クロス補聴器の一つ、両耳とも耳あな形のクロス補聴器の注意点
クロス補聴器の一つには、両耳とも耳あな形のクロス補聴器もあります。
耳の中に入れて使用できるタイプの補聴器で、耳の中に補聴器を入れられると、メガネやマスクの邪魔にならず、自然に使える。という特徴があるのですが、こちらは、重大な欠点があるため、今現在(この内容を書き直している2019年6月19日)この形状は、オススメしません。
耳あな形のクロス補聴器に関する概要から、欠点、それらに関してまとめていきます。
耳あな形のクロス補聴器の概要
クロス補聴器には、大きく分けて
- 耳にかけて使用する耳かけ形のクロス補聴器
- 耳の中に入れて使用する耳あな形のクロス補聴器
の2つがあります。
その中の耳の中に入れて使用する耳あな形のクロス補聴器は、両耳とも耳の中に入れるタイプのクロス補聴器です。
聞こえない耳側も、聞こえる耳側にも耳の型を採取して作る耳あな形の補聴器を使うことにより、
- 耳にしっかり装用できるものを作る事ができる
- 耳の中に入ることにより、邪魔にならない
という特徴があります。
耳にかけるタイプの耳かけ形補聴器は、耳にかけて使用するタイプなため、耳に乗る感覚こそ、楽で、軽いのですが、少し保持が甘い部分があり、運動したり、体を大きく動かす際には、少し保持が心許ない感覚があります。
しかし、耳の形を採取して、その耳にしっかりと収まる物であれば、保持が安定し、しっかり使う事ができます。
また、耳の中に入ることにより、メガネやマスクの邪魔にならず、帽子なども使いやすくなります。
耳にかけるタイプの場合は、場合によっては、邪魔に感じる部分があるため、耳あな型のクロス補聴器は、これらの部分で優れています。
耳あな形のクロス補聴器の欠点
しかし、冒頭に記載した通り、耳あな形のクロス補聴器は、今現在、オススメしません。
こちらの欠点ですが、
- 聞こえる耳側が聞こえづらくなる
- 咀嚼の音が大きい
- 自分の声が大きく聞こえやすい
の3つがあり、特に聞こえる耳側が聞こえづらくなる部分の影響が大きく、耳あな形のクロス補聴器を使うと、返って聞きづらくなってしまう事が多いためです。
聞こえる耳側が聞こえづらくなる
一番の欠点は、この聞こえる耳側が聞こえづらくなる。というものです。
耳あな形のクロス補聴器は、聞こえる耳側も耳あな形補聴器をつけます。すると、単純に耳が埋まってしまい、聞きづらくなります。
クロス補聴器の仕組みは、聞こえない耳側につけたクロス機器が聞こえる耳側に音を転送して、音を聞きます。そして、聞こえる耳側は、そのままの耳で、音を拾います。
耳かけ形のクロス補聴器の場合、聞こえる耳側は、このような大きな穴を開けた耳せんを使用し、聞こえる耳側は、塞がないようにして、聞こえる耳側からも音が入るようにします。
しかし、耳あな形のクロスの場合は、耳の形をとり、その耳に合わせて製作するため、穴を大きく開けるのが、かなり難しく、ほとんど人は、大きく開けられず、ほぼ、聞こえる耳側が聞こえづらくなってしまいます。
お店側で色々と調べてみたのですが、125Hz〜1500Hzあたりまでは、大丈夫なのですが、それよりも高い音から急激に下がるようになります。
この数値の意味ですが、0〜25dBまでは、正常の範囲内です。この範囲内であれば、特に聞きにくさを感じにくいのですが、その数値よりも、下にきてしまっています。
そのため、この数値通り、聞きにくくなってしまうのか、それとも、そんなことはなく、意外に使えるものなのか。その点を貸し出しを通じて確かめてみたのですが、小さい声の方やボソボソ話す方の声が余計に聞きづらくなり、どちらかというと難色を示す方が多かったです。(5〜6人に試し、ほぼ全員が難色を示しました)
この点は、片耳のみ聞こえており、なるべく、その聞こえている耳側は、良い状態にしておきたい、聞こえている耳側が少しでも聞きにくくなると、不安を感じてしまう事が要因だと思います。
心理的にかなりの負担がかかるように個人的には、感じました。
咀嚼の音が大きい
耳あな形の補聴器を使用した場合、耳を塞ぐことにより、自分が話した声や咀嚼の音が大きく内側で響くような感覚を得やすくなります。
聴力が正常な方は、特にこのような傾向を感じ、イヤホンを耳にはめている時に話したり、何か物を食べると、大きく咀嚼の音が聞こえる現象、そのものになります。
この点は、耳の中に物を入れると起こる現象であり、耳あな形補聴器の場合、特に不快に感じやすい部分の一つです。
自分の声が大きい
こちらも咀嚼の音と同じで、耳の中に物を入れることによって起こることの一つです。
そして、こちらも感じやすく、不快に感じやすい要素の一つです。
改善のためにしてみたこと
上記の欠点があるものの、改善できるのであれば、メリットを受容できます。
そのため、聞こえにくくなる部分をなんとか改善できないか、お店側で実験していくことになります。結果は、惨敗ですが、行ってみたことを載せていきます。
それは、
- 補聴器側に大きな穴を開ける
- 補聴器側も動作させる
の2つです。
補聴器側に大きな穴を開ける
塞がれている状態により、聞きにくくなるのであれば、穴を開けて、改善する。このように考えて、行ってみたのですが、状況は、全く変わらず、先ほどの測定の数値に関しては、変化なしでした。
その後、もっと小さくしてみたらどうか。など行いましたが、根本的な改善に結びつかず、この方法では、今現在の状況では、改善が難しい状況でした。
補聴器側も動作させる
この補聴器は、バイクロスと言い、聞こえる耳側も補聴器として、動作させる事が可能です。
そのため、下がってしまうところだけを補聴器の役割も入れて、改善すれば良いのではないか。と、考えて、増幅してみたのですが、聞こえる感覚こそ、上がるものの、数値としては、あまり上がらず、成果としても、微妙な状況でした。
さらに実際に上げていくと、2000Hz〜4000Hzになりますので、この部分は、あげるとあげるほど、音が機械チックになり、マイクを通したような音質、電話のような音質になってしまうため、かなり違和感が強くなりがちです。
こちらも、音を大きくする事で、改善できるかと思いましたが、数値が上がらず、上がるのは、補聴器の機械チック感で、さらに上げると、上げると不快になってしまうため、この方法でも、改善ができませんでした。
オマケ:なぜ耳あな形のクロス補聴器はある?
上記のことを記載すると、なぜ耳あな形のクロス補聴器はあるのか?と疑問を浮かべるかもしれません。
それは、2つあり、海外の方であれば、ある程度、耳の形状が大きいため、活用できる可能性があるのと、バイクロスと呼ばれる活用方法があるためです。
バイクロスとは、主に上記のように片耳は、全く聞こえず、聞こえている耳側も難聴のケースに使用されます。
このような聞こえの場合は、まだ聞こえている耳側も補聴器の役割をして、聞こえを改善し、聞こえを補えない耳側は、音を転送させて、聞こえを改善します。
基本的にクロス補聴器、バイクロス補聴器は、機種は、全く同じで、同じ機械で、クロス仕様にするのか、バイクロス仕様にするのかを決められます。
そのため、耳あな形のクロス補聴器は、存在します。
耳あな形のクロス補聴器のまとめ
耳の中に入れることにより、邪魔になりづらい、保持が安定する。という利点があるものの、聞こえる耳側が聞こえづらくなることで、全体的に、聞きづらさが出てしまうため、今現在の状況では、あまりお勧めできません。
この問題が改善できる場合は、いいかもしれませんが、今の所、有効な改善策が見つかっていないため、この形状のクロス補聴器は、お勧めしません。
クロス補聴器で聞こえを改善する場合は、こちらに関して、気をつけていただければと思います。
https://l-s-b.org/2018/10/rechargeable-cros-hearing-aid/
クロス補聴器に関する他の内容
https://l-s-b.org/2014/05/cros-hearing-aid/
https://l-s-b.org/2014/07/one-side-hard-hearing-inconvenience/
クロス補聴器の形状
https://l-s-b.org/2017/06/feature-comparison-of-cros-hearing-aids/
クロス補聴器の性能
https://l-s-b.org/2016/06/performance-difference-cros-hearing/
クロス補聴器の調整
https://l-s-b.org/2018/07/basics-of-adjustment-cros/
クロス補聴器の適正
https://l-s-b.org/2018/02/conform-cros-hearing-aid/
クロス補聴器で改善した事例
クロス補聴器の使い方
https://l-s-b.org/2018/07/use-smoothly-cros-hearing-aid/
クロス補聴器に慣れる
https://l-s-b.org/2018/07/getting-used-easy-cros/
耳が痛くなる場合は?
https://l-s-b.org/2018/07/improvement-of-pain/
耳から外れる場合は?
https://l-s-b.org/2019/01/prevent-from-getting-out-of-the-ear/