感音性難聴の事例

【改善解説】50代・男性、生まれつき感音性難聴で高い音が聞きづらい方、補聴器で改善

深井 順一|パートナーズ補聴器

聞こえの改善や補聴器のことについては、【FAQ】聞こえの改善と補聴器のFAQへ。お客様の改善事例は、聞こえの改善成功事例へどうぞ。

こちらでは、実際のお客様のデータを使って、どのように聞こえを改善していったのか。その解説を行なっていきます。

今回のケースは、生まれつきの感音性難聴の方で、高い音が急激に低下している難聴の方になります。

現状としては、聞こえの改善は、ほどほどにできているのですが、ハウリングが多く、補聴器の使いづらさを多々、感じている方でした。

ハウリングとは補聴器からピーッとなる現象の事です。これは、あまりにも音が強く出ていたり、しっかり装用できていないときに起こるもので、聴力低下が大きい方にとっては、補聴器の使いづらさに直結する問題となります。

お店でご対応させていただいた結果

  • 今まで気になっていたハウリングの煩わしさがなくなった
  • 今まで以上に聞きやすくなった
  • 補聴器がだいぶ使いやすくなった

との事でした。

では、どのように聞こえを改善していったのか。その点に関して、そのポイントとなる部分をまとめていきます。

お客様の概要

まず、概要ですが、

  • 名前:佐藤さん
  • 年齢:50代
  • 性別:男性
  • 聴力:高い音になるにつれ、大きく低下
  • 症状:生まれつきの感音性難聴
  • 備考:補聴器は、お持ちで、耳あな形(カナル形)を使用

となります。

聴力に関しては、こちらの通りです。

低い音は、聞こえているのですが、音が高くなるにつれ、非常に大きく低下し、アラーム系の音だとか、高い音は、一切、感知できないほど、聞こえない状態です。

このようにするともう少しわかりやすくなるかもしれません。低い音は、正常の聞こえの範囲内に入っているのですが、音が高くなるにつれ、急に低下してくる状態になります。

現状ですが、補聴器は、すでにお持ちで聞こえの改善というところに関しては、そこそこ満足されていたものの、電話を扱う際、ハウリングが非常にしやすくて使いづらい。というお困りごとがありました。

電話は、仕事でよく使われ、その際にハウリングがしてしまうと、聞きにくくなってしまいますし、その間に、相手は、聞こえているものだと思って、どんどん話してしまうため、とても慌ててしまう。という状況でした。

この状況、とてもよくわかります。ハウリングは聞こえると非常に鬱陶しいもので、さらに聞こえているとその鬱陶しさから、気が散ったり、それを解消させようと焦ってしまう事もあります。

ちょうど補聴器の年数もそれなりに来ていたため、これを機にハウリングの解消と聞こえの改善。そこの部分をもう少し良くしたい。という事で、お越しいただく事になります。

という事で、この状況を改善していきます。

補聴器による聞こえの改善ポイント

さて、ここから、このような聴力に対して、できると良い事。知っておけると良い事を

  • 現状と補聴器で補う事の問題点
  • 改善する基本的な考えと補聴器の形状
  • 聞こえを補う量(聞こえの改善数値)

この3つに分けて、記載していきます。

現状と補聴器での問題点

では、まずは、現状について、理解していきましょう。

このような聞こえの方の場合、高い音が聞こえにくい事による聞こえの補いづらさ。というよりも、低い音が聞こえている事による聞こえの補いづらさがあります。

低い音が聞こえていて、高い音が聞こえづらい場合の注意点は、

  • 補聴器を使うと、閉塞感、自分の声が大きく聞こえやすい
  • 不快感を軽減しようとするとハウリングがしやすい
  • 軽減しようとすると、補える音の量も低下しやすい

という点があります。

まず、このような聞こえの方の場合、低い音がよく聞こえていますので、何も考えなしで補聴器を使ってしまうと、自分の声が大きく聞こえたり、閉塞感を非常に感じやすくなってしまいます。

この感覚は、125〜500Hzのところで、60dBの範囲内で聞こえていると感じやすく、聴力が軽いと軽いほど、その感覚は、強くなります。

そして、それを解決するものとして、補聴器を浅く使うようにしたり、

丸で囲んでいるのが、ベントになります。

ベントと呼ばれる穴を補聴器に空けて、不快感を軽減する手法があるのですが、これは、やりすぎてしまうと、ハウリングが起こりやすくなったり、ハウリングで音が出せず、聞こえを補えると良いところまで、音を出す事ができなくなってしまいます。

ハウリングというのは、補聴器から出した音が補聴器が拾い、ピーッとなる現象の事ですが、穴を開けたり、補聴器を浅くつけると、耳をしっかり塞いでいないため、このハウリングが起こりやすくなります。

さらにハウリングが起こってしまうと、ハウリングの音は、非常に鬱陶しく、そして、それを止めようとすると、ハウリングがしない音の音量まで下げざるを得なくなるため、音を補う量が低くなり、聞こえの改善がしくくなる。という問題も同時に起こります。

ですので、このようなケースで、なるべく聞こえを改善していきたい場合は、少し閉塞感や自分の声は、大きくなるかもしれないのですが、なるべく、ハウリングがしないように製作し、聞こえを補えるようにしていく事が大事です。

これが、このような聞こえの方を補う上での注意点と難しい点です。

改善する基本的な考えと補聴器の形状

では、どのように改善していければ良いのか。

それは、なるべく閉塞感、自分の声が大きくなる感覚を抑えつつ、聞こえを補える補聴器の形状を選択する事です。

このような聞こえの方の場合、補聴器の形状の選択肢として、

  • 耳かけ形補聴器なら、RIC補聴器
  • 耳あな形補聴器なら、CIC補聴器

の2つがあります。

この2つは、それぞれの形状において、先ほどの閉塞感、自分の声が大きく聞こえる感覚をまだ抑えやすい形状になります。

実際には、耳あな形補聴器の方が全体的に感じやすく、CIC補聴器にしても、多少感じやすくなってしまうのですが、これよりも大きい耳あな補聴器は、もっと不快感を感じやすくなってしまいますので、仮に耳あな形を選ぶ場合は、こちらがオススメです。

なお、耳かけ形補聴器と耳あな形補聴器の違いは、こちらの通りです。

聞こえの改善効果は、ほとんど変わらず、邪魔になるか、ならないか。そして、閉塞感や自分の声の響きなど、不快に感じやすいものを感じやすいか、感じにくいか。その違いです。

耳あな形補聴器は、耳の中に補聴器を入れているため、メガネやマスクの邪魔になりにくく、電話も、そのまま今まで通り行える。という利点があります。

ただ、耳をしっかり塞ぐため、このような聴力の問題点である不快感。それを感じやすくなります。

耳かけ形補聴器は、耳にかけて使用するため、このような聴力の問題点である不快感。それを全般的に軽減しやすくなります。

ただ、耳の上につけて、使用するため、電話がしづらくなったり、マスクやメガネ、それの邪魔に少しなりやすくなります。

形状に関しては、ご自身が使いやすいものを選べると良いです。

聞こえを補う量(補聴器の調整)

次は、聞こえを改善する部分です。先ほどのものは、補聴器の形状の部分になり、その他、どこまで聞こえを補えると良いか。という改善の部分があります。

そして補聴器の場合、ここの補える量により、聞こえの改善度が決まる傾向があります。ですので、難しい内容にはなるのですが、知っておけると良い部分でもあります。

今現在、補聴器には、補聴器を使用した状態でどのように聞こえているのかを調べられる測定があります。それが、音場閾値測定(おんじょういきち測定)というものです。

それを使ったものでお伝えしますと、このような聞こえの方で補えると良いのは、このぐらいになります。

この数値は、正常の聞こえの範囲と比べるとこのようになります。そこに近づけられると良いのですが、中には、近づける量として難しいものもありますので、それを加味するとこのぐらいになります。

いくつかポイントを記載しますと、音声の部分は、500〜2000Hzが強く影響しますので、この辺りは、35〜40dBまで補えると良いです。

大事になってくるのは、35dBで、ここまで改善できると普通の人の声から、ちょっと声の小さい方。離れたところから呼ばれた声、お話。そういったものがだいぶわかりやすくなる数値です。

ですので、もし改善できるのでしたら、ここまで改善できると良いです。が、聴力低下が大きいので、そこまでは、仮にできる方は、という条件付きになります。

あとは、高い音の部分です。この部分は、アラーム系の音、さらに音声の明瞭性。離れたところから呼ばれた際の気づきやすさ。そういったところに影響しますので、ここも、できればこのぐらいまで改善できると良いです。

ただ、この部分は、ちょっと注意が必要です。というのもこういった聞こえというのは、聴力の底が補えるか、補えないかで、改善の仕方が少し変わります。

聴力の底とは、聴力(オージオグラム )で表現すると、この部分になります。

補えるかどうか、というのは、人によっては、聴力の底の部分は、入れると、かなり不快に感じることがあるためです。

佐藤さんの場合は、音を入れても大丈夫でしたので、入れることになるのですが、仮に聴力の底の部分に関して、入れると音が辛く感じてしまう方の場合は、ほどほどに補う事が大事です。

あくまでも、私の感覚的なものですが、生まれつき高い音が聞こえにくい方の場合は、補える事が多く、病気によって、聴力低下してしまったは、補うと、不快感が強くなる傾向を感じています。

佐藤さんの場合は、生まれつきの難聴になり、かつ、元々の補聴器でも、しっかり補っており、高い音に関して、辛く感じたことは、経験した事がない。とおっしゃっていましたので、今回の改善でも、しっかり補っていくことになります。

実際の改善

さて、実際の改善です。

こちらに関しては、実際に行っていった事を中心に記載していきます。

結論からいいますと、補聴器の形状は、CIC補聴器で改善していきました。

元々、カナル形のタイプで使っていたのですが、こちらで使っている理由も、特に理由はありませんでした。であれば、不快感をより軽減し、聞こえの改善を重視していく事を考え、CIC補聴器にしました。

なお、耳あな形補聴器にしていた理由は、電話での改善、しやすさを考えた上での事です。

また、CIC補聴器だと、耳の奥に入れる事ができるため、電話がよりしやすい。という特徴もあります。それも考えて、こちらの形状を選択しました。

問題のハウリングに関してですが、今現在、ハウリングキャンセラーというものがあり、それで抑え、ハウリングがしないよう、そして、閉塞感も少し軽減するため、ベントと呼ばれる穴も少しだけ設けました。

その結果、ハウリングに関しては、なくなり、電話をする際に今まで感じていた鬱陶しいハウリングは、聞こえなくなりました。

実際の聞こえの改善度に関しては、こちらの通りです。

目標の部分と比較すると、無事、目標の部分まで、聞こえを改善する事ができました。

はじめ補聴器をつけた時ですが、その時から、聞こえの改善はしやすく、あとは、細かい部分を確認しつつ、少しずつ、聞こえの改善に関して重ねていき、より良くできるようにさせていただきました。

その結果、ここまで聞こえを改善する事ができました。

若干、目標値より上の部分になっているところはあるのですが、それでもハウリングはしておらず、かつ、音が強いということもない状況でした。

このようにして、聞こえの改善にプラスして、従来気になっていたハウリングに関しても、止める事ができました。

お客様の改善と声

  • 種類:CIC補聴器(小型の耳あな形補聴器)
  • 金額:770,000円(税込)
  • 備考:両耳にCIC補聴器をつけ、改善
  • 制度:自立支援法による差額購入(補聴器助成制度)

どの様な事でお悩みでしたか

実際に補聴器を使い、どう生活は、変わりましたか

実際にこのお店で相談されてみて、いかがでしたか

実際のアンケート

アンケートのご記入、誠にありがとうございました。

まとめ

今回は、高い音が聞こえづらい方の聞こえの改善事例を記載してみました。

高い音が聞こえづらい方の中でも、だいぶ重度で、聞こえにくさを改善するのが、難しいケースの一つなのですが、そのケースを改善する基本思考に関して、まとめてみました。

大事な事は、欠点である閉塞感、自分の声が大きくなる感覚。いわゆる不快感に繋がるものを軽減し、補えると良いところまで、聞こえを改善する事です。

実際には、私一人の力ではなく、佐藤様も私のことを信用してくださり、私と佐藤様、お互いにより良くしていけるような環境、相談の仕方ができたことから改善できた事ですが、このような聞こえの方の改善に関して、まとめさせていただきました。

もし、同じような聞こえの方でお悩みの方がいらっしゃいましたら、こちらの内容を参考にしていただければと思います。

最後まで、ご覧いただきまして、ありがとうございました。

ABOUT ME
深井 順一|パートナーズ補聴器
深井 順一|パートナーズ補聴器
補聴器を使っている人が対応している補聴器専門店・代表
補聴器のお店には珍しい難聴の補聴器販売員です。生まれつきの難聴者で7歳の頃から補聴器を使っています。お客様からは「補聴器を使って良かったです。これから明るく生活できます」「日常生活がスムーズになった」「人に聞き返すことが減り、コミュニケーションに対するストレスが軽くなった」と評価いただくことが多いです。
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