補聴器の性能

補聴器に指向性機能がある理由→調整だけでは限界だから

補聴器の機能といえば、指向性機能、音を抑制する機能、補聴器の音を調整するチャンネル、その他など様々な機能があります。その中で特出すべき機能と言えば、指向性と呼ばれる機能です。指向性とは、後方の音を下げ前方の音をより理解しやすくする機能です。

さて、このように機能の説明をすると気になるのは「なぜそのような機能があるのか」になります。必要なければそのような機能は、いらないですし、邪魔な要素となります。

指向性機能は、補聴器の歴史から見ると、生まれるべきして生まれた機能となります。この機能を理解する事は、耳、そして補聴器を理解する第一歩となります。

結論

指向性機能ができた理由は非常に単純で、補聴器を調整するだけでは、聞こえを改善できない部分があったからです。補聴器の基本機能は、低下した聞こえの部分を周波数別に補う事です。これによって理解しやすくなるのは

  • 静かなところの聞き取りのみ

こちらでした。日々の日常では、静かなところもあれば、騒がしいところもあります。この騒がしい部分に関しては、補聴器で音量を調整してもなかなか改善できませんでした。

では、どのようにしたら改善できるのか。補聴器の研究をしている人がたどり着いた答えは、SN比を改善させる事であり、その目的を達成するために、指向性という機能を開発しました。

理解するポイントは、SN比

補聴器を理解するうえで欠かせない要素は、SN比になります。補聴器は、このSN比をいかに改善させようと努力奮闘しており、この改善度、貢献度が高い機能ほど、高額になります。言い換えれば、40万、50万する補聴器は、このSN比を現在の技術で可能な限り改善するような機能がついています。

SN比とは、S=シグナル、N=ノイズの対比の事で、Sが聞きたい音、Nが邪魔する音を表します。人が音声を理解するには、SN比の比率が、Sが勝っている事が条件です。正常の方が音声(S)を50%理解するには、SN比がプラマイゼロになり、感音性難聴の中等度難聴の方が音声(S)を50%理解するには、Sがさらに5〜6dB必要になります。そしてそれ以上に聞きやすくするには、さらにSN比の改善が必要です(さらにSのdBを大きくする)。

日々の日常では、全く音がしていないところはありません。静かな一人暮らしの部屋の中でも40dB(SPL)ほど音はしていますし、交通量が多い道路が近い家ですと大体50dB(SPL)ほどになります。重要なのは、静かだから聞き取れているのではなく、このSN比が良いから聞き取れているという事です。

一般的に人の声の大きさは、65dB(SPL)になります。それに対し、静かな所では、40dB(SPL)です。S(声の大きさ)とN(ノイズ)は、それぞれ65dBと40dBであり、人の声の大きさの方が勝っています。ですので、静かなところは、聞きやすく、そしてNが大きくなりやすい、人通りが多い所、飲食店内、車の交通量が多いところでは、聞きにくくなります。

音声をどうしたら理解しやすくなるかのポイントは、SN比にあります。そして、この部分をどう改善するかがポイントになります。

指向性がしているのはSN比の改善

指向性がしているのは、SN比の改善です。では、実際にどのようにしてやっているのでしょうか。

  • 基本思考
  • Nを下げる理由

の二つに関して、記載していきます。

指向性の基本思考

補聴器についている指向性は、なるべくNを下げ、Sを際立てようとします。

基本的には、前方以外の周囲の音を下げ、前方の音を入れます。その後、前方の中の音で、さらにNと思われるものを抽出し、その音を抑制する事で、SとNの差を大きくしようとしています。指向性の基本としては、いかにSとNをわけ、Sを聞きやすくするか、Sを際立たせるかになります。

なお、最近の補聴器では、前方、後方に関係なく、SとNを常に監視し、SN比が悪い所だけ、改善させるという手法をとっているところもあります。

SN比を改善させる方法は、補聴器メーカーごとに異なりますが、指向性に対する考えは、全て共通です。

Nを下げる理由

SN比を改善すれば聞こえを改善できるとした場合、その目的を行うために、取れる手段は

  • Sを大きくする
  • Nを下げる
  • Sを大きくし、Nを下げる

の全部で三つがあります。しかし、この方法の内、Sを大きくするというのは、現実的ではありません。それは

  • 騒音下では、声が大きい
  • 感音性難聴の方は、音が大きいと理解しづらくなる傾向がある

この二つがあるためです。人は騒がしい中で会話する際、声を大きくしてお話ししています。これもまさにSN比の改善です。S(音声)を大きくする事でN(周囲の音)より大きくし、Sを聞きやすくします。では、この際、そのSを大きくするとより聞きやすくなるのか……といえば、そのような事はありません。

感音性難聴の方は、自分にとってちょうど良いくらいの音声レベルは理解しやすいのですが、大きな声になると理解しづらくなる傾向があります。仮にちょうどよいくらいの音量ですと80%ほど音声が理解できるとした場合、音声が大きすぎると60〜70%くらいにまで低下する例があります。

騒がしい中で聞き取りにくい場合、元々聞こえにくくなっている状態にさらにSを大きくすると、反って聞きにくくなってしまいます。そのため、Nを下げる施策を行い、SN比の改善を目指しています。これは、難聴の方の耳を理解したうえで目的に対し、どのような手段で行うかを考えた結果でもあります。

このようにしてSN比を改善し、聞こえにくさを改善させようと補聴器メーカーは、開発を続けてきました。

指向性に関するまとめ

指向性の機能は、補聴器を単に調整するだけでは改善できない部分があったため生まれた機能です。改善できない部分をそのままにせず「どのようにしたら聞こえをより改善できるのか」を考え続けた結果、指向性という機能は、誕生しました。

研究の結果では、聴力が正常な方より、SN比の改善ポイント(改善させるのに必要なdB)が大きいのもわかっていましたが、少しでも改善できるのなら、やるしかない。そのような状況下で生まれたものでもあります。

指向性機能を使えば、どのような環境下でも音声が理解できるようになるかと言いますと、残念ながらそのような事はありません。少なくとも、全ての原因である感音性難聴により

  • 音声がそもそも理解しにくい
  • 大きい声だと理解しにくくなる

この二つにより、効果は制限されます。しかし、ないよりあった方が良いのは事実で、今では、ほとんどの補聴器に搭載されるようになりました。もっともついていれば良いという事ではなく、効果が金額により、段違いではありますが、徐々に良い機能は、安価になりつつあります。

補聴器は、全てにおいてSN比の改善がポイントです。そのポイントを改善する機能が、指向性になります。

 

この内容をご覧になった方は、こちらの内容もお勧めです。

リンク:補聴器のボリュームを上げても聞きやすくならない理由

リンク:補聴器の自動化から見えてくる理想の補聴器像

リンク:補聴器の効果を出すために知っておきたい四つの事

ABOUT ME
深井 順一・聞こえを改善する補聴器専門店
補聴器を売るお店ではなく、聞こえを改善する補聴器専門店、パートナーズ補聴器、代表。2019年で補聴器使用歴25年、補聴器販売歴10年。補聴器使用者の視点も含めた聞こえの改善相談をしている人です。このブログは、補聴器を使っている事、補聴器を販売している事、この2つの視点で記載しています。書いている人の詳細は、”書いている人のページ”。連絡先は、”お問い合わせページ"にあります。
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なお、聞こえの改善方法に関しては、8つの聴力別、補聴器で聞こえを改善する方法まとめに、記載しています。

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