クロス補聴器の基本

クロス補聴器の効果を最大限、活かすために意識したい3つのポイント

深井 順一|パートナーズ補聴器

補聴器による聞こえの改善は、聞こえの改善と補聴器のFAQ、にまとめています。また、個々の症状(症例)ごとの改善は、お客様の聞こえの改善事例にまとめています。

クロス補聴器の効果を最大限、活かすには、どのようにしたら良いのでしょうか。それは、耳にしっかり装用する事、なるべく補助的にクロス補聴器を使用する事、そして、できれば、予め、聞こえない耳側の事をお話をしておく事の3つです。

クロス補聴器を装用することにより、聞きやすくなったり、話しかけられた時に反応できるようになるのは、事実です。しかし、状況によっては、周りの音に音声が邪魔されてしまったり、何かに集中しており、気がつかない。ということも起こり得ます。

そのため、聞こえの改善を最大限行うことも大切ですが、難聴の本質であるコミュニケーション障害そのものをよくする。という思考で改善を考えていけると、より状況を改善しやすくなります。

耳にしっかりと装用する事

初めのポイントは、この耳にしっかりと装用する事です。

クロス補聴器は、聞こえる耳側の補聴器がこのようになっています。この先端の部分から、音が出ており、この部分を耳にしっかりと入れられていると入れられているほど、聞きやすくなります。

耳の中に入れると言いましても、実際には、耳の中の半分くらいになります。入れすぎると鼓膜まで届く……ということは、まずありません。

耳の中に入れると言いましても、実際には、耳の中の半分くらいになります。入れすぎると鼓膜まで届く……ということは、まずありません。

なかなか表現が難しいのですが、しっかりと入れられるようになると、このような位置まで、入れることができます。

入れられる長さは決まっていますので、どんなに奥に入れたとしても、鼓膜に当たったりとかはありません。ただ、人によっては、耳の奥に入れると痛みを感じることがあります。

痛みを感じるほど奥に入れる必要はありませんが、しっかりと入れられると、入れられるほど、聞こえは、良くなります。

後は、スポーツロックというものを使うことです。

スポーツロックとは、このようなもので、先ほどの音がでる部分が耳から抜けてくるのを防止してくれるものです。

耳は、話したり、ものを噛んだり口が動くと、耳の中が動きますので、自然と耳に入れたものが外れてきてしまう。ということが起こります。

スポーツロック付きの画像。耳の下の部分に返しがついており、耳から抜けにくくしてくれることで、聞こえの安定化をすることができます。

スポーツロック付きの画像。耳の下の部分に返しがついており、耳から抜けにくくしてくれることで、聞こえの安定化をすることができます。

そのため、このようなものを使い、耳に固定できるようになると、耳から外れにくくなり、結果的に、良い聞こえの状態を安定して聞くことに繋がります。

スポーツロックそのものが邪魔に感じてしまったり、使うと、耳に付けづらくなってしまう場合は、外しても良いですが、使えるのであれば、聞こえの安定化のために使った方が、聞こえの効果は、安定して感じる事ができるようになります。

なるべくクロス補聴器は、補助的に使用する

クロス補聴器を装用することにより、確かに聞こえにくい側から話されても聞こえるようになる事は増えるのですが、その効果は、残念ながら、聞こえる耳側と同じくらい良くなる……という訳ではありません。

そのため、メインは、聞こえる耳側で聞きつつ、やむを得ない時は、クロス側で聞く。もしくは、様々な方向にいる方の声を聞かざるを得ない時や座る位置が固定されており、聞きにくい側に人が来てしまった時の補助として、使用するのが、一番効果的ではないかと、個人的には、考えています。

まず、私の方で、クロス補聴器の聞こえについて、お客様にお伺いしたり、効果を調べてみますと、このくらいのような気がします。聞こえる耳側よりは、少し劣る状態ですが、補聴器をつけない状態と比べると、聞きやすくはなっている。という状況です。

そのため、一時期、聞こえる耳側に聞こえを近づけたり、こちらと同じくらい聞こえるようにしたらどのようになるのだろうかと、気になり、音量をあげて、試してみた事があります。

すると、片方の耳だけで聞くためか、クロス側の音が大きくなり、クロス側は、良く聞こえるようになるのですが、その代わり、聞こえる耳側からくる音が、わかりづらくなる。クロス側に邪魔されてしまって、聞きにくくなる。という事が起こるようになりました。

両方の音を同時に優先する事はできず、必ずどちらか、片方の聞こえを優先する必要がある。という事が行なってみて、わかったことになります。

であれば、聞こえる耳側の聞こえを優先しつつ、聞こえない耳側につけるクロス補聴器の聞こえを最大限、改善するようにして、補助的に使用するのが、最も良いのではないか。私自身は、そのように考えています。

そのため、なるべくクロス補聴器は、補助的に使用し、あくまでも聞こえる耳側を優先して活用し、聞きにくい側に人が来てしまったり、意図せず、聞こえない側から話されてしまった時に気がつけるようにする事が、現状、ベストな使い方になるのではないかと考えています。

聞こえる耳並みに改善ができ、かつ、聞こえる耳側の聞こえも聞こえない耳側の聞こえも独立して聞こえるようになるのであれば、別ですが、実際には、優先順位を考える必要がありますので、このような使い方が、限りなくベターに近い、使い方になるかと思います。

できれば、予め、聞こえない耳側の事をお話をしておく

最後は、こちら。できれば、予め、聞こえない耳側の事をお話しておく事です。

話すタイミングや人によっては、なかなか話しづらい事では、ありますが、身近な方々(良く接する機会がある人)にこちらを話しておけると、言い方は悪いですが、仮に聞こえなかった際の予防線をはる事ができ、相手を無視している。という事を感じさせにくくする事ができます。

この際、あくまでも難聴者である私自身が考えている伝えるニュアンスですが、ご自身を理解してもらうためにお話する、というよりも、こういう事をしてしまう可能性がある。その場合は、申し訳ない。とはじめに謝罪をしておく。というスタンスになります。

私の場合ですが、実際にお話する場合は「すみません、生まれつき聞こえにくいので補聴器をして聞こえるようにしてはいるのですが、もしかしたら呼びかけられても気がつかなかったり、わからない時があるかもしれません。決して無視している訳ではないのですが、仮にしてしまったのであれば、申し訳ないので、予め、はじめに謝っておきます。」と伝えています。

ご自身の伝えるパターンがあるのであれば、そちらを使っていただき、ない場合は、このように「自分の事を理解して欲しいので伝える」ではなく「相手を傷つけないために伝える」という部分を意識して、伝えられると良いかと思っています。

まとめ

クロス補聴器の効果を最大限、活かすには

  • クロス補聴器をしっかりと装用する事
  • クロス補聴器は、補助的に使用し、メインの耳を活用する事
  • できれば、ご自身と良く接する方には、耳の事を伝えておく事

の3つになります。上にあるものほど、容易で、下に行くほど、難易度が上がります。こちらは、どれか一つだけでも良いですし、3つ全部行なっても良いです。

一つだけ行うよりも、2つ、3つと行なっていけると、それに伴い、聞きにくさや聞きにくいことによる息苦しさというのは、より減っていくようになります。

クロス補聴器で全ての部分が聞こえるようになり、耳が治るレベルにまで良くなるのであれば良いのですが、残念ながら、そこまで改善させる事は、できません。

そのため、クロス補聴器での改善度をあげつつ、これらの事を行なっていけると、よりご自身の状況をより良くしやすくなります。

難聴の基本は、コミュニケーション障害ですので、その部分をより良くするには、どのようにしたら良いか。それを考えるのが、とても大切です。

クロス補聴器に関する他の内容

https://l-s-b.org/2014/05/cros-hearing-aid/

https://l-s-b.org/2014/07/one-side-hard-hearing-inconvenience/

クロス補聴器の形状

https://l-s-b.org/2017/06/feature-comparison-of-cros-hearing-aids/

クロス補聴器の性能

https://l-s-b.org/2016/06/performance-difference-cros-hearing/

クロス補聴器の調整

https://l-s-b.org/2018/07/basics-of-adjustment-cros/

クロス補聴器の適正

https://l-s-b.org/2018/02/conform-cros-hearing-aid/

クロス補聴器で改善した事例

クロス補聴器の使い方

https://l-s-b.org/2018/07/use-smoothly-cros-hearing-aid/

クロス補聴器に慣れる

https://l-s-b.org/2018/07/getting-used-easy-cros/

耳が痛くなる場合は?

https://l-s-b.org/2018/07/improvement-of-pain/

耳から外れる場合は?

https://l-s-b.org/2019/01/prevent-from-getting-out-of-the-ear/

ABOUT ME
深井 順一|パートナーズ補聴器
深井 順一|パートナーズ補聴器
使っている人が対応している補聴器専門店・代表
1986年、7月1日生まれ。生まれつきの難聴者で小学2年生の頃から補聴器を使っています。聞こえにくい側の状況やお気持ちは、同じ難聴者や当事者にしかわからないことがある事から、このお店では、実際に補聴器を使っている私自身がご相談を承っています。

お店のご紹介

初めまして、パートナーズ補聴器の深井と申します。

このお店は、生まれつき難聴で補聴器を使っている人が対応している補聴器専門店です。

聞こえにくい側の状況やお気持ちは、同じ難聴者や当事者にしかわからないことがある事から、実際に補聴器を使っている当事者がご相談を承っています。

お店の詳細は、以下のページへどうぞ。

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