【改善事例】原因不明の感音性難聴(高音)の方、補聴器で改善
低い音は聞こえているけれども、高い音になると急激に聴力が低下する耳を高音急墜型の聴力、高音難聴といったりします。
こういった方の聞こえの改善は今現在、限定的になってしまうことが多いのですが、今回、ご依頼いただいた方の許可をいただき、こちらの方の聞こえの改善のプロセス、高い音が聞こえにくい方における気をつけていくと良いポイントをまとめていきます。
今回、許可いただいたのは、30代の女性の方で、原因不明により聴力低下(元から?)という方で、今まで補聴器を使っていなかったのですが、お仕事の際など困ることが増えてきたため、聞こえの改善に関して、行なっていくことになりました。
その結果ですが、今まで聞こえなかった音、分からなかった音がわかるようになり、あると良いとのことで、今現在も活用しながら生活されています。
こちらの方の改善に関して、まとめていきます。
お客さんの状況
では、まず状況ですが、
- 年齢:30代
- 性別:女性
- 症状:高音域の難聴(原因不明)
- 種類:感音性難聴
- 備考:高い音の耳鳴り、両方あり。
となります。
聴力は、このようになります。低い音は聞こえているのですが、高い音になると急にガクッと下がり、聞こえなくなってしまう聴力です。
聴力図に見慣れていない方の場合は、こちらの方が良いかもしれませんね。0〜25dBまでは、正常の範囲になり、そこから下になると、聞こえにくさが出てくるため、その程度によって、障害レベルが変化します。
耳の状況としては、小学校の頃に難聴が発覚したのですが、原因はよくわかりませんでした。
高い音のみ聞こえていない事から、元々、聞こえていなかった可能性も否定できないのですが、どのタイミングから聞こえなくなっていたのか。それがはっきりせず、そのため、原因不明の感音性難聴。という状況でした。
その当時は、なんだかんだ聞こえており、さらに、このような聞こえの方の場合、聞こえの改善に関しては効果が薄い傾向があります。
聴力だけでみていただくと、聞こえているところは、音を入れる必要がありませんので、そのままで、低下している部分だけ、音を入れることになります。
しかし、補聴器は聴力の低下が大きいと大きいほど、補いにくくなります。ですので、周波数別の聴力差が激しい方は、聞こえるようになる感覚より、補聴器を使うことによる鬱陶しさ、煩わしさの方が勝つケースが少なくありません。
その事から、医師にも「効果は見込みづらい」という事と物凄く困っていたかと言われると、そうでもないことから、そのままにされ、社会人になってから、急に困るようになり、この機会にご相談をいただいた。という流れになります。
ということで、このような聞こえの方を改善していくことになります。
聴力から見る状況と改善案
さて、初めに記載していきたいのは、このような聴力の方はどのような部分で困りやすいのか。あるいは、どういった状況に陥りやすいのか。になります。
ここに関して、記載していきますと、高い音が大きく低下している方の特徴は、聞こえる部分と聞こえにくい部分、あるいは、聞こえない部分が極端に分かれやすい事です。
そして、そのことによるコミュニケーション上のトラブルが非常に多くなります。
一般の方は、何が聞こえて、何が聞こえていないのかはわかりませんので、全て聞こえているものだと話すのですが、極端に聞こえている部分、聞こえない部分があると、ある部分はわかるけれども、ある部分はわからない、気づかない。となります。
それをまとめたのが上記の内容です。
しっかりとお話する人の声はまだわかりやすいのですが、声が小さくなるとわかりづらくなったり、あとは、距離に弱いです。距離が離れると離れるほど、音は弱くなりますので、その減衰により、かなり気付きにくくなります。
このような聞こえの方にお伝えしたい大事な部分は、音は聞こえていないと、その音が存在することに気が付かないという事実です。
例えば、こういった聞こえの方の場合、セミの鳴き声が聞こえなかったり、電話の呼び出し音(プルルッ……!という音)が聞こえなかったりるのですが、その事により、「電話が鳴っているのになぜ出ないのか?」と周囲の人の反感をかったりします。
これは、音というのは、聞こえないとそもそも存在していることに気がつかない事からきています。
このような聞こえの方は、特に生まれつき難聴の方の場合、セミが鳴く事も、電話がきた時にプルルッ……!と知らせてくれる事も、家の中で誰かが来たときにチャイムでお知らせしてくれることも知りません。
音は聞こえないと、その存在に気が付かないからです。その方からすると、「何でみんな電話が来たときにすぐにわかるんだろう?」「よく今、誰かが玄関に来たことがわかったな」とか、「セミってうるさいよね〜」と言われても、当の本人の頭の中は「?」になります。
極端に聞こえている部分と聞こえていない部分がある方は、特に周囲の方から(というかご自身も含めて)、何が聞こえていて、何が聞こえていないのかが非常にわかりづらいので、とにかくコミュニケーション上のトラブルが発生しやすい傾向があります。
ですので、この部分をなるべく軽減できるように改善していけると良いですね。
聞こえの改善案
さて、ここから本格的に聞こえの改善案に関して、記載していきます。
このような聞こえの方の場合、補う上で注意点がいくつかありますので、その点をまとめていきます。
- 補聴器の形状
- 聞こえの改善
の二つに分けて記載していきます。
補聴器の形状
今現在、補聴器で聞こえを改善する場合、補聴器の形状の選択と実際にその補聴器で聞こえを改善するパートの二つがあります。こちらは、前者の内容です。
そして、補聴器の形状はいくつかあり、聴力ごとに合う形というのが、ある程度決まっています。
このような聞こえの方の場合、気をつけなければならないのは、補聴器を装用したときに不快感を感じやすいことです。
耳にイヤホンをつけていただくと自分の声が大きく内側で低く響いたりすることがあると思うのですが、この感覚が出やすいです。この感覚はなければないほど、快適に使いやすく、一部の人はかなりこの感覚がキツく出たりする事もあります。
基本的にこの感覚は、聴力が125〜500Hzの間で、60dBの範囲内に聴力があり、かつ、聞こえが良いと良いほど、その不快感は感じやすくなります。
このような聞こえの方の場合、こういった不快感をモロに感じますので、できればその感覚は、なるべく軽減できる形のものを選べると良いです。
じゃあ、この感覚を軽減できる補聴器の形は、というと
- 耳あな形補聴器なら、CIC補聴器
- 耳かけ形補聴器なら、RIC補聴器
の二つです。
こちらの補聴器は、どちらもそれぞれの形状の中で、この不快感を軽減しやすい形になります。ですので、この中から選べると良いですね。
なお、耳あなと耳かけの違いは、ものの邪魔になるか、ならないか。閉塞感を含む、不快感を感じやすいか、感じにくいか。になります。
耳あな形補聴器は、耳の中に補聴器を入れますので、メガネやマスク、ヘルメット、帽子などの邪魔になりません。そのような使いやすさがあります。
ただし、耳に補聴器を詰める事になりますので、自分の声が大きく聞こえる感覚や閉塞感が出る傾向があります。耳かけ形に比べてですね。
一方、耳かけ形補聴器は、この逆で、耳の上に乗せて補聴器を使いますので、マスクやメガネを使う方の場合、もしかしたら邪魔に感じるかもしれません。
ただ、その代わり、耳の上に補聴器を乗せていますので、閉塞した感覚、自分の声が大きく聞こえる感覚は、どの補聴器よりも軽減しやすくなります。
耳かけか、耳あなかは、どっちの方が使いやすいのか。の使いやすさで決めていただければ大丈夫です。
聞こえの改善
さて、次は聞こえの改善パートです。
聞こえの改善パートは、非常に難しい内容になってきてしまうのですが、ただ、補聴器はほぼここで効果が決まりますので、ここを避けて通ることはできません。
まず、今現在、補聴器に関してなのですが、補聴器を使った状態でどのぐらい聞こえの改善ができているのかを測定するツールがあります。これを音場閾値測定(おんじょういきち測定)といいます。
こちらで簡単に表記していきます。
こちらの方の場合、聞こえているところと聞こえていない部分が非常に大きく分かれていますので、基本的な考えとしては、聞こえているところは、そのままにし、聞こえていないところは、改善して聞きやすくする。になります。
結論から記載すると、目指せると良いのは、このぐらいです。0〜25dBが聴力における正常の範囲なのですが、今現在の補聴器は、そこまでは改善できません。可能な範囲を出すと、おおむね、このぐらいになります。
低い音の部分に関しては、基本的に聞こえている状態になりますので、補聴器をつけてない状態より、下がらないようにします。
で、急激に下がってくるのが、この辺りですね。中音域は、聞こえの改善においてかなり重要な部分で、500〜2000Hzあたりが日本語の場合、ここが音声のボリュームゾーンになりますので、この辺りは、しっかり改善したいところです。
この部分の改善がそのまま聞こえにくさの改善に繋がりやすいからですね。ただ、だからと言って、無理に音を大きくするのはお勧めしません。あくまでも使える範囲内での改善が大事です。
最後は、大きく低下している高い音の部分です。この部分は、非常に難しい部分で、大きく低下している場合、その部分を補える耳なのか、そうじゃないのかが分かれたりします。
聴力の不思議なところは、下がりかけているところは救えるのですが、下がり切ったものは救えない。があります。直接的な言葉をいうと、損傷しかけているものは救えるが、致命傷を負っているものは、救えない。ということです。
感音性難聴は、内耳と呼ばれる器官の中にある有毛細胞の損傷度によって、聴力が変わってくることがわかっており、聴力低下が大きい部分は、有毛細胞の損傷度も高い傾向があります。ですので、損傷しかけているものは、まだ音を補うことはできるのですが、下がりきっているものは、救うことが困難になります。致命傷を負っているケースが多いためです。
このような下がりきっている方の場合は、事前にそもそも補うことが可能な耳なのか、そうでないのかが不明ですので、実際に音を入れながら、反応を見て、どのぐらい入れていくと良いのかを決めていくと良いです。
音を大きくしても歪む感覚がなければ、目標の部分まで音を入れたり、音をしっかりいれ、音が歪んだり、変になる感覚があるのであれば、その部分は、少し抑えめにする。といったケースバイケースの対応が求められます。
なお、この部分は改善できると改善できるほど、今まで聞こえなかった高い音に気が付いたり、わかるようになります。その事により、気がつかないという部分を解消しやすくなりますので、ここもできるのであればしっかり改善したいところです。
実際の対応と結果
ここからは実際の対応に関して、記載していきます。
改善の結果
まず初めに結果から記載していきます。
- 機器:RIC補聴器(耳かけ形補聴器+充電式)
- 価格:416,000円
- 備考:両耳装用により聞こえを改善
こちらの方の場合は、結論として、このようになりました。
耳あな形補聴器と耳かけ形補聴器に関する形状選択に関しては、耳かけ形補聴器でも問題なく使えたため、使いやすさを考慮して、こちらになりました。
実際の対応
まず、初めにご相談の際ですが、状況をお伺いした後、上記のような内容に関して、お伝えさせていただきました。
その後、補聴器の試聴を行い、日常生活で補聴器を使っていただくために貸出しました。
このような聞こえの方の場合、誠に申し訳ない限りですが、しっかり改善したとしても、効果を感じて補聴器があると良い。という方と、そうでない方で分かれるためです。
聞こえている部分は、聞こえており、さらに聴力低下している部分の聴力低下の量が非常に大きいので、補聴器の効果は限定的になることも少なくありません。
ですので、本当に補聴器があると良いのか。それをH・Nさん側も私の方でも確認させていただくため、補聴器の貸出をしました。
その結果、今まで気づいていなかった音や聞こえていなかったんだろうなという音がわかり、さらに聴きやすくもなったので、補聴器で聞こえを改善していきたい。と評価していただけました。
ここから補聴器の選定や聞こえの改善に関して、よりしっかり行っていく事になるのですが、補聴器については、貸出のものでも十分に使え、耳あなにすると、声の響きが強くなるなら、耳かけの方が良い。ということで、こちらに決定になりました。
で、次は、問題になりやすい補聴器による聞こえの改善ですね。結論から言うと、このような状態になりました。
目標と比べると、まずまずではあるのですが、一部は、大きく下がったままになります。実は、こちらの方は、高い音の耳鳴りが両耳ともしており、下がっている3000Hzの部分は、あげたりしたのですが、特に変化はありませんでした。
これは測定上の問題でもあるのですが、聴力検査の際も、耳鳴りがしている方は、その部分が著しく下がったりします。耳鳴りは割と強めに常に発生しているようですので、この部分は、音を入れたとしても、気づきにくいのかもしれません。
こちらの方で懸念していたのは、高い音に関して、果たして入れられるかどうかでした。高い音は、上記に記載した通り、入れて大丈夫なケースとそうじゃないケースに分かれるためです。
この部分は、お客様が補聴器を使った感覚と相談しながら、改善していった結果、ここぐらいまで上げることができました。
もう少し音に慣れてきたり、あるいは、もう少し大きくしても大丈夫そうになったらまた、ここよりさらにあげていくかもしれません。
聞こえの改善に大事になる、500〜2000Hzのあたりは、中心的に改善し、特にH・Nさんの場合は、その範囲内に入る1500Hz、2000Hzは、意識して改善していきました。
その結果、より良くでき、こちらとしては、何よりです。
お客様の声
実際にお客様からいただいた声に関して、ご紹介いたします。
どのような事でお悩みでしたか?
実際に補聴器をお使いになってみていかがでしょうか。
このお店で、ご相談(購入)になったのは、なぜでしょうか。
実際のアンケート
この度はアンケートのご記入と、このような内容を記載させていただくことに関し、許可いただき、大変、感謝致します。
お客様の場合は、高い音が大きく低下しており、改善の効果も限定的になりやすい現状から、補聴器の試聴、貸し出しからさせていただき、少しずつ聞こえの改善をさせていただきました。
このような聞こえの方の場合、聞こえているところと聞こえていないところの差が大きいため、なるべくそういったところを減らせるよう、全体的に聞こえの改善をさせていただきました。
補聴器を使っていても、まだまだ聞きにくさが残っている部分はあるとは思うのですが、それでも購入されたり、ご相談されてみて、よかったと思っていただけたのでしたら、こちらとしては、本当に何よりです。
こちらこそ、ご依頼いただきまして、誠にありがとうございます。そして、今後ともよろしくお願い致します。
まとめ
さて、今回は、高い音が大きく低下した方の改善について、記載してみました。
このような聞こえの方の場合、だいぶ改善できる部分が限られていますので、その改善できる部分をしっかり改善していくことが大切になります。
まだまだ改善が限定的になりやすい部分はあるのですが、そのことにより、より良くできる部分はあります。
かなり難しいケースになりますので、この内容が少しでも役に立ったのであればこちらとしては、幸いです。