補聴器の効果を見る語音明瞭度測定の基本
語音明瞭度測定には、補聴器を考える前に耳の状態を理解する測定と、補聴器装用後の効果を見るための測定の2つがあります。こちらの内容は、後者になります。
補聴器の効果の確認には、音場閾値測定とこの語音明瞭度測定があります。補聴器の効果を知る一種の測定ですので、どのように効果を確認するのか。そして、どのような状況であれば、良いと言えるのか。それについて見ていきましょう。
なお、この測定は、あくまでも軽度~中等度難聴、一部高度難聴(70dB付近くらいまで)の方までが対象です。重い高度~重度難聴までいくと補聴器を装用しても、補える部分に限りがあり、この数値は、低いままになります。その場合は、測定してもあまり参考になりませんので、ご注意ください。
補聴器の効果を確認する語音明瞭度
基本的なやり方は、耳の状態を調べる語音明瞭度測定と同じです。音声を流し、それを聞こえた通りに紙に記載する。このような流れになります。
このような部屋で
今度は、スピーカーから音声を流し
聞こえた通りに紙に記載します。
そして、採点し、どのくらい理解できていたのか。それを調べます。
数値の意味は、この通りです。
音声の音量に関しては、上記の通りです。この数値と明瞭度の%の意味がわかれば、補聴器を装用して、どのような状態なのか。それがわかります。
例えば、こちらは私が自分の補聴器を装用して行なった語音明瞭度測定になりますが、普通の会話音60dBでおおよそ95%理解できることがわかります。少し離れたところの音声50dBの数値では、おおよそ95%理解できると把握することができます。
このような測定が、補聴器を装用した状態の語音明瞭度測定になります。まさに補聴器を装用してどうなのか。それを可視化するのが、この測定です。
補聴器の効果の判断基準
この測定を活用して、補聴器の効果を見る判断基準ですが
- 補聴器なしで調べた語音明瞭度の数値
- 補聴器ありで調べた語音明瞭度の数値
の2つを比べ、同じ音量で測定した際、10%を超えてマイナスにならない限りは、適切と判断されます。15%を超えてマイナスになる場合は、不適切とかんがえていきます。この測定は、この2つを比較することにより、良し悪しを決める測定です。
言葉ではわかりにくいので、まず聴覚医学会の補聴器適合指針を見て見ましょう。聴覚医学会とは、補聴器を専門とする医師の会で、補聴器に関して様々な研究をしている専門機関です。
3)評価方法
補聴器装用時の音場語音明瞭度曲線において、各検査音圧での明瞭度は小さめの音圧から70dBまたは、80dBまでの広い範囲で良好であること、また音圧の上昇とともに明瞭度が低下する現象がないことが好ましい。また検査範囲内での補聴器装用時の最良の語音明瞭度が非装用時の値より15%以上低下してれば、適合不十分であると判定する。
評価例(図2)
適合例では、補聴器装用時に置いて小さめの検査音圧でも明瞭度が著しく改善しており、検査音圧の広い範囲で80%以上の明瞭度が得られ、また検査範囲内での最良の語音明瞭度が非装用時ものと比べて同等であることから、十分な補聴効果が認められると判定する。
適合不十分例では、補聴器装用時において各検査の音圧明瞭度は、50dBHLと60dBHLでは、非装用時よりも改善しているが、70dBHLでは悪化しており、また検査範囲内での最良の語音明瞭度は、非装用時よりも15%低下していることから、この補聴器は十分には適合していないと判断する。
上記の図には、適切な例と不適切な例があります。少々分かりにくいのですが、補聴器なしの状態で測定した数値より補聴器を装用した方が、なぜか下がっている音量の部分があります(70dBのところですね)。このような場合は、不適切です。
逆にいい例は、適合例のように50~70dBの部分が明瞭度の最良値(補聴器なしの状態で一番いい明瞭度の値のこと)まで改善することです。ここまでくれば、結果は、かなり良いとされます。
50~70dBがそのあたりまでくるのが良い理由ですが、上記の図のように音声の大半がそこに集中するためです。その部分が良くなれば、自ずと補聴器の効果も高くなります。
補聴器の効果が出やすい方は、適合例のようになりやすく、50~70dBの音量でも明瞭度の最良値、あるいは、その付近まで改善します。
私自身の補聴器も同様の効果が出ていますね。
しかし、難しい方は、少し良くなる程度にしかならないことが多いです。
この測定の注意点
こちらの測定の注意点ですが、
- あくまでも補聴器の適合検査の一環
- 語音明瞭度測定の結果が低い場合は、行わないこともある
の2つです。
あくまでも補聴器の適合検査の一環
こちらは、あくまでも補聴器適合検査の一環です。調べる環境は、ほとんど音がない静かな中で行います。こちらの数値が良い場合は、それなりに補聴器で効果を得られますが、だからと言って、常にその正解率のまま聞こえるわけではありません。
日常生活上では、様々な音がしますので、それらの音に邪魔されれば自ずと聞きにくくはなります。また、お話する人の話し方によっても変わります。
ですので、こちらは、あくまでも目安になります。
ただ、この数値が高い方は、補聴器の効果をそれなりに感じる方が多いのも事実です。よければ良いほど、日常生活上や仕事の際なども聞きやすくなります。聞こえやすさを判断する目安にはなりますね。
明瞭度が低い方は、調べないこともある
補聴器を使用する前に語音明瞭度を調べた際、明瞭度が低かった場合は、補聴器装用時の明瞭度に関して調べないこともあります。
低いことがわかっている場合、上限が低いため、調べてもあまり意味がないと考える考えもあります。
こちらが数値の意味ですが、
初めの方に載せた限り、このようになります。
補聴器の効果を望むなら、50%以上が必要なのですが、だからと言って50%以下の方は、そのまま切り捨てるということはせず、50%以下の方でも補聴器は装用します。それにより、周囲の状況がわかったり、合図がわかったりすることで、コミュニケーションがしやすくなるためです。
音声の理解はかなりしづらいのですが、50%以下の方でも装用はします。そしてここからが重要ですが、そのような方は、音声を理解するために使用しているわけではありません。ですので、50%以下の方の場合は、測定しないケースがあります。
もちろん、元々の明瞭度20%の方が仮に30~40%まで上がったとしても、実際には聞きにくいままであることも関連しています。なぜなら明瞭度は、50〜60%はないと音声が理解しにくいためです。
補聴器装用時の語音明瞭度測定のまとめ
このような測定が、語音明瞭度測定です。基本的には、補聴器の効果を見るために行われたり、補聴器を装用して、どのくらいの数値なのか。現状の確認に使われるケースが多くなります。
どちらにしても測定することにより、補聴器の適性やどのくらい理解できるようになっているのか。それを理解することができます。