【80代、女性】老人性難聴の方、補聴器と補聴援助システムで聞こえを改善
少し前のご相談になるのですが、80代のご高齢の方、老人性難聴の方で、もともと補聴器を使っており、その補聴器による聞こえの改善が不調で、このお店に来られた方がいました。
こちらに関して、対応させていただき、(新しく補聴器を購入となります)
- 落ち着いた聞こえになり、より聞きやすくなった
- 補聴器の使い勝手は以前のものより、だいぶ良くなった
との評価をいただきました。
こちらのケースに関して、どのように改善したのか、その点について、まとめ、情報の共有をしていければと思います。
お客様の状況
まず、お客様の状況ですが、
- 年齢:80代
- 性別:女性
- 症状:両耳とも老人性難聴(加齢性の難聴)
- 備考:他のお店で補聴器を購入するもののうまく行かず
このようになります。
聴力に関しては、このようになります。低い音が聞こえづらくなっており、高い音になるにつれ、少し聞こえやすくなっていますね。
診断内容は、老人性の難聴、加齢によるものということなのですが、それにしては、珍しい状態です。一般的には、老人性難聴は、低い音は聞こえていて、高い音が聞こえづらくなることが多いためです。
今現在の状況ですが、補聴器に関しては、使われており、ただ、この補聴器が音が強く、聞こえることもあれば、聞こえづらいこともあり、もう少し良くしたい。との希望でした。
お店の方で何度か調整してもらったものの、担当の方が何度も変わられたり、その担当の方がおらず、別の方が対応した際に今までのことを話したり。そして、別の方がやったことで、逆効果になったりなど、調整というよりも、お店のシステム的なもので、何度か伺ったけれども良くなることがなく、どうしたら良いかお困りの方でした。
ちょうど、娘様がこのお店のYoutubeについて見ており、意を決して、こちらにお越しいただいた。そのような経緯になります。
ということで、この状況について、改善していきます。
今現在の状況とそこから考える改善案
今現在の状況
さて、まずは今現在の状況から見ていきます。補聴器を使われている様子でしたので、その補聴器を使った時の状態を調べていきます。
補聴器を使って感じる感覚(主観評価ともいいます)は、上記の通り、音が全体的に強く、疲れることが多い、とのことでした。
元々は、そこまで強くしていなかったようなのですが、80代ではあるのですが、まだ仕事をされており、その際に会議があり、そこでの聞きづらさを感じたことから、そういったところでも聞こえをよくしたい、ということで、補聴器の調整をしました。
その後、全体的に音が強くなり、相談そのものも少々うまく行かなくなってしまい、現在に至るという状況です。
ということで、補聴器の使用状況について、見ていくのですが、それがこちらのデータになります。
この測定は、音場閾値測定と呼ばれる補聴器を使ったときにどのように聞こえているのか、それを簡易的に見ることができるものですね。
このデータだけではわかりづらいのですが、聴力からどのぐらい改善できていると良いか、の目標値(赤い▲)を入れるとよりわかりやすくなるかと思います。
このように見てみると、少しわかりやすくなると思います。数値に関しては、よく出ているところもあれば、少し低いところもあるという状況です。
ただ、現状、この状態でも音が大きいと感じており、ちょっと辛そうです。
そこから考える改善案
聞こえづらさがあり、でも、音を大きくすると辛くなってしまう。このようなケースは、往々にしてあります。
これは、病気により、聴力低下した方や一部の老人性難聴の方に見られたりします。
意外と生まれつきの感音性難聴の方にはあまり見かけず、耳の症状によって音に関する感覚(感度ともいう)が違うのが、難聴の面白いところの一つでもあります。
聞こえを改善するということは、極端な言い方をすれば、音を大きく入れることになりますので、その分、聞こえやすくなります。
しかし、その分、聞こえが良くなることで、音が辛く感じる。ということですね。
この場合に大事なのは、聞こえの改善を重視するのか、それとも、補聴器を使った時の快適性を重視するのか。のトレードオフに関して、どのように考えるかになります。
そして、もしお金がかかっても良いのでしたら、そのトレードオフをなるべく解消するために補聴援助システムというものを使えると良いです。
補聴援助システムとは、マイクと受信機の2つの組み合わせて、マイクは、主に話し手に持ってもらい、受信機は、補聴器の方に内蔵されているため、そのマイクに話した声がそのまま補聴器に転送されるシステムになります。
補聴器の欠点は、距離が離れると急に音が小さくなること、そして、周りがうるさいとそれに合わせて聞きづらくなること、の2つです。ですので、今現在、このように補聴器では、解決が難しいところは、このような外部機器を使ってより聞こえやすくする機器があります。
こちらの方もそうなのですが、会議などの場も含めて改善しようとすると、距離の問題は、補聴器本体だけで改善しようとすると音を大きくするしかありません。
しかし、音を大きくするとそれ以外の要素も大きくなり、物音、さらには、近くの人の声も大きくなります。
遠くの人の声を聞きやすくする代わりに近くの人の声が大きくなる、近くの物音が大きくなることと、近くの人の声を聞きやすい音量に抑えるために、遠くの人の声が聞こえない状態になることは、トレードオフです。
これは、焦点を近くに合わせるか、遠くに合わせるかの違いであり、補聴器一つでなんでも行おうとすると、このようなトレードオフ、どちらか片方しかできないので、その対象にならない部分で問題(不具合)が起こります。
そのトレードオフをなるべく解消するのが、この補聴援助システムになります。まさに補聴を援助してくれる(助けてくれる)機器ということですね。
このようなケースは、補聴器本体は、使う方の使いやすい状態にして、補聴援助システムなど使えるのでしたら、それを活用して、難しいところは、それによる最適化を行えるとより聞こえの改善はしやすくなります。
実際の改善について
状況の説明と補聴器のトライアル
さて、実際の改善についてですが、お客さんから状況を聞いたり、補聴器による聞こえの改善状況について確認後、状況について、お話をさせていただきました。
お話をしていく際には、お客さんの状況をお伺いしながら、そして、聞こえの改善状況についてもお伝えしました。
どうもトレードオフの関係、それぞれの場面で、本来なら対応がしづらいので、どちらか一つに絞らないとならないのですが、それを無理やり一つのもので解決しようとすることによる不具合、問題が起こっている。なので、それを解消する方法についてです。
それが上記の内容になるのですが、補聴援助システムについてお話してみると、「改善ができるのであれば、してみたい」とのことで、補聴器による聞こえの改善と、後は、道具を使うことによる聞こえの改善で、それぞれ最適化していくことになります。
元々、別のメーカーの補聴器を使われていたため、そもそもこちらで扱っている補聴器が合うのかどうか、こちらについて確認していくのですが、このような機器を貸し出しし、様子を見ることになります。
聞こえの改善状況については、このようになります。お持ちの補聴器より、少し抑え目になっており、元々、使うとキツい……と辛い状況でしたので、このような設定にして、落ち着いて使えるような状態をまず目指しました。
このような状態で貸し出しをします。
その結果ですが、
- 落ち着いた聞こえになり、より聞きやすくなった
- 補聴器の使い勝手は以前のものより、だいぶ良くなった
とのことでした。
音が大きい状態は、こちらの方にとってはかなり辛く、使いづらさの方が勝ってしまっていたため、落ち着いた聞こえになり、より落ち着いて聞けるようになり、聞きやすくなった感覚すらあったようです。
そして、使い勝手も良くなり、だいぶ以前の補聴器と比べて良くなってきた。とのことでした。
そこから、このような補聴援助システムのものを使い、より場面場面で最適化していくことになります。
補聴援助システムによる改善
補聴援助システムを活用する背景には、トレードオフの解消があります。
遠くの音まで聞こえるようにしようとすると補聴器の音を大きめにしなければならず、そうすると全体的に音が強くなり、遠くのものは聞きやすくなるかもしれませんが、近くの音、近くの声はより大きくなります。
一言で言うと、近くの音は過度に入るということですね。
しかし、こういった機器を使うと、補聴器については、適性の音量にし、後は、離れることにより、聞きにくくなるところにマイクを置く、あるいは、離れた人の声を聞くためにその人にマイクを持ってもらうことで、その音声がそのまま補聴器に入りますので、トレードオフの解消がしやすくなります。
この場合、その場、その場の適正化といえばわかりやすいかもしれません。
補聴器本体だけでこれをやろうとするとできないので、必ず、どちらかの問題、聞こえないけれども楽に感じるようにするか、聞こえるけれども、過度に感じるようになるか、が出てくるのですが、その場その場の適正化ができればどちらもなるべく両立できるように調節ができるようになります。
実際、80代というご高齢でありながら、今現在もバリバリ仕事をしていたこともあり、少々、心配な様子はあったものの、このような機器を使っても問題なく活用できていました。
もちろん、この使い方、どのように活用していければより聞きやすくなるのか、の使い方は、私も含めて、より研究、調べていく必要はあるのですが、今の所、少しずつ使えるようになり、活用できることがわかったため、補聴器+補聴援助システムで改善し、一旦、終了となります。
なお、補聴器の状態は、このようになります。正直なことを言いますと、もう少し改善したい感覚はあります。
しかし、補聴器の調整については、あくまでもご本人が使いやすい状態にし、そこから補聴援助システムで補助するようにして、聞こえの改善、もっというとご本人が聞こえやすい状態を目指して改善をしていきました。
お客様の声
こちらでは、実際に対応させていただいたお客様の声について紹介いたします。
アンケートにご協力いただき、ありがとうございます。
ご家族の方と一緒に来られ、そして、現状の改善に貢献できたこと、こちらとしては、大変ありがたく思っております。
特にご高齢だったこともあり、補聴援助システムという何とも聞いたことがないものをお話した際、恐らく、不安に感じたこともあったかと思います。「なんだこりゃ?」と。
しかし、私に関して、信用していただき、そして、一緒に聞こえの改善をしていけたこと。これは、私自身というよりも、お客様が私について信じていただいたからできたことだと思っています。
こちらこそ、この度は、ありがとうございました。もしよろしければ今後も対応させていただき、聞こえの改善及び、生活のサポートについてしていければと考えています。
この度は、誠にありがとうございました。
改善の要所
さて、最後に改善の要所についてまとめていきます。これは、一言で言うと、トレードオフの問題は、無理やり解決しない。に尽きます。
これは、どちらか一つを選択する必要があると言うことです。トレードオフの問題は、無理やり無視して解決しようとすると大体が手痛いしっぺ返しを喰らうことになります。
上記では、様々な問題を補聴器一つで改善しようとしたこと、ここが問題でした。
補聴器で聞こえを改善することは大切なのですが、聞こえを改善しようとするとするほど、基本的には、音が大きく感じたり、辛く感じやすくなります。
これが明らかに許容範囲、聞こえの改善のその方の許容範囲が少ないと判断した場合は、無理にその方法で改善するのではなく、別の方法を考えられると良いです。
聞こえの改善は、確かにできればできるほど良いのですが、中には、目標となる部分まで聞こえの改善ができないケースもあり、そのような方は無理に解決すると、補聴器を使うことが辛い状態になってしまいます。
ですので、そういった状況を踏まえた上での改善方法を考えていく必要があるのですが、それを実践でき、その結果、良くできたのは、本当に何よりです。
押してダメなら引いてみる、ではないのですが、正当法ができないのであれば、別の方法を考えて改善していくことも大切なことです。
補聴器を提供することが仕事ではなく、聞こえの改善、もっというと生活の改善が本当の仕事だからですね。
と、その部分ができたことが一番の改善の要所です。
まとめ
さて今回は、80代の女性の方、老人性難聴の方の聞こえの改善について記載してみました。
老人性難聴ではあるのですが、低い音が聞こえづらくなっており、なかなか不思議な聴力の方ですね。実際に聞こえにくくなった際というのは、急に聞きにくくなったのか、それとも徐々に聞きにくくなったのかはわかりづらい傾向はあるのですが、診断は、老人性難聴とのことでした。
ただ、補聴器をつけた時の辛い感覚が大きい方でしたので、それに合わせて聞こえの改善、改善案について行い、少しでも良くなるようにさせていただきました。
その結果、より良くなったのであれば、こちらとしては本当に何よりです。
と、聞こえの改善事例でした。