、上限をある程度制限し、調整する。そして、音に慣れてきた頃に、全体の音量を上げると共にこの部分も底上げする。
もしかしたら私のところだけかもしれないが、このように利用する事もできる。病院さんでは、結構、このようにやっているところを見る。
なぜこのようなものがあるのか
もしかしたら、なぜこのようなものがあるのか不思議に感じた方もいるかもしれない。補聴器は、聞きたい音を大きくする道具ではあるが、それと同時に、周囲の音も大きくする。基本的に補聴器は、周波数と音量でしか認識ができない。すると、音量を上げればその周波数に関係する全ての音が大きくなる。
では、全体を大きくする際におこる事として、一体何が考えられるだろうか。一つは、人の声以上に大きい音だ。大抵の人は、人の音声を理解したいと考え、補聴器を求める。しかし、世の中には、人の声以上に大きい音はたくさんある。
例えば耳が聞こえにくいのに関わらず、音というものを感じた事はないだろうか。もし感じた事があるのなら、それは大抵の場合において非常に大きい音になる。音が大きいから聞こえにくくなった耳でも聞こえる。音が小さい場合は、存在すら感じる事ができない。
すると、一つ考えが浮かぶのではないだろうか。そのような音を大きくしたらどのようになるのか。当然だがうるさくなる。つまり、音を大きくする場合は、このような大きい音を制限する必要がある。あくまでも大きい音を大きくない音にするのではなく、大きい音を自分の耳に負担をかけすぎるくらいに大きくしない事を制限する。
身の回りの音は、例え聞こえにくい耳だとしても聞こえる音というのは、意外ににある。そのような音を必要以上に大きくし、耳に負担をかけないために、音の大きさに制限をかけ、なるべく不快にならないようにしている。それが不快閾値測定であり、それを設定する理由になる。
補聴器を調整する場合は、こちらを測る場合もある
補聴器は、どうしても都合良く聞きたい音だけを大きくするものではない。そのため、このような測定を行い、耳に合わせていく。当店でも行っている。
若い方は、多少音が大きく聞こえたとしても補聴器の音に慣れてしまう事も多いため、省略する事もあるが、ご年配の方の場合は、行っている。その方が耳に合わせやすくなるからだ。
補聴器を調整するには、このような測定を行う事もある。何でもかんでも只入れれば良いというわけではない。そのために、このような測定がある。
こちらの内容で補聴器に関する理解が少しでも進めば幸いだ。