リアナ・ウェン氏の動画を見て思う補聴器業界の未来のあり方
個人的に(勝手に)尊敬している人が、リアナ・ウェン氏です。この方を知ったのは、あるTED動画を見た時なのですが、その動画内で言っている内容には、大変感銘しました。個人的には、補聴器業界もそのようになってくると良くなるのではないかと勝手に思っています。
リアナ氏がおっしゃっていたのは、情報の共有でした。この点に関して、個人的にも行う方が、より業界そのものが良くなると思っています。
ここで、この内容を載せると共に、補聴器業界について思う事も載せていきます。
リアナ氏のTED動画
リアナ・ウェン氏のTED動画は、こちらです。
タイトル:医師が開示しないこと
こちらの内容は、医療に関する内容です。様々な事を打ち明ける事、情報を共有化する事で、医療の質はより良くなるという事を伝えています。過去にも紹介した事がありますので、細かい詳細は、以下に譲ります。
リンク:リアナ・ウェン氏 医師が開示しないことに学ぶ情報公開の重要性
補聴器に関して思う事
さて、補聴器業界にお話しを移動します。補聴器を装用している人間として思うのは、どのように考えて補聴器を選択しているのか、というところがあります。医師、または、補聴器屋さんは、どのように考えて、補聴器を提供しているのでしょうか。この部分は、非常に気になるところだと個人的には、考えています。
また、どのような状況であれば補聴器が合っていると言えるのか、そこが限界だと言えるのか、なぜそのような音にするのかなど、考えれば色々出てきますね。恐らく、他の難聴の方も、これらの内容を直接、医師や補聴器屋さんに伺いたいと思っている方は、いらっしゃるのではないでしょうか。
私がこのような事を感じるのは、補聴器を装用する人は、ほぼ感音性難聴だからに他なりません。ご存知、感音性難聴とは、音が脳に伝わる過程で起こる難聴です。感音性難聴の場合、音を大きく聞かせたとしても、言葉が明瞭に聞こえにくい事、理解しにくい傾向が出てしまいます。これは、補聴器を装用しても、同様であり、聞きにくい部分は、治る事がありません。
では、どのようにして、補聴器は、合っていると言えるのでしょうか。補聴器を装用しても聞きにくい事があるのでしたら、補聴器を装用しても、それが良い状態なのか、そうでないのかがわからないという事になります。そうなりますと補聴器を装用して聞こえている世界は、どのように評価したら良いのかもわかりません。
補聴器を装用すると周囲の音が一斉に大きく聞こえるようになります。では、大きく聞こえる状態であれば、合っていると言えるのでしょうか。そして、聞こえてくる様々な音は、どのくらいの音量で聞こえるのが良いのでしょうか。例えば、セミの鳴き声は、良く聞こえた方が良いのでしょうか、それともうるさいから、音は下げた方が良いのでしょうか。
このように補聴器は、考えれば、考えるほど、謎である事がわかります。
私がしていた事
恐らく補聴器を装用した方であれば、上記の事を思った事があるのではないでしょうか。私は、良く感じていました。幸い、私自身は、補聴器屋に居ましたので、自分自身で補聴器を調整し、数値で管理するという手法を行っていました。私は、自分自身で補聴器を装用しても、聞こえてくる音が本当に自分に合っているのかどうかは、自分の耳だけでは、わかりませんでした。
補聴器を装用する事で、音が大きく聞こえるようになった感覚はわかるものの、それが良いのか悪いのかは、全く判断ができませんでした。音は聞こえるけれども、言葉が聞きにくい場合は、補聴器を調整すれば、何とかなる問題なのか、それともそれがもう限界なのかもわかりませんでした。さらに、周囲から聞こえてくる音のレベル(音量)もどのくらいの音量で聞こえるのが適切なのかもわかりませんでした。自分自身の耳では、聞こえる感覚こそわかるものの、それ以外の事は、全くわかりませんでした。
そんな私がしていた事は、自分の聞こえを可視化する事でした。補聴器を装用し、どのくらい聞こえるようになっているのかを機械を使って確認し、自分の耳は、どのような状態なのかを数値で管理する事でした。数値で管理すると驚くほど、明確に自分の状況を理解する事ができます。一般の人が話す距離で、話す言葉の音量があり、さらにそれを聞き取るには、どのくらい音が必要なのか……。自分自身の耳は、どのくらい言葉が理解しやすく、そして補聴器を装用するとどのくらい理解できているのか、それらのデータを見る事で、適切かどうかを自分自身で判断するようになりました。
私自身の場合、奇しくも自分の耳を信じたのではなく、むしろ自分自身の耳の感覚を疑った事から、これらの事を行うようになりました。
補聴器に関する考えを出して欲しい
私自身思う事は、補聴器に携わる人全てが、補聴器に関する考えを出して欲しいと思っています。私は、こう考えています。自分は、こう思っています。私自身、様々な考えがある事を否定する事はありません。もちろん、明らかに問題なものは、別とします。
どのような考えで選択したのか、どのような考えで、この補聴器が合っていると言えるのか、このような事がしっかりと言えるようになれば、この業界は、必ず良くなっていくと思っています。そして、補聴器の誤解そのものも少なくなってくるとも思っています。
「補聴器は、しっかりと合ったものを選択するのが重要です」という抽象的なものではなく、どのような補聴器がしっかりと合っていると言えるのか、そしてそれを見る(する)には、どのようにしたら良いのか、それについて、もっと出していくべきでは、ないでしょうか。このような言葉を見る度に「そもそも合っていないものを購入したいと思う人がいるのだろうか?」という疑問が私の頭の中をよぎります。
重要なのは、補聴器に関する考え方を出す事だと思います。もちろん、これは、非常に難しい事です。リアナ氏もおっしゃっていますが、全てをさらけ出す事、そして、わからない事にわからないと言う事は、とても勇気がいる事です。しかし、考えに考え抜いて出した答えなら、納得する人もいるのではないでしょうか。そんな風にも思います。
リアナ氏の動画を見て思った事は、このような事です。医療だけでなく、補聴器に関しても、どのように考えてそうしているのかを伝えるのは、業者にとっても医師にとっても患者さん(お客さん)にとっても良い事だと私は思います。
補聴器業界が目指す未来は、このような未来ではないでしょうか。少なくとも私は、そのように考えています。それは、補聴器を装用している身からしても、そう思います。
なぜなら補聴器は、医師や業者のためにあるのではなく難聴者のためにあるからです。
あとがき
リアナ・ウェン氏の動画は、私に多くの事を教えてくれました。お恥ずかしながら、一番始めに見た時は、内容に関してもそう響くものは、なかったのですが、今は、違う視点でみているのか、とても素晴らしく感じます。おっしゃっている内容については、本当にそのように感じます。
私自身、リアナ氏のような立派な方ではありませんが、今後もまた、私自身にできる事を行っていきたいと思います。むしろ、そのような人間ではないからこそ、意識する必要があるのかもしれません。このような気付きを与えてくれたリアナ氏に感謝致します。
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