【快適に聞きやすく】老人性難聴の方、補聴器で改善しました
久々に、お客様の改善症例でも書いてみようと思います。
今回の例は、70代、女性。8年程前に補聴器を購入し、使用していましたが、補聴器を使うと頭痛がしてしまい、なかなか使用できず、困っている方でした。
補聴器を購入してからだいぶ経過しており、かつ、その補聴器を使いたいともあまりお考えではない事から、新しい補聴器をご希望で、改めて、状況を把握し直し、それに合った聞こえの改善を行いました。
結果
- 補聴器があることにより、だいぶ、聞きやすくなった
- 頭痛がすることは、なくなった
- 聞こえにくい事による心理的負担は、かなり少なくなった
との事でした。
個人的にも、少し学べる部分がありましたので、どのような状況をどう改善していったのか。こちらに関して、紹介していきます。
お客様の状況
まず、状況ですが、
- 名前:M・Nさん
- 年齢:70代
- 性別:女性
- 聴力:軽・中等度難聴(両耳)
- 症状:老人性難聴
- 備考:耳鳴り、両耳あり
- 状況:8年程前に他店にて両耳、耳あな購入
となります。
聴力は、このような状態です。少し左右で聴力が異なりますが、概ね、同じような状態です。M・Nさんからは、特に左右で聞こえ方が異なる。という感覚は、ないようでした。
補聴器自体は、病院さんを通じて8年程前に両耳分、購入し、当時から、そこまで使用感覚は、よくなく、出かける際にたまに、使用する程度、との事でした。
聞こえに困りやすい時だけ、使用する。という状況ですね。
8年前は、もう少し聴力もよかったようで、そんなに困ることは、なかったようですが、今現在は、ある程度、聴力が下がってきている事から、困る頻度が急激に増え、現状を改善したい。とお考えでした。
補聴器の状況としては、
- 使用すると頭痛がする
- 違和感が強くて、使いづらい
という状況でした。
まず、補聴器に関してですが、使用すると頭痛がしてしまい、使用しづらいとの事でした。この頭痛は、ほぼ、使用時に毎回、起こるようで、この感覚は、購入した当初から、あったようです。
そして、違和感。この場合の違和感は、ご自身の声の響きに関するもので、補聴器をつけた時に、自分の声が非常に違和感が強くなってしまい、それが使いにくさに繋がっているようでした。
はじめに購入したところは、病院さんを通じて、購入しており、違和感および、頭痛に関しては、仕方がないものと、考えて、使用していたが、かなり使いづらいので、使用したいけども、使えない……という状況が続いていました。
使っても、そこまで聞こえがよくなる訳でもなく、かつ、使うとデメリットの方が多い。でも、聞こえにくさには、困っている。こんな状況でした。
という事で、この状況を改善していく事になります。
改善案(改善に関する考え)
さて、この状況に関する改善案を考えていきます。
やるべき事としては、現状の把握と、どうすると良いか。の思考(仮説)の2つをしていく事ですね。
まず、現状の把握ですが、
聴力は、このような状態。
そして、語音明瞭度。言葉の聞き取りの部分ですね。この点については、このような状況でした。
両方とも言葉の聞き取りは、良いので、聞こえを改善する。と考えた場合、両耳を活用して、聞こえを改善できると良い数値です。
そして、問題の頭痛と違和感ですね。この点に関しては、耳あな形補聴器を使っている事と自分の声の違和感が強い。という事から、恐らく耳あな形補聴器の欠点であるこもり、声の響きである可能性が、高いです。
私自身も補聴器をつけていますが、補聴器によるこもり。補聴器を使用した時に、自分で声を出すと耳の穴の入り口あたりで、低く唸るような感覚、低く響くような感覚ですね。
これを感じることがあるのですが、この感覚が強いと、私も気持ち悪くなってしまったり、頭が重くなったり、痛くなったりすることがありますので、この部分かな?と仮説を立てます。
しかし、この感覚に関しては、実際には、軽減できる方と耳の状況によっては、軽減できない方もいます。病気により、補聴器がない状態でも、常時、そう感じるケースもあるためです。
そのため、その部分をまず解消できるような補聴器、例えば、RIC(リック)補聴器などを使ってみて、どのような反応があるのか。軽減する傾向があるのか、それとも、あまり変わらないのか。を確認し、改善につなげていく必要があります。
ここから考えられる改善パターンは、
こもりを軽減することで、頭痛が軽減する、違和感が少なくなるなら、両耳に補聴器を使用して、聞こえの改善を第一に考え、かつ、補聴器の使いやすさを目指す。
もしくは、仮にこもりを軽減しても、違和感が少なくなる様子がなく、かつ、頭痛もする。という場合は、その違和感をさらに少なくするために良い方の耳のみに補聴器を使用し、バランスを取る。
の2つでしょうか。
どちらにしても、まず、違和感の軽減と頭痛の軽減。これができるのか、どうか。というところが聞こえの改善方法の分かれ目になります。
という事で、これらを確認していく事になります。
実際の改善
まずはじめに耳の状況から使用状況、補聴器の状況などお伺いさせていただき、わかっている範囲内で、説明をさせていただきました。
主に上記の改善案の通りですが、違和感や頭痛の原因、それを探る事。その原因の可能性としては、耳あな形補聴器そのものである可能性がある事。
これらをお伝えした上で、まずは、補聴器の選定で、RIC補聴器について、試聴する事になります。
補聴器の形状の特徴としては、上記の通りです。耳あな形補聴器は、耳の中に入り、邪魔になりづらい傾向があるものの、どうしても自分の声が響く感覚、閉塞感などを感じやすくなります。
耳かけ形補聴器は、閉塞感や響く感覚をまだ軽減しやすいのですが、耳にかかっているため、マスクやメガネの邪魔になることがあります。その点だけが欠点ですね。
幸い、メガネに関しては、邪魔に感じることはなく、かつ、マスクは、そんなにつけないようでしたので、RIC補聴器を試していく事になります。
はじめは、お店で試聴するのですが、両耳で、RIC補聴器に関しては、試聴しました。
お店で試聴した限り、ご自身の声の違和感は、ゼロではないものの、お使いの補聴器に比べると、かなり軽減しており、この状態なら、使用できる。という状況でした。
さらに、あくまでもお店の中で使用し続けている限り、頭痛がする。という感覚は、ないようでした。
この点に関しては、つけた瞬間に頭痛がするケースは、かなり稀ですので、本当にそうなのか。は、補聴器の貸出をしてみて、実際の使用環境で使用してみた時にどうなのか。様子をみる必要があります。
なお、この際、音量に関しては、ある程度、自由に調整できるようにしておきました。
頭痛の原因には、音の聞きすぎ、もしくは、突発的な大きい音が入る事によって起こるケースもありますので、仮に辛くなるようであれば、音量を下げていただく事も必要かもしれない。と、考え、ボリュームに関しては、機能させるようにし、探れるようにしました。
試聴結果と頭痛の原因は
2週間ほど、貸出をした結果ですが、結論として
- 頭痛がすることはなかった
- 違和感は、大きく軽減した
- 補聴器がある事により、だいぶ聞きやすくなった
との事でした。
一番の懸念材料として、考えていた頭痛がする事。については、日常生活上で使用していただいても、感じることはなくなり、以前の補聴器と比べると、非常に使いやすくなったとのことでした。
それにより、補聴器が使える時間が伸び、普段から使うようになってきた。という事で、生活が変わってきたようです。
この時点で、違和感の原因そのものが、恐らく頭痛にも、そのまま影響している。と、考え、M・Nさんに関しては、なるべくその違和感が少なくなる補聴器が望ましい。ということがわかりました。
さらに、両耳に補聴器を装用した状態でも頭痛もせず、違和感も少なくて使い続けても大丈夫である。ということがわかり、M・Nさんについては、両耳装用で、なるべく聞こえの改善度を上げていく事が、望ましい。という事もわかりました。
補聴器の調整状態をより良くするために
望ましい状況がわかったら、今度は、補聴器の調整状態をより良くしていくために、調整を考えていく必要があります。
まず、M・Nさんの状況からすると、仮説ではありますが、望ましい状況は、概ね、ここぐらいまで、聞こえを改善する事です。
軽・中等度難聴の方であれば、概ね、このくらいまで改善できるようになっており、また、この部分まで、改善できると、聞こえの改善状況もそれなりによくなる事が多いです。
貸出の段階では、このような状況でした。少し足りない状況ですね。
という事で、実際にこの状態で、貸出をしてみて、補聴器の音量に関して、操作したか。を確認していきます。
これは、設定していた音量が大きい場合は、ボリュームで下げている事が多く、設定していた音量が小さければ、ボリュームで、上げている事が多いためです。
この点は、簡単に言えば、設定した音量がちゃんとその人の感覚にあっていたのか。の答え合わせをしているようなものですね。
補聴器の音量は、基本的には1段階2dBステップで操作できるようになっており、どのくらい下げて使用していたのか。どのくらい上げて使用していたのか。が、わかると、概ね、どのようにできると、使いやすくなるのか。を探る事ができます。
例えば、お店で設定した音量より、実は、2段階(全部で4dBですね)下げて使用している事が多かった。という事がわかれば、その方の適正音量は、現状より、4dB下げた状態である事がわかります。
実際には、常に下げていることは、少なかったりするのですが、下げる回数が多いのであれば、少し小さめにする。あげる回数が多いのであれば、少しだけ、大きくする。など、調整の幅を考える事ができます。
このようにボリュームは、必ず一定の動作をするため、その方の適正音量を探るのに、役立つものだったりします。
話は、戻りまして、結論から言いますと、ボリュームに関しては、そこまで操作は、しておらず、少し聞きにくいな。と、感じたら上げる事は、あったものの、そんなに上げる機会もなく、下げる機会もなかった。との事でした。
その状況で使用していて、概ね聞こえやすくなっている事もあり、逆に音が大きすぎて、音を下げたい。という事も、なく、良くも悪くも、適正近くで聞こえていたようです。
そのため、補聴器の調整に関しては、一旦、ここまでにしました。
実は、この状態よりも音を大きくしてみた事があったのですが、ある程度、大きくすると、また、ご自身の声の感覚が響きやすくなってしまう事もあり、無理しない範囲で、聞こえを改善できる。この範囲に落ち着かせて、改善するようにしました。
無理に調整を行い、頭痛の原因や違和感を強くすると、また、以前の状態になる可能性があったためです。その可能性は、なるべく避けたかった。という事ですね。
のちのち補聴器を使用する時間が長くなり、補聴器でもう少し音を補っても大丈夫な頃合いに、また確認したり、改善できれば良いと考え、今現在は、この状態に止まるようになります。
お客様の声
実際にご来店いただいて、どうだったのか。その点に関して、お客様にお伺いしてみました。
どのような事でお悩みでしたか
実際に補聴器をお使いになってみて、どうでしたか?
このお店で相談(購入)になったのは、なぜでしょうか?
実際のアンケート
アンケートにご協力いただきまして、ありがとうございます。
M・Nさんの改善ポイント
個人的に感じた改善ポイントは
- 原因を明らかにする事から始めた事
- 試しながら、状況を把握していった事
の2つですね。
原因を明らかにする事から始めた事
一番は、原因を明らかにすることから始めたこと。こちらになります。
何かしら、うまく行かない理由があって、来てくださっている訳ですので、いきなり改善するのではなく、まずは、現状を把握し、どのようにしたらよくなるのか。そこの点から、考えていった事が大きな点だと思います。
原因である可能性を伝え、そこがまずよくなるのか。そこの確認から始めていき、そこから、改善していけたのが、よかった点だと思います。
これをしないで、やってしまうと、仮に改善できたとしても、偶然、改善できたことになり、M・Nさんに適切な情報を与える事ができなくなってしまうので、明らかにできる部分は、明らかにしつつ、行なっていく事が何よりも大事です。
この基本的な思考がわかれば、次回から、M・Nさんにとっても自分がどんな補聴器がよくて、避ける補聴器は、なんなのか。がわかりますので、ここの部分は、とても重要な部分です。
試しながら、状況を把握していった事
2つ目は、試しながら、状況を把握していった事です。
仮説を立てることは、できますが、実際にそうなのか。は、試してみないとわからないことも多いです。
そのため、実際に試してみてどうなのか。を確認し、そうであれば、そこを気をつけ、違うのであれば、また、別の仮説を考える。というように、考えるだけではなく、実際に試しながら、一つ、一つ、原因を探る。という考えで、行えたのもよかったところですね。
なかなか頭の中だけでは、分からないことも多くありますので、最終的には、本当にこれが原因なのか?を確認する必要があります。
まとめ
M・Nさんのケースに関して、まとめてみました。
最終的に聞こえの改善がそれなりにでき、こちらとしては、何よりでした。
以前の補聴器は、使用するだけで、頭痛がする。違和感が強く、使いづらい。ということでしたので、その原因となる部分をまず、取り除く事から、始めていきました。
その結果、よりよくすることにつながり、本当に何よりです。
なかなかそのような状態だと使いづらいかと思いますので、使いやすさを重視し、かつ、聞こえの改善を行う。そんな風に考えて、こちらは、改善させていただきました。
この度は、ご利用いただきまして、誠にありがとうございました。