【聞こえを改善】左右の聴力が異なるケースを補聴器で改善させる考え方
左右の聴力が異なる場合、その耳の状況に応じて、補聴器で改善させる方法は、異なります。
左右の聴力がそこまで大きく離れておらず、補聴器を装用することで、効果を見込める耳であれば、両耳に装用して、補った方が聞こえを改善できます。
しかし、仮に片方の耳が全く聞こえないような状況ですと、少し変わったバイクロス。と呼ばれる補聴器で改善した方が、状況を改善できたりします。
こちらでは、左右の聞こえが異なる場合、どのように改善をしていければ良いのか。その点をまとめていきます。
改善を考える場合の基本は、現状を把握し、その状況をどう改善させられると良いかを知ることです。
このページでは、どう改善できると良いかの部分と、現状を把握する方法について載せていきます。
聞きにくさを感じている方へ少しでも改善のヒントになれば幸いです。
左右の聴力が異なる場合の補い方
補聴器で聞こえを改善させる際にはじめに考えるのは、どのように補って改善させるのか。という部分になります。
補聴器の形状や性能は、補い方を決めた後の話になります。
左右の聴力が異なる場合、基本的な補い方は
- 両耳に補聴器をつける
- バイクロス補聴器を使う
- 片耳だけ補聴器を装用する
の3つがあります。
両耳に補聴器を装用する
こちらは、
このような一般的な補聴器を両耳に装用する。こちらになります。
左右の聴力の差がそこまで大きくなく(大きくても20〜25dBくらいまで)、
このように音声を聞かせるテスト(語音明瞭度測定と呼びます)で、両耳とも補聴器の効果が見込める可能性が高い場合に有効です。
ただし、左右の聴力が異なる場合は、聞こえを補聴器で補う際、両耳とも調べて、バランスよく改善させることが大切です。
特に聞きにくい側の耳は、上記のような補聴器を装用した状態を調べる測定を行い、状況を確認しないと、現状を把握しづらくなります。
確認を怠ると、改善があまりされていない。ということが起こりやすくなります。
なお、注意点として、この方法は、仮に聞こえにくい側が音声を聞かせるテスト(語音明瞭度測定)で、あまりよくならない場合、聞こえない耳側に補聴器を装用しても、聞こえづらいままになることが多いです。
そのようなケースは、両耳に装用しても、思うように改善ができないことがありますので、この点に注意です。
仮にこの方法で改善ができる場合は、このように満遍なく、今現在、感じている不自由な部分を改善できるようになります。
実際には、補聴器を装用して改善させる聞こえの数値もありますが、その数値がご自身の聴力で改善できると良い数値までいけると、全体的に改善させることができます。
それが、両耳に装用して改善させる場合の特徴です。
バイクロス補聴器を使う
バイクロス補聴器とは、少し特殊な補聴器で、聞こえない耳側の音を聞こえる耳側に転送し、かつ、聞こえる耳側も補う補聴器です。
言葉では、わかりづらいため、図で説明します。このような聴力の場合、
右側は、補えないほど、聴力低下しているため、右側にくる音は、左側に転送し、左側は、少し聞きにくさがありますので、補聴器で改善できるところまで改善させます。
このようにすることで、右側から入る音は、左側で受け取れ、さらに左側は、そのまま補聴器の役割をすることで、より聞きにくさを改善させることができます。
このような仕組みをバイクロス。と呼びます。
バイクロス補聴器は、片側が何らかの原因により、聴力低下し、そして、その耳が補聴器では補えないようなケースのために開発された機器です。
今現在、あまりにも聴力低下してしまったケースや上記の語音明瞭度測定をした結果、著しく低いケースは、その耳に補聴器を装用してもほとんど聞きやすくなりません。
そのような方をどのようにして改善しようかと考えた末に出てきたのが、聞こえる耳側で全てを聞く。という方法です。
聞こえない耳に音を入れても改善ができないことから、考え方を変えて、改善させようとした結果、バイクロス補聴器は、生まれました。
形は、基本的な補聴器と同じです。一般的な補聴器とクロスと呼ばれる機器を組み合わせて使用します。クロスが音を拾う方で、聞こえない耳側に装用し、補聴器をまだ聞こえる耳側に装用して、使います。
基本的にこの補聴器が合う方は、
- 聞こえない耳側の聴力低下が大きく、全く補聴器では補えないケース
- どちらか片耳が、補聴器で音を入れても、全く音声の理解に繋がらないケース
の2つです。
一つは、このように片耳が全く聞こえないケースで、もう片耳が老人性難聴により低下してしまったり、原因不明の感音性難聴で低下してしまったケースに当てはまります。
このようなケースは、特に聞こえなくなった耳側に直接、補聴器を装用しても、効果がほとんど見込めません。
補聴器は、ある程度、聴力が残っている場合は、補うことにより、改善できることもあるのですが、あまりにも低下すると、補聴器の効果は、かなり限定的になります。
基本的に補聴器は、聴力が低下すると、するほど、聞こえの改善度も下がる傾向にあります。
もう一つは、音声のテストを行なった際、補聴器の効果がかなり見込みにくいケースです。
補聴器には、音を大きくした際にどのくらい音声が理解できそうか。というのを調べる測定があり、それを調べた結果、著しく結果が低い場合は、その耳側に補聴器を装用しても、思うように改善ができません。
補聴器を装用するケースは、基本的に耳を治すことができなかった症状であり、大半が感音性の難聴。というものになります。
感音性難聴の特徴は、音そのものが聞こえにくくなることに加え、言葉がうまく捉えられない。という症状も出てきます。
重要なのは、音そのものが聞こえにくくなる事以外に、言葉がうまく捉えられないことが起こることです。
この部分の障害のレベルが高いと、音をいくら大きくしても、聞き取りの部分を改善させる事に、あまり貢献できません。
先ほどの測定(語音明瞭度測定)は、その障害レベルを調べる測定です。その数値が著しく低い場合は、聞こえにくい耳を直接、補っても、うまく効果が出ないことが多くなります。
このような2つのケースは、バイクロス補聴器を使うと改善がしやすくなります。
こちらで改善できると、このように改善ができます。
欠点は、この音の方向感覚で、バイクロス補聴器は、一つの耳で全ての音を聞くため、音の方向感覚は、改善させることができません。
音の方向感覚以外の部分は、それなりに改善でき、特に聞こえない耳側からの音や音声、複数の方と囲んでお話した時の聞こえなどは改善しやすくなります。
https://l-s-b.org/2014/10/bicros-hearing-aid/
片耳のみ補聴器を装用する
片耳のみ補聴器を装用する。という方法もあります。こちらは、厳密には、状況によって分かれます。
例えば、このような聴力の場合、左側がある程度、よく、かつ右側が低い状態です。
その場合、音声がどれほど理解できるかのテストを行い、このようにある程度、伸びる状況だったとします。
このような場合は、聞こえない耳側に装用して、聞こえをより改善させます。このようにできると、聞こえない耳側でもわかるようになることで、左右のバランスがよくなり、結果的に聞きにくさを軽減できるようになります。
もう一つは、このような聴力の場合、聞こえの良い方に補聴器を装用する。というやり方です。
昔は、このようなやり方で改善していたことがあります。ただ、注意が必要なのは、この方法ですと、特に聞こえにくい側からの音、音声はわかりづらく、騒がしい中での会話も、改善がかなり難しくなることです。
片耳のみしか改善していませんので、改善が限定的になるのが特徴です。
もしより改善させる場合は、測定の結果(悪化している側の語音明瞭度測定の結果)により変化してしまうのですが、バイクロス、もしくは、両耳に補聴器を装用して、聞きにくい側からも音が入るようにしてあげられると、より聞きにくさは、改善しやすくなります。
適する補い方を見つける測定と補う例
さて、次は、状況を把握する方法です。
自身の状態をよくするためには、まず、耳の状況がどのようになっているのか。そのことを理解することが大切になります。
こちらでは、その方法とみるポイント、そして、実際に測定した後のデータを使い、どのようなケースにどのような補い方が合うのか、そちらを載せていきます。
各種測定と測定で理解したい事
基本的に補聴器で聞こえを改善させる場合、行なっていく測定は、
- 聴力検査
- 語音明瞭度測定(語音弁別能検査)
の2つになります。どちらも、病院さん、補聴器屋さんで調べられる測定です。
聴力検査
聴力検査に関しては、したことがある方は多いかと思います。
よく病院さんで行われる測定で、健康診断では、簡易的な測定を行います。
横軸が周波数(音の高さ)で、縦軸が音の大きさを表します。上にあるとあるほど、聞こえやすく、下にくるとくるほど、聞きにくくなります。
音は、様々な音の高さがありますので、その高さ別にどのくらい聞こえているのかを調べるのが聴力検査です。
語音明瞭度測定(語音弁別能検査)
語音明瞭度測定とは、上記に少しご説明しましたが、音声を聞こえる音量で聞かせ、どのくらい理解できるのか。を調べる測定です。
あ、じ、し、などの一つ一つの言葉を聞かせ、音を大きくする事により、音声は、理解できるのか。を調べる事により、感音性難聴の一つの症状である、言葉が理解しづらくなる障害のレベルをおおよそ把握することができます。
見方は、縦が正解数、横軸が音の大きさです。基本的に見るのは、一番良いところの正解数になります。
その正解数の意味は、このようになります。補聴器の適性は、最良値が50%以上である事になります。
これ以下の場合は、残念ながら、補聴器を装用しても、言葉を理解する。という部分に関しては、あまり貢献できなくなります。
この点は、難しい表現になるのですが、言葉が理解しづらくても、装用する事により、周囲の音に気が付いたり、呼びかけに気が付きやすくなったりしますので、全くもって補聴器を装用することに意味がない訳ではありません。
ただ、音声の理解という部分に関しては、貢献がしづらくなります。
感音性難聴には、言葉が理解しづらくなる。という部分もありますので、このような測定もあります。
耳の状況を理解後の補う例
左右の耳の聞こえが異なるケースは、言ってみれば、左右の耳が異なる病気(異なる要因)で聞きにくくなっていることが多く、改善が難しい部類に入ります。
そのため、先ほどの聴力検査の結果と語音明瞭度測定の結果で、ご自身の耳の状況を把握しつつ、どのように改善していけると良いのか。その点を把握していく必要があります。
とはいえ、基本的に考えられる例は、
- 聴力が左右で異なり、両方とも音を入れることで補える耳
- 左右の聴力が大きく異なり、片耳が補聴器で補えない耳
- 左右の聴力差は補える範囲内であるが、片耳が全く補聴器で補えない耳
の3つのパターンに分かれることが多いです。
①聴力が左右で異なり、両耳とも音を入れることで補える耳
こちらのケースは、
聴力検査の結果がこのようになり、
かつ、音声の理解度を調べてみた結果、このような結果だった場合になります。
このような場合は、左右の聞こえこそ、違うものの、音を大きく入れることで、音声の理解に繋がっています。
このようなケースでは、両方とも補聴器を装用し、なるべくバランスよく補えるようになると、聞きにくさを改善しやすくなります。
②左右の聴力が大きく異なり、片耳が補聴器で補えない耳
こちらのケースは、
聴力検査の結果がこのようになり、片側は、まだ補聴器で補える範囲内で、もう片耳が全く聞こえないような状況のケースです。
この場合、聴力低下が大きすぎて、右耳側は、補聴器を装用しても、改善がほとんどできません。そのようなケースでは、バイクロス補聴器を使用して、補った方が、聞きにくさは、まだ改善しやすくなります。
https://l-s-b.org/2019/02/improvement-of-hearing-aid-with-very-large-hearing-difference/
https://l-s-b.org/2014/10/bicros-hearing-aid/
③左右の聴力差は補える範囲内であるが、片耳が全く補聴器で補えない耳
こちらのケースは、
聴力検査の結果がこのようになり、
かつ、音声の理解度を調べてみた結果、このような結果だった場合になります。
聴力だけでみてみますと、補聴器で補えそうな範囲ですが、音声の理解度が著しく低くなっています。このような場合も、音声の理解度が低い右耳に補聴器を装用しても、うまく改善ができないことが多くなります。
このような場合も、バイクロス補聴器で改善していけると、状況をよくしやすくなります。
なお、こちら以外に、補聴器を装用すると、謎の響きが強すぎて使えない。不快な感覚が強くなってしまう。などの何らか使えない要因があるケースも、バイクロス補聴器の対象になります。
https://l-s-b.org/2014/10/bicros-hearing-aid/
左右の聴力が異なるケースの改善思考のまとめ
左右の聴力が異なるケースをよくしていく場合、まずはじめに、ご自身の耳の状況がどのようになっているのか。それをよく理解することから、改善の一歩は、始まります。
上記の内容をご覧になってもしかしたら薄々気づいている方もいるかもしれませんが、補聴器は、どのような耳でも、装用すれば、たちまちよくしてくれる魔法の道具ではありません。
今現在、耳鼻科さんで見ていただいても治らない難聴は、感音性難聴という特殊な耳の状況になっていることが多いため、耳の状況を把握して行わないと、うまく改善できないケースがあります。
左右とも聞こえが異なるケースの場合は、特にそのような傾向があります。
そのため、少しでもよりよくするためには、ご自身の耳の状況を把握し、少しでもよりよくなる方法を選択する必要があります。
確かに補聴器をしたとしても完全には、聞きにくさを改善させることはできません。
しかし、然るべきことをすれば、それなりに聞きにくさを改善させることはできます。
こちらをご覧になり、少しでも現状を改善させるヒントを掴めたのであれば幸いです。
各、難聴改善方法まとめ
https://l-s-b.org/2019/02/improvement-of-hearing-aid-with-very-large-hearing-difference/