老人性難聴の事例

【改善事例】80代、男性、老人性難聴の方、補聴器で改善

深井 順一|パートナーズ補聴器

補聴器による聞こえの改善は、聞こえの改善と補聴器のFAQ、にまとめています。また、個々の症状(症例)ごとの改善は、お客様の聞こえの改善事例にまとめています。

最近、久々にご年配の方の対応をさせていただきましたので、どのように改善していくと良いのか。その要点に関して、まとめていきたいと思います。

今回、ご紹介するのは、80代の男性の方で、老人性難聴(加齢性の難聴)により、聞きにくくなった方の改善事例になります。

こちらの方の場合、年齢を重ね、聞こえにくくなったのですが、その事から、周囲の方とのコミュニケーション、ご家族の方と意思疎通があまりうまくできなくなってきた事から、ご相談いただきました。

相談の結果ですが、だいぶ聞きやすくなり、今現在は、周りの方ともよりコミュニケーションがとりやすくなった事から、小さないざこざや衝突がなくなり、補聴器を活用して、日々を過ごされています。

では、どのように改善していったのか。その点に関して、まとめていきます。

お客様の状況

さて、まずお客様の状況ですが、

  • お名前:R・I さん
  • 性別:男性
  • 年齢:80代
  • 聴力:高度難聴
  • 症状:難聴(老人性難聴)
  • 備考:集音器を買ったが役に立たず

となります。

聴力に関しては、このようになります。左右とも似たような感じの聞こえであり、割と聴力が低下しているケースになります。

わかりづらい方に合わせてお話ししますと、一般的な人の聞こえは、0〜10dBで聞こえており、正常の範囲が0〜25dBまでになります。

そこから下がると下がるほど、聞こえにくさが強くなり、R・I さんの場合は、だいぶ低下している部類になりまして、一般的な人のお話は、結構、わかりづらく、さらに距離が離れるとほぼ何も聞こえない状態になります。

今現在の状況を伺ってみると、耳鼻科に行き、耳を診てもらいましたが、当時は、そこまで困っておらず、そのままにされていました。その後、少し困ることが出てきた時に集音器を使い、やってみたのですが、使い物にはならなかった。という事でした。

そこで、さらに聞こえにくさが低下し、どうにもならなくなったタイミングで、こちらに来られた状況でした。

実は、こちらの方の場合、このお店のお客様の紹介ともあり、そのお客様がよく補聴器を使えていたため、興味を持ち、ご家族(娘様)と一緒にお越しいただいた状態です。

ということで、この状況を良くしていきます。

聞こえの状態

さて、聞こえの改善案は……といきたいところですが、初めての方や初心者の方ですと、そもそも現状がわかりづらいかと思いますので、まずは、どのような状況なのかを記載していきます。

聴力的にみてみると今現在の聞こえの状況は主にこのような状態になります。

聞こえにくさというのは、ある程度、共通する部分があり、聞こえにくくなると特に支障が出てくるのは、この4つの部分です。

対面でのお話は、聴力低下がだいぶ進んでいますので、大きい声の方や近くで話された場合は、わかることがあるものの基本的には、わからないことが多いです。

今現在は特にマスクやアクリル板などで遮断されることが多いため、余計にその部分は感じやすくなります。

そこの部分が聞こえにくいということは、騒がしい中での聞こえも、周りの人とのお話、さらに距離が離れた場合に呼ばれていること、音が鳴っていることにも気づかない事が大半になります。

こんな感じでだいぶ聞きにくさを感じている状況というのが先ほどの聴力の方の特徴です。

聞こえの改善案

さて、実際に改善方法について、記載していきます。ここに記載していくのは、考え方の部分です。

実際のものは、販売店さんやその人の状況によって変化していきますので、考え方について、記載していきます。

全体的な考え方

さて、補聴器で聞こえを改善していく場合ですが、ご年配の方の場合、一番に考えることは、ご本人様にとって使いやすいもので改善していくこと。こちらになります。

理由は単純で、ご本人様にとって使いやすいものでないと補聴器を使うことも、その補聴器を使い続けることもできなくなってしまうからです。この傾向は年齢を重ねていれば、重ねているだけ、その重要度は増します。

使いやすいものを提供することで、補聴器を使う時間が伸び、使う時間が伸びる事によって補聴器の音に慣れやすくなり、結果、日常生活上でも補聴器を使い続けることができるようになる。という流れですね。

この流れを意識することがとても大事です。

実際にR・I さんの場合は、そのような流れで改善し、今現在は、ほぼ一日中、補聴器をつけており、R・I さんにとって、補聴器はなくてはならないものになりました。

補聴器をつける時間が長くなることで、補聴器を常に使うようになり、ご家族の方がお話する際にもご本人様が使っている状態になりますので、結果、聞こえにくいことで何度も話さなくて済むようになり、ご家族様の負担も楽になりました。

考え方としては、どんな補聴器を買えば良いかではなく、どのようにしたらご本人様にとって、使いやすいものを選べるか。になります。

補聴器による改善案

さて、実際に考え方の方に移っていきます。今現在は、補聴器で改善していく場合、大事になる要素が、2つあり、

  • 補聴器の形
  • 補聴器による聞こえの改善(音の調整)

この2つになります。

補聴器の形の部分は、見えやすい部分でわかりやすいかと思いますが、こちらでは、補聴器による聞こえの改善(音の調整)の部分も記載していきます。

補聴器の形

初めに補聴器の形に関して、記載していきます。補聴器の形は、目につきやすく、主に使いやすさ、扱いやすさに影響します。

今現在、補聴器には、いくつかの形があります。基本的には、耳にかけて使う耳かけ形補聴器と耳の穴の中に入れて使う耳あな形補聴器の2つがあります。

厳密には、これにプラスして、ポケット形補聴器というのもあるのですが、R・I さんの場合は、それが必要になるまで、手先が不自由なことはありませんでしたので、主要となる耳かけ形補聴器、耳あな形補聴器の2つのうち、どちらかで考えていく事になります。

それぞれの違いですが、その特徴は、こちらの通りです。

耳かけ形補聴器の場合、耳にかける事によるメリット、デメリットがあります。良いのは、補聴器をつけた時に自分の声が大きく聞こえたり、低く響いて聞こえる感覚があるのですが、その感覚が少ないことです。

これは耳にイヤホンを入れた時に起こる感覚と同じで、補聴器は良くも悪くも耳を塞ぐため、このような不快感が出やすいです。

これが出にくいのが耳かけ形補聴器の特徴です。デメリットは、耳の上にかけますので、マスクやメガネの邪魔になりやすいことです。(あと少々、電話がしづらくなる)

使い方さえ気をつけていただければ問題なくできることも多いのですが、気になる方には気になりやすいので、その点に注意ですね。

耳あな形補聴器は、耳の中に入る事によるメリット、デメリットがある補聴器です。

基本的に耳かけ形補聴器の逆で、良い点は、耳の中に補聴器が入りますので、メガネやマスクの邪魔にならず、電話もそのまま行えます。

逆に悪い点は、耳を密閉する傾向がありますので、自分の声の不快感、あるいは、声が大きく聞こえやすい事ですね。

R・I さんは、このどちらかで考えていく事になります。

補聴器による聞こえの改善(音の調整)

次は、音の調整の部分になります。補聴器の根幹とも言える部分で、主に聞こえの改善度に影響する部分です。

専門的な内容になり、分かりづらい部分も出やすいのですが、逆に数値を知っておけると、だいぶ現状を理解しやすくなります。

今回、こちらで記載していくのは、音場閾値測定(おんじょういきち測定)と呼ばれるもので、主に補聴器を使った状態でどのぐらい聞こえているのかを調べる測定になります。

補聴器の世界には、補聴器を使った状態でどの周波数がどのぐらい聞こえを改善できているのかを確認できる測定がありますので、こちらで、きちんと各周波数が改善できているのかどうかを確認することができます。

補聴器をつけても、自分がどのぐらい聞こえを改善できているのかは、自覚することが非常に困難になりますので、この部分はきちんと数値にして、どのぐらい改善できているのかを確認できると良いです。

で、話を戻しまして、R・I さんの場合は、理想を言うなら、このぐらい改善できると良いです。大体40dBぐらいですね。

この表は、聴力検査の際に使われる聴力図と見方は、同じになります。上記では、0〜25dBが正常の範囲といったあの表のことです。

残念ながらまだまだ補聴器は正常の範囲内までの改善は難しく、さらに聴力低下が大きければ大きいほど、その改善値は下がります。ただ、できる限り改善することで、今現在の状況をより良くすることは可能です。

ポイントをいくつか記載していきますと、まず大事になるのが、音声に影響しやすい500〜2000Hzになります。

ここの部分は、このぐらいまで改善できると、補聴器ありなしで差が出るだけでなく、対面でのお話なども聞きやすくすることができます。

特にこの部分は、音声に影響しやすいこともあり、ご本人様が使える範囲内での音量で、という条件はありますが、目標値まで上げられると良い部分ではあります。

次に大事になるのは、高い音の部分ですね。この部分は、このぐらいまで上げられると良いです。

この部分は主にチャイムの音だとか、電子機器の音だとか、そういった部分に影響し、さらに聞き取りの分別にも影響します。

ですので、この部分に関しても上げられるのであれば、上げられると良いです。

聴力が低下している状態にはなりますので、上げられると良いに越したことはないのですが、あまりにも上げすぎると、今度は、うるさくなって使いづらくなりますので、ここで紹介しているのは、あくまでも目標値です。

大事なことは、目的を取り違えないことです。目的は、補聴器を使いやすい状態にすることであり、数値的に目標値まで大きくすることではありません。

目標がないとどこまで改善できると良いかは非常にわかりづらくなりますので、こういった目標を活用しつつ、使いやすい状態。補聴器を使えて、かつ聞きやすい状態を目指していくことが大事です。

余談(障害者自立支援法制度について)

さて、一つだけ余談について、記載していきます。何かと言いますと、こちらの方の場合、聴力低下が大きいため、障害者自立支援法という制度が利用できる可能性があります。

実際にR・I さんに関しては、利用できたのですが、両方の聴力が70dB以下(4分法にて)か、片耳、90dB、もう片耳が、50dB以下だった場合に国の制度で、補聴器の助成を受けることができます。(所得が高い場合は否決されること多し)

聴力低下が大きい方は、お住まいの市区町村の役所の障害者相談係、あるいは、高齢者相談係で相談してみると良いです。

実際の対応

さて、ここからは、実際に対応してどうなったのか。その点を中心に記載していきます。

結論

まず結論から記載していきますと、

  • 金額:396,000円(税込)
  • 機種:CIC補聴器(小型耳あな形補聴器)
  • 備考:両耳に耳あな形補聴器を装用して改善
  • 備考:自立支援法制度を利用

となります。

補聴器の形状には、耳あな形補聴器と耳かけ形補聴器がありますが、マスクの邪魔になりやすく、逆に耳から外れてしまったり、落ちるのが心配になってしまったことがあり、耳あな形補聴器になりました。

補聴器の形

結論で全て記載してしまっていますが、最終的に決まったのは、CIC補聴器と呼ばれる小型の耳あな形補聴器になります。

まず初めてご来店いただいた際に上記のような改善に関するお話をさせていただきました。

補聴器の形状に関して、ご相談の際、初めは耳かけ形補聴器で考えていたため、ここから実際にご本人様が使えるかどうか、日々の日常生活で使いやすいものなのかどうかを確認するため、補聴器の貸出を行いました。

その結果ですが、耳にかけて使うと、マスクに引っかかって、補聴器を床に落としてしまったり、無くしたのではないかとヒヤッとした機会がいくつかあり、マスクに引っかかることがない耳あな形補聴器を試す事になります。

耳あな形補聴器については、大きく分けると、CICタイプとITEタイプがあります。小型タイプのCICと標準サイズのITEです。

耳あな形補聴器の欠点の一つに自分の声の不快感があります。この感覚は、125〜500Hzの聴力が、60dB以内であると感じやすい傾向があり、R・I さんも実は、これに該当します。

そして、その閉塞感や不快感に関しては、まだCIC補聴器の方が軽減されやすく、耳を埋める量が多いITE補聴器の方は、少し強めに感じやすくなります。

そこで、お店の方でCICの模型とITEの模型を実際に触れてみたところ、CICでも問題なく操作できそうな印象がありましたので、今度は、実際に補聴器を作ってみて、日常生活上で改めて試していただく事になります。

実際に2〜3週間ぐらい使っていただいたところ、問題なく操作ができていたこともあり、このCIC補聴器に決定になりました。

耳に引っかかることがなくなり、補聴器は非常に安定して使いやすくなりました。補聴器の使う時間も長くなり、補聴器の音にも慣れ、今現在は、そのおかげで補聴器はなくてはならないものになりました。

補聴器の形はこのようにして決定になりました。

補聴器による聞こえの改善(音の調整)

次は、聞こえの改善、補聴器の音の調整に関してです。こちらに関しては、結論から記載すると

このようになります。目標と比較すると少し足りない部分があるものの、概ね良い部分まで改善しました。

こちらの音の調整に関しては、目標の部分と実際に聞こえている数値の部分でご本人様と相談しながら、行いました。

補聴器に関しては、聞こえが改善できるとできるだけ良いように思いますが、実際には、聞こえの改善はすればするほど、周りの音がうるさくなったり、特定の音が気になったりしがちです。

補聴器は自分が聞きたい音だけを大きくする訳ではありませんので、全体的なバランスが大事になります。

ご本人様の感覚をお伺いしながら、少しずつ調整し、このぐらいまでの改善になっています。大きすぎず、小さすぎずを目指し、聞こえの改善についても行いました。

お客様の声

実際に対応させていただいたお客様からいただいた声に関して、ご紹介いたします。

どのような事でお悩みでしたか?

実際に補聴器をお使いになってみていかがでしょうか。

このお店で、ご相談(購入)になったのは、なぜでしょうか。

実際のアンケート

アンケートへのご協力、誠に感謝いたします。こちらこそ、対応させていただき、ありがとうございました。

改善の際に良かったところ

最後に改善の際に良かったところをまとめていきます。それは、全部、試したことです。

補聴器の形状に関しては、初め耳かけ形補聴器でも良いか。くらいの感覚でしたが、実際に日常生活で試してみたところ、マスクに補聴器が引っかかり、外れてしまったり、引っかかって外れたことに気がつかないなどのことが起こりました。

これは初めに予測できなかったことが悪いのではなく、そもそも初めての経験の中で予測することは非常に困難です。実際に使ってみてわかることも多くあります。

R・I さんもそうでしたが、実際に試してみると「補聴器ってこんな感じなんだ」や「これは、こういう特徴があるんだ」ということが分かりやすくなります。

初めに決めつけるのではなく、試してみて、確認する。という作業を一つ組み込めると、失敗する確率は、グッと減らすことができます。

特にご年配の方の場合、一人ひとりの身体能力、身体の状況がかなり異なりますので、このようなケースにこそ、試す。という確認を一つ入れることは大事ですね。

改善の際に良かったところは、ここの部分になります。試す。という確認を入れて「本当にそれで大丈夫か?」と確認できると、非常に安心して相談、そして改善することができるようになります。

まとめ

さて、今回は、80代、男性の方の改善事例について記載してみました。

老人性難聴の方のケースとはなりますが、年齢が年齢になりますので、ケースバイケースの部分が多くなります。ここまで年齢を重ねている方の場合、個々の身体能力、身体状況が異なることが多いためです。

ですので、あくまでもこちらでは、考え方を中心に記載してみました。

人によっては、それこそ具体的な補聴器について知りたい方がいるかもしれませんが、そもそも身体能力や身体的状況が異なる傾向が強い状況に対して、一律にこれがいいということは言えませんし、そんなものは存在しません。

ただ大事なことは記載してみましたので、こちらの内容が何か参考になった部分があれば幸いです。

ABOUT ME
深井 順一|パートナーズ補聴器
深井 順一|パートナーズ補聴器
使っている人が対応している補聴器専門店・代表
1986年、7月1日生まれ。生まれつきの難聴者で小学2年生の頃から補聴器を使っています。聞こえにくい側の状況やお気持ちは、同じ難聴者や当事者にしかわからないことがある事から、このお店では、実際に補聴器を使っている私自身がご相談を承っています。

お店のご紹介

初めまして、パートナーズ補聴器の深井と申します。

このお店は、生まれつき難聴で補聴器を使っている人が対応している補聴器専門店です。

聞こえにくい側の状況やお気持ちは、同じ難聴者や当事者にしかわからないことがある事から、実際に補聴器を使っている当事者がご相談を承っています。

お店の詳細は、以下のページへどうぞ。

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