【実例解説】声が響きやすい老人性難聴の方を補聴器で改善しました
70代、女性。老人性難聴により、聞きにくくなり、初めは、他店で相談するものの、あまりうまく行かず。
しかし、聞きにくさは変わらず、困ることがある事から、別のお店で相談することとなり、当店にお越しになりました。
ご相談いただいた結果
- 家庭内では、よく聞こえるようになった
- 外出先でも聞こえるようになることが増えた
- 聞こえる事が増え、補聴器がないと不安に思うこともある
との事でした。
現状をよりよくすることができ、何よりです。
こちらでは、どのような耳の方が、どのように改善していったのか。実際の例から、そのポイントに関して、まとめていきます。
お悩みの方は、ご参考にしてみてください。
耳の状況
初めに概要ですが
- お名前:M・Mさん
- 年齢:70代、後半
- 性別:女性
- 聴力:軽度〜中等度の難聴
- 症状:老人性難聴(2015年に診断)
- 備考:耳鳴りが両耳ともし、音が響く感覚も常時ある
となります。
聴力は、このようになります。
軽度〜中等度の難聴となり、
このくらいの聴力ですと、対面でのお話は、わかる方とわからない方がおり、少し離れたりすると、急に聞こえにくさを強く感じる状態です。
さらに、騒がしい中や複数の人とのお話となると、この部分も、聞きにくさを感じやすい状態になります。
まとめますと、近くでお話したりする分には、良いかもしれませんが、離れたりすると音に気がつかなかったり、お話している際に聞きにくさを感じやすくなります。
耳の状況としては、他
- 耳鳴りが両方ともある事
- 音が常時響いて聞こえる事
の2つがある事ですね。
響くというのは、補聴器なしの状態で、自分の声も周囲の音も全て響いて聞こえる。という状態とのことでした。
今現在の状況
今現在の状況ですが、2015年ほどに老人性難聴と診断され、聞きにくさを抱えながらも、生活していたとの事でした。
少し経過し、補聴器のご相談を地元の補聴器販売店で行うものの、音の響きが強かったり、使いづらいことがあり、補聴器を使うことができず、そのまま諦める形となったとの事。
ただ、ご自身の聞きにくさは、ずっとあり、徐々にその部分によって困ることが当時よりも増えてきてしまっていたため、ネットでご覧になり、当店へお越しになりました。
という事で、実際に改善していきます。
耳の状況をみた上での改善指針
補聴器で改善していく場合ですが、意識したい点は、
- 実際に補聴器で改善する指針
- 補聴器でどこまで改善できると良いか
- どのような補聴器を使用すると良いのか
の3つになります。
実際に補聴器で改善する指針
補聴器で聞こえを改善して行く場合、いくつか補い方があります。
聴力が同じくらいで
両耳とも補聴器の適合がある場合は、両耳に補聴器を装用すると、最も聞こえを補えるようになります。
耳には、言葉を理解する力と言いますか、言葉を難聴の耳でも聞こえるような音で流し、その聞き取りが良い場合は、なるべくその耳を活かして改善できると、状況をよくしやすくなります。
逆にこの理解度が低くなり過ぎると、補聴器で聞こえを補っても効果が限られる状態になりますので、要注意点です。
M・Mさんの場合は、両耳とも50%以上となり、それなりにありますので、補聴器を両耳に装用して改善して行くことになります。
補聴器でどこまで改善できると良いか
補聴器には、基本的に、どの補聴器でも、改善できると良い部分が存在します。
そこまで改善させることにより、聞きにくさを改善しやすくなります。
例えば、M・Mさんの場合は、聴力からすると、このくらい改善できるとベストです。
しかし、M・Mさんのように元々、音が響く、補聴器を使用すると、響きがより強くなる可能性がある方の場合は、その目標を意識しつつ、実際に入れられるだけ、入れる。
という方針を取らざるを得ません。
元々、ご自身の声が響く(こもりを強く感じる)、周囲の音が響いて聞こえる。という方は、補聴器を使用すると、その感覚がより強くなることが多いです。
そのため、改善目標は、把握しておく必要はありますが、それを無理に達成させようと、音を入れたりするのは、避けたほうが無難です。
辛くなってしまう事が多いためですね。
改善できるなら改善させ、あくまでも補える部分まで補う。というスタンスで行い、補聴器を使用できる範囲で、改善できる部分まで、音を入れていきます。
どのような補聴器を使用すると良いか
この部分は、以下の実際の改善パートや補聴器選定で詳しく記載しますが、音が響きやすいのであれば、なるべく補聴器は、響きにくいものを選ぶのがベストです。
結論から記載しますと、私が勧めたのは、RIC補聴器、というものです。
今現在、ご自身の声が響く感覚(こもる感覚)を最も減らしやすい補聴器は、RIC補聴器ですので、こちらで、なるべく軽減しながら、改善をしていきました。
なお、この部分も注意が必要ですが、実際には、しっかり装用できるか、使用できるか。という部分を確認しつつ、選定をしていきます。
改善思考としてベストでも、使いづらい、使うことにより、違和感がかなり強くなるなどある場合は、その状況を把握した上で、その補聴器で改善できることなのか、別の補聴器が良いのかを考えていく必要があります。
実際の改善について
こちらは
- 初回のご相談
- 補聴器選定
- 補聴器の調整と最終調整
に分けて記載していきます。
初回のご相談
初回のご相談では、耳の状況から今現在の状況までお伺いしたり、調べていきました。
その後、補聴器に関してご相談して行くのですが、上記の改善指針をそのままお伝えし、改善して行くことになります。
ただ、響きが強かったり、耳鳴りがある程度、ある方というのは、
- 実際のところ、どのくらい改善できるのかが未知数(個人差が大きい)
- 使用できるところまで音を下げた場合は、改善値が非常に下がることが多い
という事も多いため、まずは、試聴という形をとり、補聴器を使用してどのくらい補えるのか、効果が出るものなのか。そもそも補聴器を使えるのか。
これらの部分を調べて行くことになりました。
貸出したのは、改善指針でも出てきた通り、RIC補聴器になります。
響きが強いのであれば、なるべくその響きを軽減できるようにし、まずは、使用できる状態に持ってくる事を意識して改善していきます。
さらに選定として、耳せんのサイズがあります。
基本的に耳せんは、
- しっかり塞ぐものを使うと、聞こえはよくなるが、自分の声(こもり)が大きくなる
- ゆるいものを使うと、自分の声(こもり)は、軽減されるが、聞こえも軽減される
となります。
耳せんは、基本、しっかり塞げるものを使うのがベストですが、もともと、響いている場合は、相談して行って選択する必要があります。
どちらが良いか。測定結果と実際に使用した感覚、それぞれをM・Mさんと相談し、初めの状態を決めていく。ということですね。
しっかり塞ぐタイプで、行った結果は、このようになり、補っている数値は、結構、良い数値です。しかし、こもった感覚は、少し強いようで、辛く感じるようでした。
少しゆるいタイプで、行った結果は、このようになり、補っている数値は、少し低いですが、こもった感覚は、軽減され、使いやすい。との評価。
この段階で、
- 聞こえる方が良いか
- 快適性をとるか
こちらに関して、相談するのですが、初めは、快適性をとることにしました。
こちらであれば、使うのは、楽で、かつ補聴器をつけることにより、聞こえる感覚も感じるとのことでした。
なお、貸出する前は、念のため、ご自身で、音量を操作できるようにし、仮に使用している状態で、聞こえにくかったら、上げられるように。聞こえすぎてしまう部分があれば、下げられるようにし、なるべく使用できる状態にしました。
この状態で、補聴器を貸出し、幾日か使用していただくのですが、補聴器に関しては、使いやすく、音量をご自身で少し調整しながら、使用していた。との事でした。
補聴器はあると良く、実際にあることにより、
- 家庭内でのお話が聞きやすくなった、気づくことが増えた
- 外出時も補聴器を使用して、今まで以上に聞きやすくなった
との事でした。
響きの部分は、少し心配だったのですが、自由に音量を変えられるようにすることにより、軽減しやすく、そこまで、気になることは、なかった。との事でした。
という事で、さらに聞こえを改善して行くことになります。
補聴器の選定および、選定の考え
さて、補聴器に関してですが、
M・Mさんの聴力は、このようになります。
補聴器には、大きく分けると、耳にかけるタイプ(耳かけ形補聴器)。耳の中に入れて使用するタイプ(耳あな形補聴器)があります。
M・Mさんの場合は、この中のものが使用できます。外れているものは、聴力低下が大きい方が使用するため、その手前の方が使用するもので、大丈夫です。
耳かけ形、耳あな形の大まかな違いは、この通りです。
大きな違いは、形状により、扱いやすさ、使いやすい部分がそれぞれ異なる事です。
耳かけ形補聴器は、補聴器の中では、まだこもりにくい部類であり、耳の上に乗って、たまに邪魔に感じることもありつつ、使いやすくしているのが特徴です。
耳の中に入れるタイプは、耳の中に入れる事で、他のものに邪魔されないという特徴があるのですが、耳の中に入れるため、自分の声が大きくなりやすく、響きを強く感じる傾向があります。
一般の状態で音、ご自身の声が響く感覚がある場合は、耳あな形を使用すると、よりその響きが強くなるため、耳かけ形補聴器にしました。
貸出の段階で、使取り扱いは、特に問題なく使用できていましたので、その部分もあり、こちらに決めました。
耳かけ形補聴器にも、いくつか種類があるのですが、この中でも、よりこもり、響きの部分を軽減できるのは、RIC補聴器、というものです。
そのため、こちらに決めていきます。
実際には、RIC補聴器には、小さいタイプと大きいタイプがあるのですが、こちらに関しては、楽に使用できる小さいタイプにしました。
こちらの形状ですね。形の選定は、これでおしまいです。
補聴器の調整と最終調整
さて、補聴器の調整ですが、効果に関して、より出していく事になります。
この状態で貸出をしたのですが、結果が少し低いので、できるのであれば、もう少し改善したいところです。
そのため、ご相談をしたのち、少しだけ、音に関しては、変えさせていただき、このようにしました。
やったことは、もともと、低かった部分をあげ、よりよくしてみました。
この状況で、補聴器を装用した状態で、言葉の聞こえを調べてみたのですが、このような結果になりました。
基本的には、
- 70dB=大きい声の方の聞こえ
- 60dB=一般的な声の大きさ
- 50dB=少し声が小さい方の声の大きさ
となり、全体的に改善できていると良好です。
結果をみてみると、それなりに良いのですが、50dBのところが少し低い状態になります。
はじめ、補聴器で、このくらい調整できると良い。と記載した理由ですが、だいたい、このあたりまで改善できると、70dB、60dB、50dBの音声が、改善しやすくなるためです。
単に音を大きくすれば良い。というものではないのは事実ですが、明らかに、音を入れた量と音声の理解度のレベルは、ある程度、比例しています。
ですので、可能であれば、その部分まで入れられると、改善はしやすくなります。
そこで、貸出した補聴器の状況を改めてお伺いしたのですが、家の中では、少し音を下げ、出かける際は、聞こえにくいと困るため、そのままの音量で使用していた。との事でした。
一日の使用時間は、平均、12.4時間で、かなり使用されており、重宝されている様子は、わかりましたので、少し変えていきます。
音を大きくすると、響く感覚が一層強くなる。という事でしたので、不快閾値測定。というものを行い、よりよくなるか試していきます。
これは、補聴器をつけると音が大きく聞こえて辛い。という感覚を感じやすい方に行うと良い傾向があるのですが、その他、音が響いて聞こえてしまう。という方や、補聴器を使用した状態の結果が伸びにくい方も、行うとよりよくなる事があります。
何事も試しから。という事で、実際にこちらを行った結果ですが、やはり、一般の感覚より、音が不快に感じる感覚が強いことがわかりました。
そのことから、それを設定し、よりよくしてみた結果、ここまで改善するように。
言葉の改善度に関しては、このようになりました。以前の状態と比較すると、全体的に改善できるようになってきました。
1問の違いになりますが、以前の状態と今の状態。どちらにするか相談したところ、今のもので、全体的に改善できる方を選択することに。
そして、この状態の補聴器の使用状況ですが、場面によっては、少し音を下げる事はあるものの、そのまま、問題なく使用できているとの事でした。
聞き取りの結果もよりよくなっていることから、この状態で、使用していくことになりました。
という事で、補聴器の調整に関しては、ここで一旦、終了となります。
お客様の声
実際にご対応を受けていただいたM・Mさんより、ご評価いただきました。
ご相談前は、どのような事でお悩みでしたか
実際に補聴器をお使いになってみて、いかがでしょうか
このお店でご相談(購入)になったのは、なぜでしょうか
実際のアンケート
ご協力いただきまして、ありがとうございます。
はじめにご相談いただいた際は、他のお店で補聴器が合わず、ご来店されましたので、できる限り、合うように、そして、効果が出るように、させていただきました。
耳の状況が色々と複雑なこともありましたが、少しでもよりよくする事ができ、こちらとしては、本当になりよりです。
改善のポイント
改善のポイントとしては、
- 少しずつ様子をみながら、改善(調整)した事
- 響きを抑える処置をできるだけ、行いながら、改善した事
の2つです。
少しずつ様子をみながら、改善(調整)した事
M・Mさんに関しては、これに尽きるのですが、少しずつ様子をみながら、改善した事です。
実際に響く、と言われても、どのくらい響くのか、この状態だと使用できるのか、は、やってみないとわからない事が多いため、一つ、一つ、試しながら、どのような状態であれば、使えるのか。まず、この点を把握することから初めていきました。
その部分を理解しつつ、なるべく使用できる範囲で、かつ、改善できる範囲を目指していきました。
その場合ですが、念のため、ご自身で音量を操作できるようにしたりできると、改善しやすくなります。
上記では、不快閾値測定を行い、大きな音は、なるべく入れていない状態ですが、それでも、周囲が騒がしい時は、ありますので、ご自身で、操作できるようになっておけると、どのような場面でも、微調整することにより、合わせやすくなります。
響きを抑える処置をできるだけ、行いながら、改善した事
こちらに関しては、ご自身の声が響く感覚や音そのものに関してですが、なるべく響きの部分を抑えられるようにしていきました。
ただ、この響きの部分ですが、補聴器の調整部分は、あまりやっていません。それ以外の部分を優先的に行いました。
その点は、
- RIC補聴器を使用して改善した事
- 不快閾値測定を行い、なるべく大きな音や音が響かないようにした事
になります。
補聴器の音を下げて改善する方法は、あるのですが、それをすると、補聴器を使用しても、聞こえの改善度が目に見えて落ちる傾向があるため、あまりお勧めしません。
もちろん、はじめに補聴器を慣れさせるために少し下げておき、慣れた頃あたりにあげる。という考えが根本にあるのであれば、良いのですが、単に下げたままの場合は、効果を出しづらくなります。
なるべく聞こえる状態と響かない状態を両立させるために、この部分に関して、意識しつつ、実際に測定を行いながら、状況を説明し、M・Mさんと共に状況を改善していきました。
まとめ
さて、まとめです。
補聴器がない状態でも音が響いて聞こえてしまい、さらには、耳鳴りもある方でしたが、上記のようにして、聞こえの改善をしていきました。
年齢も少し上にはなるのですが、根気よく通っていただき、こちらとしては、何よりでした。
少し遠いところからのご来店でしたので、その部分の期待に答えるのは、聞こえの改善しかない。と思い、私の中で、できる限りの事をさせていただきました。
その結果、よりよくする事ができ、本当に何よりでした。
あくまでも一つの例ですが、同じような方は、参考にしてみてください。
補聴器の調整や補聴器の選定は、補聴器屋さんと行なっていくものではありますので、仮に聴力や耳の状況が同じだったとしても、異なる対応をする可能性は、あるのですが、一つの目安には、なるかと思います。
という事で、こちらの内容がお役に立てば幸いです。