「嫌われる勇気」与えられたものをどう使うかの実例


アドラー心理学に関して記載された「嫌われる勇気」アドラー心理学のブームの火付け役にもなっており、大きなヒットとなりました。私自身がこの本を読んで印象に残っている言葉は「大切なのは、何が与えられているのかではなく、与えられたものをどう使うかである」になります。この点は、難聴の方に限らず、全ての方に言える事であり、重要な内容だと考えています。

私自身生まれつきの難聴者であり、以前、補聴器販売店に勤めていました。その経験で「これは、与えられたものをどう使うかの良い実例ではないか?」というものがありましたので、記載したいと思います。耳の事に関して、考えるヒントになれば、幸いです。

とある医療機関でのお話し

私が補聴器販売店に勤務していた頃は、難聴児童の対応を主にしていました。出張先は、ろう学校や小さな子ども達が通院する病院、あるいは、療育センターと呼ばれる場所です。生まれたばかり(生後4~6ヶ月)の赤ちゃんを対応する事もあり、そのご両親ともお話しする機会も多くありました。

多くのご両親は、何かしらの障害を持って生まれたお子さんに関し、大きなショックを受けます。これは、難聴でも同様です。お子さんが難聴であった場合、補聴器を早急に装用し、耳を補ってあげる必要があるのですが、中には、ショックが大きすぎて、次のステップである「聴覚を補う」場面で戸惑ってしまう方もいます。

その際、私自身は、このようなやり取りをした事があります。何度か業務的なやり取りを繰り返した後……

私「そういえば、私、生まれつき耳が聞こえにくいので補聴器を装用しているのですが、お気づきでしたか?」

ご両親「え?そうなんですか?」

私「私の場合、補聴器がないとお話しがスムーズにできないくらい聞こえにくいので、補聴器がないと生活しづらくなってしまうんですよ」

ご両親「……」

私「先生から先日、伺ったと思うのですが、確かに難聴になると聞こえにくくなりますし、補聴器を装用しても耳を治す事はできません。しかし、このようにお話しできるようになるのも事実です。治す事はできないのですが、聞こえを改善させる事はできます。私自身がまさに、その証明になりますね、補聴器を外してしまうと聞こえにくくなってしまいますので」

ご両親「……」

私「私は、ろう学校やその他の病院にも行っているのですが、そこに居る子ども達を見る度に、思う事があります。それは、ただ聞こえにくいだけで、その他は、普通の子どもと変わらないという事です。現にどうでしょう?私とお話ししてみたり、私をご覧になり、明らかに変、異質な感じがしますか?まぁ少々変だという事は自分でも自覚していますが……」

ご両親「……いえ」

私「そうですよね、つまり、あまり変わらないんだと思います。確かに聞こえにくい事はありますので、全く何もないと言う気はありません。しかし、本を読んで学ぶ事、感動する事も、体を動かしてスポーツを楽しむ事も、絵を描いて楽しむ事もできます。そして、今まさに私がしている事ですが、機械の力を借りつつお話しする事もできるようにもなります。できない事に比べたら、圧倒的にできる事の方が多いのも事実なんですよ。」

ご両親「……」

私「今すぐに全てを理解しようとしても一杯一杯だと思います。これから、私が申し上げた事を、少しずつご自身の身をもって経験されていきます。お子さんと一緒にです。その過程で徐々に受け入れていけば良いと私は考えています」

ご両親「……」

このご両親は、非常にお子さんの事を心配されていましたので、気休め程度にですが、このようなお話しをしました。その後は、補聴器に関しても関心を示していただき、今では、お子さんが補聴器を活用するようにもなりました。

経験から言える事

文章だけでは、伝わりづらく申し訳ないのですが、お話ししている時の説得力は、難聴の方、本人が話すのと一般の方がお話しするのとでは、異なるのではないかと思っています。何度か先生方がお話ししている後に私がお話しすると反応が明らかに異なったり、急に変わる方もいらっしゃいました。話す内容もそうですが、話す人も重要なんだと感じました。

これらの経験から言える事は、確かに聞こえにくい事はありますが、難聴をこの様に活かす事もできるという事です。事実をありのままにお話しし、現状を一歩進めるための勇気を与える事もできます。なかなかないやり方かもしれませんが、私自身の経験からは、このような事が言えます。

これは、まさに「与えられたものをどう使うか」というところだと思います。こちらが耳の事を考えるヒントになれば幸いです。

 

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