左右の聴力が異なる耳を補聴器で改善する【後編】〜バイクロスver〜
前回は、左右の聴力が異なる耳を補聴器で改善する。という事で、基本となる改善の考え方、改善案について、記載させていただきました。
今回は、その後編となり、主にバイクロス補聴器で聞こえを改善していく場合の改善内容となります。
こちらでは、バイクロス補聴器で改善していくにあたり、
- バイクロス補聴器の形状選定
- バイクロス補聴器の音の調整
の2つに関して、主に記載していきます。
バイクロス補聴器の場合は、主にこの2つにより、使いやすさ、そして、聞こえの改善度が決まります。
ご自身にとって、使いやすい形状を選び、なるべく聞こえにくさも改善できるようにしていきましょう。
前編:左右の聴力が異なる耳を補聴器で改善する【前編】〜聞こえの改善案〜
バイクロス補聴器の形状選定
まずは、形の選定です。
バイクロス補聴器というと、かなり特殊な補聴器のように感じますが、形は、いたって普通の補聴器と同じです。
こちらも、一般的な補聴器と同じく、主に
- 耳かけ形補聴器
- 耳あな形補聴器
の2つのタイプがあります。
それぞれ、使いやすさが異なりますので、ご自身が使いやすいと思う方を選べると良いです。
耳かけ形のバイクロス補聴器
耳かけ形の特徴は、耳に装用した時の不快感。自分の声の不快感が少ない事です。
バイクロス補聴器を装用する場合、聞こえる耳側に補聴器をつける事になるのですが、聞こえの良い耳側は、だいたい聴力が良い事が多く、このような聞こえである事が多いです。
仮に低い音の聞こえが良い場合、その事により、自分の声が低く響いたり、こもって聞こえる不快感を感じやすくなります。
この不快感の軽減は、今のところ、全補聴器の形状の中で、耳かけ形補聴器が一番軽減しやすく、この部分を軽減しやすくなると、補聴器の使いやすさを上げやすくなります。
これが利点です。
逆に欠点は、耳にかけて使うため、マスクやメガネを使っている方は、人によっては、邪魔に感じてしまう事です。
この点は、使い方さえ理解すれば問題なく使える方もいるのですが、中には、気になる方もいます。そのような場合は、耳あな形補聴器の方が使いやすいです。
また、電話をする際は、音を拾うマイクが上にありますので、上に受話器をずらして行う必要があります。
この点は、問題なくできる方もいるのですが、電話を取る数が頻繁にある。という場合や受話器を上にずらして行うこと自体が面倒に感じたり、煩わしい場合は、耳あな形補聴器の方が使いやすくなります。
これらの事から、耳かけ形補聴器は、補聴器を使う感覚が楽なものが良かったり、初めて補聴器を使う方にオススメの形状になります。
耳あな形のバイクロス補聴器
この形状の特徴は、ものの邪魔にならない事です。
耳の穴の中に入っているため、メガネだとか、マスク。こういったものの邪魔になりません。
さらに耳の中に直接入っているため、今まで通り、電話ができる。という利点もあります。
これが、主な利点になります。
逆に欠点は、耳を割と強く塞ぐため、自分の声が大きく聞こえたり、低く唸るように聞こえやすい事です。
自分の声が不快に聞こえる感覚は、強いと違和感が強くなり、補聴器の使いづらさが強くなってしまいますので、なければないに越したことはありません。
その事から、邪魔にならない補聴器が良い。電話がしやすい補聴器が良い。という方にオススメなのが、この耳あな形になります。
バイクロス補聴器の音の調整
次は、補聴器の調整になります。
補聴器の調整とは、低下した聴力の部分に音を入れて、聞こえを改善していく部分となります。
ここは、非常に難しい部分ではあるのですが、なるべく簡単にお伝えしていきます。
改善前の下準備
まずはじめに記載していくのは、改善前の下準備として、聞こえの改善状況については、できれば、把握できるようにしておく事です。
補聴器は、耳に装用するだけでは、どんな風に音を感じるのか。はわかっても、どのぐらい聞こえが改善されているのか。自分の聴力から補えると良いところまで改善できているのかは、わかりません。
今現在、改善状況を把握しやすいものとしては、
- 補聴器の調整画面
- 補聴器の効果測定
の2つがあります。
補聴器の調整画面
一つ目は、補聴器の調整画面です。
今現在、補聴器は、パソコンとつないで補聴器を調整していくのですが、その画面には、現状の改善値と改善目標値を出してくれます。
そのおかげで今現在、どのような改善状況なのか。を把握しやすくしてくれています。
補聴器の効果測定(音場閾値測定)
もう一つは、補聴器の効果測定になります。
音場閾値測定(おんじょういきち測定)といい、ちょっと難しそうな名前ですが、これは、補聴器を装用した状態で調べる聴力検査のようなものです。
これで今現在の聞こえの状況を調べ、さらに改善目標の値をセルフで出し(お店側で出しています)、現状を把握しやすくできると、状況を把握しやすくなります。
2つに共通するポイント
どちらもポイントは、今現在、どこまで改善できているのか。そして、どこまで改善できると良いかを把握しやすくなる事です。
補聴器は、残念ながら耳を治すことはできないため、ちゃんと把握できる状態にしておかないと、どこまで補聴器で改善できると良いのか。がわかりません。
できる範囲で可能な限り改善していくためには、下準備として、現状を把握できる環境を整える事が何よりも大事なこととなります。
音場閾値測定での改善目標値
ここからは、改善のヒントとして、音場閾値測定での改善目標値について、記載していきます。
まず、音声に関してですが、だいたい500〜2000Hzあたりが大きく関係しますので、できればですが、このあたりは、35dBぐらいまでは、改善できると良いです。
ただ、一つだけ注意点があり、500〜2000Hzは、紙の音の基本周波数になりますので、あまりにも上げすぎると新聞紙の音や紙をめくる時の音が大きくなってしまいます。
ですので、あくまでも補聴器が使える範囲内で音を調整する事が大事になります。
この部分が改善できると、対面でのお話のしやすさ、さらに呼びかけられた際に気付いたりする事が上がりやすくなります。
次は、高い音の部分です。
2000〜4000Hzに関しては、これもまた35dBぐらいまで改善できると、聞きにくさを改善しやすくなります。
この辺りは、アラーム系の音や離れたところからの音などが大きく影響します。
バイクロス補聴器を使う方の場合、特に離れているところからの音は、気がつかない事が多いため、ここもできるのであれば、ここまで改善できると良いです。
ここまで改善できると、聞こえなくて反応できていなかったところも反応しやすくなり、周囲の方とのコミュニケーションの改善に繋がったり、周囲の状況がよりわかりやすくなります。
ただ、このあたりは大きくしすぎると、音が響きすぎてしまったり、音がキンキンして使いづらくなる事があります。
こちらもあくまでも、ご自身が使える範囲内で調整し、聞こえの改善をしていけると良いですね。
バイクロス補聴器の場合は、補聴器をつけている側の聞こえが全てです。
聞こえない耳側につけているクロス側の音を調整する事は、ほとんどなく、聞こえている耳側につけている補聴器側の聞こえが全てですので、改善できるところは、改善していきましょう。
その改善量が大きくなれば、大きくなるほど、聞こえていない側の聞こえも、同じように改善されます。
ただし、あまりにも音を大きくすると、逆に聞こえすぎてしまうこともありますので、バランスが大事なります。
改善できるところは、改善して、なるべく聞こえない耳側からの音や音声。そういったものもわかるようにできると、それだけ、聞きにくさは、減らす事ができます。
左右の聴力が異なる方の実際の改善事例
ここからは、実際の改善事例に関して、記載していきます。
左右の聴力が異なるケースは、実に様々なケースがあるため、実際には、耳の状況により、改善が異なります。
異なる難聴で聞きにくくなった方(初めて)
- 補聴器:初めて
- 改善:バイクロス補聴器
- 備考:聴力低下した側が補聴器では、効果が得られず
ご相談される前は、どのような事でお悩みでしたか
実際に補聴器をお使いになってみて、いかがでしょうか
他にも似たような販売店があったのに関わらず、当店で購入された理由は、何でしょうか?
実際のアンケート内容
両耳とも生まれつき感音性難聴の方①(買替え)
- 補聴器:買換え(他店で補聴器を購入)
- 改善:バイクロス補聴器
- 備考:聴力低下した側が補聴器では、効果が得られず
ご相談前は、どのような事でお悩みでしたか
実際に補聴器をお使いになってみて、いかがでしょうか
他にも似たような販売店があったのに関わらず、当店で購入された理由は、何でしょうか?
実際のアンケート
原因不明の感音性難聴の方②(買替え)
- 補聴器:買換え(他店で補聴器を購入)
- 改善:バイクロス補聴器
- 備考:低下が大きい側(左側)は、どうにも補聴器に慣れず
ご相談前は、どのような事でお悩みでしたか
実際に補聴器をお使いになってみて、いかがでしょうか
他にも似たような販売店があったのに関わらず、当店で購入された理由は、何でしょうか?
実際のアンケート
この他のケースについて
こちら以外に関しては、
にも、まとめています。
まとめ
こちらでは、バイクロス補聴器でどう改善していくと良いか。というところについて、まとめてみました。
バイクロス補聴器というと、かなり特殊な補聴器のイメージがありますが、基本的には、一般的な補聴器と、ほとんど同じものとなります。
補聴器の形の部分に関しては、ご自身が使いやすい形のものを選んでいただき、補聴器の音の調節に関しては、できる範囲内で構いませんので、ご自身の聴力から補えると良い部分まで、補うようにして、改善できると良いです。
バイクロス補聴器での音の調整は、そのまま聞こえている耳側も、聞こえていない側の耳側にも、影響しますので、補聴器の音の調整により、ほぼ聞こえが決まるといっても過言ではありません。
そのため、できる範囲内で改善できると、それだけ、特に聞こえにくい耳側からの音や呼びかけ、お話。そういったものがわかりやすくなります。
ただ、あまりにも大きくしすぎると補聴器を使うこと自体が辛くなってしまうケースもありますので、あくまでも、できる範囲内に留めておく事が大事です。
左右の聴力が異なる方の場合、特に聞こえにくい側からの音や音声。それがわかりづらくなりますので、その点を重点に改善できるようにしましょう。
以上、バイクロス補聴器による聞こえの改善でした。