補聴器で聞こえを改善するための調整の基礎、PDCA編
先日、お客様の症例に関して、久々に書いてみたのですが、改めて、書いてみると、自分自身、学べる事がありますね。
文字にする。もしくは、言葉にする。というのは、自分自身でしっかり理解できていないと出せないため、自分自身の頭の体操、または、思考にも立ちます。
さて、先日書いた内容ですが、ちょっと抜けていた部分がありますので、その部分に関して、補足をしていきたいと思います。
それは、補聴器で聞こえを改善する際に行う調整の基本となるPDCAに関してですね。
前回の内容は、当たり前の様に、思考や行った事のみ書いてしまったので、自然すぎてスルーしてしまったのですが、補聴器で聞こえを改善する際、このPDCAの考えが非常に重要になってきます。
聞こえを改善する調整のPDCAとは?
PDCAとは、聞いた事がある方も多いと思うのですが、
- P:Plan(策を考える)
- D:Do(行う)
- C:Check(確認する)
- A:Act(Action)(より改善するには?)
の4つの頭文字を取ったものです。Aの部分は、Actと呼ばれたり、actionと呼ばれたりしており、正直、どちらが正しいのか、わかりませんが、より改善するには?というニュアンスで理解していただければと思います。
こちらを補聴器の内容に当てはめると
- P:改善案を考える
- D:改善案の通りにやってみる
- C:結果がどうだったのかを確認する
- A:その内容からより改善するには?
となります。
PとAに関しては、重なっている気がしますが、PからAまできたら、その次は、その内容を踏まえて、D、Cと続き、また、A…と繋げていければ良いです。
PDCAは、あくまでも手段になるため、初めに目標を作る必要があるのですが、目標は、私の場合、聞こえの改善度は、数値にして、補聴器を使用した感覚は、使える範囲内にする。と考えて、このPDCAを回しています。
特に目標となる聞こえの改善度は、数値にする事が大事です。
その理由は、
- 感覚だけでは、評価が非常に難しい
- 耳は、治らないため、感覚での評価は、難しい
の2つです。
感覚だけでは評価が非常に難しい
よくあるのが、補聴器の評価を感覚で評価してしまう事です。
これ自体も大切な事ではあるのですが、感覚のみで評価をしてしまうと、自分自身がどこまで聞こえていて、どこまで改善できており、さらに、その改善度は、自分が補聴器を付ける際に望ましいところまで改善されているのか。の評価は、残念ながらかなり難しいくなります。
私自身も自分が難聴なので、よくわかるのですが、補聴器をつけても、補聴器から聞こえてくる音の感覚こそわかるものの、自分が一般的な人と比べて、どこまで補聴器で聞こえる様になっているのか。さらに、自分の聴力に対して、補えると良いところまで、補えているのかは、感覚で、判断する事は、できませんでした。
その経験から、私の場合は、自分の感覚よりも、数値でしっかり把握する様にしているのですが、感覚は、どこまで改善されているのか。そして、自分の聴力に対して、補えていると良いところまで、補えているのかの判断は、かなり難しくなります。
耳は、治らないため、感覚での評価は、難しい
感覚で評価する事のもう一つの難しい点は、ゴールがある様でない事です。
というのも補聴器を装用する方からすれば、聞こえを改善する。が、ゴールになる訳ですが、残念ながら、今現在、補聴器を装用しても、耳が治る訳ではありません。
自分自身が聞こえにくくて悩んでいるところが全て改善される。聞きにくいところ、全てが改善される。というのは、7〜8割くらいは可能(聴力によりますが)でも、全て完璧に改善するというのは、残念ながら耳が治らない以上、目指せないゴールになります。
目指せないゴールを目指すというのは、ゴールテープがないマラソンの様なものであり、迷いに迷って、疲れ果てて終了。という事が非常に多くなってしまいます。
どうしても、補聴器以上の事は、できないため、ここを感覚で評価すると、目指せないゴールを目指すことになり、相談がうまくできなくなってしまったり、迷宮入りしやすくなり、補聴器を使っている人、そして、補聴器を調整している人、お互いにとって、あまり良くない関係になってしまう訳ですね。
変えられるところで改善の基盤を作り、できる限りの改善をする
ここまで書くと何やら消極的の様に思えますが、そうでは、ないんですね。
大切なのは、変えられるところと変えられないところを意識し、変えられるところをしっかりと改善していく事になります。
それにより、現状をよくする事は、可能だからです。
補聴器で耳が治らない以上、考えなければならないのは、変えられるところと変えられないところを認識する事です。
これは、できる事とできない事を意識する。といえば、わかりやすいかもしれません。
例えば、耳を治す。は、できないけれども、今現在の状況より、聞こえをより良くする事は、できる。
聞こえに関係する全ての悩みを失くす事は、できないけれども、補聴器で、自分の聴力で改善できると良い部分まで、改善させる事で、悩みを減らす事は、できる。
そのために大事になってくるのは、変えられるところ(補聴器での改善)で、しっかりと目標を作り、なるべく改善できるところは、改善する仕組みを作る事になります。
できる事とできない事があるからこそ、しっかりと改善できるところは、改善させ、できる限り、よくしていく。という考えが、大事になってきます。
もちろん、この考えは、補聴器で耳を治す事はできないから。という理由で、補聴器の調整は適当でいい。という訳でもないことも理由の一つになります。
目標を作りゴールを目指す
そのために必要になってくるのが、
- 数値で目標を作る事
- PDCAサイクルを回す(作る)事
の2つです。
まず、PDCAをうまく起動させるには、目標を作ることです。それもできるのであれば、数値である事が望ましいですね。
目標を立てなかったり、どの様な状態になればいい状態なのか。それがないと、そもそもそどこまで改善すれば良いのか。そして、今の現状は、良いのか、悪いのか。の判断ができなくなってしまうため、PDCAは、うまく機能しません。
うまく機能させるには、できるだけ目標を曖昧にせず、数値にする事で、どこまで改善したら良いかを測定機器で確認できる様にし(客観評価と言います)、そして、その数値と主観評価。
例えば、補聴器を使ってみて、使いづらいところは、ないか、耳が痛くなる感覚は、ないか。補聴器から聞こえてくる音が、違和感が強すぎて、不快な感覚は、ないか。など、数値だけでは把握できない補聴器を使った感覚を評価します。
目標に向かって、行動してみて、結果や状況は、どうなのか。それを確認しつつ、一つ一つ、良い状態へ向かっていく。
その確認と実行が、PDCAになります。人によっては、トライアンドエラーとも言いますね。
そうする事で、補聴器でできる限り、良い状態にしていくことが可能になります。
これは、あくまでも私自身の考えではありますが、改善がしっかりしている方々(改善がしっかりしている補聴器調整者)は、おおよそ、その人なりの
- 目標を作る(使用者のゴールを作るorあるべき姿を描く)
- 改善するためのサイクルを回す
という事をしています。
表現の方法は、人それぞれだとは、思いますが、それを感じます。私の場合は、こんな感じでやっています。
前回紹介したM・Nさんのケース(【快適に聞きやすく】老人性難聴の方、補聴器で改善しました)もそうです。
ちゃんと目標を作り、そして、それに合わせて、PDCAを回して、改善する。その結果、より良くすることができました。
次は、実際にこのPDCAをどう活用したのか、書いてみたいと思います。
その方がわかりやすいですよね。ただ、概念やどの様にして改善するかの理論がわからないと、なぜそんな事をしているのかがわからなくなってしまいますので、今回は、こちらの方を先に書いてみました。