【以前の補聴器より聞きやすく】左右で聴力が異なる方、補聴器で改善しました
補聴器をすでにお持ちで、両耳に補聴器を使用中の方、右側からの聞こえが悪く、より聞きにくさを改善できないか。とのことで、ご相談にこられました。
当店で確認したところ、まだ改善できる余地があったため、新しい補聴器にて、改善を行ないました。結果
- より聞きやすくなった
- 左右のバランスは良くなった
- 静かなところから少し騒がしいくらいならより聞きやすくなった
とのことでした。聞きにくさが少しでも改善でき何よりです。
では、どのように改善させていったのでしょうか。その点に関して記載していきます。
お客様の状態
お客様の状況ですが、
- お名前:H・Kさん
- 性別:女性
- 年齢:50代
- 聴力:左側、軽度難聴、右側、軽・中等度難聴
- 症状:年齢による難聴(左)と原因不明の難聴(右)
- 備考:他店で補聴器を購入するものの、あまりうまく行かず
という状況でした。聴力に関しては
このようになります。補聴器はかれこれ数年前に使用したようですが、当時から、あまり聞こえがよくなく、他の補聴器販売店に行ったり、大きい病院で見てもらい、そこで紹介してもらった販売店で相談するものの、あまり状況は改善されなかったようでした。
今現在の状況ですが、聞こえにくい右側からの音声がわかりづらく、少しでも聞きにくいと焦ってしまうようで、わかりづらい状況になってしまうと、すぐに困ってしまう状況とのことでした。
ということで、状況を確認し、改善できるなら、より改善していくことに。
状況の確認と改善への考え
さて、状況を改善させる場合、そもそもの部分として、現状がどうなのか。と、確認する必要があります。ということで、それぞれ耳の状況、補聴器の状況を確認していきます。
現状を調べてみて
まず、聴力は、上記の通りです。かつ、耳には、音声を理解する力という部分があるのですが、
それは、こちらの通りでした。左側に比べると少し右側は、低いようですが、補聴器の適性である50%以上ですので、補聴器の適合があることがわかりました。
そして、補聴器を装用した状態を確認すると上記のような状況でした。左右の聞こえが異なる場合は、片方ずつ調べ(片側は、耳を塞ぎながらやります)、現状がどうなのかを調べます。左側は、しっかり改善できていますね。しかし、お話の通り、右側の改善値が低い状態です。
右側の場合、適切に補聴器で改善させているとしたら聴力的にこのくらいまで改善していてもおかしくはないのですが、それよりも低い数値になっています。つまり、ここが聞こえにくさの原因になっていた訳ですね。
改善への考え
さて、原因が分かれば、あとは、実際に改善してみることです。実際にこのような状況の場合、実際に補聴器で改善させてみて効果がちゃんと出るかどうか。を、確認しつつ、で改善していきます。
まず、合うか合わないかの部分は別にしまして、補い方としては、
- 補聴器を両耳装用して、より良くさせる
- バイクロス補聴器で良くさせる
の2つがあります。バイクロス補聴器とは、
聞こえを補える耳側は、補聴器で補い、補えないような耳の状況であれば、その耳で音を聞くのではなく、聞こえを補える耳側で音を聞く補聴器です。
少しわかりづらいかと思うのですが、片方は、補聴器として機能し、もう片方は、音を転送する機器として機能します。そのようにすることで、仮に片耳が補えない場合でも反対側からくる音を理解することができます。
そして、ここからが重要ですが、H・Kさんの場合、両耳とも聴力差が大きい部分はあるのですが、まだ補聴器で補える範囲内でしたので、実際にやってみて、ちゃんと補えるのであれば、補聴器。残念ながら補聴器で補ったとしても効果が限定的なのであれば、バイクロス補聴器。と考えていくことにしました。
バイクロス補聴器と一般的な補聴器では、どちらが効果が高いかと言われれば、耳の状況により異なります。仮に補聴器で両方とも補えるのであれば、確実に補聴器の方になります。バイクロスは、片耳で全ての音を理解するため、音の方向感覚は得られず、かつ、騒がしいところでの聞き取りも、両耳装用に比べれば、低下してしまいます。
聴力差があるケースは、大抵の場合において、別々の原因により、聴力低下したり、耳の症状があったりしますので、実際に補聴器で改善させてみて効果がどのように出るのかを確認しないと、過ちをしやすくなってしまいます。
実際の改善
こちらに関しては、実際に行なった改善に関して
- 初めの対応
- バイクロス補聴器と補聴器
- 最終調整と形状
の3つに分けて記載していきます。
初めの対応
さて、現状がわかったことで、状況についてご説明。はじめ、こちらに来られた理由は、バイクロスなるものがあると聞いて、もしかしたら、現状をより良くできるのではないか。とお考えになったとのことでした。
そのため、耳と補聴器の現状をお伝えしつつ、補聴器の方が改善できる可能性が高いことをお伝え。その後、実際に、補聴器とバイクロスで比較もしてみることにしました。
はじめに、改善の可能性が高い補聴器で補ってみることにしたのですが、補聴器の状況は、このようにしました。高い音に関しても入れてみたのですが、2000Hz以降は、あまり改善できず。それでも、バランスよく聞こえるようにはなり、感覚としては、より良い状況のようでした。
調整後、実際に日常生活上〜職場まで、普段の環境で使用していただくため、補聴器を幾日か貸出し。使用してみると
- 右からの音が聞こえにくいという感覚は、大きく軽減された
- バランスよく聞こえるようになった
- 静かなところ〜少し騒がしいところくらいなら聞こえることが結構、増えた
とのことで、さらに改善を行なっていくことになります。
バイクロスと補聴器
左右のバランスを整えると聞こえが良くなることがわかった段階で、次は、バイクロス補聴器も試してみることに。仮説としては、片耳のみに音が全部入るため、静かなところでの聞こえは、良いかもしれませんが、それ以外のところは、結構、悪くなるかもしれない。と思いました。
実際にバイクロス補聴器を調整し、補聴器の効果をみてみると、上記のような状態でした。補聴器に比べると少し低下しており、聞こえに関しては、それほど良い感覚は、感じないとのことでした。
実際に改善できていることから、より両耳装用で改善させていくことになります。
最終調整と形状
補聴器の調整を行なっていき、最終的には、
このような状態になりました。左右とも聴力が異なる場合は、優先的に左右のバランスを考えながら、整えながら行なっていきます。左側の聞こえは良いため、さらに良くなり、右側も少し底上げしました。
しかし、いかせん2000Hz以降がどう調整しても上がらない状況でした。実際には、あげても改善しないケースというのはあるのですが、そのような場合、必要以上に音を大きくしても仕方がありませんので、そのまま使うことになりました。
基本的に音声の聞きやすさに影響しやすいのは、体感的に
- 500Hz
- 750Hz
- 1000Hz
- 1500Hz
- 2000Hz
の5つになります。これらの部分が、ある程度、全体的に改善できているため、以前の補聴器より、聞きやすくなったとのことでした。
ということで、調整に関しては、一旦、ここまでとなります。
なお、補聴器の形状に関しては、耳かけ形のRICというものに決めました。
形状としては、このようなものですね。
はじめに候補としては、上記の通りです。耳にかけるものから、耳の中に入れて使うものがあります。
はじめに耳かけ形の補聴器で試聴からスタートしたのですが、その補聴器を使っていて、使いやすかった事、実際に聞こえの方も改善できた事、その2点より、耳かけ形のRICというものにしました。
そして性能の部分もあるのですが、こちらもH・Kさんと相談して、実際に試聴しつつ、決めていきました。
お客様の声
実際に改善を行なったお客様より、声をいただきました。
どのようなことでお困りでしたか?
実際にお店に来られ、対応を受けていかがでしょうか?
このお店でご相談(購入)したのは、なぜでしょうか?
実際のアンケート
ご協力いただきましてありがとうございます。
改善のポイント
両耳とも聴力が異なる場合、確認すべきところは
- 補聴器で改善できる範囲内なのか
- 実際にやってみて検証する
の2つです。
補聴器で改善できる範囲内なのか
まず、考えるべきところは、左右の聴力差になります。これは、15〜20dBくらいまでであれば、両耳に補聴器を装用して、補えることが多いです(明瞭度が悪い場合は、その限りではありません)。左右のバランスを整えながら、調整する必要はあるのですが、まだ補いやすい部類になります。
しかし、40〜50dBなど、かなり大きい場合は、両耳でバランスよく補うことや聞こえが大きく低下した耳側を補う事が難しくなりますので、バイクロスで、まだ聞きやすい耳側で聞こえが大きく低下している側の音を取れるようにし、改善した方が良かったりはします。
そして、仮に補聴器で補える範囲内だったとしても、実際に補聴器を装用しつつ、どのくらい補えるのか。そして、実際にバランスよく入れることはできるのか。左右別々に聞こえの効果を確認しながら、行うことが重要になります。
その際のキーポイントは、どのように音を入れるかではなく、本当に聞こえが改善できているのかを数値でちゃんと確認することです。H・Kさんが悪いわけではないのですが、他の販売店と私の差は、確認したか、しなかったかの差であり、確認していれば、聞こえが改善できていないことがすぐにわかったことでしょう。
このようにして、実際に補聴器で改善できる範囲なのかを確認しながらやっていく必要があります。
実際にやってみて検証する(調べる)
左右とも聴力が異なるケースに限らず、一部の難聴は、補聴器を装用しても、うまく効果が出ないことがあります。H・Kさんもそうでしたが、補聴器を繰り返し調整しても、2000Hz以上の高い音は、聞きにくい右側は、効果が薄くかった状態でした。
このように実際に改善してみてわかることもあります。そして、実際に改善させた後に、改めて補聴器の効果に関して整理し、どのような選択肢があるか、という部分から最良の方法を選べると良いですね。
仮に補ってみたけれども全体的に補聴器での効果が右側は上がらなかった。ということがわかったら、バイクロス補聴器の方が良いということがわかるようになります。
本当はやる前から、全部の効果がわかっていれば良いのですが、残念ながら耳の場合、やってみた後にわかることが多いため、改善については、やりながら全体的に考えていく必要があります。時には、振り出しに戻って、改善を考えることもあります。
左右とも聴力差があるケースの改善例のまとめ
このようなケースは、基本的に、ちゃんと補聴器で補えているのか。という部分を左右別に確認しながら行なっていけると、聞こえを補えていないことがわかった段階で、早めに軌道修正ができます。そして、改善が足りていないのであれば、付け足してみることで、改善するのか。という部分も確認できます。
左右とも聴力が異なるケースは、左右とも難聴になった経緯が異なることがあり、特殊なケースも多々見ます。少し異なる程度であれば、同じ難聴であることもあるのですが、大きく(20dB以上離れているケース)離れている場合は、難聴の経緯も異なる確率が増えます。
どのような場合においても、改善をしてみて、どのような状態なのか。その部分を確認しながら行なっていけると、聞こえにくさの改善は、しやすくなります。
少し時間がかかってしまうのは、申し訳ないのですが、特殊なケースは、どうしても確認しながら出ないと、誤った答えを出しやすくなります。
ということで、こちらの内容がお役に立てば幸いです。